ガルパンバイク部のお話   作:日本を鳥戻す

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今回も、過去話で仕込んだ伏線からのお話です。

次の登場キャラを誰にしようかと悩んでいた時に、どなたかがtwitterのTLでねこにゃーの話をしていたので、そこから妄想(?)を膨らませて書いてみました。
いつもの瓶底ぐるぐる眼鏡で、おどおどしているのとは違うねこにゃーを書いてみたかったというのもあります。



バイクって楽しいんだにゃー

日曜日の昼下がり。学園艦が大洗港に停泊しているため週末に実家に戻っていた五十鈴華は、学園艦に戻る途中、天気が良く、風も穏やかだったのでふと海沿いを散歩してみようと思い、大洗の港を歩いていた。

 

「あら、あの方はもしかして。」

 

漁港の岸壁に止めたバイクの傍でペットボトルのお茶を飲んでいる女性を見て、華は近づいて声をかけた。

 

「あの、もしかして、猫田さんでしょうか?」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「ああ、やっぱり。普段と装いが違うので、人違いかと思いましたが、猫田さんですね。」

 

声をかけられたのは、華と同じ大洗女子学園に通い、戦車道ではアリクイさんチームとして三式中戦車チヌに乗っている猫田、通称、ねこにゃー。ただ、週末なので制服ではなく私服で、トレードマークの猫耳カチューシャも付けておらず、綺麗な長い金髪も髪ゴムでまとめていたので、一見するとねこにゃーとはわからなかった。

 

「え、ええ。五十鈴さん、こんにちは。」

 

「驚かせてしまってごめんなさい。」

 

「い、いえ、ちょっとびっくりしただけです。五十鈴さん、どうしてこんなところへ?」

 

「実家から戻ってきて、ふと海沿いを散歩したくなったので。学園艦からも海は見えますが、陸地からの風景とは違いますからね。」

 

「ああ、確かにそうですね。」

 

「猫田さんは、何をしてらしたんですか?週末はご実家へ戻られてたんでしょうか。確か、鉾田でしたね。」

 

「ええ、金曜日に実家に戻って、先ほど、こちらに帰ってきたところなんです。」

 

「寄港した時はご実家に帰る方が多いようですね。」

 

「ボクも実家に帰って、土曜日は親戚のお店を手伝っていたんです。」

 

「あら、アルバイトですか?」

 

「はい。鉾田はメロン栽培が盛んなところで、そのお店もメロンを使ったジャムや飲み物を作ってるんです。」

 

「まあ、そうなんですか。メロン、美味しそうですわ。」

 

「それで、市内のいろんなお店に収めてるんですが、そこに配達するのを手伝っていました。遠いところや荷物が多いところは車で運ぶんですが、少量だったり近いところは、このバイクでボクが持って行くんです。」

 

ねこにゃーの横に停めてあったバイクは、新聞配達や出前で使われる、実用的なバイクだった。ただ、武骨な感じではなく、淡いアイボリーの色合いで、おしゃれにも見えた。

 

「あら、猫田さん、バイクに乗られるんですか?」

 

「ええ、最初は原付だったんですが、配達に使うこのバイクが小型二輪なので、そのための免許を取りました。」

 

「まあ、猫田さんって、アクティブなお方なんですね。失礼ですが、アリクイさんチームのみなさんはゲームをやられているので、てっきりインドア派なのかと思ってました。」

 

「いや、ゲームで課金するので、そのためのアルバイトでもあるんですが。だったら、免許をとっちゃえって思って。」

 

その後はしばらく、戦車道の話や、実家に帰った時の話をしたが、これまでアリクイさんチームとあまり話す機会はなかったので、こういう形で猫田と話すことができたのは、華にとってとても嬉しいことだった。

 

「そう言えば、ウサギさんチームの澤さんも、原付免許を取得したっておっしゃってましたわ。」

 

「えっ!?澤さんが?」

 

「ええ、仲の良い聖グロのオレンジペコさんが免許を取ってツーリングに行ったのを知って、自分もバイクに乗りたくなったそうです。」

 

