神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

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今回は世界連合艦隊視点の戦いを描いてみます。全部ミリシアル視点です、ムー視点入れたらこの小説の意味無いと思うんだ……………。





第十二話 前哨戦

世界連合艦隊

バルチスタ近海

 

ミリシアル南洋艦隊の13隻、ムー第一機動艦隊の50隻を含む、トルキア王国、アガルタ法国、ギリスエイラ公国、中央法王国、マギカライヒ、ニグラート連合、パミール王国の総計488隻にも及ぶ大艦隊が、ニグラート連合バルチスタ沖へと轡を揃えて進行していた。

 

「とてつもない艦隊だな、総計488隻とはなぁ…………。」

 

「まぁ傍目から見れば、団子みたいになってるがな。」

 

ニグラート連合から飛び立った偵察の竜騎士より、付近にグラ・バルカス帝国の艦隊を補足したとの事で、世界連合艦隊は敵を求めて前進していたのである。

488隻、数だけならば凄まじい大艦隊だが、内実はそう勇ましいものでは無い。これは世界各国の大きな技術格差が原因であり、列強だろうが11ヶ国会議参加国だろうが関係が無いのである。列強ですら戦列艦、正確には装甲を張った魔導艦なので地球の戦列艦よりはマシなのだが……………。

 

「第二文明圏であるムーですら、我らミリシアルには遠く及ばないんだよなぁ…………。」

 

「こんなので列強二位なんだぜ?周りが本当にアテになんねぇなぁ…………。」

 

そう愚痴を漏らす、神聖ミリシアル帝国海軍南洋艦隊旗艦『ベガルタ』の見張り員であった。

いや、お前らも当てになんないじゃんとの批判が有るかもしれないが、ムーの方が当てにならないのは事実である。何しろ旧式戦艦と成り下がったマーキュリー級戦艦『ベガルタ』ですら、ムー海軍の『ラ・カサミ』より遥かに強力な戦艦なのだ。

 

「旧式戦艦の我が『ベガルタ』ですらムーより強いんだから、意味わかんねぇよ。」

 

「ただ周りより強いと言うだけで、世界最強に匹敵するとは言えないもんなぁ…………。」

 

全長205mの戦艦は、131.7mの『ラ・カサミ』より大きく見えるだろう。主砲もミリシアルのスタンダードである霊式34.3cm連装魔導砲であり、改良によって38.1cm砲と同じ射程34kmとなって、射程13.7kmの30.5cm連装砲よりも射程や威力の面で強力であった。

 

「しかもこの艦は曲がりなりにも戦艦として作られたから、我が国の戦艦の中で二番目に装甲が強いんだよなぁ………。」

 

ゴールド級はマーキュリー級より後に作られていたのだが、速度の為に装甲を削っている所謂巡洋戦艦であっただ。その為マーキュリー級は二番目に装甲が強力な戦艦になってしまった。装甲強化後は305mm装甲に匹敵する強さを誇る………………。

 

「しかし、戦力になるのは俺達だけとは、とても不安だな。」

 

「だが俺達はやり遂げなきゃいけねぇんだよ。」

 

「ふ、副航海長!!」

 

後ろから掛けられた言葉に顔を向けると、そこには『ベガルタ』の航海長であるトーマス・ベイカー海軍『少佐』が仁王立ちをしていた。右目に縦に入った傷が、名誉戦傷で場数を潜った事を思わせる。

彼はかの第零艦隊が全滅し、中央病院に入院したが。傷が完治してそうそう地方艦隊たる南洋艦隊に飛ばされたのだった。恐らく箝口令も含めての処置であったのだが、南洋艦隊も出撃となったので意味が無くなった。

 

「そうそう、みんな全力を尽くしなさい。」

 

「レーダー長まで居られましたか!!」

 

トーマスの後ろから現れたのは、同じく南洋艦隊に飛ばされたエミリー・コリンズ海軍少佐である。実は彼女、異動してそうそう、天敵であるトーマスと遭遇し己の不運を嘆いていた。切っても切れぬ腐れ縁でも有るのだろうか、この二人には。

 

「先程ムー艦隊から報告が入ったわ。偵察に出ていた航空隊が、敵の偵察機と遭遇したとか。」

 

「な、なんと!!」

 

