神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

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読者の方々からの続投の希望がありましたので、何とか頑張ってみようと思います。完結できればいいなぁ(白目)


第七話 カルトアルパスの守護者

マグドラ群島での海戦後。第零艦隊の全滅を確認した東征艦隊と航空隊は、本拠地の海軍基地と海軍飛行隊基地を襲撃した。

無論ミリシアル帝国も黙ってやられるつもりはなく、配備してあった対空砲と沿岸砲台(余剰した34.3cm連装砲)で果敢に応戦した。

そして重巡洋艦一隻と、航空機8機を道連れにして、この世から完全に消滅したのであった。

 

「こいつは……………、大変な事になったぞ!!」

 

島中央にある少し高めの山から、一連の出来事を目撃していた陸軍兵は急いで上層部へ報告した。

この報告は陸軍上層部のみならず、国防省や外務省をも巻き込んだ混乱へと発展した。

第零式魔導艦隊の全滅と、グラ・バルカス帝国が余力を持ってして会議が継続中のカルトアルパスへと向かって来ている。

この異常事態でミリシアルが下した判断は、先ず各国の要人を退避させる。ここまでは常識の範囲内である、ここまでは良かったのだが……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、航空部隊を伴った敵をここで迎え撃つんだとさ。いやぁ面白い事を考えるなぁ、各国のお偉方はよ。」

 

「我が国のお偉方も付け加えてですね、ハハハハ……………。」

 

そう力のない声で笑い会うのは、南方地方隊所属の第18巡洋艦戦隊司令サミュエル・パテス少将と、巡洋艦『ゲイジャルグ』艦長のフィリップ・ニウム大佐であった。

 

「明らかに邪魔になるだけだろう?戦列艦なんてなぁ。」

 

「素直に避難してくれたら良かったのですが…………、ハァ………………。」

 

まぁ、我々の戦力ならば撃滅とは言わないまでも、撃退程度は出来るだろうとパテスは予想を立てていた。

確かに彼は予め軍司令部から、第零艦隊全滅の報告を受け取っていた。全滅とは何かの間違いでは?あの世界最強と噂される第零艦隊が全滅?生き残りの一隻もおらずしてか……………?

 

「しかし第零艦隊が全滅とは、何かの間違いではないのでしょうか?一隻残らず沈むとは、流石にあり得ませんよ。」

 

「確かに、これは盛りすぎだろうと私も思うぞ。まぁ仮に真実だとして、やる事は代わりないんだがな。」

 

そうパテスはニウムに会話を返し、後ろを振り返ってカルトアルパスの街並みを眺めた。自分達が守らなければならない街が、自分の真後ろで景気よく輝いている。この輝きを悲しみの光にしてはならない、そう彼は心に誓うのであった。

パテスと同じように決意を抱いたものは案外沢山居た。勿論彼が率いる第16巡洋艦戦隊の各艦長は、彼と同じ様にカルトアルパスと帝国の名誉を守るために気を引き締めている。

 

「魔導巡洋艦が8隻、ムーが相手でも充分に戦える戦力だが果たしてどうなるでしょうか?」

 

「先程あの『グレード・アトラスター』と言う戦艦が居たからな、恐らく奴と相見える事となるだろう……………。」

 

副長の発言に、ブロンズ級魔導船『アスカロン』の艦長は艦橋からフォーク海峡を、腕を組んで睨み静かに返答した。我が国のミスリル級を遥かに凌ぐ大戦艦、重巡ですらミスリル級に勝てないと言うのに、一体どうやってかの戦艦と戦えばよいのだろうか?

そして負ければどうなる?カルトアルパスは戦火に曝され、ミリシアルの誇りは失墜するだろう。それは何としてでも避けなければならない、例えそれが数多の人骨をこの海峡に吸わせようとも。

 

「副長、遺書は書いたかね?」

 

「自分は遺書を書かない主義なので。家内も私が軍人である以上、覚悟はしているでしょう。」

 

「そうか…………………。」

 

艦長はこれ以上追求するのを止めた、最早言葉は要らない。覚悟を決めている彼の心を、ここで揺らがせるのは艦長としてどうかと思ったからだ。

 

「艦長、緊張しとりませんか?」

 

「当たり前だ、第零艦隊を全滅させる程の敵がやって来てるんだぞ。私達巡洋艦部隊が何処までやれるのか……………。」

 

長年彼と勤務していた副長は、艦長の心がとても揺らいでいる事に直ぐ気付いた。確かに艦長の言う事も解らんではない。何しろ地方艦隊と言う二線級艦隊が、第一線で戦う艦隊に取って変われる訳がないのだ。だがしかし、副長はそれがどうしたと考えていた。

 

「だがそれでも、この街を守れるのは我々だけなんですよ。我々軍人のやる事はただ一つ、国民の為に戦いきるだけです。」

 

「まぁ、それもそうだな……………。すまない副長、私は考えすぎてたようだ。」

 

副長の気合いが入った言葉を聞いて、艦長は迷いを捨てることにした。確かにそうだ、やる事は全く変わらないのである。何があろうとフォーク海峡は死守する、海軍軍人としての意地を今こそ卑怯なる闖入者へぶつけてやるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら第7制空戦闘団、こちら第7制空戦闘団。着陸許可を求む。」

 

「着陸を許可する、管制に従い着陸せよ。」

 

細剣の様な胴体と、飛び出たテーパー翼が印象的な戦闘機がカルトアルパス付近の飛行場に着陸した。神聖ミリシアル帝国が誇る最新鋭戦闘機『エルペシオ3』が、帝国の名誉を守るべく降り立ったのであった。その数42機、一個戦闘団(飛行大隊とも、飛行群とも呼称される)が東部戦闘機軍団から抽出されたのだ。

