ペンシルゴン:という事でオフ会しましょ
秋津茜:いいですね!
サンラク:いやどこが「という事で」だよ
ペンシルゴン:いやほらさ、旅狼ってほぼほぼリアバレしたじゃん?
オイカッツォ:僕とペンシルゴンは全員にバレてるんだっけ?
サンラク:そうだぞプロゲーマー
オイカッツォ:どうもクソゲーマー
サイガ-0:元々知り合いの人もいますしね……
ルスト:ネフホロの布教のためならやむを得ない
サンラク:極まってんなぁ
ペンシルゴン:京極ちゃんは?
サイガ-0:時間的に稽古中かと……
ペンシルゴン:そっか。西日本優勝おめでとう。って伝えといて。茜ちゃんも次全国だっけ?
秋津茜:はい!頑張ります!
サンラク:で、ホントにやんの?
ペンシルゴン:店もホテルも予約済みです
オイカッツォ:拒否権なしじゃん
ルスト:知らないうちに親に話が通ってた
オイカッツォ:ホラーじゃん
モルド:「大人気モデルと行く一泊二日の旅」
サンラク:ペンシルゴン、おまえまさか……
秋津茜:あ、それうちにも来てました!
モルド:ペア参加券が当選しましたって手紙が突然来て
秋津茜:私のはお一人様でした!
サンラク:お前それうちには送ってないだろうな?
ペンシルゴン:送ったのは2通だけだよ。なに?ほしかった?
サンラク:絶対にやめろ
ペンシルゴン:まあ君たちは自分で一泊くらい予定作れるでしょ
◇◇◇
「……で、だ。何で麻雀なんだ?」
一泊二日と言っても、オフ会のメインは2日目の日中――未成年を夜遅く1人で帰すわけにはいかない、という至極真っ当な理由――で、1日目は移動と宿泊のみ……とはいかず、何故か俺達は卓を囲んでいた。
「予約した旅館にあるゲームってやりたくならない?」
「そういえば、ペンシルゴン。
ジャラジャラ
「宿泊施設って意味じゃホテルも旅館も一緒でしょー」
「和室もいいですね!」
ジャラジャラ
カッ、コッ、コッ
「っよっと!」
ジャラララン
「くっそー」
「サンラク、諦めて普通に積もうか」
「お前らができるのに俺だけできないのはなんかなぁ」
カッ、コッ、コッ
「……ほっ!」
「っしゃ。できた。」
「まあ1卓やればサンラク君なら慣れるでしょ」
◇◇◇
「
「くそ、俺の字一色小四喜が……」
「サンラクは大役狙いすぎなんだよ」
「流石にそこまで鳴かれたら判るよねぇ」
「そういうお前の役はなんなんだよ」
「今和了ったカッツォくんの役は――立直平和の……うん。ドラ裏ドラなし」
「点数は――分かる人いる?」
「はいっ!さっぱりです!」
返事が元気なのは良いことだ秋津茜。
当然俺も分からないが……ペンシルゴンとカッツォも首を振っている。ダメか。
「全滅だな。」
「でも支払い無しは面白く無いよねぇ」
「あ、これどう?画像認識で自動計算するアプリだって」
「「採用」」「すごいですね!」
◇◇◇
「また小四喜狙い?」
「字牌が来てないだけだ」
「ホントかなぁ……それチーね」
――――――
「カッツォくん、また平和?堅実だねぇ」
「こう言うのは和了ったもん勝ちでしょ」
「じゃあ私の勝ちだね。それロン」
――――
「サンラクくん、今切る牌間違えたでしょ」
「言いたいだけだろそれ」
「間違いない」
「なにおうー?!」
――
「……ねえサンラク」
「……俺もそう思ってる」
「「ペンシルゴンお前なにした?」」
気付けば俺とカッツォは風前の灯。一方ペンシルゴンは単独トップ。
「なんのことかなぁ?」
とは言えリアルでイカサマをできるような技量があるとは思えない。
「私はなにもしてないよ」
「「……」」
まあ、証拠もないしリアルの麻雀で殴りあいするわけにもいかない。今はこの卓を終わらせよう。
「あ、すみません!」
「どうした秋津茜」
「なんでしたっけ、あの……きゅうじゅうきゅうはい?」
「九種九牌ね、ってことは流局かな。一応牌見せて貰っていい?」
「はい。これです」
パタリ
「……」
「……」
「……」
「「「国士無双じゃん」」」
「え?なんですか?コクシ……?」
それも13面待ち、いまは南4局だから親は……
「……親なら最初は14枚だから、1枚足りないな」
「……あ、ホントですね!今引きます!」
秋津茜のか細い腕が牌の山へ向かう。
全員が固唾を飲んで見守る中、引いたのは……