エミリーの発言により、周囲にざわめきが起こる。敵は恐らく近いところまで来ている、すぐにでも海戦が起こる可能性が高いと言うことだ。

もしらすると、我が世界連合艦隊が海戦の火蓋を切るかもしれない。無線封止中の魔導連合艦隊の様子は解らないが、距離的にまだ会敵していない可能性がある。

 

「よしテメェら、敵の動向一つ見逃すなよ。お前らの働きが『ベガルタ』の運命を左右すると知れ!!」

 

「「おう!!」」

 

見張り員へ軽く訓示をし、トーマスとエミリーは艦橋に上がる。その途中エミリーが不安そうな声で、トーマスに話しかけた。

 

「で、どう思う?奴等また水中攻撃してくるんじゃないの?」

 

「ぜってぇするよなぁ、あれが俺の記憶違いじゃなかったらな。」

 

「一応見張り員には通じたとは思うけど、先入観や何やらで報告が遅れたらどうなることやら…………。」

 

そして二人は大きな溜め息をついた、此処まで気が合うと実は仲がいいのでは?と思った者が何人か居たが、そんなことは言わぬが仏との事。余計な事は言わない方が良いのだ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

 

「ムー航空隊、敵偵察機の迎撃に失敗!!」

 

「魔力探知レーダーに感、37NM(約70km)に航空機一機を確認!!」

 

ムーの迎撃が失敗した報告が『ベガルタ』に入ったが、艦橋にいる全員の心境は「やっぱりな」と大して信用していない物であった。艦長のレルジェン・パウンド大佐に至っては、そうかと呟いて直ぐ興味を失っている位である。

彼が今考えている事は偵察機を落とすことでも海戦に勝つことでもなく、どうやって自艦と乗組員を生き延びさせるかであった。

 

「やっぱ駄目でしたなぁ……………。」

 

「アンタ、マグドラ海戦でも同じ事言ってたよね?」

 

「だって俺航空隊なんて信用してねぇし。」

 

「どんだけ航空隊嫌いなのよアンタ……………。」

 

副航海長とレーダー長の何気ない会話が聞こえ、レルジェンは二人に興味を持った。そう言えば彼等は第零艦隊の生き残りだった筈、何か有益な情報でも持ってるかもしれない。報告書には書いていない細かい所やら何やら…………。

 

「所で君達、ちょっといいかな?」

 

「ハッ!!何でしょうか艦長!!」

 

「いやなに、少し君達の知見を聞いておこうと思ってなぁ……………。」

 

この時彼が話半分でトーマス達の話を聞いていた事が、後に自分達の運命を変えるとは思わなかっただろう。そして艦隊は数分後、上空に偵察機を確認した。南洋艦隊が所属する戦艦3隻、巡洋艦4隻、小型艦6隻がたった一機の偵察機へ向かって弾幕を形成する。

相変わらず砲弾の炸裂は非常に綺麗で、真っ直ぐ伸びる青白い光は幻想的なのだが、全く効果が無いのも相変わらずであった。偵察機は艦隊上空を暫く旋回した後、悠々と来た方向をそのまま帰って言った。

まぁ実際は

 

「オイオイ何で派手な対空砲火だ、まるで生きた心地がしねぇよ。」

 

「さっさと無線で通報して離脱しましょう、まぐれ弾で落ちるのは勘弁ですから。」

 

と一定の評価をグラ・バルカス帝国のパイロットは評価したのだが、戦時中はこう言う回想は味方の士気を下げるとして当然ながら検閲されていた。戦後になってこの海戦に参加したパイロットが、マスメディアの前で発言した。

 

「ハァ…………、ダメだこりゃ。」

 

「まんま弾の無駄使いになっちまったねぇ…………。」

 

ミリシアルから見て見事なまでに予測された通りになり、思わず誰かが溜め息を付いた。あぁ終わったな、あと数時間すれば百機ものハゲタカ共がやって来るんだなぁと、皆諦めた気持ちで目の前の任務に集中し始めるのだった。

 

「全艦戦闘配置を下令せよ、私達は私達なりの職務を果たそう。」

 

場の雰囲気を変えるために司令長官が号令したが、皆の顔は暗いままか何処か呆れた様な顔である。士気は壊滅的に低いと言っても良い。大体世界連合艦隊は魔導連合艦隊の囮なのである、誰かがそう言ったり命令した訳では無いのだが。出撃前からそんな噂が立っており、ミリシアル南洋艦隊だけでなく各国の艦隊にも囮だと自覚している者が多数いた。