「バイクがあると、行動範囲が広がるって言いますからね。実は、このバイクも、普段は配達で鉾田近辺しか走らないんですが、ちょっと遠くまで走りたいってお願いして借りてきたんです。幸い、どうせ使うことないからいいよって、次の寄港日まで借りることになりました。」

 

「実家から戻ってくる時は、いつもは臨鉄で帰って来るんですが、バイクだと結構楽しくって。さっきもアクアワールドのところまで走ってたんですが、戻ってきて、ここで一休みしてたんです。」

 

「そうでしたか。」

 

普段はおどおどした話し方だが、今のねこにゃーは、普通に話していた。そんなふうに、普通の友人として話すことができて、華はとても嬉しかった。

 

「バイクって、なんだかアクティブで憧れますわ。」

 

「五十鈴さんも、機会があればぜひ。」

 

普段はなかなか話す機会が無かったからか、戦車道の話、チームメンバーの話、学園艦の話など、気が付けば結構な時間が経っていた。

 

「では、私はそろそろ学園艦に戻りますわ。猫田さんも、お気をつけて。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

そう言って、華は学園艦のほうへ歩いて行った。途中で、こちらも学園艦にバイクで戻るねこにゃーが華を追い越しながら、手を振ってくれた。

 

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その日の夜、とあるSNSのチャットルームにて。

 

ねこにゃー「1ゲット!」

 

ぴよたん「2ゲットぴよ!」

 

ももがー「ああ、出遅れたナリ...」

 

ねこにゃー「みなさん、実家に戻ってライフは回復されましたでしょうか?」

 

ももがー「久々に帰って、自分で食事を作らなくて済む生活を満喫していたナリ。」

 

ぴよたん「とは言っても、普段も夕食はレトルトで済ませてるのではなかったぴよ?」

 

ももがー「なぜ知ってるナリ?まさか、この部屋に盗聴器がしくまれているナリか?」

 

ねこにゃー「いや、サンダースのアリサさんじゃないんだから。」

 

ももがー「乙女の私生活を覗き見るなんて、破廉恥でありますナリ!」

 

ぴよたん「ももがーの私生活なんて興味無いっちゃ。それに、知波単っぽいのが混じってるっちゃ。」

 

ももがー「そう言うぴよたんは、実家に戻ってどんな生活だったナリか?」

 

ぴよたん「ちゃんと、家のお手伝いをして、食事も私が作ってたっちゃ。」

 

ねこにゃー「おお、さすが、女子高生でありながら人妻感満載のぴよたんだにゃ。」

 

ぴよたん「料理は乙女の基本スキルだっちゃ。」

 

ももがー「今度、ぴよたんにご飯作ってもらうナリ。」

 

ねこにゃー「ボクもご相伴にあずかろうかな。」

 

ぴよたん「いいよ、ご飯作ってあげるぴよ。炊飯器のスイッチを押すだけっちゃ。」

 

ももがー「そのご飯じゃないナリ!」

 

ぴよたん「で、ねこにゃーはどうしてたっちゃ?」

 

ねこにゃー「親戚のお店を手伝っていたにゃ。」

 

ぴよたん「おお、勤労女学生!」

 

ももがー「どんなお仕事ナリか?もしかして、夜のお仕事...」

 

ねこにゃー「夜のお仕事は、未成年だから...。メロンで作ったジャムとか売ってるお店なんだけど、品出しとか、納品先への配達とか。」

 

ぴよたん「結構普通のお手伝いのようだっちゃ。」

 

ねこにゃー「あ、でも、そこのご主人だとケース2つしか持てないけど、ボクだと5つ持てるから助かったっていわれたにゃ。」

 

ももがー「ねこにゃーの怪力が生かされたナリね。」

 

ぴよたん「女子高生が力仕事で褒められるのもどうかと。」

 

ねこにゃー「あ、そうそう、それで、配達に使ってたバイクで大洗まで帰ってきたんだけど、大洗漁港で休憩してたら五十鈴さんに会ったにゃ。」

 

