神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

5 / 17
『ガラティーン』撃沈、それにより第零艦隊は浮き足立つ。しかし海戦その物はミリシアル側の勝利に終わった。しかしグラ・バルカスが放った航空攻撃が彼等を襲う。






第五話 ヘルダイバー

神聖ミリシアル帝国海軍

重巡洋装甲艦『ロンゴミニアド』

 

雲間から小さい黒点が現れ、数分の内に大きくなりつつ数をふやしていった。数にして200機、戦闘機、急降下爆撃、攻撃機が第零式魔導艦隊へ向けて直進しつつあった。どの航空機もミリシアル帝国を抜いて、世界最強の戦闘能力を保持している。

第一次攻撃隊のみで出撃機数は200機である、恐らく撃ち漏らしを警戒して余力を持っているだろうから、マグドラ沖海戦で投入されたグラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊の空母は10隻近くいると思われる。

 

「数が多いですね、エアカバーの友軍機は?」

 

「11機らしいです、先程の『ジグラント2』だとか。」

 

その言葉を聞いて、エレインは落胆した。とても数が少なすぎる。迎撃能力が飽和してしまうではないか。確かに『ジグラント2』は対艦、対地、制空を多目的に行える優秀機で、最高速度510kmはワイバーンロードの上位種ワイバーンオーバーロードの最高速度450kmを大幅に凌駕する。

 

しかし先程の戦闘で、グラ・バルカス帝国は我が国と同程度の性能を有していた。艦船の製造能力が高くて、航空機の製造能力が遅れていると言う事も有るかもしれないが、それでも200機と言う数は恐ろしい物である。

 

「戦隊司令、作戦行動中の軍艦が航空機に撃沈された事例はありません。」

 

戦隊の主席参謀であるアンドルー・キャンベル海軍大佐は、そうエレインを勇気付けようと声を上げる。しかしそれは自分にも言い聞かせているだけであった。彼も200機の大群を見て怖じ気付いていたのだ。この様に発言する事によって、自分の中の不安を取り除こうとしているのである。

 

「………………それは戦艦ならばと言うだけで、巡洋艦や小型艦は充分に撃沈する可能性が有ると言われているでしょう…………?」

 

エレインはげっそりした顔でアンドルーに返答し、そろそろ空戦が始まる空を見上げるのであった。

確かに戦艦であれば、最も装甲が薄いでゴールド級であっても装甲強化前は225kg爆弾に、装甲強化後では520kg爆弾にも坑堪するだろう。

しかし重巡洋艦であるシルバー級は、装甲強化後で520kg爆弾に耐えれるかは未知数と言った所であった。当たり所が悪ければ多大な被害を受ける事になるだろう。

戦艦にしたって、『ジグラント3』用に完成間近となっている907kg爆弾に耐えれるかは解らないのだ。戦艦の砲弾を参考にして作られている爆弾なので、恐らく航空機は戦艦を倒しうる火力を手に入れるのではないかと海軍上層部でも持ちきりの話である。

もし彼等がそれ相当の航空兵装を持っていたら?戦艦が時代遅れになる時が来たら?もし戦艦を沈めうる攻撃力を持っており、その牙が我々に来たら?

その様な不安を、エレインは感じ取って居た。

 

「もし航空機が我が『ロンゴミニアド』を攻撃しようと、我々乗組員の操艦によって回避してやりますよ。安心してください。」

 

『ロンゴミニアド』の艦長ロバート・サマヴィル海軍大佐がそう発言した。しかし彼の表情をよく見てみると、口元は引きつっており額には冷や汗が滲んでいた。人の表情や感情に敏感なエレインは察した、彼は痩せ我慢しているのである。今までマグドラ群島での対空訓練では、軍艦が航空攻撃に対して回避行動を取るのは難しいと結論が出ていた。

艦隊防空の主戦力である重巡洋艦、魔導船(軽巡洋艦)、小型艦の対空攻撃も当たり難い。現に先程のグラ・バルカス艦隊は『ジグラント2』を5機落とすのに留まっているのだから。

 

「頼りにしていますよ、艦長。」

 

エレインはロバート艦長を勇気付ける言葉しか、掛けることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神聖ミリシアル帝国

第5爆撃戦闘団

 

「ジョセフ、ジェシカに代わって俺の三番機となれ。」

 

「ま、待って下さい、私も行きます!!」

 

「主翼が穴だらけになった航空機でか?」

 

