あぁそれと、この小説に評価を入れてくださった方々。大変有り難うございました。何となく小説情報を覗いたら、中々の高評価を頂いて驚きました。執筆の励みになります。
神聖ミリシアル帝国海軍
魔導連合艦隊 第2魔導艦隊
「全滅ぅ?!100機もの攻撃隊が全滅?!ば、化け物か……………。」
「おい、それは本当なんだろうな?!レーダーに故障は無いのか?!」
魔導艦隊全ての司令部が、攻撃隊全滅の報で恐慌状態に陥った。100機の天の浮船が攻撃してきたら自国の『エルペシオ3』でも撃退出来るか出来ないかだと言うのに、全滅とは一体どう言う事なのだろうか。
「やはり…………、か。何となく予想していたが、まさか全滅まで行くとはな……………。」
この状態を冷静に見ていたのは、カルトアルパス戦を生き延びたアーサーと一部の将兵だけだった。直に奴等の攻撃を受けた彼らは、さもありなんと言った感で対策を考えるのだった。
「司令、事態は一刻を争います。出し惜しみなく攻撃隊を出撃させなければ、奴等に傷一つ付ける事は出来ません。」
実際はベテランパイロットたるオメガ・ミラー少佐や、その他の高練度の空母パイロット達の奮戦により。
戦艦一隻中破、空母一隻中破、重巡三隻少破の被害を与えていたのだが、攻撃隊全滅によって敵艦隊の詳細な報告は届いていなかった。
グラ・バルカス東部方面艦隊は部隊を分離させて、本隊の数は155隻(それでも魔導連合艦隊108隻より多いが)と減ってはいたのだが、参謀達は最悪を想定して動こうとしていた。
「魔力探知レーダーに感!!反応1、南西方向!!」
「どうやら攻撃隊を送る話は無しになったな。」
冷や汗をかきながら、ジェームズはアーサーへ呟く。最早攻撃隊を送る暇などない、次は此方が敵を迎え撃たなければならないのだ。自分の身を守ることに精一杯となるだろう、無論ただでは済まさないようにはするのだが。
「『ジグラント3』の爆装を解除しろ!!全ての戦闘機を迎撃に回せ!!」
「ぜ、全部でありますか?!しかし、第二次攻撃はどうするのです!!」
「次の攻撃は第1艦隊と第3艦隊が少し請け負ってもらう!!今飛んでいる上空直援機と共同で迎撃するぞ!!」
ジェームズとアーサーの判断は素早かった。第2艦隊は爆撃隊の出撃準備が遅れてい為、みすみす無防備な所を攻撃されるよりかは、直ぐ様機体を上がれる様にして迎撃した方が手っ取り早かったのだ。
神聖ミリシアル帝国海軍
第2魔導艦隊 第2空母戦隊
旗艦『フェイルノート2』
「俺達が艦隊を守る主戦力になるぞ、気合い入れろ!!」
「「オウ!!」」
『ジグラント3』と『エルペシオ3』の区別なく、全てのパイロットが艦隊を守るべく気合いを入れた。第2艦隊で出撃できる迎撃機の数は、双方合わせて64機程度である。
戦法によっては、敵の攻撃隊を迎撃出来なくもない、とてつもなく強敵ではあるが。慢心しきっているミリシアル帝国航空隊、このまま行けば壊滅必須なのは後の世から見ている我々だけが知っているだろう。まぁ、当時の人々や異世界の人々には全く予想できないだろう。
「よう『救国の戦乙女』!!アンタの活躍に期待しているぜ!!」
「は、はぁ……………。」
「もう少し気を張れよ、『救国の戦乙女』さん?」
「止めてよぉ………、ヘンリーぃ…………。」
ジェシカとヘンリーは、第2空母戦隊の『ジグラント3』攻撃隊に配属されていた。二人ともカルトアルパス戦の功績によって、中尉に昇進している。しかしこれはプロパガンダの意味合いが強い。カルトアルパス上空戦での空軍、海軍航空隊の失態を隠すべく、新米ながら活躍したジェシカを大々的に褒め称えたのである。新米と言う立場が、彼女の輝きを更に際立たせていた。