「国士無双」
「13面待ち」
「天和」
「えっと……これは……?」
「計算するまでもないな」
「そうだね」
「え?え?」
「優勝!秋津茜!」
「え!やりました?!やりました!」
「……何かあったの?」
「国士無双13面待ち天和」
「え?それってものすごいことなんじゃ……」
「「……?」」
ルストとモルドは初心者なのでなんのことやら、といった様子だが、流石玲さん。こちらにも精通していたか。
京極は……と視線を向けるとあんぐりとお手本のような驚き顔だ。そうだ、どうだすごいだろう。
「なんでサンラクがどや顔なのさ」
「いやまあ実物を見れただけでも凄い運良いとは思うけどね……」
「れ……
「これから東4局です」
「ルストと僕はサイガ-
『ルール知らんやつが悪い』方針で各々ルール確認してたこっちとはえらい違いだな。外道共のノリに巻き込んで悪かったな秋津茜。
点数は……全員似たようなところか。
「キリもいいしこれ終わったらメンバー交代かな」
まだやるつもりか……と言いたいところだが、時間も早いし、正直玲さんとも一度囲んでみたい。
「……分かった」
「じゃあこの局で最後だね。まあ見ててよ」
しかし、いつも会ってる玲さんはともかく、みんなゲーム内と印象が変わらないな。
秋津茜とルストは見た目もほとんどシャンフロアバターと同じだし、モルドと京極も雰囲気はそのままだ。
――
ルストは分かりやすいくらいの染め手……萬子染めなんだがお前萬子ほとんど握ってなかったよな?
対してモルドは七対子……と言うより回しかたを見るに元は四暗刻狙いか?いや、断么九対々和から牌が来ないから七対子にシフトしたのか。
玲さんは……これまさか四槓子狙い?
京極は大役狙いだが……
「……ロン」
「あーっ!やられた!」
「いや京極、もう少しで和了れたって雰囲気出してるとこ悪いが、その緑一色フリテンだからな」
「え?あ、ほんとだ!」
「……私の勝ち」
「少し狙い過ぎちゃいましたね」
「じゃあ2,2で分かれて入れ替えしようか!」
「なら僕はサンラクと。で、ペンシルゴンは茜ちゃんとあっちね」
「ちょっとちょっと?!勝手に決めないでよ!」
「俺もそれでいいぞ。れ……レイ氏とモルドとトレードで」
「はっ、ひゃいっ!」
――
「どう思う?僕はビリ」
「えっと……?」
「俺は3位。賭けてもいい」
「フルーツオレ1本」
「二人とも何の話を……?」
玲さんやモルドには分からん話だよ。
「取り敢えず半荘でいいか。ルールは分かったかモルド?」
「大丈夫です」
◆◆◆
「ルストちゃんホント赤好きだよね~」
「……」
「ルストちゃん?」
「……ロン」
――――
「茜ちゃんは今回は鳴かないのかな?」
「はい!すごく今いい感じなので!」
「そ、そう……」
「あっ、これ自摸だと思います!」
――
「京極ちゃん?大役狙うのは良いけど和了らなきゃ意味ないよ?」
「今回は和了るんだよ!」
「あ、それポンね」
◇◇◇
「喰らえっ!小三元!」
「大三元じゃない?!」
「お前が序盤
――――
「つ、ツモです」
「断么九か、堅実にいくねレイ氏」
「……まってサンラク、これ、ドラ3だよ」
――
「またピンフか?プロゲーマー」
「和了ったもん勝ちだよ」
「すみません、ロンです……えっと、対々和?」
「「いやそれ「三暗刻」」ですね」
◇◇◇
「くそ、なんで買ったのに奢らなきゃいけないんだ」
「さんきゅー。そら賭けの内容は「ペンシルゴンが何位になるか」だからな」
「あれそういうことだったんだ」
流石にロマンを求めすぎたな。まさかドベになるとは……やっぱり乱数はクソだな。
「確率のせいにするから勝てないんだよサンラク」
「しれっと心を読むな。配牌は結局のところ運だろ」
「で、なんで3位って分かったのさ」
「そらあれだよ」
「……カッツォさんもビリ予想でしたけど、さっきの卓では2位じゃありませんでした?」
玲さんとモルドは不思議そうだな。
「さっきの卓はね、ペンシルゴンが会話で捨て牌をコントロールしてたんだよ」
カッツォの言うとおり、だと俺たちは考えている。
「途中から煽り始めたと思ったら調子が上がったからなアイツ。まず間違いないだろ。」
「だから茜さんとペアだったんですね」
「なになに~?
