ガルパンバイク部のお話   作:日本を鳥戻す

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知波単学園戦車道隊長の西絹代は、「ウラヌス」と名付けたバイクに乗るのが趣味。
ある日、西に誘われてタンデムでツーリングに出かけた福田が、バイクの楽しさに目覚めるお話。



西と福田の海鮮焼きツーリング

「うん、これでよし。」

 

洗車した単車を拭きあげて、ピカピカになった私の単車。

 

今日は戦車道の訓練も休みだったし、天気も良かったので近場を軽く流そうと思って単車を引っ張り出したのだが、うっすらと埃をかぶっていたので、洗車することにした。

 

たかが洗車と思うことなかれ。隅々まで綺麗にしながら、ボルトやネジの緩みを確認することができる。今回も、風防を留めているナットが少し緩んでいるのに気づき、車載工具を使って締めなおした。走行中に風防がいきなり外れたらえらいことだ。

 

ずっと屈んだり、不自然な姿勢だったので、立ち上がって大きく伸びをしたところで、

 

「西隊長、こんにちはであります!」

 

と声をかけられた。

 

「おお、福田か。どこかに出かけていたのか?」

 

「はい、朝食を食べた後、腹ごなしの散歩をしておりました。」

 

オーバーオールにパーカーを羽織っているので普段とは少し雰囲気が変わっているが、こちらに向かって綺麗な敬礼をしているところ、やはり戦車道履修生だ。

 

「そうか。私はウラヌスで久々に少し走ろうと思ったんだが、汚れていたので洗車していたところだ。」

 

「西隊長の単車、格好いいであります。」

 

「うん、単車はいいぞ。これで走ると風を感じられるし、なにしろ爽快な気分になれる。」

 

「戦車に乗っている時も、キューポラから顔を出していると気持ちいいであります。」

 

「そうだな。でも、単車は戦車よりも速いぞ。それに、戦車は操縦手が動かしているが、単車は自分で運転するからな。」

 

実際、戦車に乗るときは周りの状況把握のために上半身を出しているが、やはり視界が開けているのは気持ちがいい。

 

「そうでありますか。」

 

さて、無事洗車も済んだし、昼食までには少し時間がある。

あ、そうだ。今日は週末だから、寮の食事は休みだった。じゃあ、どこか外に食べに行くか。

そんなことを考えて、ふと思いついた。

 

「福田、この後時間はあるか?」

 

「はい。休みなので部屋で読書でもしようと考えておりましたが。」

 

「じゃあ、一緒に出かけないか?お昼ご飯をどこかに食べに行こう。」

 

「ありがとうございます!喜んでご一緒させていただきます!」

 

「この単車でだ。」

 

「えっ!?」

 

「言っただろう。もともとどこかに走りに行こうと思ってたんだ。それが洗車になって、終わったところでお前に声をかけられた。これも何かの縁だろう。」

 

「しかし、私は単車はおろか、免許も持っておりません。」

 

「後ろに乗ればいい。それに今日は千葉港に停泊しているから、学園艦ではなく、本土に行って何か美味しいものを食べようではないか。」

 

「ほ、本当でありますか?嬉しいであります!」

 

「じゃあ、予備のヘルメットを取って来る。服装はそれでいいが、靴は踝まであるもののほうがいいぞ。あと、手袋も忘れずにな。」

 

「了解であります!すぐに支度して来ます!」

 

女子寮の玄関に向かって走る福田を見送って、単車を出しやすいところに動かしてから、私も福田のために予備のヘルメットを取りにいったん自室まで戻った。

 

靴を履きかえて出てきた福田にヘルメットを被せて、顎のストラップをきっちりと締めてやった。

どうやら荷物は、背中に背負った小さな背嚢に入れているらしい。

 

「では、戦車前進、じゃなかった、単車前進!」

 

「単車前進!」

 

戦車道の時もそうだが、必ず相手の指示は反復するのが癖になっている。

思わず「戦車」と言ってしまったが、今日は単車だったので言い直した。福田もそれに合わせてくれたので、思わず笑みがこぼれる。

 

「福田、腰にしっかり掴まっていろよ。」

 

少し走って、学園艦の昇降口に到着。丁度、陸地へと降りる時間だったらしく、女子寮を出て15分ほどですでに千葉市内を走っていた。

 

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さて、出発したのは良いがどこへ行こうか。

 

東京方面に走ってもつまらないし、そもそも車が多いから渋滞に遭う可能性もある。

そんなわけで、とりあえず16号線を房総半島の南に向かって走っている。

工業地帯の間を走る幹線道路のため、交通量は多いがそれなりにスムーズに流れていて、気が付けば姉ヶ崎辺りまで来ていた。

 

