神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

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これからは更新速度とかを、落とそうかと考えております。一応完結まで持っていくには、これしか無いかと思いまして。お気に入り登録して下さった方には申し訳ない。


第十一話 大海戦の前日

神聖ミリシアル帝国

帝都ルーンポリス 海軍作戦本部

 

マグドラ沖海戦、フォーク海峡海戦、カルトアルパス空襲と言うミリシアル史上初の本格的海戦、並びに本土空襲が終わった後日。早速現場指揮官へ対する査問会が開かれた。

 

まず海軍からは、マグドラ沖海戦を生き延びた第零式魔導艦隊の指揮官クラスであるジェームズ・マクスウェル准将と、エレイン・ペンウッド少将が召喚される手筈であったが。エレイン少将は海戦による負傷により療養中であり、査問会には出席出来なかった。

 

ジェームズ准将に対する査問会の対応は、艦隊戦における不備は無かったかとの事である。事前の砲戦における第零艦隊の戦果は曲がりなりにも認められている、これは海軍上層部が殆ど同戦力である戦艦2、重巡3、軽巡2、駆逐艦5に負けたとは思いたくなかっただけなのではあるが。何しろ第零艦隊は砲撃戦の訓練では負け無しなのだ、ミリシアルが砲撃戦で西の蛮族に殺られたとは考えたくも無いだろう。

 

そこで焦点に当たったのが、その後の航空戦における対応であった。海軍上層部はミスリル級戦艦の喪失原因は、護衛艦が職務を遂行出来なかったのだと見ていたのである。護衛を司る小型艦部隊の職務怠慢により、戦艦部隊の対空処理能力が飽和したのでないかと追求したのだ。

 

「てめぇら、ふざけてんのか?!」

 

軍判事の物言いはジェームズの逆鱗を触れた、彼にとってそれは部下に対する侮辱でしかなかったからだ。確かに自分達は職務を遂行できず、『コールブラント』はおろか配下の小型艦全てを海の藻屑にした。そこは確かに認められる、誰が見ても失点でしかない。だがしかし自分達はプロである、海軍軍人である以上プロを意識して戦ったのだ。今までの軍務上、彼等は一切手を抜く事は無かったのだ。戦艦部隊や航空部隊に蔑まれようとも、仕事の努力だけは譲れなかった。

 

「はぁ、これだから小型艦乗りは野蛮なんだ…………」

 

「なんだとテメェ?もういっぺん言ってみろ!!」

 

軍判事や裁判官は、怒り狂ったジェームズに対して過激で口の悪い奴だと評を付けた。自分の不手際を認めず、そして事実を言われたら怒鳴り散らして裁判を目茶苦茶にする海軍軍人してはどうなのかと感想を抱くのだった。

 

「軍判事、裁判官。口が過ぎるぞ」

 

「し、しかし司令長官」

 

軍判事達や裁判官達に思わず苦言を漏らす声が聞こえた。それは軍事裁判所で最も高い所に座っている男であった。西部方面艦隊を仕切り、肩に大将を示す階級章が輝いているクリング・コクラン海軍大将であった。

 

「それで、何があったと言うのかね?ジェームズ准将」

 

ジェームズの言葉を真摯に聞くのは、クリングと東部方面艦隊司令長官のみであった。

そして査問会は続き、ジェームズに下された判決は一年間の謹慎であった。小型艦部隊から下ろされる彼の心境は、恐らく誰も理解できないだろう。

なお療養中のエレインに対する処罰はどうするかとの話になったが、国防省アグラが「処罰なんか加えたら皇帝にキレられるだけだぞ」と発言し軍判事達を黙らせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国

帝都中央病院

 

「怪我の具合が良くなって安心したよ、トーマス」

 

「あぁすまねぇ、心配かけちまったな」

 

病院の一室にて、静かに語らう者が居た。戦艦『ガラティーン』の幹部であったアーサーとトーマスである。彼等はお互いが無事に生きて帰れた事を喜び合っていた。アーサーとトーマスはマグドラ沖の洋上で同じ様に脱出した者達と一緒に、救援の為に付近から急行してきた豪華客船『クイーン・ミリシアル5世』に救助されたのだった。排水量81961t、収容人数15000人(本来は2139人)のこの豪華客船は、外国への圧力の為にカルトアルパスへ向かって居たのだが、海軍本部からの要請を受けてやって来てくれたのだった。

