◆side 出久
トーナメントも一回戦が終わり、しばしの休憩。
早めに切り上げ、選手控室に向かう途中、角から出てきた大柄の男性とぶつかってしまった。
「あ、すいません!」
よく見るとその男性は、No.2ヒーローで轟君の父親、エンデヴァーだった。
今彼と会うと、先ほど轟君に言われたことを思い出す。
「....ん?あぁいた。君の活躍、見せてもらった。仮面ライダーの力...パワーだけならオールマイトも敵じゃない。ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合はテストヘッドとしていい。くれぐれもみっともない試合はしないでくれよ」
轟君の言った通り、考え方がおかしい。
そんなこと思っても本人に言いに来るなよ。
「僕はキバです。オールマイトじゃない。轟君も、あなたじゃない」
僕は静かにそういうと、控室に向かった。
『さあさあ休憩も終わり、第二回戦第一戦!これまでのすべての競技で一位を取り続けた、その実力は本物!ヒーロー科緑谷出久VS一回戦で見せた驚異的な氷塊!ヒーロー科轟焦凍!!』
マイク先生のアナウンスが入り僕らはステージ上でにらみ合う。
『レディィィィィィスタァァァト!!!!!!』
開始の合図と同時に、一回戦の時に見せた大氷壁が僕に迫る。
「キバット!」
「いくぜぇ!ガブっ」
「変身!」
「ドッガハンマー!」
変身直後、僕の体は完全に氷の中にあった
『緑谷、氷に飲まれた!仮面ライダーも大氷壁の前に散るのか!?』
もちろんそんなんでやられるほど甘い鍛え方はしていない。
氷の中で無理やり腕を動かすと、氷はいとも簡単に崩れた。
ある程度の範囲を壊し、ドッガハンマーをふるう。
一振りするごとに辺りに轟音が響き、3回目の轟音で大氷壁に大きな穴が開いた。
この間僅か5秒。
穴から這い出た僕は、バッシャーフエッスルをつ取り出す。
「バッシャーマグナム!」
笛の音とともに現れたバッシャーマグナムを手に取り、轟君に向ける。
轟君は氷を出し続けるが、バッシャーの水弾で壊し続ける。
向こうも必殺技が聞かなかった焦りからか、動きが単調になっている。
いや、違う。
よく見ると彼の体には霜が降り始めていた。
動きも鈍い。
個性の反動か....
「ねぇ、体に霜おりてるよ。個性だって身体能力の一つ。君にだって限度はあるんだろ。で、それって左の炎使えば解決するんじゃないの?」
「チッ、親父に金でも握らされたか。親父の力は、使わね「ふざけんな!」
「生まれ持った力があるのに使わないとか、嫌みかよ!さっきの話も、まるで自分が一番恵まれてないみたいな言い方しやがって...
世の中には、両親に会いたくても会えない人もいるんだぞ!さっきの言い方だと、どうせそのあと会ってないんだろ!会えるのに会わないとか、僕に対する当てつけか!父親の顔を知らない子供の気持ちを考えたことがあるか?母親が今生きているのかどうかさえ分からない子供の気持ちを考えたことがあるか?....僕のと違って、それは
君の、力じゃないか!!」
◆side 轟
『レディィィィィィスタァァァト!!!!!!』
マイク先生の、やたらうるさい合図と同時に俺は先制攻撃を仕掛ける。
緑谷は変身させなければ脅威ではない。
つまり、変身する前に体の自由を奪ってしまえばいいのだ。
最大出力の氷で緑谷を閉じ込める。
『緑谷、氷に飲まれた!仮面ライダーも大氷壁の前に散るのか!?』
マイク先生のアナウンスが聞こえると同時だっただろうか、轟音が連続で3回鳴ると、俺の作った氷壁に大きな穴が開いた。
しまった、仕留めそこなった。
もうあれは出せない。
氷で牽制し続けるが、緑谷の取り出した緑色の銃で砕かれる。
寒い。
クソッ、使いすぎた。右半身が凍りだした。
「ねぇ、体に霜おりてるよ。個性だって身体能力の一つ。君にだって限度はあるんだろ。で、それって左の炎使えば解決するんじゃないの?」
お見通しってわけか。
「チッ、親父に金でも握らされたか。親父の力は、使わね「ふざけんな!」
「生まれ持った力があるのに使わないとか、嫌みかよ!さっきの話も、まるで自分が一番恵まれてないみたいな言い方しやがって...