他にも続々と戦闘機部隊が降り立つ。西部戦闘機軍団からは『ジグラント2』からなる第21爆撃戦闘団が、訓練飛行を終えて帰投した第18爆撃戦闘団がカルトアルパスの地を踏んだ。三個戦闘団126機が来るグラ・バルカス帝国の攻撃に備えて結集したのである。

 

「ケッ!せっかくの休暇が取り消しかよ、有給は取れるのかいねぇ?」

 

「口を慎むんだエイブラハム、子供に敵機撃墜を誇れると思いな。」

 

「俺は子供と『平和』に遊ぶ予定だったんですよ、シルベスタ中佐。」

 

不機嫌さを隠そうともせず、愚痴を溢す自分の部下を宥めるのは、第7制空戦闘団の団長シルベスタ・ホイットル中佐である。彼の部下エイブラハム・ミッチェル大尉の言う通り、彼等は折角の休暇を不意にしてやって来たのである。軍人である以上、国家の異常事態に駆けつけなければならないのだが、何とも言えない気分が彼らの中にはあった。

 

「しっかし第零艦隊が殺られたとは、本当の事なんですかね…………?俄には信じられませんぜ。」

 

「だが上層部がつまらない冗談を言うと思うか?しかも我が国最強の艦隊が殺られたなどと言う、達の悪い冗談をだ。」

 

「まぁ確かに、頭のお堅い上官様がブラックジョークなんて言える筈もありませんなぁ。」

 

半信半疑で質問するエイブラハムの言葉を、シルベスタは理にかなった持論を述べて否定する。それ程までに最強の第零艦隊と言う名前は、一定量の説得力を持っているのだ。大体強権を用いて各国艦艇に脱出命令を出さない位硬直した上層部が、冗談等を言えるとはシルベスタは思ってもいない。

 

「それはそうと、向こうに居る『ゲルニカ』は何なんですかね?機体番号はマグドラ群島の基地の奴ですけど。」

 

エイブラハムは話を変えて、滑走路の向こうにある格納庫に収容されていた『ゲルニカ35型』について疑問を顕にした。シルベスタも彼につられて『ゲルニカ』へ目を向ける、すると二人の近くで作業をしていた基地要員が、彼等の疑問の回答をするのであった。

 

「あぁアレですか?マグドラ群島基地への空襲を逃れる為に、出撃出来ないパイロットでも避難させようと飛んできた奴ですよ。」

 

「どうやら上層部の話は、本当って言う確率が高くなって来ましたぜ……………。」

 

エイブラハムの呟きを聞き、シルベスタは覚悟を決める時が来たと気を引き締める事にした。第零艦隊を沈めうるグラ・バルカス帝国の実力、如何程の物なのか………………。

 

「オメガ隊長、大丈夫なのかなぁ……………。」

 

『ゲルニカ』に乗って避難してきたジェシカは、出撃して行った自分の部隊の仲間の身を案じていた。それは彼女と共にカルトアルパスまでやって来た、第5爆撃戦闘団のパイロット達も同じ気持ちである。

 

「で、でも大丈夫だよね。何しろミリシアルで作った戦闘機なんだもん、あのオメガ隊長が遅れを取るとも思えないし。」

 

彼女は一人で勝手に結論付けた。いくら考えても不安は拭えないので、強引に思考停止して流れに身を任せようと判断したのである。気が弱くくよくよ考えてしまう彼女は、勝手に安全バイアスが掛かりやすくなっているのだ。

 

「それで、私は何をすればいいんだろ………………。」

 

彼女の出番は数時間後に直ぐやって来るのだが、誰も予想が付かないでいた。辺境の航空部隊に所属する新米パイロットが、逃げてきた先で活躍するだなんて誰が考え付くだろう。考え付いた者は未来予知の才能がある、誇ってもいいだろう……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が始まる可能性が高いカルトアルパスでは、あちこちで臨時休業する店が出始めていた。だがそれでも、一部の危機感が薄い酒場などでは、相変わらず昼間から酒飲み客が押し掛けて宴会が開かれていた。

 

「おい聞いたか?!グラ・バルカスつー国が全世界へ向けて宣戦布告したんだとよ。」

 

「ハァ?!冗談だろオイ。」

 

カルトアルパスの守備をしている部隊の一つである第48高射砲連隊の一中隊の兵員も、昼間からやることが無いので酒場で宴会を開いている集団であった。彼等は仲間が発言した情報に、半ば信じられないとの声を上げていた。

 

「第2文明圏の国家だけでなく、世界最強のミリシアルにも喧嘩を売るとか。あいつら頭おかしいんじゃねぇの?」

 

「レイフォル潰してイキってるんだろ、察してやれよ。」

 

そうやってグラ・バルカスの行動を笑い飛ばしていた。まだ一つの国に宣戦布告するなら解らなくもないが、世界各国は流石に無茶しすぎだろうと。

 

「まぁ例えどんな敵が来ようと、俺達対空砲部隊で何とかなるだろうよ。」

 

「ちげえねぇ、40mm魔光砲さえありゃあムーの航空機でもイチコロさ。」

 

誰もがグラ・バルカス帝国が神聖ミリシアル帝国を遥かに凌駕する大国等と、想像すらしなかった。当然である、世界第一位の実力は、己の兵器、練度で手に入れた物だからだ。それ相応の自負と言う物が彼等に有ったことが、知らず知らずの内に敵を過小評価する一因となっているのだ。彼等の宴はさらに続く……………。




第零艦隊の全滅と、カルトアルパスを火の海にする驚異が迫ってきている事を、誰も知りはしなかった。
神聖ミリシアル帝国のみならず、世界を恐怖に陥れる足音は誰も聞こえない。

次回、ファイターズ。お楽しみに!!
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