神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

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本当に済みません、やる事ややりたい事が多すぎて、執筆やストックが増えてません。また休む事になるかもしれないので、申し訳ない。


第十三話 ターキーシュート

魔導連合艦隊 第6偵察飛行隊

グラ・バルカス東部方面艦隊上空

 

高度6000m。ワイバーンやマリンでは確実に上昇できない高度を、一つの機影がゆっくりと飛行していた。

鋭いノーズコーンに、逆ガル翼とH尾翼が有名な『ジグラント3』の偵察機仕様であった。

単座(一人乗り)から複座(二人乗り)へと改造され、ノーズコーンの中身は写真機や魔力探知機、機体後部には各種無線機が搭載されている。

6門も有った20mm機銃は2門の12.7mm機銃へと変更され、後部座席にはポールマウント式の7.7mm機銃が装備されている。

最大速度は560km/h(なお主翼翼端切り取り、機体構造物の肉抜き、その他涙ぐましい軽量化etc…………。実験時の急降下引き起こしの際機体がバラけると言う暗い噂やら…………。)、最新鋭戦闘機の『エルペシオ3』よりも高速で、高度6000mを飛行すればグラ・バルカスの『アンタレス』による迎撃は間に合わないだろう。

無論、ワイバーンやマリンでは辿り着く事すら出来ない、まさに無敵の『写真屋』である。

 

「おいジャック、魔力探知機に反応はあるか?」

 

「えぇ、12時方向15km先に反応が有ります。雲の下へ潜り込めば確認できるでしょう。」

 

機長はジャックと呼ばれたナビゲーター兼機銃手へ確認を取った。この偵察機のナビゲーターは多数の役割をこなす、万能屋の様な者である。レーダー監視や目視による探敵、後部機銃による迎撃や航路計測など負担が掛かりやすい職種だ。

 

「よしっ!!では覚悟を決めますかな。」

 

機長は操縦幹を前に倒して雲に突っ込む、数秒もすれば真下にはグラ・バルカス帝国海軍の艦隊が大艦隊を引っ提げて前進しているだろう。さて、奴等はどれぐらいの戦力をこのバルチスタに投入してきた事か…………。

 

「……………なっ?!冗談だろ…………。」

 

「これは、流石に………………。」

 

敵艦隊を視認して、二人は絶句した。大艦隊だと言うのは当たっていた、誰がどう見ようと大艦隊だ。ただし規模は想像していたのとは遥かに隔絶していた。

戦艦10、空母6、軽空母3、その他巡洋艦や駆逐艦を合わせれば200隻以上の大艦隊である。魔導連合艦隊どころか、ミリシアルの全主力艦隊を集めなければ、対抗なんて到底出来ないのではないかと思わせる一大戦力である。

 

「こりゃ急いで報告しねぇと不味いぞ!!正攻法じゃ勝ち目なんてねぇ!!」

 

「機長、後方上空に敵機!!」

 

「長居は無用だ、急いでトンズラするぞ!!」

 

『アンタレス』の攻撃をすんでの所で回避した偵察機は、速度を最大にまで上げて離脱した。降下によって『アンタレス』はスピードが上がっていたのだが、その後の上昇により上昇力が無くなって偵察機を取り逃がす事になった。

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国海軍

第2魔導艦隊旗艦 戦艦『クラウソラス』

 

「旗艦『カレドウルフ』より報告!!各艦隊の航空母艦は攻撃隊を編成し、敵艦隊を殲滅せよ!!」

 

「殲滅とは、レッタルの野郎相当張り切ってやがるなぁ。ま、俺も奴等を殲滅してやろうとは思ってたがな。」

 

レッタルの命令に対して獰猛に口角を上げる、第2魔導艦隊司令長官ジェームズ・ウェルズリー中将。その勇敢さによって艦橋スタッフの士気が上がるが、実の所ジェームズは内心に不安を抱えていた。彼は敵情をしっかりと把握してから攻撃を加える、どちらかと言えば慎重な司令官である。

グラ・バルカス帝国には謎が多すぎる、本土は島国であり大陸ほどの大きさこそ無いが。かと言って人的資源が少ないとか、資源が無いとは言い切れないのである。

そして最も不明なのは敵の航空機と、情報が上がっている『未知の水中攻撃』である。上層部やレッタル、ロバートは敗北した第零艦隊の言い訳や、見間違いと言っては居たが。彼の同期であるバッティスタが育て上げた部下が、そんなつまらない事を言うとは思えなかったのだ。