「お前の話だよペンシルゴン」
「ははは。茜ちゃんは誘導してもツモ和了りするし、ルストちゃんは頑なでねぇ、全然だったよ」
1位秋津茜、2位ルスト、3位がこいつで、ドベ引いたのは京極だ。上位2人に通用しない分、京極で遊んだなコイツ。負けたのにイキイキしてやがる。
「もう一度シャッフルするのも悪くないんだけどねぇ。メインは明日だし今日は早めに寝よっか。ね、みんな?」
◇◇◇
……喉が乾いた。
携帯端末を見れば時刻は0時。確か麻雀卓の前に自販機あったな。
「あれ、玲さん」
「りゃっ、らくろ……うくん、どうしたんれすか?」
「なんか目が醒めちゃって、飲み物をね……」
「そうでひたか」
こうして自販機の前で会ったってことは玲さんも同じだろう。
「まあ折角だしあっちで飲みながら少し話す?」
「お、お願いします!」
「ココアで良かった?」
「ひゃい!」
談話室に座り、温泉浴衣姿の玲さんに1本を渡す。
「そういえば」
「……?」
「ああいや、一緒にリニアに乗るのこれで3回目なんだなぁと思ってさ」
「……私としては今後とも……」
よく聞こえなかったが、ここで「ん?今何か言った?」と訊くとタイミング次第でピザルート確定なんだよな。
「何か言った?」
「いっ、いえ!そ、そういえばびっくりしましたよね!降りるとき!」
「あー。あれはびっくりしたな」
まさかリニアの改札前でばったり秋津茜と会うとは思わなかった。
あっちは全く気付いてなかったが、アバターと同じ――いや、素顔とほとんど同じアバター、と言うべきか――なのですぐに分かってしまった。
「玲さんが機転利かせて声を掛けてくれてホント良かった。あのままだと迷子だったな」
「茜さん、だいぶキョロキョロしてましたから……」
「迷子と言えば、その後のルスモルも凄かったな」
ルストが先導する後ろでその二回りは大きいモルドが道を訂正してる様は中々だった。
「あのお二人は迷子にはならないかと……」
玲さんの言うとおり、どっちも立体把握能力はネフホロからしても明らかだし、迷子とは違うか。傍目からは迷ってるようにしか見えなかったが。
おそらく、ルストは感覚で道を選ぶ――そして8割方正解する――タイプで、モルドは地図を読むタイプ……いや、違うな。「ルストの道」が合っているか地図で裏取りしているんだろう。
「まあ2人1組ってだけでアドだしな」
「私たちも、その、ペ……
「実際、玲さんがいて良かったよ」
「ひょえっ」
「1人遭難してただろうし」
「あ、あー……」
いくら初めて来る場所だとしても、駅を出ていきなり左右を間違えるのはどうかと思うぞ京極。玲さんが電話番号を知らなかったら今頃どこにいたことやら。
「りゅ……
「ペンシルゴンも言ってたけど全国常連なんだっけ?」
リアルじゃ流石に勝てないだろうなぁ。
そもそも幕末は天誅であって剣道でも剣術でもない。
「最近は特に……搦め手、といいますか、虚を突いた一撃にも強くなったそうで、関西の大会では孤高の域とか」
天誅は剣道だったらしい。
「玲さんも柔道、やってるんだっけ?」
「いえ、私のは護身術で大会とかはあまり……」
「やっぱりリアルでやってる人は、フルダイブでも動きが違うんだよな。まあ、だからと言って強いとは限らないんだけど」
「……というと?」
「ほら、ゲームだと『現実離れした動き』もできるわけでさ、そういうのは」
「現実でスポーツをしてる人からすると死角になる、と」
「そ。逆にリアルの引っ張られて『ゲームらしい動き』ができないこともある」
「動きが読みやすくなるわけですね」
ただまあ、正しい動きや運びを
「……あ、あのっ」
