◆side 出久
お昼休みも終わり会場に戻ると、響香を含むA組の女子たちがチアリーダーの恰好で立っていた。
恥ずかしがってる響香、可愛い
「響香!?一体どうしたの?」
「出久~上鳴と峰田に騙された....めっちゃはずい」
顔を真っ赤にして、抱き着いてきた。
「大丈夫、似合ってるよ!」
少しだけ心の中で上鳴君たちに感謝したのは響香には秘密だ。
◆◆◆◆side 響香
何かがおかしいとは思った。
ヤオモモいわく、上鳴と峰田から相澤先生の伝言を預かったらしいけど、相澤先生はそういうことは直接言う気がするし、仮にあっても上鳴と峯田には頼まないだろう。
でも、ヤオモモはやる気だし、葉隠もノリノリで言い出せなかった。
結論から言えば、私の予想は間違っていなかった。
こっぱずかしい格好で会場に出ると、マイク先生が『なにやってんだ、A組!』って言っていた。
こんな格好出久に見られたくない。
そう思っていると、出会ってしまうのがこの世の中である。
「響香!?一体どうしたの?」
「出久~上鳴と峯田に騙された....めっちゃはずい」
思わず抱き着いてしまった。
やっぱり落ち着くな、出久は。
「大丈夫、似合ってるよ!」
出久、やさしいな。
他の男子と大違い。
出久と離れると、A組女子たちが集まってきた。
「ねえねえ、響香ちゃん。緑谷といい感じだね~」
「ちょ、そんなんじゃないから!」
「嘘だ~さっきの響香ちゃん、恋する乙女の顔してたよ~」
「えっ、ウチそんな顔してたの?」
顔が熱い。そんなんじゃないのに。
「あっ、顔真っ赤~」
「いいから、さっさと着替えるよ!」
この場を何とか切り抜けなきゃ。
「せっかくだし楽しもう!」
無理そうだな....
◆side 出久
レクリエーションの時間も終わり、トーナメントが発表される。
決勝は毎年一対一のガチバトル。
僕の順番は、一番最初。緊張する。
僕の最初の対戦相手は、宣戦布告しに来た普通科の心操という生徒だった。
「緑谷、ちょっと...」
尾白君が何か言いたげに肩をたたいた。
「心操って奴と口をきくな。あいつに話しかけられてから記憶がないんだ。たぶんそういう個性。ただちょっとした衝撃でとけるっぽい」
「ありがとう、尾白君!」
なるほど、会話したら即アウト。厄介な個性だ。
◆no side
『さぁさぁ、皆さんお待たせ!いよいよ決勝!第一回戦の対戦カードは.....これだ!
巷で噂の仮面ライダー!一回戦二回戦ともに一位、ヒーロー科緑谷出久VSごめんいまだ目立った活躍なし、普通科心操人使。』
予選を勝ち抜いてきた戦士が、コンクリートの戦場で相まみえる。
『レディィィィ、スタート!!!』
試合が始まった瞬間、心操が口を開く。
「いいよなぁ。お前みたいに恵まれた人間は。」
「・・・」
緑谷は、彼の個性を知っているので一切の声を発しない。
だが、心操も無策ではない。
「お前のクラスの尻尾のやつ。あいつバカだよなぁ、自分のチャンスをドブに捨てるなんてさあ」
「....なんてことを」
緑谷は仲間思いの男であった。
自分のことをけなされても耐えられるが、大切な仲間をけなされることは耐えられなかったのだ。
『緑谷完全停止!もしかしてあの心操って奴結構やべぇ奴だったのか!?』
『だからあの入試は合理的じゃないんだ』
相澤消太の言うことはもっともだ。
彼らのような人間相手にしか効かない個性ではロボットを倒す入試はクリアできない。
しかし、だからと言って勝ちを譲れる出久ではない。
「そのまま後ろを向いて、場外に出ろ」
個性にかかった出久は、言葉の通り場外に歩きだす。
だが、出久も無策ではない。
場外まであと数メートルのところで、事は起きた。
「ガブっ!」
突如現れたキバットが出久の手にかみつき、出久は洗脳状態から解放される。
「変身!」
彼は
「キバット、僕が万が一彼の個性にかかったら、僕の手にかみついてくれ」
と試合前に示し合わせていたのだ。
『緑谷、とどまった!』
「まったく、こんなギリギリでやることもないじゃないか」
「その方が盛り上がるだろ」
出久が変身したことで、形勢が一気に逆転した。
「まったく、これだから恵まれた人間は...」
出久はもう彼の言葉に耳を貸さない。
出久はそのまま、背負い投げの体制で、心操を投げ飛ばす。
「心操君場外!よって勝者、緑谷出久!」
ミッドナイトによって出久の勝利が宣言される。
出久が心操に駆け寄る
