今、世界最強艦隊の意地が砲弾となってグラ・バルカスに襲いかかった!!
神聖ミリシアル帝国海軍
戦艦『ガラティーン』
「敵艦発砲オォォォォォ!!」
見張り員の絶叫の様な声が、艦橋内に響き渡った。それを受けてバーソロミューがすかさず魔力障壁の展開を指示する。
「水属性魔力障壁展開、装甲強化!!」
「アイ・サー!水属性魔力障壁、展開します!!」
『ガラティーン』を青色のほのかな光が包み込んだ。これは対衝撃用の水属性障壁である。ちなみに土属性の場合は装甲自体の硬度を増すことが出来き、強化シークエンスはゴールド級の場合、約25秒で装甲強化を可能とさせる。
「敵艦隊の目標、一番艦の『コールブランド』、二番艦の『クラレント』の模様!!」
「我が艦はフリーか。装甲強化解除、主砲射撃用意再開!!」
『ペテルギウス』と『プロキオン』が前方の僚艦へと攻撃を行っている隙に、『ガラティーン』は先手を撃ってやろうと目論んだ。
目標は比較的近くにいる、二番艦の『プロキオン』である。
「魔砲長より射撃盤へ、主砲射撃用意!!」
「アイ・サー!!主砲に魔力充填、属性比率は、雷72、炎28、砲弾の魔術回路起動!!」
魔砲長から射撃指揮所のアーサーへ、命令が伝わる。アーサーは各砲塔への魔力構成を、いい間違え無いようにゆっくりと確実に命令する。
「砲弾の呪発回路に雷82、炎16の比率で注入、魔力充填開始!!」
「魔力充填70%、80%、100%。砲弾の魔力充填完了!!」
各砲塔長からの魔力充填完了の報告が上がる。ガラティーンは主砲射撃のプロセスを終えて、漸くアーサーの本来の仕事へと移る。
「魔力探知レーダーから座標計算完了、測距儀による修正開始。仰角31から仰角28、方位22から方位25に修正。」
アーサーは射撃方位盤に備え付けてある、方位ダイヤルと仰角ダイヤルを回して、最終的な修正を終わらせようとする。魔力探知レーダーの様な最新設備を使おうと、いつの時代も最後に手を加えるのは人間の仕事なのだ。
測距儀から見える『プロキオン』には変化が見られない。今頃大慌てで次弾を発射しようとしているのだろう。
だが彼等がこちらに命中弾を与える前に、こちらが命中弾を決めてやる。そうアーサーはいき込んで最終調整を終わらせた。
「演算機からの初弾命中確率、3艦合計18発で23%に変化。発射10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2………………、Fire!!」
号令と同時に、アーサーは主砲射撃トリガーを引いた。霊式38.1cm連装魔導砲から、ビームと見間違う様な光が溢れ、砲弾は青白い尾を引いて敵戦艦に襲い掛かったのだ。
「着弾まであと8秒、7、6、5、4、3、だんちゃーく、今!!」
『プロキオン』の周辺には、青や赤い色をした水柱が上がる。命中弾は無かったが、初撃にて挟叉を叩き出した。
これは第零艦隊の練度が高いことの証である、普通は第三射位でやっと挟叉へと持ち込めるのだから。
「初弾挟叉か、成る程期待通りの実力だな。」
「流石だなアーサー、おめぇはすげえよ!!」
バーソロミューはアーサーに感心し、トーマスは自分の親友を褒め称えた。艦橋からも感嘆の声が上がる。
「第2射、発射準備ヨーイ!!仰角修正マイナス1度、左方27度へと修正!!」
「仰角ならびに方位の修正完了、主砲射撃回路に魔力充填、90%、100%。次弾発射準備完了!!」
「発射まで5、4、3、2、Fire!!」
『ガラティーン』は敵艦隊の次弾装填よりも早く、第2射の発射に成功した。遅れて東征艦隊からも第2射が発砲される、見張り員がそれに気付いた。
「敵艦隊、更に発砲!!」
「再度魔力障壁展開、属性そのまま!!」