なおカルトアルパス上空戦でジェシカ共々『ジグラント3』も、大々的にマスメディアに勇ましく描かれていた。ミリシアルの民衆は『救国戦闘機』としてこの機体に多大な期待を抱いており、軍部もまたそれに乗っかる形で過大評価を与えていた。
機体に揃って御輿に担がれるジェシカ、彼女の肩身はとても狭い物となっていた。
『全航空隊出撃せよ!!撃墜されたら訓練増量を覚悟しておけ!!』
「ひえぇ、戦隊司令官また恐ろしい事いってんなぁオイ。」
「周りからキチガイ呼ばわりされているからなぁ、うちの司令。訓練ですら命懸けとかやってられねぇよぉ。」
『7番機と8番機聞こえているぞ。帰ったら訓練な。』
「「ひえぇ……………。」」
第3飛行隊の7番機と8番機が悲鳴をあげる。ジェシカとトーマスは初めてこの空母戦隊に配属された時、ここの訓練の厳しさには大層驚いた物である。数ヶ月経ってようやく慣れてきたと言うところであった。
発艦してから数分後
ジェシカ達第2空母戦隊の面々は、飛行隊ごとに散会して警戒に付いた。魔力探知レーダーは、機械文明国相手には相性が悪い事で有名である。対象がムーではあるが、ムーが攻撃隊を放った時にレーダーに探知されず相当接近されるだろうとの予想があった。グラ・バルカス帝国はムーと同じ機械文明国、レーダーに映らず接近する可能性は高いだろう。
「……………いた!!」
「こちら第2空母戦隊第2飛行隊、敵機を見つけた!!方位10時方向、距離86.4NM(160km)、30機を超えるぞ!!」
ジェシカとヘンリーが所属する第2飛行隊が、真っ先に敵の攻撃隊を発見した。数はミリシアルが迎撃に出せる約70機の方が多い、このまま行けば敵の攻撃隊に対して飽和攻撃を仕掛ける事ができる。レッタルや多数の士官はほくそ笑んだ、しかし……………。
『こちら第1空母戦隊第6飛行隊、敵機発見!!数40機!!』
『第3空母戦隊第8飛行隊、敵機150機を発見した!!きょ、距離54NM(100km)だ!!』
凶報が立て続けに入ってきた、まともに敵を対処できると思ったとたんこれである。しかも敵はご丁寧に攻撃隊を散会させて、他方向から魔導連合艦隊を攻撃しようと画作していたのである。連合艦隊司令部の面々は、間抜け面を晒して呆然と立っていたと言われている。
「全航空隊攻撃開始!!奴等を叩きのめせ!!」
「いまここで全力を出さずしてどうするか、皆の奮闘を期待する!!」
ジェームズとアーサーは見敵必殺と言わんばかりに、戦闘機部隊へ迎撃命令を出した。後先考えずに命令を下したと非難する人もいるだろうが、航空戦では先手を取らなければ殺られると思っている二人に躊躇など無かった。
『全機反転!!後ろから殺るぞ!!』
『敵中型汎用機に対しては可及的速やかに攻撃せよ、奴のスピードは速い!!』
第2空母戦隊の面々は攻撃を開始した、まず最初に洗礼を受けたのは『リゲル』艦上攻撃機である。『リゲル』攻撃機は481kmを誇る、雷撃機としては高速の部類の機体だが。上方から急降下を開始してスピードが上がった『ジグラント3』の格好の的となってしまった。20mmの魔弾が彼等を貫き、火だるまとする。突然の攻撃を受けた雷撃隊は泡を食って、一機一機と回避運動を取り始めた。
『クソっ!!被られた!!』
『奴等が上方から来る、た、助けて………ザザッ。』
雷撃隊の航空無線は、救難信号によって混線した。無線は悲鳴とメーデーを鳴り響かせ、奇襲を受けて雷撃隊を守り切れなかった『アンタレス』が大慌てで引き返してきた。
『隊長、雷撃隊がーー!!』
『俺達はさっさと敵戦艦を殺るぞ、全機続けー!!』
