神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

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申し訳ありません、暫く休刊する事になるかも知れません。最近ゲームにハマってしまいまして……………、ちっともストック出来ねぇ。





第十話 巣立ちの時

神聖ミリシアル帝国

カルトアルパス海軍航空基地

 

「急げー!!敵が来るぞ!!」

 

「何でもいいから航空機を全部あげろ、急げ!!」

 

カルトアルパス基地では蜂の巣をつついたかの様な大騒ぎとなっていた。基地防空隊がもし敵機が来襲してきて、離陸途中の航空機を攻撃しないよう態勢を整える。

 

「整備が完了次第戦闘機に飛び乗れ!!誰が誰の機体か関係ねぇ!!」

 

整備兵達が必死になって発進準備を整え、誰それの区別なくパイロット達が飛び乗っていた。本来軍用機は別機種になれば訓練を変更するのだが、そんな事を気にしている余裕は彼等には無かったのである。旧式機や新型機の区別無く、天の浮舟はカルトアルパスを飛び去って行った。

 

「私に何か出来る事は?!」

 

ジェシカは走り去る整備兵の一団を呼び止め、自分は何が出来るかを伺った。整備兵のリーダーは一言「ついてこい」とだけ言い、格納庫へと走って行く。ジェシカは慌てて彼等の後を付いていった。

 

「やはりな、まだコイツは上がって居なかったか。」

 

「あの…………、これは?」

 

彼等の目の前に有ったのは、白いキャンバスを被せられた機体であった。外見はおおよそ判断付かないが、『エルペシオ3』より鋭い機首のシルエットが浮き出していた。そして整備兵連中は強引にキャンバスを取り払い、格納庫に一機の機体が正体を現した。

 

「こ、これは…………!!」

 

その機体は『エルペシオ3』よりも遥かに先進的なキャノピーと鋭い機首、航空力学の進歩により少ない開口部で済んだエアインテーク、遠目からでも特徴的な逆ガルウィングとH字尾翼を持っていた。

 

「あぁ、コイツは整備訓練用として調整が行われた機体だが、燃料さえ入れれば動けるだろう。」

 

「で、でもまさかこの機体が有るだなんて!!」

 

ジェシカの目の前で姿を現したのは、神聖ミリシアル帝国の最新鋭汎用機として作られた。彼女が乗っていた『ジグラント2』を改良し、さらに汎用性を高めた戦闘機『ジグラント3』であった。最新鋭すぎて空母艦隊に優先して配備されている機体だが、近々基地航空隊も運用するだろうとジェシカはマグドラ群島の基地で小耳に挟んでいた。まさかこのカルトアルパスで、しかもこの様な出会いをするとは全く思わなかった。現実は数奇な物である。

 

「よしお前ら、さっさと離陸準備始めるぞ!!燃料と魔力の充填急げよ!!」

 

「了解!!」

 

彼等はジェシカを放置して、各々自分の役割を果たそうと動き始めた。いまジェシカに出来る事は、何時でも乗り込めるよう待機する事である。

 

「しっかしまぁ、おめぇみてぇな嬢ちゃんまでも、戦闘に投入する事になるとはなぁ。」

 

「は、はぁ……………。」

 

ドワーフ人種の整備兵の一人は、ジェシカに酒を薦めつつ話を振った。彼女は出撃前に飲酒するのはちょっと、と言って断ったが。ドワーフが言うには出撃前のラム酒はミリシアル海軍の伝統らしい、航空隊にはそんな物無いのだがとジェシカは口に出さず心の中で反論した。

 

「発進準備完了!!牽引車に繋げ!!」

 

燃料を大量に搭載した『ジグラント3』が、牽引車に繋がれた。それを受けてジェシカはコックピットへと乗り込んだ。そして彼女は驚く、なんと計器類の配置は『ジグラント2』と殆ど同じだったのである。これは扱いやすさを重視して、研究者達が態々同型に仕立てあげてくれたのである。おまけに今までの『エルペシオ3』を含めた戦訓や運用結果をも結集して、この汎用戦闘機は完成されたのである。ジェシカは未だに古代の遺跡を研究している彼等に、感謝の念を抱くのだった。

 

「敵機直上、急降下!!」

 

「ハッ?!」

 

