神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

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さぁ皆さんお待ちかね、パル・キマイラの戦闘シーンですよ。南洋艦隊と第8打撃群の視点ですが、原作と同じ様になってなければ良いのですが……………。


第十七話 空の王者よ、前へ

神聖ミリシアル帝国海軍

南洋艦隊 旗艦『ベガルタ』

 

「で、結局の所古代の超兵器ってなんなの?」

 

「お前そんなのも知らないのかよ。」

 

息をするようにトーマスが余計な事を言って、エミリーがイラつく。そしてそのまま傷口が開きかけるので、済んでの所で何とか押さえるのを繰り返す。ちょっと酷い事したなと、トーマスは心の中で謝罪した。

 

「噂程度だがな、古の魔法帝国が作った超兵器を発掘して、運用するんだとよ。」

 

「へぇ、軍ってその様な兵器も運用してるんだ。まぁ『エルペシオ』や『ジグラント』も発掘した技術使ってるしね。」

 

成る程成る程とエミリーは頷く。しかし同時に彼女は不安も感じていた。何しろ古の魔法帝国の技術で作った『エルペシオ3』や『ジグラント2』がグラ・バルカスの戦闘機に落とされているのだ、本当にそんな兵器で戦って大丈夫なのかと考えのだった。ひょっとして古の魔法帝国って、案外強く無いのではとの疑心も生まれる。

 

「ま、俺も何処まで本当なのか解らないがな。こんな眉唾な話、誰が信じるってんだ。ハハハハ…………。」

 

「な、何だコレ?!」

 

相変わらずトーマスが力無く笑うのを遮って、レーダー監視員が大声を上げた。彼の上司たるエミリーはレーダーパネルを確認して、レーダー監視員と同じ反応を行う。唐突の出来事によって、レルジェンはイライラしながら確認を取った。

 

「何事だ?!報告はしっかりとせんか!!」

 

「ほ、北方より魔力探知レーダーに感!!ぞ、像が大きすぎます。戦艦以上の魔力の塊です!!」

 

レーダーには北方よりこの海域に近付いて来る大きな像が浮かび上がっていた。それはミスリル級戦艦よりもグレードアトスターよりも遥かに大きい。比べ物にならないと言っても良いものである。

 

「北方だと…………?確か北方と言えば、魔導連合艦隊が寄越したと言う古の超兵器が来るはず…………。まさか?!」

 

「見張りより報告!!北方から何か来ます!!」

 

レルジェンの予測は的中する。そのバケモノは着実にこの海域へ歩を進めていたのだ。世界連合艦隊全ての兵士が注目し、そして戦慄する。誰もがその後、目を疑った。今この時だけ夢なのではないかと思った。しかし現実である。夢でも妄想でも無いのだ。

 

「な、何なんだアレは?!」

 

「お、大きすぎる。ミスリル級戦艦すらも超えるぞ!!」

 

「我が国がこんな大戦艦を保有しているとは、勝てるぞ!!この戦い我々の勝利だ!!」

 

至るところで歓声が上がり、そして神聖ミリシアル帝国を称える声が大海原に伝わる。世界各国の希望、誰も倒しうる事の無い最強がこのバルチスタへ馳せ参じたのだ。

 

「頼むぞ古代の超兵器、友の仇を売ってくれ!!」

 

「よし行けぇ!!あんな蛮族を海の藻屑にしてやるんだ!!」

 

「アンナ…………、お父さんはどうやらお家に帰れそうだぞ!!」

 

数千、数万もの期待を背負って、空中戦艦『パル・キマイラ』は進撃する。目標はグラ・バルカス帝国海軍第8打撃群。おいたが過ぎた愚か者どもへ鉄槌を下すべく全ての兵装が向けられた。

 

 

 

 

 

グラ・バルカス帝国海軍

東部方面艦隊 第8打撃群

 

「対空レーダーより報告、巨大な飛行物体が北方より近付いて来ます。」

 

「巨大な飛行物体だと?航空機の編隊では無いのか?」

 

第8打撃群の司令であるジェシー・プロミネンス少将はレーダー員からの報告に訝かしんだ。もうすぐで異世界の連合艦隊を撃滅し、仕事を終えて帰還できると言う時に。レーダー員が異常を知らせた為に些か気分が萎えた。余計な事を言いやがってと言う話である。

 

「その報告は本当か?レーダーの故障だなんて言ったらただじゃ置かないぞ。」

 

「本当です!!先程再起動と配線の確認を行ったばかりですよ!!」

 

レーダー員の強烈な抗議を受けて、ジェシーはつまらない冗談では無さそうだと結論付けた。何が来ていると言うのだ?異世界に来てから異常事態ばかりだと言うのに、いい加減にしてほしい物だと悪態を付きつつ。

 

「敵艦隊への第三次攻撃隊を向かわせろ、確認ついでに攻撃だ。」

 

「よろしいのですか?」

 

作戦参謀が疑問の声を上げるのを、ジェシーは気だるげに説明する。大体この艦橋に居る人員全てが、もう色々と気分が落ち込んでいるのだが。

 

「どうせ航空隊が居なくても敵艦隊を全滅出来るしなぁ。」

 