艦爆隊は味方の損害を物ともせず、自分等の任務を遂行しようと突き進む。そんな彼等の前に立塞がったのは、通信を受けて違うセクターから急行した『エルペシオ3』達である。
『クソっ、戦闘機がお出ましだ!!』
『こっから先は行かせねぇよ、蛮族どもが!!ミリシアルの力を思いしれエェェェ!!』
複数の編隊から繰り出される20mmの弾丸は、容赦なく『シリウス』へ襲い掛かる。一通過を行うまでに約6機程度が落ちただろうか、『アンタレス』が失態を拭うべく『エルペシオ3』へ強襲をかけた。お互いが入り乱れ、艦隊上空に白く円を描く飛行機雲が重なりあった。数十キロ先で行われる大空戦に、艦隊の乗組員は目を奪われて観戦する。
『クソっ何なんだコイツら、エルペシオに風車付けたような見た目しやがって。』
『こ、コイツらが風車野郎か!カルトアルパスの戦友が言ってたのはコイツらの事か!!』
ミリシアル敵に言えば制空戦闘機、『アンタレス』が強力なのはカルトアルパス戦を生き残ったパイロットから聞いてはいたが。機械文明国だからと言う上層部の方の通達を、空母戦闘機部隊は信用していた。自国の戦闘機よりも強力だと思いたく無かったからこそ、彼等は無意識のうちにバイアスが掛かってしまったのである。
徐々に『エルペシオ3』はグラ・バルカス相手に劣勢となって行く。ただし、ただでは済まないのが世界最強国家たる神聖ミリシアル帝国の騎士であった。
『クソっ、プロペラが付いてない変な戦闘機が!!調子に乗りやがってよぉ!!』
『俺達は世界の覇者たるグラ・バルカスだ!!テメェらなんざ怖かねぇよぉ!!』
しかし劣勢な事には変わり無く、次第にミリシアルの防空網は秒刻みで崩壊して行った。グラ・バルカスと違って、レーダーによる整った迎撃が出来て居なかったのだ。ボロが出る筈である、むしろ良くここまで粘れたと言っても良い。
神聖ミリシアル帝国海軍
第2魔導艦隊旗艦 戦艦『クラウソラス』
「魔導探知レーダーに感!!敵機200を超える、来るぞおぉぉ!!」
「第8飛行隊より魔信!!敵機に突破されました、第2防空区が突破されました!!」
「第2飛行隊も突破されました、10機以上が来ます!!」
艦橋内では各飛行隊からの通信がひっきりなしに鳴り響いた。通信士は至る所から魔信が入り、対処能力が飽和しきっていた。初歩的なミスにより、ある事無い事が司令官達や参謀達を惑わせる。
「クソっ、どれが本当の情報なんだ?!」
「届いた情報は一度精査させろ!!」
「しかし、それでは迎撃に遅れが出ます!!」
「正し情報が無けりゃ遅いも速いもねぇよ、今すぐにやれ!!」
「見張りより報告、敵機9が本艦上空に到達!!」
「海面スレスレにも敵機6が突っ込んで来る!!」
アーサーと参謀が怒鳴り合う中、さらに凶報が入る。『シリウス』と『リゲル』の同時攻撃、対空火力を激減させる為の合理的な攻撃。魚雷と爆弾と言う攻撃のレパートリーが多い、グラ・バルカス帝国が為せる回避困難な攻撃だ。
「あの行動…………、敵の水中攻撃です!!気を付けてください!!」
「高角砲を低空の爆撃機へ、機銃は上空の攻撃へ移せ!!」
各々方の行動は素早かった。比較的低速の雷撃機へは威力が高く発射速度の遅い高角砲が、上空の急降下爆撃機へは魔光砲が弾幕を形成する。108隻が繰り出す砲弾は圧倒的であった。
『なんて攻撃だ!!近付けるのかよぉ?!』
『敵の攻撃を良く見ろ、弾幕がバラけきっている!まぐれじゃなきゃ当たらねぇ!!』
『あぁ、神様!!』
ただ圧倒的に見えるだけで、対空砲は元々命中率が低い事で有名である。駆逐艦たる小型艦がグラ・バルカスと違い高角砲を主兵装としているが、機銃たる魔光砲は射撃統制していない。最初の高角砲の洗礼は恐ろしかったが、魔光砲の射程距離に到達するとその粗さが目に見えた。
