神聖ミリシアル帝国海軍物語   作:凡人作者

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「しきしま」の対空無双を期待している方々、大変申し訳ない。「しきしま」の出番あんま無いんだよ、メインはミリシアルの戦いだから……………。





第九話 死闘

神聖ミリシアル帝国海軍

第18巡洋艦戦隊

 

「対空レーダーより報告!!第7制空戦闘団が…………全滅しました。」

 

「な、なんだとっ?!」

 

「それは本当か?!」

 

魔導通信士官からの報告に、パテスとニウムは耳を疑った。彼等には最新鋭の『エルペシオ3』が配備されていた筈、ミリシアルの技術の結晶がまさか全滅とはどう言う事なのか全く理解できなかった。

 

「何機落とした、まさか一機も落とさずでは無いだろう!!」

 

「敵の制空戦闘機を14機、らしいです…………。」

 

「なっ?!」

 

キルレシオにして一対三、まさかそこまで差が開いているとは!!パテスは上層部に何と報告すれば良いのかと頭を抱えた。敵の戦闘機一機に対して一個小隊の戦力をぶつけなければならない、多少第7制空戦闘団が奇襲を受けたとはいえこれ程とは……………。

 

「魔力探知レーダーより報告、敵編隊200機来ます!!」

 

「我が艦隊のエアカバーはどうなっている?!」

 

「ムー海軍の戦闘機60機です!!」

 

「なんと……………、丸裸も同然じゃないか…………。」

 

確かにムーはミリシアルに次いで世界第二位の実力を持つ列強である。しかしムーとミリシアルには大きな差があった、それは戦闘機を見ればはっきり解るだろう、旧式機ですら『マリン』を大きく凌駕する。

そしてその旧式機より強力な戦闘機を落とすグラ・バルカスの戦闘、『マリン』が何十機居ようが何百機居ようが物の数にも入らないだろう。

パテスの額に汗が流れ、手は小刻みに震える。一体この状況をどう乗り切る?カルトアルパスを守るのは我々だけだと言うのに、自分の身すら守れる保証が無いじゃないか。彼の頭の中には絶望の二文字しか浮かんでこなかった。

 

「パンドーラ公国艦隊より通信、我が勝利を貴艦に献上す!!」

 

「バカ共が、貴様らに何が出来るって言うんだ…………。」

 

パンドーラから入ってきた場違いな通信に、ニウムは不快感を露にして罵倒した。戦列艦ごときが何が出来ると言うのだ、貴様らはただのお荷物かデコイにしかならないと言うのに。

 

「対空監視員より報告、敵機多数12時より来ます!!」

 

「来たか、対空戦闘用意!!」

 

監視員からの報告を受け、ニウムは頭を切り替える。彼の命令を受け、重巡洋装甲艦『ゲイシャルグ』に搭載されている10.2cm単装高角砲4基が旋回した。『ゲイシャルグ』は『ロンゴミニアド』と同じシルバー級に属する巡洋艦であったが、『ゲイシャルグ』は前期生産型である。しかも改装が遅れて居る為に単装高角砲が搭載されているままなのだ。第18巡洋艦戦隊の各艦も高角砲を向けるが、全ての艦が単装砲である。

 

「我が艦隊だけが、まともな対空戦闘を行えそうですね。」

 

「あぁ、各国の艦隊は期待できんな。」

 

彼等二人の言葉は、たった数時間後に現実の物となった。まず先程の通信を行ったパンドーラ大魔導公国の艦隊が毒牙に掛かる、彼等の艦隊は『シリウス』の12.7mm機銃だけであっさりと撃沈したのだ。木っ端微塵と言っても良い最後であり、生存者は誰一人として居なかった。

 

「チッ!!やはり全滅したか!!」

 

『ニグラート連合竜騎士団、劣勢!』

 

『ムー戦闘機、また一機撃墜された!!』

 

『アガルタ法国艦隊、遠距離魔法戦を開始!!』

 

数々の凶法が魔信から入り、魔信通信士官の顔がますます真っ青になって行く。そして最後には殆どの艦隊が壊滅した事を告げ、パテスとニウムは絶望の縁に立たされた。

 

「西方低空から敵機接近!!機数24!!」

 

「低空、低空だと?!何をするつもりだ?」

 

パテスは敵機が取った行動が全く理解できなかった。爆撃と言えば上空から落とす水平爆撃と、急降下してピンポイントで叩く急降下爆撃が当たり前である。その両方に属しない攻撃方法、これは辺りづらい水平爆撃の命中率を上げるグラ・バルカス帝国の新戦法か?そうパテスは予想した。

 