後ろの福田も、最初は怖かったのか、腰に腕をぎゅっと回して強張っていたが、慣れたようで、左右をキョロキョロしている。

あまりあてずっぽうで走るのも何なので、まずは目的地を決めようと思い、ウインカーを出してコンビニへと入った。

 

駐車場に入って、エンジンを切って単車から降りる。

1時間も走っていないが、2人乗りで緊張していたので、背伸びをする。

福田も同じことをしていて、顔を見合わせて笑った。

 

「さて、とりあえず何も考えずに走ってきたが、そろそろ目的地を決めないとな。」

 

「では、木更津あたりで海産物はいかがでしょうか?」

 

「いい考えだな。どこかあてはあるのか?」

 

「少々お待ち下さい。」

 

そう言うと、福田は背中の背嚢からなにやら取り出した。

 

「ん?それはなんだ」

 

「はい、すまーとほんであります。」

 

「ああ、すまほっていうやつか。生憎私はそういうのが苦手でな。」

 

「これで人気のあるお店を探してみます。」

 

「そんなこともできるのか!?」

 

福田はしばらくの間、すまほとやらを指で突っついたり、擦ったりしていたが、ものの5分ほどでお目当ての食堂が見つかったらしい。

 

「西隊長、木更津にその場で貝を焼いて食べられるお店があるようです。」

 

「おお、それは美味そうだな。よし、そこにしよう。で、どうやって行くんだ?」

 

「このまま16号線を下って、木更津駅まで行けばあとは簡単であります。」

 

「よし、じゃあ、私は操縦手で車長はお前に任せた!」

 

「そ、そんな、滅相もありません。」

 

「いや、いつもの九五式軽戦車に乗っていると思えばいい。」

 

「では、不肖福田、車長を務めさせていただきます!」

 

「よし、では木更津の食堂へ、吶喊!」

 

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16号線を南下して、圏央道をくぐってしばらく走ると木更津駅方面の看板が出ていたので、右折。程なく、目的地に到着した。

 

時計を見ると、11時を少し過ぎたところなのに、もう10人ほど並んでいる。多分、それだけ人気のある食堂なんだろう。

空いた窓から中を見ると、各テーブルの上にコンロが置かれていて、炭火で貝や魚を焼いていた。良い匂いがここまで漂って来る。

 

ほどなく順番が来たので案内されて中に入ると、生簀があり、その傍には貝が盛られたお皿がたくさん並んでいた。どうやら、自分の好きなお皿や魚をとって、会計をしてから自席で焼くらしい。

席に案内されると、一応お品書きはあったが、さっき見た貝が気になる。

上着を置いて、財布を持って食材の並んでいるところに行ってみた。

 

「これはなんだろう?」

 

「蛤でありますな。でも、すごく大きいであります!」

 

「こちらは浅蜊だな。」

 

「フライパンにバターも添えられているので、これをそのまま炭火に乗せて焼くのでしょう。」

 

「お、車海老もあるぞ。」

 

実際に食材を目にすると、あれも食べたいこれも食べたいとなってしまう。迷いに迷ったが、やはりここは初志貫徹。大きなはまぐりが5個乗った皿を選んだ。あとは、鯵の干物。ご飯とみそ汁は別に頼むらしい。

会計を済ませて席に着くと、ほどなく福田も戻ってきた。ん?福田のお皿にはいろんな貝が乗っているぞ。

 

「福田、それは何だ?」

 

「は、貝の盛り合わせであります!蛤、青柳、栄螺と、いろいろ食べられるようなので。」

 

「うーむ、私もそれにすれば良かったなあ。」

 

「栄螺は2個ありますので、よろしければおひとつ如何でしょうか?」

 

「いや、でも、福田がせっかく持ってきたものだから...」

 

とは言いながら、私の視線が栄螺から離れないのを福田は見逃さず、どうぞ、とこちらの皿に置いてくれた。

 

「すまない、福田。礼を言うぞ。」

 

「とんでもございません。こんな楽しい機会を頂いた西隊長へのお礼です。」

 

「いや、私も楽しいぞ。いつもは単車で走るだけで、こんな風に食堂に立ち寄ったりしたのは初めてだ。これも、福田が一緒に来てくれたおかげだ。」

 

福田は照れながらもにこっと笑ってくれた。

 

係の人が炭火を持って来てコンロに入れてくれたので、網の上に貝を乗せてしばらく待つ。

 