 

「完治まで後どれくらいだ?」

 

「案外早いもんさ、一ヶ月後って所かね」

 

トーマスは脱出の寸前に転倒してしまい、片腕と片足を骨折して動けなくなってしまったのだ。幸い近くに機関科の下士官が居たために、担がれて退艦する事ができた。『クイーン・ミリシアル5世』で再開した時に、エミリーがトーマスに抱きついて泣き出して居たのをアーサーは今も覚えいる。

 

「それより聞いたぜ、あと六ヶ月したら艦隊出撃なんだってな?」

 

「あぁ、よく知ってるな?」

 

「顔が広いからな俺は。で、新しく配属された艦隊には慣れたか?」

 

アーサーは第零艦隊が解散されて数ヶ月後、西部方面艦隊に所属する第2魔導艦隊へと配属された。他の数々の将兵達もバラバラになって魔導艦隊や地方隊へと配置替えがなされている。箝口令を敷かれてと言うおまけ付きではあったが。

これは何故第零艦隊が全滅したかとかを、外に出さない為の処置であった。公式的には第零艦隊はグラ・バルカスの奇襲によって大損害を受けている程度の情報しかない。

 

「まぁな、白い目で見られる事もな」

 

「ハハッ、俺たちゃ敗残兵だもんなぁ」

 

自嘲気味にトーマスは笑った、それにつられてアーサーも笑い始める。もう色々と虚しいのだ、最強であるプライドはズタズタにされ、これから一生恥を晒しながら海軍生活を送る羽目になるかも知れない。

 

「箝口令についても、何故機械文明ごときにやられたのか白状する気の無い臆病者だってさ」

 

「へ、臆病者もんねぇ」

 

元第零艦隊所属の兵士達への風当たりは強かった。世界最強、選ばれた者だけが参加出来る新鋭艦隊との称号は、畏怖だけでなく嫉妬も高い名前だった。ここぞとばかりにお前は第零艦隊の名を汚しただのと、表面と本心が隔離している中傷が浴びせられた。

一体自分達は何処で失敗したのだろう?あの海戦が無ければとネガティブに考えてしまう。彼等の精神状況は酷い事になっているだろう。

 

「……………アーサー、死ぬなよ?」

 

「俺は死なんさ、絶対に死なん」

 

最後に一つ、トーマスは親友の無事を願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国

帝都ルーンポリス 港湾

 

六ヶ月後、中央歴1643年1月18日にて、ルーンポリスの港は何時もより大規模な賑わいが起こっていた。次々と港に押し寄せる観衆達、彼等が見るのは108隻にも及ぶ大艦隊である。

 

「わー、凄い!!港を船が埋め尽くしているよ!!」

 

「あれはミスリル級戦艦だ!!かっこいいなぁ~」

 

何時も空き地や公園で遊んでいる子供達も、艦隊の勇姿を見ようと港へ集まってきていた。未だに強力な戦力を保持する戦艦、次世代の主力艦と目されている航空母艦、オールラウンダーが売りの巡洋艦、女王達の従者たる小型艦。子供達にとっては本屋の雑誌でしか見れない光景が、生で目の前に広がっていた。

 

「凄い人気ですなぁ、総司令官」

 

「あぁ、そうだな……」

 

この喧騒を少し離れた所で見ていたのは、第一魔導艦隊の司令長官兼魔導連合艦隊司令長官のレッタル・カウラン中将であった。彼は副官の発言に空返事をしつつ、つい一ヶ月前の西部方面艦隊の作戦会議の事を思い出していた。

 

「これよりブリーフィングを行います」

 

陰湿そうな西部方面艦隊の参謀長たる少将が、始まりの合図を告げる。会議室にはそうそうたるメンバーが集まっていた。

まず上座に座るは、西部方面艦隊司令長官のクリング・コクラン大将、その次に座るは第一魔導艦隊司令長官のレッタル、そして第二魔導艦隊司令長官のジョージ・ウェルズリー中将と、第三魔導艦隊司令長官のロバート・ヒル中将であった。

 

「今回の連合艦隊の司令長官はレッタル・カウラン中将とする」

 