「ムー海軍と神聖ミリシアルはあのザマですし、他の艦隊なんて有象無象に過ぎませんからねぇ…………。」

 

そして艦橋内に笑いの渦が起きる。余裕が出来て皆気が緩んだのだろう。ただしその数分後に地獄を見るとは、この時誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国海軍

南洋艦隊 旗艦『ベガルタ』

 

「魔力探知レーダーに感、航空機120機を捕捉。古代の超兵器へ向かって行きます!!」

 

「古代の超兵器は巨大だからな、相当なデコイになってるんだろうな…………。」

 

先程は260mの巨体で士気が上がったが、グラ・バルカスが攻撃隊を出したとたん全員の士気が大いに下がった。如何に巨大な空中戦艦と言えど、航空機には殺られるだろう。

水中攻撃は効かなさそうだが、流石に急降下爆撃を何十機も受けたら人溜まりもない。

 

「結局ダメだったな、夢見させやがって……………。」

 

トーマスはこの後に行われる虐殺劇を想像して、『パル・キマイラ』を貶し始めた。他の面々も大体同じ様な反応で、そこまでグラ・バルカスの力が身に染みていたのである。

 

「敵攻撃隊と接敵します!!」

 

「さて……………、どうなるかな……………?」

 

世界連合艦隊の兵士達は『パル・キマイラ』に注目する、さて何が出るのか戦いはどう転ぶのか。ある程度の期待をしつつ、何時でも逃げられるように準備をし始めていた。

 

「空中戦艦、対空戦闘を開始しました!!」

 

「結構引き付けて撃ったな、高角砲が無いのか?」

 

機銃位の射程で『パル・キマイラ』が射撃を始めた、恐らくミスリル級と同じ様に高角砲が無いのだろう。あんな巨体の上に空に浮いていたら、速攻で的になると言うのに高角砲が無いとは。色々と設計ミスなんじゃないかと皆が思った。

 

「うん?敵編隊から爆発が起こったぞ?」

 

「なんだ?結局高角砲載っけてたのか……………。」

 

最初に異変が起きたのはグラ・バルカス側であった。編隊内に爆発が起こり、大慌てで散開し始める。なんだ、結局高角砲有るじゃないか、何で態々引き付けて撃ったんだ?等と不思議に思ってた所、より詳しく見ていた見張り員達は驚愕していた。

 

「あ、あれば対空砲弾の爆発じゃねぇ。て、敵機がバタバタと落とされてるぞ!!」

 

「なんだありゃ?!百発百中で機銃弾が当たってやがる。何が起こっていると言うんだ?!」

 

『パル・キマイラ』が搭載するアトラタテス砲。それは日本が保有しているCIWSに相当する能力を持っている。毎分3000発の魔光弾は正確に急降下爆撃機へ直撃し、蜂の巣にしてもなお完全に破壊するまで撃ち続ける。

 

「あ、ありゃまるで……………。カルトアルパスで日本の巡洋艦がやっていたのと同じじゃねぇか?!いや、それ以上だぞ!!」

 

カルトアルパスを戦った者にとっては、この光景は日本の巡視船『しきしま』の再来と思っただろう。そしてこの興奮が周りにも広がり、そしてまた落ちかけていた士気が回復して行く。何とも感情の起伏が激しい者達である。

 

「て、敵攻撃隊。全滅です!!」

 

「な、なんだと?!あっという間じゃないか!!」

 

対空機銃だけで敵が全滅する、これは恐らく日本でも出来ない様な出来事だろう。120機もの航空機がほんの三十分で全滅とは、単艦で上げたのは戦果では世界一とも言っても良い。

 

「古代の超兵器、敵艦隊へ向かいます!!」

 

「お、おう………………。」

 

対空戦闘によって忘れていた事だが、本命は第8打撃群の42隻なのだ。恐らくこの海戦で『パル・キマイラ』の真価が問われるだろう。皆の視線が双方に注がれる、どの様な結果が訪れるのだろうか。

 

 

 

グラ・バルカス帝国海軍

東部方面艦隊 第8打撃群

 

「な、なんだと…………。航空隊が全滅した…………。」

 

「め、目の前で……………、120機が一瞬で……………。」

 

ヘラクレス級戦艦の艦橋内で戦慄が走った。まだ通信機越しで状況を報告される方が。まだパイロットの見間違いだのと言い訳できた(それはそれでパイロットに対して酷いが)が、こう目の前で圧倒されるのを目撃すると、今度は自分等の見間違いを期待したくなる。

 

「い、いかん!!残敵掃討の為に艦隊がバラけきっている。この状況を狙われるのは不味い!!」

 

「あぁ!!ムーに向かった分遣隊に攻撃し始めたぞ!!」

 

行った側から最初の悲劇が発生した。近場の目標でそれなりに戦力が低い方であった艦隊が狙われたのである。ほぼ真下に居た重巡洋艦が狙われる。

 

「うわっ、初弾で当てて来やがった!!」

 

「な、なんだあの砲撃は。軽巡クラスの爆発しか起こらないぞ。」

 