「あ、貝が開きました。ここに醤油を少し垂らして、と。」

 

「中の具も大きいな。おまけに汁もたっぷり出ている。これは辛抱たまらんな。」

 

「でも、貝はちゃんと火を通さないといけないのであります。」

 

丁度いい具合に焼けたところで、ご飯とお味噌汁も来たので、これで準備万端。

 

「では」

 

「では」

 

「「いた~だき~ます!」」

 

我が知波単学園では、食事の時には必ず全員で、手を合わせていただきますを唱和する。その癖からここでも大声で唱和してしまったので、周りの人たちが何事かと振り返っていた。

ちょっと恥ずかしくなってしまったが、すでに食欲の限界に来ていたので、気にせずにまずは銀シャリを口に放り込む。いきなりおかずに吶喊するのではなく、まずはお米を味わうのがこだわりだ。

良く噛んで(八十八回も噛むのはまだるっこしいので、適当なところでゴクンと飲みこんだ)、お味噌汁を飲んだ後、いよいよ蛤だ。さっきから垂らした醤油の匂いが鼻腔を刺激している。この匂いだけで白飯3杯は行けそうだ。

汁をこぼさないようにお皿に乗せようとしたが、

 

「あちちちっ!」

 

「西隊長、このトングをお使い下さい。」

 

「ああ、すまんな。」

 

無事、蛤をお皿に乗せて、お箸で具を切り取って口に入れる。

 

「美味い!」

 

いや、貝ってこんなに美味しいものだったのか。貝から出た滋養たっぷりの汁をすすり、ふと見上げると福田がにこにこしながら同じように貝を食べている。福田のにこにこ顔は本当に見ていて飽きないなあ。

 

さて、次は福田に分けてもらった栄螺だ。これも蓋(って言うのか?)のところから醤油を垂らしておいたので、蛤とは違ったいい匂いがしている。

爪楊枝を蓋の脇から差し込んで、身にしっかりと差し込んでくるっと回す。こうすれば、身を綺麗に取れるのだ。

福田も同じように栄螺に爪楊枝を指して、くるっと回したが、

 

「ああっ、尻尾が取れてしまったであります!」

 

栄螺に尻尾ってあったっけ?と思ったが、どうやら先っちょのぐるぐるしているところのことらしい。確かにここの苦みはそれはそれで美味しいので、それが切れないように身を引きだせるかどうかが運命の別れどころだ。

私は成功したが、福田は失敗してしまったらしい。

 

「無念であります...」

 

福田の眉がハの字に下がってしまった。

 

「福田、これをやろう。」

 

「え、でもそれは西隊長の...」

 

「いや、いいんだ。もとはと言えば福田に貰った栄螺だ。福田にも権利はある。ほら、冷めないうちに。」

 

「ありがとうございます!」

 

ハの字になっていた福田の眉毛がもとに戻った。

 

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「いやー、本当に美味しかったな。」

 

「お腹一杯であります。」

 

あれからさらに貝を焼いて、福田が蛤の汁で唇を火傷しそうになったり、青柳はいつも身を少し出しているのが舌を出しているように見えるから別名バカ貝と呼ばれているとか、そんな話をしながら、気が付けばお皿の上には貝殻のみが残っていた。

 

福田が持ってきてくれた緑茶を飲みながら、さて、これからどうしようと考えていると、福田はまたすまほを取り出していた。

 

「西隊長、ここから少し先に行った富津岬に明治百年記念展望塔というのがあって、東京湾の眺めがいいそうであります。」

 

確かに、まだ日は高いし、このまま帰るのもなんだかつまらない。

 

「よし、じゃあそこに行ってみよう。善は急げだ!」

 

「了解であります!」

 

外にはまだ人が並んでいたので、待たせてはいけないと思い、さっと身支度をして席を離れた。もちろん、お店を出る際には「「ご馳走様でした!」」とお店の人に声をかけながら。

 

16号線をさらに南下して、富津岬の標識に従って単車を走らせる。交差点を右折して商店街の中を過ぎると、富津公園の中を走る道になった。松林の間を走るのが気持ちいい。

すぐに前方が開けて、駐車場に着いた。

 

単車を停めて、目の前を見ると、階段と踊り場を組み合わせたような建造物がある。あれ、結構高いぞ。階段で登るようだが、何階まであるんだろう。

 

「こっちであります。あれ?あっちにも階段が。どこから登れば。」

 

「福田、どれも頂上にはたどり着くようだ。お互いに別々のところから登ってみよう。」

 