ももがー「えっ!あの、次期生徒会長で五十鈴流華道の継承者であらせられる五十鈴華さんナリか?」

 

ねこにゃー「何その説明っぽい発言。そう。それで、ちょっとお話ししたんだにゃ。」

 

ぴよたん「コミュ障のねこにゃーがちゃんと話せたかどうかが心配だっちゃ。」

 

ねこにゃー「そんな、お母さんみたいなこと...」

 

ぴよたん「誰がお母さんじゃ!」

 

ももがー「私も、ねこにゃー姉ちゃんの話が通じていたか心配ナリ。」

 

ねこにゃー「そんな妹はおりません。」

 

ももがー「ひどいなり...」

 

ぴよたん「私達、この間まではあんまり他の人と話すことなかったけど、戦車道始めてからみんなと少しずつ話せるようになってきたっちゃね。」

 

ねこにゃー「うん、リアルで話すことにも慣れてきたし。」

 

ももがー「私も、ウサギさんチームやバレー部の1年生の人たちと仲良くなれたもも。」

 

ぴよたん「とうとう私たちもリアルの世界に進出し始めたんだっちゃ。」

 

ねこにゃー「じゃあ、まずはこのネットの世界を蹂躙してやろう。喰らえ!」

 

ももがー「ああっ、不意打ちとは卑怯なり!」

 

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「お疲れ様でしたー。」

 

戦車道の訓練が終わると、戦車を整備する作業が残っているレオポンさんチーム以外は、それぞれが下校の準備をしていた。

アリクイさんチームの3人も、最近始まったオンラインのイベントについて話しながら帰ろうとしていたが、そこに梓が走って来た。

 

「ねこにゃー先輩!」

 

「わっ!びっくりした。澤さん、どうかしたのにゃ?」

 

「ねこにゃー先輩って、確かバイクの免許、お持ちでしたよね。」

 

「う、うん、持ってるけど。あ、五十鈴さんから聞いたのかな。」

 

「そうです。それで、お願いがあるんですが。」

 

「えっ、ボクに?」

 

「はい。レオポンさんたちが戦車の整備をしようとしたら、グリスと、パーツクリーナーと、あといくつかの予備部品が切れていたみたいなんです。いつもは私が備品のスクーターで買いに行くんですが、今日はこの後、クラス委員の打ち合わせにでなければならないので。」

 

「レオポンさん達、今日は週次の総点検の日だから結構みんな手一杯だから、誰かが代わりに買いに行ってあげれば助かるんじゃないかと思って。」

 

「それだったら、お安い御用だにゃ。レオポンさん達にはいつもお世話になってるから。」

 

「あ、お店の場所と買って来るものは、ツチヤさんに聞いてください。」

 

「うん、了解。」

 

「では、宜しくお願いします。」

 

そう言って梓は頭を下げた後、急いで校舎の方に走って行った。

 

「じゃあ、今夜もいつものチャットルームで待ってるっちゃ。」

 

「ちゃんとレオポンさんチームのお手伝い、するなりよ。」

 

ぴよたん、ももがーと別れて、ねこにゃーは戦車倉庫のほうに向かった。

丁度、演習場から牽引してきたチヌからナカジマがワイヤーを取り外しているところだった。

 

「あ、あの、澤さんに言われて来たんだけど。部品の買い出しのお手伝いをしようと思って。あ、バイクには乗れるから。」

 

「ホント!助かるなあ。澤さんから聞いたんだけど、猫田さんもバイクの免許、持ってるんだってね。」

 

「う、うん。」

 

「じゃあ、お願いしちゃおうかな。ツチヤー、猫田さんにお店の場所と買って来る部材について教えてあげて。」

 

「りょーかい。じゃあ、猫田さん、こっちの机のところに来てくれませんか。」

 

ツチヤにお店の場所を教えてもらったが、ここからだとバイクで10分ぐらいのところだったので、ねこにゃーはすぐに分かった。

ただ、部材については不慣れだったので、ツチヤに必要部材のリストを書いてもらった。

 

