そんなの見てられねぇという方は回れ右です。
作者は小説執筆ド素人かつ文才など無い人です。
なので、日本語や表現が所々おかしいと思います。
もしそれらを見つけてくださったら感想欄にて教えてくださるとありがたいです。
その騎士の現状を表すには、「満身創痍」という言葉が最もふさわしかっただろう。
かつては美しく銀色に輝いていたであろう鎧は薄汚れ、左腕は負傷しているのかプラプラと不自然にぶら下がり、息も絶え絶えという有り様だった。
しかし、それでも彼はその右手に握っている身の丈程もある大剣を決して手離す事は無く、狼の意匠が施された兜の中から眼前にいる自らが打ち倒すべき存在を、決して闘志が消えることの無い目で睨み付けていた。
騎士が見つめる先には、異様に大きな左腕、歪な角のような部位と所々に赤く光る複数の目を持つ、一目見ただけで尋常な者ではないと分かる巨大で不気味な魔物──『深淵の主マヌス』が、節くれだった古木の杖を持ちながら騎士──『深淵歩きアルトリウス』を油断無く見つめていた。
アルトリウスは、『最初の火』より王の力を見出だし、古竜から世界の支配者の地位を奪った『大王グウィン』の配下である四騎士の1人である。
かつて、彼は大王に付き従う1人の銀騎士でしかなかった。しかし、彼の才能と力は凡百のそれではなかった。古竜との戦いでその凄まじい剣さばきで目覚ましい活躍を遂げた。その功績が認められ、彼は同じように銀騎士でありながら古竜との戦いで活躍した後の『竜狩りのオーンスタイン』と共に大王の最強の配下である四騎士の1人となったのだった。
彼はその後、四騎士としての務めを果たすと同時に、小人の罠にかかっていた灰色の子狼に、人語を解する白猫と友になった。本来ならば決して心を開かぬ筈の野生の狼と白猫がアルトリウスと親友になれたのは、彼の動物に好かれやすい性質と、アルトリウスの優しい性格に彼らが絆された事よるものだった。
平和な日々が続いていたが、唐突にそれは崩れ去った。小ロンドを治めていた四人の公王が、世界蛇──『闇撫でのカアス』に唆されてその身に宿る【ダークソウル】を暴走させたのである。彼らは、世界蛇により増長された神々への負の感情を爆発させた。その凄まじき狂気と彼らの【ダークソウル】が合わさり、公王たちを中心に『深淵』が産まれた。
小ロンドは深淵に包まれ、公王たちの騎士は人間性を求める恐ろしい存在である『ダークレイス』へと変貌を遂げた。彼らは深淵の本質である神々への憎悪のままに、地下にある小ロンドから地上へと出た。だが、それを阻む者が居た。四騎士の1人であるアルトリウスである。彼は光の祝福が施された大剣と大盾を巧みに使い、瞬く間にダークレイス達を屠った。そして、かねてより小人の内に宿る【ダークソウル】を警戒していた大王は、小ロンドを封印の魔術を施した水で水没させて、『深淵』を廃墟ごと封印した。
斯くして、危機は去ったかに見えた。
だがまだ終わりでは無かった。
古い黄金の魔術の国ウーラシールにて深淵の発生が確認されたのだ。
この知らせに、アルトリウスは小ロンドにて深淵の眷属を殲滅した功績からウーラシールの深淵討伐を命じられた。親友2人を連れて、彼らはウーラシールへと向かった。
彼が到着した頃には、ウーラシールはすでに国としての形を成していなかった。
深淵に侵された住民は頭部が肥大化して正気を失い、ただただ他の生物を襲うだけの亡者となっていた。
この惨状にアルトリウスは心を痛めながら、ウーラシール王家の霊廟で出会った、キノコ人の乳母のエリザベスから王女である『宵闇』が謎の巨大な手に拐われた事を伝えられた。
彼はそれを聞き、宵闇を救い出すことをエリザベスに約束し、元凶が潜んでいるだろう深淵の穴へ向けて進んだ。
深淵とは、小人たちの持つ【ダークソウル】に、異常に強い感情が合わさることで発生する、正しく闇そのものである。神族であるアルトリウスにとっては触れただけで体を蝕む猛毒と変わりなく、考えなしに突撃するのは自殺行為であった。
そこで彼は、ウーラシールを探索していた時に出会った深淵の魔物と契約を交わし、深淵へのある程度の耐性を手に入れたのだった。
友の狼と共に深淵の穴を進む。道中の元住民達をせめてもの慈悲と切り捨て、奥へ奥へと進んだ。だがその進撃も、道中に突然表れた黒い影のような敵によって止まることとなった。
そこでアルトリウスは苦渋の決断として、祝福の加護が施された大盾を触媒に、魔術の使い手でもあったもう1人の友である白猫に結界を張らせ、狼のことを託した。この深淵を誰かが通りかかるとは思えないが、彼はそれに賭けた。賭けるしか、なかったのだ。そうして彼は、狼の悲しげな鳴き声を背に最後の戦いに身を投じたのだった。
エリザベスから聞いた、宵闇を連れ去ったとされる巨大な腕の正体は『深淵の主マヌス』。元は人であった存在である。
ウーラシールの地下には、その存在が忘れ去られる程の古代から1人の人間が封印されていた。その人間の情報はほぼ無いに等しかった。確かなのは、かつての四人の公王よりも深く、暗い【ダークソウル】を持っているということ。
その闇に目を付けた『闇撫でのカアス』は、何も知らないウーラシールの民を唆し、
結果として、かつての小ロンドと同じことがウーラシールで起こってしまったのだった。
「はぁ……はぁ……」
長らく深淵を浸かったために疲弊した体に、戦いの中で無理に相手の攻撃を受けたために、使い物にならなくなった左腕。彼に、この戦いに勝てる要素などどこにも無かった。
並の精神力の持ち主ならば、諦めて戦士喪失してもおかしくない状況である。
「はぁ……はぁ……」
しかし、彼はまだ剣を握り、膝を着ける事はなく、次の攻撃の機会を窺っていた。
一体何が彼をそうさせるのだろうか?