『よーい、テェー!!』
『痛いのをぶっ食らわせてやる!このデカブツめぇ!!』
『シリウス』が狙った標的は全ての魔導艦隊の戦艦、空母、重巡洋艦の様な高価な目標である。多数の250kg爆弾が投下され、至る所で水柱や爆炎が巻き上がった。
「くぅ、損害状況を知らせ!!」
「左舷魔光砲3基が根本からぶっ飛びました!火災発生!!」
「『シェキナー4』より通信。右舷飛行甲板に被弾、運用能力が半減しました!!」
『クラウソラス』と『シェキナー4』にも等しく攻撃が降り注ぎ、少なからず損傷した。なお神聖ミリシアル帝国の空母は双胴空母で、そのちぐはぐさから至る所で非難されている空母である。
しかし双胴空母による恩恵は確かにあり、通常型の空母(例えば全長が近い我が国の蒼龍やら)の二倍の発艦能力を持ち、片方の飛行甲板が損傷しても運用能力全てを喪失する事が無い所である。
我が国の三段甲板時代の赤城よりかは運用しやすいし、実は艦載機の収容数も多いのである。まぁ通常形式の空母の方がよっぽど使い易いのではあるが。これよか全長235mの空母2隻作る方が手っ取り早く、リスクもうんと低いのではあるが。
「あぁっ!!第1艦隊の『ティソン』が!!」
誰かの悲鳴につられて、艦橋全ての幹部が第1艦隊の方角を見た。するとそこには船体を酷く傾かせ、苦しそうにのたうつ『ティソン』の艦影があった。
「あぁ…………、クソッたれ。またこんな光景を見るのかよ。」
アーサーやら第零艦隊の生き残りは、『ティソン』の姿を見て頭が痛くなった。『ガラティーン』に所属していた者の中には、トラウマが再発して気絶した者も居たとか。
アーサーはとにかく悪態を付くしかなかった、何一つ勝利にも更なる被害を抑える為にも奮闘したが。結局何も実を結ぶ事無く、新たに自分と同じような無力な人間が出たことに、彼はこの先の未来が暗くなるように感じられた。
神聖ミリシアル帝国海軍
南洋艦隊 旗艦『ベガルタ』
「魔力探知レーダーに感!!21NM(37km)より敵艦隊接近、数42!!」
「おいおい冗談じゃねぇよ、42隻だと?」
半壊した艦橋の中で、トーマスは呻くように聞き直した。彼の額には包帯が巻かれ、血が滴っている。
『ベガルタ』の艦内は酷い有り様で、窓ガラスは砕け、天井からは配線やパイプが垂れ下がり、火花が飛び散っている機器もある。
艦橋スタッフもそれなりに被害を受けており、負傷して医務室へ連れていかれた者や、その場で応急処置を受けている者も居る。
艦隊司令長官も負傷して意識不明の為、二番艦に居た戦隊司令の少将が代わりに指揮を取ることとなった。
「私達の進退極まったんじゃない?この状況だと。」
「言うなよ、考えたくなかったんだそれ。」
世界連合艦隊は90隻近くが撃沈され、約300隻が何らかの損傷を負って黒煙を吐いている。南洋艦隊も同じ様な有り様で、小型艦や巡洋艦に被害が出ていた。具体的には戦艦1が撃沈、重巡洋1が撃沈、魔砲船1が撃沈、小型艦2が撃沈である。
戦闘前にラ・カサミ級以上の威厳を放っていたマーキュリー級の1隻が撃沈されている、勿論理由は『リゲル』の魚雷攻撃だ。
現状の南洋艦隊の戦力は戦艦2、巡洋艦2、小型艦4と多数の巡洋艦と駆逐艦で構成される敵艦隊には太刀打ちできる戦力ではない。
「第二ラウンドと行こうか…………、ヘッ!!」
死ぬ覚悟を決めたトーマスの額に、冷や汗が流れた。
激戦はまだ続く。グラ・バルカスの猛攻の前に録な対処もできず、一方的に被害を受けた世界連合艦隊。手負いの彼らに、カイザルが送った打撃部隊が襲い掛かる。彼等の運命や如何に。
次回、STRIKE GROUP 8。お楽しみに!!