「あ、もしお店に無かったら、大洗の豊年屋機工部のほうで取り寄せてもらうから。」

 

ツチヤからメモを受け取り、ねこにゃーはバイクに乗ってお店に向かった。幸い、ほとんどの部材は在庫があったので、買って帰ることができた。

 

「買って来たよー。」

 

「ありがとう。うん、これだけあれば、しばらくは大丈夫かな。」

 

部材とリストを見比べて、ホシノが満足気に言った。

 

「いくつかお店に無いものがあったけど、大丈夫なの?」

 

「ああ、あれはまだ在庫があるんだけど、少なくなってきたから今のうちに頼んでおこうと思ったものだから。とりあえず今日必要な分は買って来てくれたもので揃ったよ。」

 

そう言って、ホシノはねこにゃーが買って来たものを持って、さっそく戦車の整備に取り掛かった。

他のメンバーは、買い物に行く前からずっと戦車の中や下に潜り込んで、ひたすら整備を続けていた。スズキなんて、出かける前と帰って来た時で同じ場所にずっといたようだった。

 

「あ、あの、もし、ボクで手伝えることがあれば、何かできないかな。」

 

「ありがとう。じゃあ、悪いけどツチヤを手伝ってあげて。履帯を直しているんだけど、一人だと時間がかかるみたいだし。あ、手が汚れるし、怪我しないようにあそこの棚にある軍手をはめてね。」

 

ナカジマに指示されたとおりに軍手をはめて、ヘッツァーの履帯と格闘しているツチヤのほうに向かった。

 

「ツチヤさん、どうすればいいかな。」

 

「ここに履帯を置いて水平に保持しておいてくれる?ピンで固定する時に、歪むとまた外れやすくなっちゃうから。結構重いから気を付けてね。」

 

「お安い御用だにゃ。ほい。」

 

そう言って、ねこにゃーは履帯を持ち上げた。

 

「えっ!?いや、履帯全部じゃなくって、こっちのバラしたほうなんだけど。それに、履帯を持ち上げるって...」

 

「あ、ごめんごめん、こっちの部品ね。」

 

足元に置いてあった履帯のパーツを、まるで落ちていた雑誌を拾うように片手で持ち上げたねこにゃーを見て、ツチヤは絶句してしまった。

 

「...」

 

「うん?どうかしたにゃ。」

 

「ね、猫田さんって、実はすごい力持ちなの?」

 

「ああ、鍛えてるから。で、どうすればよいかにゃ?」

 

「あ、それをここの溝に合わせて水平になるようにして保持しておいてくれる?私がピンを打ち込むから。」

 

言われたとおり、ツチヤが金づちでピンを打ち込みやすいように部品を水平にした。

最初はコツ、コツと軽く叩きながらピンを穴に挿して、その後はカーン、カーンと少し力を入れて打つ。しかし、ある程度までは入るものの、そこから先はツチヤが精一杯金づちで叩いても刺さって行かない。

 

「ちょっと貸してくれる?」

 

そう言って、片手でパーツを保持したまま、ツチヤから金づちを受け取ったねこにゃーは、狙いを定めてピンの頭を金づちで叩いた。

カーン、とさっきよりも大きい音がして、ピンが一気に奥まで入った。

 

「ええっ!」

 

「うまく入ったにゃ。念のため、チェックしてくれるかな。」

 

ツチヤがピンと履帯を確認すると、ずれや歪みも無く、溝にそって綺麗にはまっていた。

 

「うん、大丈夫みたい。じゃあ、こっちもお願いしようかな。」

 

ツチヤがもう一つのパーツとそれをはめる先を指差すと、ねこにゃーが

 

「ほい来た。」

 

と言って、軽々とパーツを持ち上げ、先ほどと同じように保持したまま、ツチヤが差し込んだピンを金づちで打ち込んだ。これも2~3回で奥まで入ったので、ツチヤがチェックしたが、問題無いようだった。

そうこうしているうちに、ヘッツァーの履帯修理が終わった。

 