「各国艦隊、低空敵機へ対空攻撃開始!!」

 

ムーの7.7mm機銃が、『しきしま』の35mm機銃が、ニグラートや各国の対空バリスタが24機の雷撃機へと襲いかかった。ひときわ目立ったのは『しきしま』の35mm機銃で、敵3機が一瞬の内に火だるまになった。

 

「ヒュー!!日本の魔光砲手は対空射撃が上手いな。」

 

「魔光砲の数が一門な辺り、少数精鋭主義を取っているんだろう。」

 

「俺達も負けてらんねぇな、攻撃開始!!」

 

「『しきしま』へ打電!!貴艦の勇戦に感服す、さらなる戦果拡大を期待す!!」

 

「『しきしま』より返信。貴艦隊も中々なり、より一層の奮闘を期待する。」

 

実際はFCS(射撃管制装置)による補助管制が大きい所があり、別に少数精鋭主義を取っている訳でもないのだが。ミリシアルの射撃手達に良い誤解が生まれ、『しきしま』に触発されて奮戦する。

 

「敵機一機撃墜!!続いて別目標へ移る!!」

 

「敵機が爆弾を投棄したぞぉ!!」

 

「…………………何がしたかったんだ?あいつら。」

 

当然第零艦隊の情報はこの時入っては居ない。彼らは何故態々低空飛行までして接近し、最終的には全機が諦めて爆弾を投棄する愚を犯したのか全くわからなかった。意味が無さすぎる、グラ・バルカス人は変な習性でも有ると言うのか。

 

「海中から何かが来ます!!航跡多数!!」

 

「回避せよ!!」

 

パテスに言われるまでもなく、各巡洋艦の艦長は各自の判断で回避行動を取り始めた。二線級の艦隊と言えど、歴戦の艦長には代わりなくある種の勘と言うものが彼等にはあったのである。しかし20機近くの攻撃機達は全機が全く同じタイミングで魚雷を発射し、まるで隙がない状態であった。

 

「巡洋艦『ゲイボー』被弾!!」

 

まず最初に被害を受けたのは『ゲイボー』であった。彼女は魚雷を同時に二本も受け、急速に速度が低下した。彼女は必然的に魚雷に当たりやすい状態となり、そこへ魚雷が弾薬庫へ直撃した。元々巡洋艦は戦艦に対して防御力が弱い上に、ミリシアルは対水雷防御が全くなされていない。おまけに弾薬庫と言う致命的な部分の被弾と言う、不幸に不幸が重なって『ゲイボー』は数分の内に轟沈した。

 

「『ゲイボー』轟沈!!『アーイン』航行不能!!」

 

艦橋に居た各艦長とパテスは、あまりの光景に黙り込んでしまった。航空攻撃が軍艦に対して大きな損害を与えうる事と、『ゲイボー』の末路が余りにも悲惨な為に次は我が身かと思ってしまった。

 

 

「『グレードアトラスター』接近、もうすぐ砲戦距離に入ります!!」

 

「一隻、だけだと………………?」

 

各巡洋艦の艦長は困惑した、なぜ戦艦がたった一隻で戦いを挑んでくると言うのだ?護衛も無しに勝てると高を括るっているのか、それとも第零艦隊の奮闘で参加艦艇数が減っているのか。

 

「それがどうした!!全艦対艦戦闘用意。各艦隊、最大戦速!!敵は巨大な戦艦だが、我が世界最強国家の意地を見せつけるぞ!!」

 

パテスの声を直で、もしくは魔信を通して聞いた各巡洋艦の乗組員は自分達がなすべき事を思い出す。怖じ気づく暇はないのだ、カルトアルパスの守護者たるは我らなのだ。ここで戦わずしてどうする?我々は世界の王者たる神聖ミリシアル帝国ぞ!!

 

「総員気を張れ!!あんな戦艦一隻に何を尻込みしてる?!奴等を海に叩き込んでやれ!!」

 

「人を嘗めきっているヤワな奴の腹を食い破れ!!俺達は敵に食らいつくシャチとなるぞ!!」

 

「突撃だ、突撃!!こうなりゃ道連れだ、『グレードアトラスター』がなんだ!!」

 

敵を前にして乗組員達の士気が高まって行く、それはまるで古代魔王を倒した勇者の如く。神がその様に作りたもうた戦士の様な勇ましさで、彼等彼女等は全力を尽くそうとする!!