「連合艦隊司令長官の任、拝命致しました。国王の為に勇戦する事を誓います」

 

実に三人の中将が肩を揃えていたし、三人とも海軍学院の同期だった。その中で最も昇進が早かったレッタルに連合艦隊の指揮権が委ねられた。100隻もの大艦隊、数多の海軍軍人が憧れる立場なのだが、現実はそう良い立場ではない。一個艦隊の人員だけで18000人、三艦隊の合計で54000人もの人命預かる事となるのだ。彼の一言でこの54000人の内、何人かが家に帰れるかを決定付ける事になる。

レッタルはその責任の重さに冷や汗をかき、胃を痛めるのだった。

 

「今回の作戦の説明を行わせていきます、先ずは目の前のスクリーンにご注目を」

 

レッタルのストレスを無視して、会議は進行された。部屋の中が薄くなり、スクリーンに文字や海図がくっきりと浮かび上がる。

戦法は至って単純である。第一、第二文明圏と南洋艦隊(地方艦隊の正式名称)の混成艦隊たる世界連合艦隊によってグラ・バルカス帝国を誘引し、本命たる魔導連合艦隊の艦載機336機と第二文明圏連合竜騎士団の500騎。計836機で敵艦隊を擊滅すると言う物であった。

 

「なぁレッタル、どう思う?第零艦隊を全滅させた相手だが」

 

「どうと言われてもなぁ、俺にはちと判断しかねるな」

 

隣に座っていたジョージに話を振られ、レッタルは名言しかねたのだった。第零艦隊は録なエアカバーが居ない中を200機になぶられたのだ、その前にある程度の損害を受けてではあるが。

水中攻撃を受けたとの噂があったが、恐らくそれは無いだろう。大体どうやって水中を進む兵器が作れると言うのだろうか?自分は全く理解が出来ないとレッタルは考える。

 

「水中攻撃はどうだ?多数目撃されてるようだが」

 

「まさか、海魔と見間違えたんじゃないか?」

 

隣から割り込んできたロバートの発言に、レッタルは全くだと彼と同じ意見を持った。第零艦隊の生き残り自体は多数居たし。水中攻撃、すなわち魚雷の攻撃も報告が有ったのだが。上層部は水中魚と間違えたのだろう、それが偶々爆弾の誘爆と被ったと結論付けた。これは異世界の大型魚や、海魔と言った生物が居たゆえの誤解だと、後の研究者は語る。

常識外れ(ただし異世界基準だが)の物は、大体人間は選択肢から外す。常識外れを真に受けて研究したり考慮するのは、天才か狂人かしか居ないだろう。

 

「艦隊は三個艦隊だけなのでしょうか?東部方面艦隊や地方艦隊は動員出来ないのですか?」

 

「それは本気で言ってるのか?第二艦隊作戦参謀」

 

第二艦隊の作戦参謀の質問に対して、参謀長は呆れた声を上げた。書籍によってはクリング大将の三個艦隊で充分との発言は、最悪を想定してないとして非難されているが。その実態はミリシアルの動員戦力が三個艦隊を超えると、本土防衛やシーレーン防衛に影響が出るので行えなかっただけである。

第一、バルチスタ海戦で全力の七個艦隊を投入し、大損害を受けていた場合。ミリシアルは制海権の確保や、その他多数の作戦行動に支障が出ていた可能性が高いのである。

クリング大将はこの事を理解しており、責任の全て(海軍上層部や国防省アグラ長官)を引き受ける積もりだったと最近発見された手紙や部下の新たな証言により判明している。

しかしこのバルチスタ海戦は、提督一人のみならず参加した将兵に対しても悲劇であった海戦である。誰かが悪い誰かが良かっただのと言う不毛な言い争いを止め、その出来事をありのまま受け止めて鎮魂してほしいと、研究者やごく一部(本当にごく一部)ノンフィクション作家は願うのだった。




世界各国の艦隊が終結し、暴虐の限りを尽くすグラ・バルカス帝国を下すために進軍する。
その数488隻、質も量も世界の精鋭を集めた大艦隊である。
その連合艦隊に対して、グラ・バルカスは航空機と言う名の矢を放つのだった。

次回、前哨戦。お楽しみに!!
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