ジェシカは慌てて後方を見る、するとそこには格納庫へと降下する『シリウス』の機影が見てとれた。中に居た整備兵達が慌てて格納庫外へと逃れようとするが、既に投下された250kg爆弾が降り注ぎ。逃げ遅れて吹き飛んだ。逞しそうなリーダー格の整備兵や、曲がりなりにも自分を気に掛けてくれたドワーフの整備兵は跡形もなく消えてしまった。

 

「クッ!!」

 

ジェシカは涙を堪えて、発進までの最終行程を済ませる。直ぐにでも彼等の仇を取るために、焦らず正確に計器を弄って行く。魔導ジェットエンジンの音が高まり、それは高出力である事を主張しているかの様である。

 

『ジグラント…………3?発進せよ、繰り返す発進せよ!!』

 

管制塔から発進するように指示が入り、ジェシカはスロットルを全開にした。『ジグラント3』はゆっくりと加速して行き、滑走路の端に近付いた所で機首が持ち上がり始めた。そして機体は今も攻撃を受けつつあるカルトアルパスへ急ぐ、皆の仇を取るためにミリシアルの民を守る為に。

 

「行っちまったなぁ……………。」

 

「あぁ……………。」

 

奇跡的に生き残った整備兵の一部は、感慨深くジェシカ機を見つめていた。彼等の心有るのは彼女に対しての希望である、自分達は飛び立った彼等彼女等をひたすら待つことしかできないのだ、それが何とももどかしい。彼等が感傷に浸っていると、3機の『ジグラント2』が補給の為に着陸してきた。あれは確かマグドラ群島の航空隊だった筈である。

 

「補給急いでくれ、直ぐにでも発進したい!!」

 

「了解、少し待っててくれよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国

カルトアルパス

 

 

「これが…………、あのカルトアルパスだと言うの…………?」

 

ジェシカの目の前には、悲惨な光景が映っていた。港湾にはひしゃげたクレーンが横たわり、活気に満ち溢れていた街は赤黒く燃え盛る。上空は大火災によって黒く染まり、ここがまるで地獄の底の様に感じられた。

 

「ひ、ひどい………………、あぁ!!」

 

目の前の惨状に気圧されていると、『アンタレス』が逃げ惑う市民達へ機銃掃射を掛けているのを確認した。ジェシカは彼等を救うべく、『アンタレス』の後方へ静かに回り込む。幸い敵機は民間人を相手にした『狩り』に現を抜かしており、ジェシカに全く気付いて居なかった。

 

「お願い……………、当たって!!」

 

ジェシカは主翼に搭載された6門の20mm魔光砲を発射した。発射速度各砲750発/分、初速838m/sで放たれた光弾は、『アンタレス』のコックピットを撃ち抜き中をぐしゃぐしゃにして撃ち落とす。

 

『なっ?!ギルフォードが!!』

 

『後方から新手が来るぞ!!見た事無い機体だ、注意しろ!!』

 

咄嗟の事でグラ・バルカスの戦闘機隊は隊列を乱す。先程戦った『エルペシオ3』よりも整った機体と遭遇し、警戒を増したのだった。

 

『こいつ、嘗めやがってよぉ!!』

 

『お、おい待て!!』

 

「来る!!」

 

先程まで自分達がミリシアルを嘗めてたのだが、そんな事を棚にあげて、『アンタレス』の一機はジェシカ機を追撃した。相当頭に血が上って居るようで、隊長機の話を一切聞かず突出していた。

 

『くそう、コイツちょこまかと!!』

 

「くぅ!!」

 

『アンタレス』の攻撃はパイロットの精神状況が乱れている為か、自慢の20mm機銃が当たらずに居た。それをジェシカは左右へ切り返すようにして回避する。神聖ミリシアル帝国の航空機は元が速度を重視した70年代相当のジェット機の為か、低速旋回や旋回半径こそプロペラ機に劣るもののロール性能が高いのである。

大体のプロペラ機が400km台で切り返しが悪くなるのに対し、ミリシアル戦闘機は500km台でも速度を落とさずに切り返せる。まぁプロペラ機よろしく低速旋回やら大掛かりな旋回をすると、致命的に速度が落ちるのだが。

 

「……………よし、そこ!!」

 

『なっ?!うわあぁぁぁ!!』

 