世の中には、両親に会いたくても会えない人もいるんだぞ!さっきの言い方だと、どうせそのあと会ってないんだろ!会えるのに会わないとか、僕に対する当てつけか!父親の顔を知らない子供の気持ちを考えたことがあるか?母親が今生きているのかどうかさえ分からない子供の気持ちを考えたことがあるか?....僕のと違って、それは君の、力じゃないか!!」
「....っ!!」
あいつの話で、ずっと昔のことを思い出した。
俺の個性が出てすぐ。
母さんが精神を病む前。
親父の訓練が始まったころ。
「僕、お父さんみたいになりたくない!」
「でもヒーローにはなりたいんでしょ。いいのよ、気に捕らわれることなんてない。なりたい自分になっていいいんだよ」
優しい母の言葉。
「俺だって、ヒーローに」
気づくと俺は左炎を使っていた。
「どうなっても知らねぇぞ!」
体の霜が落ちていく。
体がまた動くようになっていく。
左の訓練はほとんどしていない。だから長くは使えない。
「焦凍ぉぉぉムグッ...」
親父の声がしたと思って顔を向けると、ガタイのいい男と、海兵の服を着た少年と、サングラスをかけた中年に連れていかれる親父がいた。
誰だかは知らねぇが、感謝しておく。
緑谷に視線を戻すと、いつの間にか赤い姿に戻った緑谷が、静かに言う。
「やっと本気を出してくれたね。僕も本気で迎え撃つよ!」
◆side 出久
「やっと本気を出してくれたね。僕も本気で迎え撃つよ!」
ウェイクアップフエッスルを取り出し、足にある赤い翼を解き放つ。
「ウェイクアップ!!」
僕のライダーキックと、轟君の炎が激突すると大爆発が起こった。
『おいおい何事だ!?』
『散々冷やされた空気が、一気に熱せられて膨張したんだろ』
相澤先生の冷静な解説が入る。
爆煙が晴れそこに立っていたのは.......
「轟君場外!よって勝者、緑谷出久!」
◆side 響香
出久と轟との試合中、耳がいいウチは二人の会話が丸聞こえだった。
轟も複雑な家庭事情で育っているらしいが、それよりも出久の方が私にはショックだった。
確かに出久は母親がいないことによるさみしさで泣きそうになっていたことはあるが、最近は減っていたので、立ち直ってると思っていた。
違った。
全然立ち直ってなんかいない。
きっとウチに心配させないように隠してたんだ。
それがあの場で爆発した。
ウチはあいつの親代わりになれているのだろうか?
そう思っていると、視界がゆがんて来て、ほほに熱いものがつたわった。
「耳郎さん!?どうなさったのですか?緑谷さんが勝ったのですよ?」
ヤオモモは優しいな。
ウチは彼女にありのままを話した。
彼女は何も言わず、すべて受け入れてくれた。
「....耳郎さん、無理して親代わりにならなくても、別の形もあるのではないのですか?」
「それって.....」
彼女の言いたいことは分かった。
それもいいかもしれない.....
そう思った。
◆side 轟
目が覚めると、見知らぬ天井が見えた。
「目が覚めたかい?」
雄英の白衣の天使、リカバリーガールの声が聞こえた。
どうやらここは保健室のようだ。
「....負けたのか」
クソッ、半分の力で優勝して親父を完全否定するとか言っておいてこの様か。
先の試合をじっくり噛み締める。
「生まれ持った力があるのに使わないとか、嫌みかよ!さっきの話も、まるで自分が一番恵まれてないみたいな言い方しやがって...
世の中には、両親に会いたくても会えない人もいるんだぞ!さっきの言い方だと、どうせそのあと会ってないんだろ!会えるのに会わないとか、僕に対する当てつけか!父親の顔を知らない子供の気持ちを考えたことがあるか?母親が今生きているのかどうかさえ分からない子供の気持ちを考えたことがあるか?....僕のと違って、それは君の、力じゃないか!!」
あいつの言葉が引っかかる。
最初の言葉は、前にあいつが「僕の力は個性じゃない」みたいなことを言っていたから、親から個性が受け継がれなかったのか。
だがその次の言葉はなんだ?
両親に会いたくても会えない人もいる
あいつはそのことをまるで自分のことのように言った。
自分のこと....
俺は大体理解した。
父親の顔を知らない子供、母親が今生きているのかどうかさえ分からない子供。
きっと自分のことだろう。
「俺はあいつになんてこと....」
俺にとっての親父のことのように、人には触れてほしくない地雷がある。
俺は、自分のエゴであいつの地雷を踏みまくってたんだ。