オメガが下した指示に、ジェシカは大慌てで噛み付いた。しかしオメガが下した判断は、とても理にかなった判断であった。損傷が見られる航空機に先程の戦闘で及び腰になってしまったパイロットを乗せて戦場へ送り込んでも、ただ味方の邪魔になるばかりか時間を書けて育て上げたパイロットを損耗するだけの結果になるだろう。

それを解った上でジェシカはオメガに反論していた、自分だけが安全な所に居るのが彼女にとって苦痛だったのだ。

 

「まぁ解ってくれよ、隊長の苦悩もさ。別にお前をハブりたいから止めてるんじゃない。お前の事を考えて判断しているんだからさ。」

 

ヘンリーがジェシカに隊長の事も考えろと諭し出した・今までオメガ、ヘンリー、ジェシカの三人で編隊を組んでいたから彼女の事も解らなくも無かったし。彼女が反論する事の本質も彼は理解していた。

 

「大丈夫さ、俺と隊長はお前を残して行きやしないさ。代わりの機体が工面でき次第、第二部隊として俺達を追いかけてくれよ?」

 

「べ、別にそんなつもりなんかじゃ………………。」

 

それはジェシカが航空魔導学院でのあるトラウマが、彼女が口答えする遠縁になっていた。彼女は訓練兵時代、親友を事故で亡くしているのだ。

自分の機体が不調であった為、その時の訓練はお預けになったのだが、その日彼女の親友が代わって三番機を務めたのだ。そして彼女の親友は空間失調症となり、海面へ自ら激突して死亡した。

その日以来彼女は、親友に自分の不幸を擦り付けと謂れの無い中傷を浴びせられ。後に自分の上官となるオメガに拾われる事となる。

そして彼女はオメガの指導の元めきめきと実力を伸ばしていったが、トラウマによる気の弱さ、相変わらずと言ったところであった。

 

『第5爆撃戦闘団、発進せよ!!繰り返す、第5爆撃戦闘団、発進せよ!!』

 

「さて、もう時間か。ジョセフ俺の背中を今回は頼んだぜ!!」

 

「おう、任せてくれよ!!」

 

そしてオメガ達は『ジグラント2』へと飛び乗り、200機の攻撃隊から第零艦隊を守るために大空へ飛翔して行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし現実は非情である。意気揚々と敵編隊に襲い掛かった『ジグラント2』は戦闘機どころか、グラ・バルカス帝国の艦上爆撃機である『シリウス』にすら追い付けずに艦隊防空圏への侵入を果たしてしまった。

まぁこれは仕方がないとしか言えないだろう。『シリウス』は地球で言う所の艦上爆撃機『彗星』でありWW2最速艦上爆撃機として有名な機体なのである。

最高速度510kmの『ジグラント2』が、最高速度530kmの『シリウス』に追い付ける筈がない。

もしこの様な自機と同等、もしくは僅かに速い敵機を攻撃するには待ち伏せての奇襲でしか打撃を与えられないだろう。

ただし航空機と言うものは反復して攻撃を仕掛けるには、敵機より1.5倍のスピードが必要と言われている。なので仮に『ジグラント2』が奇襲を成功させても、二回目は攻撃できないのである。まぁ奇襲が失敗しているので、関係ないのだが。

 

神聖ミリシアル帝国海軍

第零式魔導艦隊

 

「航空隊の奴等、やる気があるのかよ?!」

 

「彼奴ら爆撃機の防御機銃が怖いんじゃないのか?」

 

「ケッ、腰抜け野郎が。地上では散々威張り散らしてるって言うのによ!!」

 

実際は『ジグラント2』が遅いだけなのだが、艦艇乗組員からはそんな事がわかる筈もない。なのでこの様な心無い罵声が航空隊に浴びせられたのである。パイロット達にこの声が聞こえていたら、任務を放棄して味方艦隊に機銃掃射で返答しただろう。

 

「敵機急降下、さらに近づく!!」

 

「対空戦闘用意、魔力充填70、80、100%、連射モード切り替え完了!!属性比率雷14、風65、炎21、自動呪文詠唱完了!!」

 

神聖ミリシアル帝国が保有する対空魔光砲は、それなりに高性能な対空機銃である。もう既に運用されていない第一世代イクシオン20mm機銃は、毎分350発と地球のエリコン20mm機銃と同じ連射力を誇っている。威力は勿論エリコン20mmと同じで、有効射程は918mと短い。