 

「アーサー少佐、どう思うかね?この海戦は勝てると思うか?」

 

「常識的な判断を申し上げますと。敵艦隊は我が艦隊より大規模ですが、まだ我々の位置を把握しておりません。攻撃隊の数も100機以上ですから、そう易々と迎撃されるされる事は無いでしょう。」

 

「常識的と言うと、やはり敵の航空機の性能と、君の言う『未知の水中攻撃』かね?」

 

「はい、そうです。聞けばカルトアルパスの空戦で『エルペシオ3』のキルレシオは一対三だとか。数の上で負けていれば、勝利は厳しいかと。」

 

「アーサー少佐、それは失言だぞ。今この時に言う台詞じゃない。………………もっとオブラートに包みたまえよ…………。」

 

全く反論も出来ないアーサーの発言に、ジョージは胃が痛くなった。どうするんだ、これは。奇襲だからダメージは与えられるだろう。いや、与えられなかったらそれはグラ・バルカスに一切太刀打ち出来ない事を意味する。それだけは絶対に避けたい事案であった。

 

「万全を期すには、艦隊全ての艦載機336機を投入したいですが。まぁあり得ないでしょう、流石にこれは。」

 

「常識に当てはまらないから、こちらも常識外な事をするのも手だぞ?まぁ連合艦隊参謀部がそんなギャンブルをやるとは思えないがな。」

 

事実アーサーは航空機全機を一斉に出し、敵の処理能力を飽和させようと提案したが。参謀部や各艦隊各戦隊司令官に失笑されるに終わった。流石のジョージも苦笑いを浮かべるしかなく、アーサーも流石にこれは無いなと思っていた節がある。

もしアーサーの言った通りに全機出撃すれば、東部方面艦隊に打撃を与えられただろう。エアカバーを完全に失って、グラ・バルカスの第一次攻撃だけで連合艦隊が全滅した可能性が高いと言う事実に目を瞑ればだが。

 

「我が艦隊の空母『フェイルノート2』、『シェキナー4』より攻撃隊が発艦しました!!」

 

ジョージは自艦隊が保有する空母2隻に目を向けた。双方20機程の艦載機が発艦しているのが見える、6隻合わせて120機程となるだろう。普通これぐらいの艦載機を飛ばせば、世界各国の艦隊はなす統べなく全滅するだろう。

しかし敵は最低限で我が国と同等、自分の予想では差が開いている技術力を持っているだろう。

参謀部や司令部は万全だと思っているが、ジョージ率いる第2艦隊司令部は万全だとは全然思えなかった。

 

 

 

 

 

グラ・バルカス帝国海軍

東部方面艦隊旗艦『グレードアトラスター』

 

「レーダに感あり!!艦隊より5時の方向、距離200km、飛行物体多数!!これは……………100機を超えています!!」

 

「成る程、奇襲には奇襲で返して来たか。小癪な。」

 

グラ・バルカス帝国最大の艦隊、東部方面艦隊を率いるカイザル・ローランド大将は口角を上げて呟く。猛将と呼ばれるこの男の心の内は、冷静にこの戦いを見ていた。

 

「参謀、迎撃に出せる戦闘機の数は?!」

 

「ハッ!!艦隊周囲で哨戒していた12機と、出撃待機していた78機です。戦力的に充分な数ですが、敵は100機なのが不安材料ですね。」

 

合計して90機の『アンタレス』が迎撃に差し向けれる数であった。この海戦で参加した東部方面艦隊の戦闘機の数は、27機の戦闘機を持つ(艦載機自体は72機搭載)『ペガスス』級空母が6隻、21機の戦闘機を持つ(艦載機自体は30機搭載)『アマルテイア』級軽空母が3隻。計225機の『アンタレス』が居た。

しかし世界連合艦隊への攻撃の為に半数の『アンタレス』を投入してしまった為、半数しか戦闘機が居ない状況となっていた。

そこを付かれた形となり、カイザルは中々嫌な所で攻撃してくるなとミリシアルを評価していた。しかも今は格納庫内で航空機に爆装を施している最中である、ここを攻撃されれば空母が大ダメージを受けるのは間違いない。

手記にてカイザルは一生の不覚だったと記述している事から、相当際どい所だったのだろう。

 

 

 

 

そしてその数分後

東部方面艦隊の戦闘指揮所と艦橋は、しっちゃかめっちゃかな大混乱に陥っていた。何しろ数が多く、味方の『アンタレス』にもある程度の被害が出ていたのである。

 