東征艦隊の第二射もこれまた命中弾が無かった、この結果により、我々の練度は並みと言う事かと、アルカイドは落胆したのだった。
そして第零艦隊に勝てるのかと不安になり始める、我々はひょっとして負けるのではないかと。
「着弾まで、5、4、3、だんちゃーく、今!!」
そしてまたもや『プロキオン』の周囲に水柱が上がった。それに紛れて何かが爆発する音が上がり、水柱が収まった時には『プロキオン』はもうもうと黒煙を上げるのだった。
「め、命中か!!」
「敵戦艦に命中確認、命中弾を与えたのは本艦です!!」
見張り員の報告により、『ガラティーン』の艦内全域に歓声の声が上がった。各所で叫び声が上がる。第2艦橋に、戦闘を見守っていた副砲砲座に、暇を持て余していた機銃座に万歳、万歳との声が轟く。
「流石だ、アーサー。第2射で当てるとは中々やるな。」
「ハッ!ご期待に添えられて嬉しい限りです。」
「敵戦艦の速力低下、機関室に直撃した模様!!」
『プロキオン』は先程までの30ノットの高速とは一転、26ノットにまで速度を落としていた。右舷機関室の一室に砲弾が貫通したのだろう、苦しそうに航行していた。
『ガラティーン』の38.1cm砲は、今までの35.6cm砲よりも明らかに威力が高い。
その貫通力は
22000mにて、垂直装甲393mm、水平装甲105mm
27000mにて、垂直装甲331mm、水平装甲138mm
35000mにて、垂直装甲280mm、水平装甲211mm
となっている。
垂直装甲が203mm、水平装甲127mmのオリオン級戦艦にとっては強烈な一撃であった。何しろ35000mの最大射程から砲弾が貫通してくるのだから。
「敵艦隊、第3射発砲!!」
「っ?!魔力障壁展開再開!!」
艦内の喧騒は、見張り員の報告によって中断された。受かれていた気分は、一転して先程と同じように緊張感で押し込められたのだ。
ゴゴゴゴゴと特急のような音が近付いて来る、恐らく目標は我が『ガラティーン』に変更してきたのだろう。艦内全域は迫り来る恐怖に包まれた。
そして『ガラティーン』の周囲に水柱が立ったのと同時に、船体が激しく揺れた。
「ぬわぁ?!」
「キャア!!」
敵艦隊が発砲した砲弾の一発がガラティーンに直撃したのだろう、その数秒後にダメージコントロール班から連絡が届いた。
「左舷第7ブロックに直撃弾、浸水発生!!」
「なんと!!装甲強化しても貫かれたと言うのか?!」
バーソロミューは驚愕した。グラ・バルカスの砲弾は、我が神聖ミリシアル帝国と同等の威力を持っていると言う事である。
やはり技術力はムーを明らかに上回っている。レイフォルが負けるのも無理はない話であると言うことだ。
「ダメージコントロール、急げよ!!」
「アイ・サー!!」
『ガラティーン』のダメージコントロール班はとても優秀である。あらゆる想定に対処するための訓練が施されていた。
むろん、敵砲弾が水線部分を直撃して浸水が起こっても、傾斜と浸水を止める訓練も行われている。
3度近く左舷に傾斜していた船体が、みるみる内に元に戻って行った。
「戦闘は継続している、総員気を張れよ!!アーサー、仕返しを食らわせてやれ!!」
「アイ・サー」
そして、海戦はまだ続くのであった。
神聖ミリシアル帝国海軍
重巡洋装甲艦『ロンゴミニアド』
「敵重巡洋装甲艦接近!!距離10.8NM(20km)」
第零艦隊所属である、第零巡洋艦戦隊。その旗艦である『ロンゴミニアド』の艦橋では、淡々と見張り員からの報告を集計されていた。それを踏まえて指揮官席に座る女性は、凛とした声で命令を伝える。
「巡洋艦戦隊各艦に告げる、距離8.1KM(15km)まで引き付けなさい。」
「アイ・サー!!」