ジェシカはタイミングを見計らい、垂直急上昇を行った。追尾していた『アンタレス』はジェシカの咄嗟の行動を目で追ったが、前方へ視界を移した時に彼女の行動を理解した。しかしそれは一瞬の事である、目の前には協会の塔が迫っており、『アンタレス』は時速500kmで激突した。

 

 

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国

カルトアルパス地上

 

 

「お、おい!!あれを見ろよ!!」

 

「すげえ、たった一人でグラ・バルカスを翻弄してるぞ!!」

 

地上で対空戦闘を行っていた高射砲部隊の兵士や、逃げ惑っていた街の住民。避難指示を出していた警察官は皆空を見上げてジェシカ機の戦いを目撃していた。たった一人でグラ・バルカスを翻弄している、自分達が出来なかった事をやってのける彼女を見て、高射砲部隊は士気を取り戻し始めた。

 

「あいつ一人に任せたままにするな!!俺達もやってやろうぜ!!」

 

「あの戦闘機は俺達の尻拭いをしてるんだ、このまんまじゃあ恥かくだけだぜ!!いいぜやってやんよぉ!!」

 

彼等は40mm魔光砲を敵機に向ける、目標はジェシカ機を追ってきている敵4機であった。続けて2機も落とされた事から、部隊全員の頭に血が上ったらしく。数で圧倒すれば確実に倒せると踏んでの行動らしい。

 

「ケッ、俺達に目もくれずに追いかけてるぜ。」

 

「まるで女を追っかけ回しているヤツみたいだな、では奴等に教育ちゅう物を教えてやろうかね。」

 

砲手はまずジェシカ機の進行方向先に砲口を向け、彼女が通り過ぎたのを見計らって射撃を開始した。砲弾はジェシカの後ろを通過し弾幕を形成する、すると『アンタレス』は諸に突っ込んで一機が火だるまになった。

 

「へへっ、ざまぁ見ろ!!」

 

「俺達を甘く見るから、こうなるんだ。」

 

砲運用員は敵機撃墜により、手を上げて喜んだ。今まで上手く迎撃出来なかった事に鬱憤を感じていたからである。そして見張り員の急降下爆撃機接近を受けて、砲を捨てて避難するのだった。爆撃機を受けた40mm砲はカラフルな爆発が起こり、砲運用員は戦場に合わない光だと呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国

海軍航空隊

 

「くっ、しつこい…………………。」

 

対空砲で一旦編隊を崩された『アンタレス』は、以外と速く態勢を整えて先程と同じく追撃してきた。彼等が目指すのはジェシカ機の撃墜ただそれだけである。もはや地上にいる民間人や高射砲は有象無象に過ぎない、確実にこの機体を落とすと誓ったのである。

ジェシカの『ジグラント3』は先代の航空機よりエンジンが高出力だが、最大速度は520km/hと毛が生えた程度の品物である。次第に『アンタレス』に追い付かれようとした時、彼女等の後方から更に3機の影が突っ込んできた。

 

「たくっ、お前は本当に世話が焼ける奴だな。」

 

「そっ、その声は!!」

 

魔信から聞き慣れた声がしたと思ったその時、後ろの『アンタレス』に突如光弾が降り注いだ。そしてその数秒後、ジェシカをしつこく追いかけ回した敵機は爆散か墜落のどちらかの運命をたどるのであった。

 

「よぉ、お待たせ。よく持ちこたえたな。」

 

「ヘンリー、ジョセフ、隊長!!」

 

オメガ率いる小隊が、ジェシカの周りに付いた。彼女の目から涙が溢れ、魔信から嗚咽が漏れだした事により全員が苦笑をこぼした。一人で戦ってた癖にコイツは根本的には変わら無いと、口には出さないが全員が抱いた感想であった。

そして神聖ミリシアル帝国初の本土空襲、カルトアルパス空襲は数時間後に終結するのであった。多くの資料は語らないが、そこには確かに国と人を守ろうとした多くの兵士達の物語が、確かに有った事を個人個人の日誌は物語るのであった。




数多の命を海の底へ叩き込んだ一日は、グラ・バルカスの圧倒的な勝利によって終わった。この戦いで奮戦した各々はバラバラに再配置され、また新たな戦いが幕開けようとする。

次回、大海戦の前日。お楽しみに!!

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