深淵の狂気が彼をおかしくしてしまったのか?
──否 それは違う
「帰るんだ……」
彼を未だに奮い起たせていたのは、深淵の暗闇に置いてきてしまった友たちへの思いと、そんな事態に陥ってしまった情けない自分への怒りだった。
絶対に生きて帰ってやるという思いが、彼の心の原動力となっていた。
「帰るんだ……帰らなきゃいけないんだ……!」
右手の剣をしっかりと握り、肩に担ぐ。
両足に力を込め、姿勢を低くする。
その姿は、まさしく獲物を捕えんとする狼であった。
「だから……」
瞬間、地面を全力で踏みしめ、
「ここからいなくなれぇぇぇぇぇ!!!!」
マヌスの視界からアルトリウスが消えた。
困惑するマヌスの頭上に飛び上がったアルトリウスは、そのまま空中で体を捻り、今引き出せる最大の力で右手の剣を振るった。
腕力に重力と回転が加わった力で振られた刃は、見事マヌスの皮膚を切り裂く──────ことは、無かった。
「何!?」
闇の者に対して絶大な効果を発揮するはずの彼の大剣は、マヌスの剛健な皮膚に止められてしまった。
大剣にかけられていた強力な祝福は、彼が深淵の魔物と契約したために、とうの昔に失われてしまっていた。
この事態に、さすがのアルトリウスも一瞬明確な隙を晒してしまった。
アルトリウスは、強靭な意志により決して怯まず、
大剣を振るえばまさしく無双であったという。
故に、その刃が通らないということは彼を一瞬でも動揺させるのには十分であった。
「ぐあ!?」
その隙をマヌスが見逃すはずもなく、直ぐにその異常に発達した左腕に捕らわれてしまった。
そして、
「グッ、がぁぁぁぁぁぁ!!!!!????」
止めと言わんばかりに、マヌスはアルトリウスを凄まじい力で握り地面へと投げ捨て、勝利の雄叫びをあげた。
もはやアルトリウスは、虫の息だった。
鎧はひしゃげ、内臓器官はボロボロで、声を出すことや動くことなど不可能だった。寧ろこれで生きてるのがおかしいぐらいだった。
そして、アルトリウスにまだ息がある事に気付いたマヌスが、この死に損ないを己の眷属にせんと青黒いヘドロの様な物体を浴びさせた。
周囲に広がる深淵の深く暗い色は、彼のこれからの未来を暗示しているかの様だった。
「(シフ……アルヴィナ……)」
肉体が、作り変えられてゆく
深淵に呑まれた者は、例外無しにダークレイスへと変化した。騎士の敗北はもはや避けられぬ運命であった。
深淵を狩るために来たものが逆に深淵に堕ちるとは、なんという悲劇だろうか。
「(こんな不甲斐ない友で、すまない……)」
薄れてゆく意識の中で、彼の頭には最後まで親友たちの顔があった。
ウーラシール市街
かつては荘厳で美しい建造物が建ち並ぶ都市だったが、現在は深淵の影響で建物に青黒いヘドロのような物が絡み付くなど、見る影もない有り様だ。
そんな場所を、かつてアルトリウス
「■■■……」
かつての勇ましく美しい英雄はそこになく、常にぽたりぽたりと青黒い油のような液体を撒き散らしながら、目に写るものを全て殺し尽くす狂戦士がそこにはいた。
あの誇り高き四騎士は、皮肉な事に嘗て自分が狩っていた存在にその身を堕とし、同じく深淵に堕ちた存在である筈の市民を殺し続けていた。
こうして、『深淵歩きアルトリウス』は『深淵の主マヌス』に敗れ、正気を失ってしまった。
「アル兄さん」
「ん? どうかしたのかアルトリア?」
「剣の修練に付き合ってもらってもいいですか?」
「む、私か?
だが、お前も見たから知っていると思うが、私の技は非常に独特だから修練には向かないぞ?
私なんかよりもケイ兄さんの方がお前のためになると思うが……」
「いいえ、確かにケイ兄さんとの修練でも己の剣筋を高めることはできますが、王たる者はありとあらゆる場面に対処出来なければなりません。
アル兄さんの獣の様な剣術の使い手に遭遇した場合も考慮しての修練です」
「むぅ、そこまで言われたら兄として断るわけにはいかないな。
よし、着いてこいアルトリアよ。
このアルトリウスの剣術、存分に見せてやろう」
「はい、ありがとうございます。……やった」
SSを書くことって大変なんですね