彼女は、エレイン・ペンウッド海軍少将。金髪碧眼であり、エルフの血を引いていると言われているが、耳は長くない。その顔つきと言葉使いにより冷徹少将との声もあるが、彼女をよく知る者からすると結構なポンコツらしい。
「敵艦………、発砲。」
「魔力障壁展開せよ!!」
その数十後に、『ロンゴミニアド』周囲に水柱が上がる。しかし挟叉すらしてない事から、各巡洋艦艦長が敵巡洋艦への失望をあらわにする。
「敵巡洋艦はやる気が有るのでしょうか?先程から外れ弾ばかり撃ってますぞ。」
「何らかの意図があるのかもしれませんよ?油断するべからず。」
「アイ・サー」
エレイン少将はそう判断するが、実際は敵重巡洋艦の練度が低いだけである。タウルス級の艦長は3斉射しても挟叉すら与えられない事に焦りを感じているのだが、彼女は知る由も無かった。
「敵重巡洋艦一番艦へさらに命中弾……………、あっ!敵重巡一番艦の傾斜拡大、撃沈確定です!!」
「うむ、続けて敵二、三番艦へ火力を集中しなさい。」
そして第零巡洋艦戦隊は更に、グラ・バルカス海軍の第10巡洋艦戦隊《Cruiser Division 10》を追い込んで行くのだった。
神聖ミリシアル帝国海軍
小型艦『マインゴーシュ』
「突撃だ!とにもかくにも突撃しろ!!敵小型艦戦隊を撃滅するのだ!!」
ストーン級小型艦の艦橋にて怒号を上げるのは、獣人種族のジェームズ・マクスウェル准将であった。
どこの国でも駆逐艦乗りは気性が荒い者が多い。それはミリシアル帝国海軍の小型艦乗りでも同じ事である。
「我が戦隊六番艦、ソードブレイカーの被害甚大!総員退艦命令が発令されました!!」
「海図に沈没地点を記入せい。戦闘が終わり次第救出するぞ!!」
「アイ・サー」
第零駆逐艦戦隊と第101駆逐隊《Destroyer Division 101》は、お互いの距離が7500mになるまでに接近して砲撃し合っていた。数にして8対5であり、第零駆逐艦戦隊の方が戦力を上回っている。それに駆逐艦の質でも、ミリシアルの方が上回っていた。
ミリシアルのストーン級小型艦は魚雷こそ搭載してはいないが、12cm連装高角砲を4基8門搭載しており、
12.7cm連装砲を3基6門搭載のキャニス・ミナー級駆逐艦、エクレウス級駆逐艦よりも火力で上回っていた。
そして練度は当然ながらミリシアルの方が勝っている。第101駆逐隊は必死に食らいついている状況であった。
グラ・バルカス帝国海軍
第101駆逐隊
「状況が芳しくねぇなぁ?艦長。」
「ミリシアル帝国、侮り難しと行ったところですなぁ。」
苦々しく艦長へ言葉をかけたのは、アーレイ・B・ブラックスター大佐であった。彼はアルカイド少将の命を受けて、敵戦艦へ魚雷攻撃を掛けようと突撃したのだが。数で上の第零駆逐艦戦隊によって近付けないでいたのだ。
敵駆逐艦が邪魔で魚雷の射点に到達できない。さてどうした物かと考えていた。
別に、第零駆逐戦隊は魚雷を知ってて妨害している訳ではない。ただ戦艦のデコイになろうとして突撃した所に、第101駆逐隊と出くわしただけであった。
敵戦艦に肉薄して、嫌がらせの砲撃でもしようと思っていたのだが、手頃な敵駆逐隊が居たために積極的に攻撃して来ただけである。第101駆逐隊にとっては、堪った物では無かった。
「敵戦艦が見え次第魚雷をとにかくばら蒔いて、当たるのを願うしかねぇか?」
「それ以外に方法が有りそうにありませんなぁ!!隊司令。」
ブラックスター大佐はこれ以上は戦局が好転しないと判断し、機会があり次第魚雷を放って撤退すると言う決断をした。その決断は後に『ガラティーン』の運命を決定付ける事になるとは、まだ誰も思いもしなかった。
各方面にて優位に立つ第零艦隊、三番艦『ガラティーン』は傷つきながらも奮戦する。しかし水中から彼女を仕留めんとする意志が近づいて来た。
次回、太陽の騎士は沈む。お楽しみに!!