「終わったよー。」

 

ツチヤがナカジマに報告すると、ホシノ、スズキも「えっ?」という顔をしてツチヤのほうを見た。

 

「いや、そんなに早く終わるわけないでしょ。普段だったら1時間はかかるはずだよ。」

 

「猫田さんに手伝ってもらった、て言うか、ほとんど猫田さんがやってくれた。」

 

「どういうこと?」

 

「片手で履帯を持って、私が挿したピンを金づちで入れてた。」

 

「マジで!?」

 

「あの、他に何か手伝えることないかな。」

 

「じゃあ、ホシノがⅢ突の砲身を見てるから手伝ってくれるかな。左衛門佐さんが、かなり照準ずれてるって言ってた。」

 

「まかせるにゃ。」

 

「ちょっと中から見てみるね。あー、確かに、砲身が少し右にずれてるのかな。三突は固定砲塔だから、ずれてると照準合わせられないよね。」

 

「少し押してみるね。ふんっ!」

 

「あっ、ちょうど良くなった。って、今何したの?」

 

「え、砲身を押したんだけど。」

 

「いやいや、ありえないでしょ。」

 

「うーん、このナット、なかなか緩まないなあ。」

 

スズキが八九式の装甲を留めているナットと格闘している。

 

「インパクトレンチ使ってみれば?」

 

「いや、八九式は合うサイズの工具がこれしかないから、インパクトレンチが使えないんだ。」

 

「これを緩めればいいのかな。うーん、と。」

 

「あ、回った。」

 

それからは、力の必要な作業はねこにゃーが手伝うことで、いつもは9時近くまでかかる作業が、7時前には全て終わっていた。

 

「いやー、猫田さん、助かったよ。でも、まさか猫田さんがあんなに力あるなんて。」

 

「お役にたててなによりだにゃー。」

 

「ほんと、まさか誘導輪を持ち上げて手ではめるなんて。いつもは2人がかりで持ち上げて、もう1人がボルトを締めるんだけど。」

 

「そのボルトも、手で絞めた後にトルクレンチで締めようと思ったら、規定の数値にほぼ近かったからね。」

 

「じゃあ、今日は早めに上がれたから、どこかで晩ご飯食べて帰ろうか。」

 

ナカジマが提案すると、他の3人も「いいねえ」「いつも遅いからコンビニ弁当ばっかりだったし」と、帰り支度を始めた。

 

「猫田さんも、晩御飯一緒にどう?」

 

ツチヤが声をかけた。

 

「ぼ、ボクなんかが一緒に行っていいの?」

 

「もちろん!今日はほんとに助かったから、私が奢るよ。」

 

ナカジマが言うと、

 

「あー、いいなあ。」

 

とツチヤが羨ましがった。そこでホシノが

 

「ツチヤも一人で履帯修復とか、転輪を持ち上げたりできたら奢ってあげるよ。」

 

「いや、むりむり。あの転輪の重さ、何キロあると思ってんの?」

 

帰り支度を終えたナカジマが「さあ、行くよ。」と言ったので、戸締りをして、学園の近くの食堂に向かった。

 

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その日の夜、とあるSNSのチャットルームにて。

 

ももがー「1ゲットナリ!」

 

ぴよたん「2ゲット。先輩を差し置いて1ゲットとは、やってくれるやんけ、われ~。」

 

ももがー「ぴよたん、キャラが変わっているなり。」

 

ぴよたん「たまには変わってみるのもいいだっちゃ。」

 

ももがー「ねこにゃーはまだナリか?」

 

ぴよたん「レオポンさんチームと一緒に戦車の整備してるんじゃないかぴよ?」

 

ももがー「今日の模擬戦で結構やられたナリからね。」

 

ぴよたん「もしかして、みんなで徹夜で修理しているかもしれないっちゃ。」

 

ねこにゃー「間に合ったー!」

 

ぴよたん「間に合ってない。」

 

ももがー「間に合ってない。」

 

ねこにゃー「ごめんごめん、お風呂入ってた。」

 