『パル・キマイラ』の主兵装は15cm三連装砲が6基の18門、その一発一発の威力は一撃で重巡洋艦を撃沈するには至らない。しかし正確無比なる砲撃は5発/分と素早く、計90発/分と驚異的な攻撃。

 

「ひっでぇ、上部構造体が焼け野原だ。砲塔もマストも跡形もなく吹き飛んじまった。」

 

「こ、ここまでやるのか。なんて恐ろしい事を…………。」

 

瞬く間に重巡洋艦は大規模な炎上を引き起こし、背中が燃えた乗組員が大慌てで逃げ出して行く。恐らく自発的な行動なのだろう。あの状況で艦の幹部達が生き残っている筈が無い。

 

「急いで分遣隊と合流しろ!!」

 

「主砲対空戦闘、急済射だ!!分遣隊を救援するんだ!!」

 

艦長と群司令の判断は素早かった。射程圏内に入り次第、使用可能の主砲で攻撃する。41cm砲が20.5cm砲が『パル・キマイラ』を睨み付け、多数の航空機を撃ち落とした近接信管をばら蒔いた。

 

「た、対空砲が効かないだと?!なんて化け物なんだヤツは!!」

 

「み、みるみる内に分遣隊が沈められて行く…………。もう駆逐艦の半数は沈められたぞ!!」

 

重巡洋艦をたっぷり痛め付けた『パル・キマイラ』は当然の様に、取り巻きたる軽巡洋艦や駆逐艦にも目を付け始めた。勿論対空砲弾を必死に撃ち出して居るのだが、無論ヒビ一つ入らずである。

 

「……………群司令、敵は恐らく戦艦と同じ防御力を誇って居るのではないでしょうか?」

 

「バカな事を、そんな装甲を張って空なんか飛んでられるか!!」

 

「ですが現状、ヤツへの榴弾による攻撃は効いていません!!」

 

「分遣隊の一部が我が艦隊に合流しました!!」

 

参謀が必死に群司令へ意見具申するが、ただでさえ命中率を下げる戦いをするべきか決めあぐねてしまった。結局あの惨劇を生き延びたのは、たった駆逐艦4隻だけだ。殆どの艦は海の上を漂流しているか、海面に重油だけを残して跡形もなく消えるかである。

 

「主砲にだけは徹甲榴弾を装填して、高角砲は対空榴弾で射撃するべきです。」

 

「だがヤツのスピードは200km近くに及ぶんだぞ、30ノット(55.56km)を超える敵に当てられるのか?!命中公算考えて言っているのか?!」

 

「ですがしかし!!」

 

「敵弾、二番艦に直撃!!戦闘行動不能です!!」

 

第8打撃群に猶予などは残されていなかった。急いで『パル・キマイラ』に対する有効策を取らなければならないのだが、空中戦艦と言う非常識を前にして、群司令は判断を取りかねていた。

 

「このままでは我が艦隊はなす統べなく全滅です、群司令決断を!!」

 

「…………わかった。至急弾種変更して攻撃しろ。」

 

群司令はとうとう重い腰を上げて、主砲に徹甲榴弾を装填し変えるのを許可する。しかし薬室内にある砲弾を撃ち出して、また新たに砲弾を入れ直して測距儀でデータを取り直さなければならない。

そのプロセスは1分から2分程度掛かる。41cm砲自体は30秒程度で装填出来るのだが。そうゲームみたいにバンバン射撃出来ないのが艦砲である。そして、

 

「くそっ、やっぱりダメだ。当たりにくかったのが、ほぼ当たらなくなっちまった!!」

 

「何とかして当てられないのか?!」

 

「無茶を言うな!!」

 

そして第8打撃群は数を減らし、とうとう旗艦一隻を残して大破するか行動不能になるか、戦意喪失して総員退艦するかと言う酷い有り様となった。

 

「総員退艦命令下令します。よろしいですか、群司令?」

 

「致し方あるまい、よし退艦するぞ!!」

 

「敵空中兵器、本艦の真上に占位!!」

 

「何をするつもりだ、ヤツは?」

 

その疑問は数分後に解決された。しかし彼等が何をされたかは解らなかったが。なにしろ旗艦は『パル・キマイラ』から投下された大型爆撃『ジビル』によって、船体より上がまっさらになってしまった。勿論乗組員全員は退艦できず、全員真っ黒こげとなってあの世へ旅立ってしまった。その爆発は凄まじい物で、遠くからも大きなキノコ雲が上がったのが見えた。それは破滅の光と炎であり、世界連合艦隊の全ての兵士は神聖ミリシアル帝国へ多大なる畏怖を抱くのだった。

そして、世界連合艦隊の戦いは終わった。魔導連合艦隊とグラ・バルカス艦隊本隊との決戦が近付きつつある。この海戦の終結は近い。

 




世界連合艦隊とグラ・バルカスとの決戦は終結し、戦場は魔導連合艦隊とグラ・バルカス本隊との戦場に視点が戻る。方や連戦と潜水艦による攻撃で半壊した艦隊、方や超兵器によって半壊した艦隊。一見互角に見えるなか、海は暗くなって行く。

次回、最終決戦への序曲。お楽しみに!!
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