「心操君、僕は恵まれてなんかいないよ。それに、....周りの声を聴いてごらん」
心操が周りの声に意識を向けると、プロヒーローたちの声が聞こえてきた。
「うちの事務所に欲しいな」
「あれで普通科って、雄英も見る目ねぇな」
「最高峰は普通科まで最高峰なんだな」
「緑谷、て言ったな。いつか、ヒーロー科に行ってお前を超える。その時は覚悟しておけ!」
二人は、熱い握手を交わし、ミッドナイトは「青いわ~」と身もだえたのだった。
◆no side
『さて、次のカードは~一回戦二回戦ともに上位に食い込む大活躍!ヒーロー科轟焦凍!VS結構活躍してるのにぬぐい切れないその地味さはなんだー!ヒーロー科瀬呂範太!』
「ひでぇいいようだな」
マイクに地味認定された瀬呂は、不貞腐れたように言う。
『レディィィィ、スタート!!!』
試合が始まると同時に、瀬呂の肘からテープが伸び、轟の胴体に絡みつく。
「勝てる気はしないけど、負ける気もねぇ!!」
テープを使い、場外に引き寄せるが、寸でのところで凍り付く。
冷え切ったテープは、もろく崩れ去ってしまう。
そして、会場の屋根まで届く巨大な氷壁が瀬呂を包み込む。
「すまねぇ、やりすぎた」
轟が申し訳なさそうに言うが瀬呂には届かない。
「瀬呂君、動ける?」
自身も半身凍り付きながら、ミッドナイトは尋ねる。
「動けるわけないでしょ....てか痛え」
「瀬呂君、行動不能!よって勝者、轟焦凍!」
試合が終わり、自身が出した氷を解かす彼の背中は、どこか寂しげであった。
◆no side
『さあ、ステージが乾いたところで、第三戦!金髪の電撃使い、なんかチャラそうヒーロー科上鳴電気VSB組から送られてきた最強の刺客、ヒーロー科塩崎茨』
「すみません!私は真剣に勝ちに来ているだけであって刺客というわけでは....」
塩崎は手を上げ、主張する。
『わかった、悪かった!そんじゃ、スタァァァトォォ!』
マイクは無理やりテンションを上げ、試合を開始する。
「なぁなぁ、これ終わったら一緒にどっかいかね?多分一瞬でおわっから」
という上鳴。やはりチャラい。
「無差別放電130万ボルト!」
上鳴は、自分の出せる最大限の電撃を放つが、事前に塩崎が飛ばしておいた彼女の個性であるつるが、避雷針となる。
次第に上鳴は阿保になってしまい、つるで縛り上げられる。
『瞬・殺!』
上鳴、彼の言葉は彼の思いもしない形で実現した。
「上鳴君行動不能!よって勝者、塩崎茨!」
◆no side
『さあ、気を取り直して第四戦!サポートアイテムでフル装備!サポート科発目明VSザ・中堅。ヒーロー科飯田天哉!』
紹介が終わると、飯田は謎のサポートアイテムを腰に装着する。
「飯田君、それは?」
ヒーロー科は原則サポートアイテムは使えない。
「発目君が私だけつけていたらフェアじゃないからつけてくれといわれまして..... 」
「う~ん、まあ対戦相手が了承してるからいいか!」
雄英はこういうところも自由である。
『それじゃ、まとまったとこで、レディィィィ、スタート!!!』
結論から言うとこの試合、試合ではなかった。
開始直後、飯田が個性を使い発目にかかるが、発目はサポートアイテムを駆使し攻撃をよけた。
その彼女の顔にはなぜかマイクが付いていた。
そう、彼女はこの試合で自分の作ったベイビーのプレゼンを始めたのだ。
一通り説明し終えると、颯爽とスタジアムから降り、飯田は「だましたなー」と叫ぶほかなかった。
◆no side
『さっきは拍子抜けしたけど、第五戦!ベルトしてても変身はしねぇぞ!ヒーロー科青山優雅!あの角からなんか出んの?ヒーロー科芦戸三奈!』
「うしし、初戦は楽勝だな!」
芦戸と青山は、初回のヒーロー基礎学でペアになった二人である。
それゆえ、彼女は青山の致命的な弱点を知っている。
『レディィィィ、スタート!!!』
試合開始直後から、青山のレーザーが、芦戸に向かって放たれ続けるが、彼女の華麗な身のこなしによって躱され続ける。
焦った青山は、レーザーを1秒以上射出してしまう。
「お、おなかが....」
彼の個性は、1秒以上射出するとおなかを下してしまうのだ。
「今だ!」
芦戸の酸が青山のベルトにかかる。
「あぁ、僕のベルトが!ズボンも!」
その隙に懐に潜り込んだ芦戸の強烈なアッパーが炸裂し、失神してしまった。
「青山君失神!よって勝者芦戸三奈!」
◆no side