というわけで、別々の登り口から頂上を目指す。とは言っても、お互いが視認できるので、気づけば相手より早く登りきるぞ、と意気込んでしまい、頂上に着くころには息が切れてしまった。

幸い、福田より早く着けたので、先輩としての面目はなんとか保つことができたが。

 

「うわあ」

 

「ひゃあ」

 

決して息が切れていたからではない。綺麗な景色を見ると、言葉が出ないというのは本当なのだ。

 

目の前には当然ながら東京湾。すぐ近くに見えるのは、案内板を見るとどうやら第一海堡らしい。その先には第二海堡も見える。

右に目を向けると、工業地帯の先には我が知波単学園艦がたたずんでいる。ここからでもあれだけ大きく見えるのは、やはりそれだけ学園艦が巨大ということだろう。

そして、目の前には三浦半島があり、その先にはうっすらとではあるが、綺麗な富士山がその雄姿をどっしりと構えていた。

 

福田は、と言うと、壮大な景色に度肝を抜かれていたようだったが、気が付けばすまほで、どうやら写真を撮っているらしい。

 

「西隊長、一緒に写真を撮っていただけますでしょうか!」

 

「おう、でも、ここには撮ってくれる人がいないぞ。」

 

「大丈夫であります。自撮りという手があります。」

 

「自撮り?」

 

福田はすまほを操作して、さあ、西隊長、こちらへ、と手招きするので、福田の横に並んだ。

 

「あのう、西隊長」

 

「何だ、どうした?」

 

福田はすまほを持った腕を精いっぱい伸ばしている。

 

「普通に並ぶと、背丈が違うので画面に入りきらないのであります。」

 

「おお、そうか、じゃあ少し屈むか。」

 

顔が福田と同じぐらいの高さになるまで軽く膝を曲げて並ぶと、

 

「では、撮ります!」

 

シャッター音がして、撮影完了。

 

「わあ、すごくいい写真であります!」

 

「どれどれ。」

 

福田が今撮った写真を画面に表示して見せてくれた。

左に私、右に福田、その後ろには、波が煌めく東京湾の向こう側に富士山が見える。

2人とも笑顔全開でいい写真なんだけど、自分の笑顔を見るというのは恥ずかしいもんだなあ。

でも、こんな風に自撮りで写真を撮るのって、なんだか今どきの女子高生みたいだなあ、って思った。女子高生だけど。

 

時計を見ると、2時を少し回ったところだった。あまり遅くならないように、そろそろ帰路につこう。

駐車場に戻り、準備してエンジンをかける。帰りは距離感があるので、ここからだと2時間もかからないだろう。まあ、どこかで1回休憩を入れればいいか。

 

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松林を抜けて、来た道を戻り、16号線を北上する。

1時間ほど走るとコンビニがあったので、駐車場で少し休憩。福田は初めての単車なので、あまり無理しないほうがいいだろう。

コンビニで缶コーヒーを2本買って、福田に渡そうとしたら財布を取り出そうとしたので、いやいやと制止する。

 

「あ、でも。」

 

「いや、福田のおかげで美味しい貝も食べられたし、富津岬で綺麗な景色も見られた。これはそのお礼と思って受け取ってくれ。」

 

「では、遠慮なく、いただきます。」

 

プルタブを開けて一口飲む。

 

「に、苦いであります!」

 

あ、しまった。いつものように無糖のコーヒーを買ってしまった。

 

「福田、単車の時は無糖のコーヒーと相場は決まっているんだ。」

 

「そ、そうでありますか?」

 

決して、最近スカートの腰回りがきつくなったように感じたからではない。決して。

 

聖ぐろりあーなの方々だったら、こんな時も紅茶を飲むのだろうか。そう言えば、コンビニで紅茶も売っていたけど、だあじりん殿がペットボトルの紅茶を飲んでいるところは想像できないな。

 

「ところで福田、最近は大洗のあひる殿達と話しているのか?」

 

「はい、このすまほに入れた伝言機能で時々やりとりしています。」

 

「ほう、どんな話なんだ?」

 

「なにしろあの方たちは排球(注:バレーボールのこと)が好きで、もともとは排球部だったのが、人数が足りなくなって廃部になったところ、戦車道ができたのでそれに参加して排球を広めることになった、とか。」

 

「あと、磯部殿は背丈が小さいながらも、球を受けて他の人に跳ね返させるのがとても上手だそうです。」

 

「ほう、排球が戦車道にも生かされているのだろうか。」

 

「なんでも、1回戦のさんだあす戦では、発煙筒を排球の球を打つ要領で相手戦車に投げて、煙幕を張ったそうです。」

 

「そうか。」

 