「少し肌寒いです……よね?」
「ん?、まあ言われて見れば……」
軽く暖房が入っているとはいえ、夜間だしお互い浴衣だもんな。
ココアももう無いし、ここらで御開きに……
「あ、あちらに、そのっ、あし、足湯があるので、どう……ですかっ?!」
「ほ、ほら、寝る前は少し体を゜っ、暖めた方が!いいですし?!」
「まあ、玲さんがいいなら」
玲さんがバグるタイミングがよく分からないよ。
浴衣の裾を捲って足湯に浸かると、程よい温水が足を包み込む。
「あー……確かにこれは気持ちいい……」
というかこの旅館、足湯なんてあったんだな。さっき入ったときは全然気が付かなかった。
「玲さんも早く入りなよ」
「は、はい」
玲さんの浴衣の裾から白い生足が覗く。
程よい筋肉があり、それでいてすらっとした、運動のできる美脚という感じだ。
ゲームのパケ絵のヒロインなんかがよくこんな足をしてることがある――ゲーム内ではポリゴンが荒かったり、テクスチャがバグってたり、パケ絵詐欺系ゲームってのもよく聞く話だが。尤も、良作でもたまにパケ詐欺だけでクソゲースレに凸ってくるプレイヤーもいるから、パケ絵と違う=クソゲーというのは流石に横暴か。
「
「……?」
「ああ、ごめん。なんでもないよ。脚綺麗だなっ……って……」
あ、
「え、と……そ、ありゃ、ありがとう……ござ゜いまそゅ!」
「……こちらこそ……?」
玲さんが
今回ばかりは間違いなく俺が悪い。心当たりしかない。
セクハラ発言とか、鉛筆に知られたら間違いなく処刑よりも悲惨な末路になるやつだ。むしろバグ程度で済んだことに感謝するべきだ。
「ありがとう、玲さん」
「ぴぇあ?!」
「隣にいるのが玲さんで良かった」
「くひゅっ」
「わ、わ、わたっ、
バグると滑舌が狂うの、流石に慣れてきたけどやっぱり
……そういえば今深夜だったな。目が覚めたのが大体0時で、今は大体……
……
……
携帯見れば分かるじゃん。
「……?どうしたんれす?」
「いや、今何時かなって……あっ」
やべっ、携帯がっっっ
ビシャーン
と
「楽郎くん、大丈夫ですか?!」
「あー……うん。大丈夫……かな」
湯船に落ちそうになった携帯を救出するつもりが、自分が湯船に落ちてしまった。いや、携帯は辛うじて手の中だ。
「あー、玲さん、悪いんだけど携帯貰ってくれない?」
「あっ、はい!そのままだと起き上がれないですよね!」
湯船にうつ伏せのまま、玲さんに携帯を手渡し、ようやく姿勢を正す余裕ができる。
「ありがとう玲さん……だいぶ濡れたな」
「……」
あーあー。髪も浴衣もびしょ濡れだ。
「……」
というか浴衣に至っては透けてるな。
「玲さん、申し訳ないけど今日はもうお開きで」
「……」
「玲さん?」
「ひゃい!」
「着替えは部屋だし今日はもうお開きってことで」
「も、もちろん!風邪、引いちゃいますもんね!もう夜も遅いですし、ねまひょう!」
「うん。それじゃまた、明日」
「はい!おやすみなさい!お大事に!」
…………
……
今日はもうだめだな。早く寝よう。
布団の中、明日の予定を確認しようとして……気付いた。
「……携帯端末玲さんに渡したままだ。」
「まあ明日貰えばいいか。」
[RESULT]
・一緒に外出 - CLEAR!
・夜中の会瀬 - CLEAR!
・足湯で混浴 - CLEAR!
・浴衣スチル NEW!
・浴衣スチル(透け) NEW!
・楽郎の携帯端末 NEW!
なお親の天和に13面待ちが付くかは……ローカルルールで変わったりするらしい。ので今回はあり。というか旅狼メンツはそこまで詳しくないのでフィーリングでやってます。