 

「敵艦との距離約8.1NM(約15km)!!」

 

「対艦攻撃、準備開始!!完了次第、各艦の判断で攻撃せよ!!敵をここで撃沈するのだ!!」

 

全ての魔導砲に魔力が注入され、20.3cm連装魔導砲も15.2cm連装魔導砲の区別なく敵へ指向する。魔導船(軽巡洋艦)『アスカロン』もそれは同じで、魔砲術士が魔力の充填と砲弾の属性を淡々と報告していた。3基搭載してある15.2cm連装砲は『グレードアトラスター』に指向されているが、本場の戦艦たる『グレードアトラスター』と比べると些かひ弱に見えた。

 

「我が艦の攻撃がどれだけ効くかな?副長。」

 

「敵の魔力障壁を和らげる効果が有りますし、炎上だって狙えますからね……………。」

 

戦艦を目の前にしても、艦長は泰然自若していた。本来なら戦艦と軽巡洋艦など勝負にもならないと言うのに、彼は自分の任務を果たそうとして居たのだ。それは『ブリューナク』の艦橋スタッフ全員もである。

 

「敵間発砲!!目標は旗艦の『ゲイシャルグ』です!!」

 

「主砲射撃準備そのまま、敵が『ゲイシャルグ』を狙っている間にやるぞ!!」

 

『ゲイシャルグ』の皆には済まないが、これもカルトアルパスの為だと『アスカロン』の艦長は心の中で謝罪した。今は目の前に居るバケモノを下さねばならない、その為には何が有ろうと全力を出すとの心意気である。

 

「主砲発射あぁぁぁぁ!!」

 

第18巡洋艦戦隊の各艦が砲撃を開始した、数多の砲弾が戦士達の思いを乗せて飛翔する。それはグレードアトラスターの高角砲や機銃に直撃し、原型も留めないほど破壊しつくすのだった。

 

「どうだ?!どうなったのだ?!」

 

爆風が晴れ、視界が開ける。するとそこに居たのは速力を落とさずに未だに砲口を向ける、ほぼ無傷の巨大戦艦の姿がそこにはあった。確かに高角砲やらは破壊している、ただし致命傷を与える所までは行っていない。まさか!!我々の行動はほぼ無意味だと言うのか?!

 

「クソッ!!やはり巡洋艦じゃあ戦艦には太刀打ちできん!!」

 

「敵艦発砲!!あっ、ああぁぁぁぁ?!」

 

「どうした?!報告はしっかりとしないか!!」

 

急に叫び声を上げた見張り員を副長は怒鳴った、今は驚いたりしている暇はないと言うのに。何があってその様に錯乱しているのか全くわからなかった。

 

「『ゲイシャルグ』が、『ゲイシャルグ』がぁ!!」

 

「『ゲイシャルグ』がどうした…………、なあぁぁっ?!」

 

ほんの一瞬後に、副長も見張り員と同じ間抜けな叫び声を上げた。彼等の目の前には、『グレードアトラスター』によって艦首を裂かれた『ゲイシャルグ』の姿があった。

 

「なっ、何と言うことだ……………、38.1cm砲ですらああはならんと言うのに……………。」

 

「『ゲイシャルグ』総員退艦命令下令!!三番艦に旗艦が変更されます!!」

 

艦長以外の艦橋スタッフは、旗艦が変更した事にあまり関心を寄せなかった。目の前の『ゲイシャルグ』の悲惨さが忘れられないからである、だが次に入ってくる報告によって無理矢理現実へ引き戻された。

 

「敵艦発砲!!目標は本艦です!!」

 

「取りかじ一杯!!全力回避!!」

 

『ゲイシャルグ』を一瞬にして撃沈した戦艦は、『アスカロン』へと標的を変えた。なにしろ近場で脅威度が高かったからである。まさしく死刑宣告とも言える報告を受け、艦長は急いで回避運動を始めたのだ。

 

「第一斉射は当たりは────」

 

そして彼の言葉は急に遮られた、それを疑問に思う者は誰一人として居ない。急に床がたわんだかと思うと、次の瞬間には彼等の意識は刈り取られてしまっていた。

『グレードアトラスター』の放った一撃は、『アスカロン』の艦橋基部へと命中して爆発。下から突き上げる様な爆発が艦橋スタッフを全滅させたのだった。艦橋を失いつつも航行する『アスカロン』の姿は、一種の悲壮感を漂わせる。それは国を守れずして斬首された、騎士の様であった。

その他の艦も直ぐ様『アスカロン』と似たような最後を迎え、どの一隻も護国の戦士となることが叶わずに倒れ行くのであった。

 




グレード・アトラスターの猛攻になすすべなく、その身を海に横たえる事となった第18巡洋艦戦隊。グラ・バルカスの攻撃は各国の艦隊に留まらず、カルトアルパスに住まう者達にも及んだ。

次回、巣立ちの時。お楽しみに!!


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