これを改良したのが、アクタイオン25mm機銃である。

アクタイオン25mm機銃は発射速度こそ230発に低下したが、打撃力は段違いに向上してあり。有効射程は一世代イクシオンより大幅に向上した3500mである。

ミスリル級戦艦に備え付けられた連装26基52門の25mm機銃が、迫り来る敵機を睨む。

 

「魔導整形砲弾、時限魔術回路榴弾へ弾種変更!!」

 

「アイ・サー」

 

時限魔術回路榴弾とは、霊式魔導砲の為に作られた普通の榴弾である。弾殻が薄く作られており、大量の炸薬と破片で攻撃を行う砲弾で、対空戦闘と対地攻撃の両方を行うのだ。

時限魔術回路榴弾は、38.1cm、20.3cm、15.2cm、10.2cmの各砲に装填され、ゆっくりと砲身を敵編隊に向けた。

 

「魔力探知レーダーより報告、距離10.8NM(約20km)を切りました!!」

 

「主砲、発射準備完了。魔力探知レーダー及び測距儀から座標計算完了。仰角42、方位左95、初弾命中確率2艦12発で1.5%。」

 

「命中確率1.5%か。」

 

第零艦隊の艦隊司令バッティスタ・マウントバッテン中将は、あまりの命中率の低さに焦りを覚える。

敵急降下爆撃機は曲がりなりにも戦闘機である『ジグラント2』より高速である事から、相当な高性能爆撃機だと予想される。そのため敵にほぼ一方的に殴られる可能性がある、航空機に戦艦が沈められる事例は無いとは言え相当な被害を被るのでは?と心は不安で鷲掴みにされた。

 

「主砲対空戦闘、撃ち方始め!!」

 

「うちーかたーはじめー!!」

 

戦艦『コールブランド』、『クラレント』から一斉に38.1cm榴弾が12発発射された。それを受けて、副砲から15.2cm砲弾が6発、第零巡洋艦戦隊から20.3cm砲弾が16発、第零魔導艦戦隊から15.2cm砲弾が36発発砲される。

計70発の内、数発が敵編隊の内部で爆発すれば良い方であろう。数秒後砲弾内の魔砲燃料によって、赤や緑と言ったカラフルな爆発が起きた。そして70機の『シリウス』爆撃機の内、6機が中途で火の玉となったり、赤い尾を引いて急速に海面へと墜ちていった。

 

「敵機撃墜数、6機!!」

 

「たったの6機か!!」

 

対空監視員からの報告に、『コールブランド』艦長のリチャード・クロムウェル大佐は思わず怒鳴り付けた。彼も対空射撃の命中率が低い事は知ってはいるのだが、それでも怒りをぶつけなければ気がすまなかった。

実際の所、まぐれでは有るとは言え、第零艦隊の対空射撃の命中率は先程近接信管を用いて砲撃した東征艦隊より高いのだが、彼等には何の慰めにもならなかった。

 

「我爆撃ポイントに入った、投下よーい!!」

 

「クソッ!機銃の数だけは多い!!」

 

64機の『シリウス』は250kg爆弾を3発ずつ抱え、第零艦隊の戦艦と重巡を狙って急降下を開始した。

急降下爆撃は相当危険な攻撃方法である。攻撃を受ける側から見ればまるで止まっているように見えるのだ。それ故に最も攻撃を受けやすく、撃墜の確率も高まる。例え射撃管制や測距儀が無くとも、充分に撃墜する事も有り得ると言うのだ。

かの急降下爆撃で名を馳せた『スツーカ大佐』ことハンス・ウルリッヒ・ルーデルも、その人生で高射砲により5回撃墜されているのだ。

 

「主翼に当たった、助けてくれ!!」

 

友軍機が直撃を受けて悲鳴を上げる中を、『シリウス』爆撃隊は勇敢に降下して行く。度胸勝負となり、何が起ころうと爆弾をぶつけてやると言う意地が彼等にはあった。

そして高度600mにて爆弾を投下、250kg爆弾は『コールブランド』の副砲搭目掛けて落ちていった。




敵の航空攻撃はさらに続く、200機の大編隊に第零艦隊は翻弄されつつあった。空に目を向ければ第5爆撃戦闘団が奮戦し、海に視点を戻せば第零艦隊が……………。

次回、最強艦隊の落日。お楽しみに!! 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。