『第六試合!ファンガイアハンターとヒーローの卵の二足の草鞋!ヒーロー科耳郎響香VS万能創造!推薦入学者とあって、その実力は折り紙付き!ヒーロー科八百万百!このキャットファイトを制するのはどちらか!レディィィィ、スタート!!!』
試合開始直後、響香が一気に距離を詰める。
八百万は、時間のかからないシンプルな盾を創造し、防御に徹すが、
「ヤオモモ、ごめんね!」
響香のイヤホンジャックが、盾に突き刺さり粉々に割れてしまう。
「そんな!ジュラルミン製の盾が.....」
咄嗟に次の盾を創造し、武器を作る時間を稼ごうとするが、結果は変わらない。
仕方なく簡単に作れる鉄パイプを構え、反撃に出る。
「これで...」
しかし、響香は鉄パイプを受け止めると、八百万の手から引きはがした。
『ここで耳郎、太刀取りだ!!』
「ごめん。でも、ウチも負けられないから!」
パイプで胴体をたたき、うずくまったところを、場外に向かって背負い投げる。
「八百万さん、場外!よって勝者耳郎響香!」
◆no side
『さて続いては、個性丸被り対決!男気一筋鋼鉄!ヒーロー科鉄哲徹鐵!VS男気一筋硬化!ヒーロー科切島鋭児郎!』
「紹介までダダ被りかよ....」
『第七戦レディィィィ、スタート!!!』
試合が始まり、お互いがそれぞれの個性で固くなった体を打ち付け合う。
いわゆる持久戦という奴にもつれ込んだ。
個性や性格がそっくりな二人は、実力もそっくりらしく試合は拮抗した状態が続き、ついに両方倒れた。
「両者ダウン!よって、後でサドンデスを行います!」
◆side 出久
第七戦中、選手控室。
そこには、名前とは裏腹に、険しい顔をした麗日さんがいた。
僕は、次の試合かっちゃんと対決することになった麗日さんに会いに来てた。
ついでにアドバイスでもしようかと考えていたのだが、どうやら必要なさそうだ。
彼女は決意を決めた表情で、「決勝で会おうぜ!」とサムズアップし、控室から出て行った。
◆no side
『続いて第8試合!中学からちょっとした有名人!堅気の顔じゃねぇ!ヒーロー科爆豪勝己!VS俺こっち応援したい...ヒーロー科麗日お茶子!』
ある意味、最も不穏な組み合わせ。
麗日は、あまり戦闘系の個性ではないうえに、目指しているのが13号のような災害救助系のヒーローで、戦闘力はそれほどない。
一方で爆豪は、爆破というかなり強力な個性で、目指しているのもオールマイトのような、敵をぶっ飛ばすヒーロー。根っからの才能マンで、戦闘力もかなり高い。
それに、彼は相手が女子だからと言って、手加減をしたりする男ではない。
観客席では見てられないと目をふさぐものもちらちらいた
「お前浮かす奴だな、丸顔」
試合開始直後から、麗日は爆豪との距離を詰めようと接近し続ける。
彼女の個性は、触れなければ発動できない。
が、爆豪は接近を許さないように容赦なく爆破を繰り出す。
「そこだ!」
爆発の煙幕から、特徴的なジャージの影が見え、爆豪はそこに向かって爆破する。
が、そこにあったのはジャージだけであった。
『上着を這わせておとりにした!』
当の麗日は、爆豪の後ろに回り込み、手を伸ばすが直前で気づかれてしまう。
振り向きざまに放たれた爆破が、麗日を直撃する。
その時、観客席から声が上がった。
「おい!実力あんならさっさと場外に投げ出すなりなんなりしろよ!女の子いたぶって遊んでんじゃねぇよ!」
この叫びを皮切りに、爆豪に対するブーイングが始まった。
その時。
『おい!遊んでるって言ったのプロか?素面で言ってんなら、かえって転職サイトでも見とけ!爆豪は相手の実力認めてるから油断できねぇんだよ!』
相澤の声に、プロヒーローたちが閉口する。
「ありがとう、油断しないでくれて」
彼女はそう言うと、両手を合わせる。
上を見れば、無数のがれきが宙に浮かんでいた。
彼女は打点を低く突進し続けることによって、がれきを量産し、それを悟らせなかった。
無数のがれきが、爆豪に向かって降り注ぐ。
回避にしろ、迎撃にしろ隙が生まれる。
その隙に、麗日が触れられれば、彼の体を宙に浮かし場外に押し出せる。
しかし、彼の実力は麗日の想定を凌駕していた。
彼は、宙に向けて大爆発を起こし、その爆風で麗日を吹き飛ばし、なおかつがれきを消し炭にした。
限界を迎えた彼女は力なく倒れる。
「麗日さん行動不能!よって勝者爆豪勝己!」
トーナメント一回戦が終わった。
no side が連続してるのは気にしないでください