実はこれはグラ・バルカス帝国が流した噂であった。かの帝国は世界的に離反工作を行っており、世界連合の結束を崩すべく既にスパイを放っていたのである。誰かが大きな声で発言した内容が、多数に伝搬し疑心暗鬼に陥れる。古代からよく使われていた手法であり、中々対応する事が難しい方法だ。

 

 

 

そしてその数分後

 

戦艦『ベガルタ』の艦橋には、戦況報告が絶え間なく入っていた。全て味方の不利を呼び掛ける物しかないが。世界連合のエアカバーは秒刻みで崩壊して行き、全く当てにならないのがよく解った。何が列強だ、何が文明圏だ、ただ周りより少し賢いだけの奴等がと、ミリシアルの全乗組員は連合艦隊に恨み節をぶつける。

 

「我々はやはり囮だったな。」

 

「何を今更、最初からわかっていたではありませんか。」

 

レルジェンの呟きをトーマスは呆れた口調で返答した。第零艦隊を潰した奴等が相手なのだ、連合艦隊が高価な弾除け位ミリシアル全海兵が暗黙の内に解りあっていた癖に。何を何回も言ってるんだこの艦長はと、トーマスは口に出さないがそう思っていた。

 

「我々は生き残れるかね?副航海長。」

 

「数だけは多いですからなぁ。より攻撃しやすい各国艦隊へ目を向けてくれれば、15分ほどで数だけは多い連合竜騎士団が加勢します。170騎でも加勢してくれれば、最初の一撃は何とか耐えれるでしょうなぁ。」

 

「そう『数だけは』を強調せんでくれ、心臓に悪い。」

 

仕方ねえだろ、本当に数しかねぇんだからと、心の中で毒付くトーマスであった。何が楽しくって、世界連合のお守りなんかやらなきゃならんのだ。このままじゃ全員犬死に確定だなと予想を立て、溜め息を付きたくなった。

 

「敵機来襲!!12時方向上空4000mから来ます!!」

 

見張り員の上ずった声が伝声管から響き、魔砲長が対空戦闘の指示を飛ばした。先程から戦闘配置を解いていないので、ミリシアル艦隊は直ぐ様対空戦闘を開始する事が出来た。

 

「クソッ、なんて数だ。敵さん本気だな!!」

 

多数の砲弾がグラ・バルカスの第一次攻撃隊へと向かうが、100機もの大群の前では児戯に過ぎなく。上空は彼等が乱舞するパレードと化した。その内の一機が連合艦隊に目もくれずに『ベガルタ』へと突入した。

 

「敵機が一機、我が艦に突入して来ます!!」

 

「全対空砲火、敵機に集中しろ!!何としてでも叩き落とせ!!」

 

「とーりかーじ一杯い!!急げ!!」

 

魔砲長とトーマスが慌てて対応するが、迎撃も回避運動なんて意味が無いと言うかのように急降下爆撃機『シリアス』は『ベガルタ』へと迫る。

 

「駄目です!!間に合いません!!」

 

「総員衝撃に備え!!」

 

レルジェンが叫び、艦橋にいる全てのスタッフが身近な物に捕まった。ヒュルルルと言う飛翔音が近付いてき、10秒、20秒が永遠の様に感じられる。何時まで経っても直撃しないと思ってしまい、気を抜いた時に船体が激しく揺さぶられ、捕まってなかった物は床を転げ回った。

 

「旗艦『ベガルタ』が被弾!!『ベガルタ』が被弾したぞ!!」

 

『ベガルタ』が被弾した光景は、この海域に居た全ての艦艇から確認された。世界最強の帝国が保有する戦艦が大炎上、それは他の文明圏が絶対に勝てない事をハッキリと見せ付けているかのようである。しかし『ベガルタ』が松明と化したのは始まりに過ぎない。ミリシアル帝国の主力たる魔導連合艦隊がグラ・バルカスの背後を取り、敵をその空飛ぶ戦士達の射程に捉えたのだった。




世界連合艦隊がグ帝の猛攻を受けている最中、主力たる魔導連合艦隊は背後から忍び寄っていた。
敵に航空隊を送ったが為に、航空戦力が下がっているグ帝東部方面艦隊に、ミリシアルの猛攻撃が行われる。その結末は……………?

次回、ターキーシュート。お楽しみに!!
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