「第4飛行隊、損害4!!第9飛行隊は壊滅!!」

 

「予備として待機していた第6飛行隊を投入しろ!!」

 

「第5セクターの迎撃網突破!!敵機が突っ込んできます!!」

 

カイザルはその報告を聞き、第5セクターの方向を睨んだ。小さな点が四つ、高度4000m辺りを飛行しているのが見える。雷撃機より早い機体が、『グレードアトラスター』へと向けて突っ込んで来たのだ。

 

「右舷高角砲群、迎撃用意!!主砲はtype3榴弾を装填して待機しろ!!」

 

『グレードアトラスター』艦長の、ラクスタル・A・バーク大佐は直ぐ様迎撃の命令を下した。しかし主砲の発射は留められた、これは主砲の発砲煙により対空射撃を阻害するのを防ぐためである。

 

「敵も中々やるようだな!!艦長!!」

 

「全くですな、長官!!航海長、回避は任せたぞ!!」

 

「ハッ!!了解しました!!」

 

艦橋に居る士官達は固唾を飲んで、敵の多用途戦闘機『ジグラント3』を睨んだ。彼等が抱えている爆弾の重量は905kg、それは戦艦主砲を改造した品物であり、戦艦を撃沈しうると考えられる爆弾だ。

距離8000mにまで近付いた時、右舷6基の12.7cm連装高角砲が火を吹いた。一分間に一門14発、計168発の対空榴弾が一斉に炸裂した。しかし狙いが甘いのか、散布界はバラけきってしまっている。

 

「クッ!!修理したばかりで調整が完璧では無いか。射撃統制も測距射撃もまるで意味がないぞ!!」

 

『グレードアトラスター』はベストコンディションでこの大海戦に赴いている訳ではなかった。フォーク海峡海戦によって高角砲に大きなダメージを受けており、新しく設置し直されたばかりなのである。しかも優秀な砲手にも被害がでており、たった数ヶ月の訓練では、年単位で実戦経験豊富なベテランを育成するのは無理な話である。

 

「敵機2機が火を吹きました!!しかし2機が未だに健在!!」

 

「面舵一杯!!機銃撃ち方初め!!」

 

両舷75丁づつもの25mm機銃が『ジグラント3』に集中される、3発に1発づつの割合で混ぜられている曵火弾がきらびやかに輝いた。数秒も掛からない内に一機がズタボロにされて海中へ突っ込むが、仲間が全滅してもなお敵機は止まらなかった。

 

「敵機、爆弾投下!!命中コースです!!」

 

「総員衝撃に備えー!!」

 

ラクスタルが力の限りを振り絞って叫ぶ、今まさに『グレードアトラスター』へ致命傷を与えようとする攻撃が迫ろうとする。ラクスタルとカイザルは素直に評価した、ミリシアルのパイロットの技術は高い、勇気もある、そりゃ世界最強と謳われるのも無理はないだろう。

 

そして905kg爆弾は着弾した、命中箇所は後部主砲と副砲の間である。命中角度が浅かったのか、主要水平装甲を貫いて直ぐ爆発した為に大した被害は無いように見えた。

しかし冷却機が故障したのか副砲と主砲の弾薬庫の温度が上昇し始め、ラクスタルは仕方なく弾薬庫に注水するしかなかった。

これにより『グレードアトラスター』の攻撃力は三分の二まで落ちたと言えよう。確かに継戦能力はまだあるが、これは痛い損傷であった。

なお最後の『ジグラント3』は退避行動中に対空砲で撃墜され、500kmものスピードで海面に叩き付けられた。パイロットは即死だっただろう。

その敢闘精神を称え、艦橋に居た一同は名も無きパイロットへ敬礼するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

なお世界最強の戦艦を窮地に陥れた優秀なパイロットの名前は、戦後博物館に記載された。何しろ戦後の捕虜交換で、グラ・バルカスに救助されたあの時の僚機のパイロットが証言して発覚した出来事なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのパイロットの名は、オメガ・ミラー少佐。第1魔導艦隊に転属したばかりの騎士であった。




ミリシアルによる、東部方面艦隊への攻撃は散々な物となって終わった。新たな獲物を見つけたグラ・バルカスは送り狼を投入させ、150機以上の猛攻を開始する。
兵力不足に喘ぐミリシアル、絶望的な迎撃戦が行われた。

次回、ハゲタカ共。お楽しみに!!
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