「あと、機会があれば是非大洗に遊びに来てほしいと言われました。」

 

「是非行ったほうがいい。他校の生徒と交流するのは大事だからな。」

 

次代を担う隊員が、他の学校の戦車道履修生達と交流を深めているのは、隊長としても喜ばしいことだ。

特に福田は、先のエキシビションや大学選抜戦との試合であひる殿達の戦い方に感銘を受けて、何かを掴んだらしい。

ふと見ると、福田が私の単車をまじまじと見ていた。興味を持ってくれたのだろうか。そうだ。

 

「福田、単車があれば、いつでも大洗に行けるぞ。我らが知波単学園艦の母港は千葉港だが、予備の寄港地は銚子港だ。銚子からだと、大洗はそれほど遠くないんじゃないか。」

 

「単車、でありますか。」

 

「もちろん、電車で行くというのもあるが、単車で行くと、目的地だけではなく、その道中も楽しめるんだ。単車に乗るという楽しみ、どこかを訪問するという楽しみをいっぺんに実現できる。」

 

「でも、私の体格ではこんなに大きな単車は無理かと...」

 

「いや、誰でも最初はそう思うんだ。確かに足つきが良くないと不安に思うが、片足さえつけば止まっていても安定するぞ。」

 

「それに、単車にもいろいろとある。少し小さめのものでも、それなりのエンジンだったら、この単車と同じぐらい走れるぞ。」

 

「そうなんでありますか。」

 

福田の目がキラキラとしている。もし、福田が単車に乗るようになったら、一緒に遠乗りなんてのもいいな。

 

「じゃあ、そろそろ帰るとするか。」

 

「はいであります!」

 

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来た道を戻る形で千葉港まで走り、昇降口から学園艦に乗って、そのまま寮へと走る。

玄関で福田を降ろしていると、そこに細見、玉田、名倉が通りがかった。

 

「西隊長、こんにちはであります!おや、福田、その恰好は?」

 

丁度、福田が単車から降りてヘルメットを脱ごうとしていたところだった。おさげ髪なので、すぐに福田とわかったらしい。

 

「細見殿、玉田殿、名倉殿、こんにちはであります!今日は西隊長の単車の後ろに乗せてもらって、富津岬に行っておりました。」

 

「何だとー!福田ァ、貴様だけ楽しみやがって!」

 

「まあまあ、ほら、お前たちにはお土産を買って来た。」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

お土産を手にした細見たちが玄関から中に入ったところで、私もウラヌスを仕舞おうとしたところ、

 

「西隊長!」

 

「なんだ?福田。」

 

「今日は本当にありがとうございました。」

 

「いやいや、こちらこそ付き合ってくれてありがとう。」

 

「それと、」

 

「ん?」

 

「不肖、福田、免許をとって単車に乗ります!」

 

「えっ?」

 

「今日一日、ご一緒させていただき、単車で走ることの楽しさがわかりました。あと、単車に乗って是非大洗に行ってみたいと思うのであります!」

 

福田の目は本気だ。でも、この目は、戦車道の時の真面目な目ではなく、何かを決意して、でもそれはその先の楽しみを考えている目だ。

 

「そうか、ぜひ頑張ってくれ。福田が単車を手に入れたら、今度は2台で遠乗りしよう。」

 

「はい、楽しみにしています。それと、行き先も考えておきます!」

 

「ははは、気が早いな。そうだ、福田、そのヘルメット、受け取ってくれ。いずれ必要になるだろう。」

 

「え!?よろしいのでありますか?」

 

「ああ、予備だから滅多に使うことは無いし、むしろ福田が使ってくれたほうが嬉しいからな。」

 

「ありがとうございます!」

 

「あと、わからないことがあったら、何でも聞いてくれ。」

 

「はい、重ね重ねありがとうございます!」

 

帰りのコンビニで話していたことが本当になってしまった。驚いたやら、嬉しいやら。

でも、戦車道だけじゃなく、単車という趣味を共有できる友人ができるのはいいな。

 

私も、単車で大洗に行ってみたいな。あひる殿達や、西住殿ともまた会いたいし。

 

福田、免許、頑張れよ。

 




西とのツーリングでバイクに興味を持ち、免許取得を宣言した福田。
自分が運転するバイクで、あひるさんチームに会いに大洗に行くために、免許取得やバイクの運転を頑張る姿を、西や知波単戦車道履修生達も暖かく見守る。

次回は、福田がバイクの運転に慣れるための練習をしているお話です。

今回が初めての小説執筆、投稿ですので、不手際があればご容赦下さい。
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