ももがー「戦車の修理で油まみれになったナリか?」

 

ねこにゃー「いや、思ったより早く終わったから、みんなで晩御飯食べて帰ったんだにゃ。」

 

ぴよたん「おお、ねこにゃーが着々と他のチームのみなさんと仲良くなっているだっちゃ。」

 

ももがー「ねこにゃーがちゃんとお話できたのか、心配ナリ。」

 

ねこにゃー「ま、まあ、なんとか凌げた、かな。」

 

ぴよたん「でも、レオポンさんチームにはいつもお世話になっているから、お手伝いするのはいいことだっちゃ。」

 

ねこにゃー「うん、すごく喜ばれた。バイクでお使いに行ったんだけど、その後、修理を手伝ったから。」

 

ぴよたん「さすが、でも、ねこにゃーって戦車の修理できたのかぴよ?」

 

ねこにゃー「いや、レオポンさんチームの人たちが作業する時に、部品を支えたりしてたぐらい。」

 

ももがー「まあ、私たちじゃ整備のことはわからないから。」

 

ねこにゃー「でも、重い部品が多かったり、力のいる作業を手伝ったらすごく喜ばれたよ。」

 

ねこにゃー「あ、そうそう、だからこれから、力仕事が必要な時はぴよたんとももがーも手伝ってほしいにゃ。」

 

ぴよたん「合点、承知のすけだっちゃ。」

 

ももがー「私たちでも微力ながらお役に立てるのなら、ありがたいもも。」

 

ねこにゃー「いや微力じゃなくって怪力が喜ばれるみたい。」

 

ぴよたん「最初に戦車に乗った時は力が無くて苦労したから。鍛えた甲斐があったぴよ。」

 

ももがー「じゃあ、そろそろ戦場に行くナリねー。」

 

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「猫田先輩、一緒にお昼ご飯、食べませんか?」

 

翌日のお昼休み、ねこにゃーが食堂に向かっていると、澤梓に声をかけられた。背が高く、おまけに頭にネコ耳のカチューシャを付けているので、遠くからでもすぐに見つけられたらしい。そのまま一緒にお昼ご飯を食べようということになり、トレイを持って席に着いたところで梓がお礼を言った。

 

「猫田先輩、昨日はありがとうございました。」

 

「いや、こんなボクたちでもみんなの役に立てたのなら、嬉しいにゃ。」

 

「レオポンさんチームの人たち、いつもより早く帰れたってすごく喜んでました。」

 

「うん、みんなで晩御飯食べに行ったんだ。」

 

「それで、猫田先輩、バイクに乗ってるって五十鈴先輩から聞いたんですが。」

 

「ああ、この間、実家から帰ってくるとき、親戚のバイクを借りて来たんだけど、大洗漁港で一休みしている時に五十鈴さんに会ったんだにゃ。」

 

「それで、もしよければ、一緒にツーリングに行きませんか?」

 

「え!?ツーリング?」

 

「はい、私もこの間、原付の免許を取って、バイクも手に入れたんです。」

 

「ああ、五十鈴さんから聞いたよ。聖グロのオレンジペコさんがバイクに乗り始めたからだとか。」

 

「それで、この間の聖グロとの練習試合の翌日、ペコちゃんとローズヒップさんとで、この近くをバイクで走ったんです。宮下旅館街のからアクアワールドのところの道がすっごく気持ちよくって。」

 

「うん、あそこは海沿いの道だから、バイクで走ってるとすごく気持ちいいよね。」

 

「その時は、ひたち海浜公園まで行って、その後は大洗の街中を3人で散策したんですが、実は、その時、猫田さんらしき人がバイクで走っているのを見たんです。」

 

「最近、バイクでこのあたり結構走り回ってるからね。」

 

「あれって、猫田さんだったのかなあ。アイボリーのバイクで、綺麗な金髪の髪を後ろでまとめてました。」

 

「あ、それ、ボクだ。いつもお手伝いしている親戚のお店の配達用のバイクなんだけど、お店がちょっとお洒落だから、いかにも配達って感じのは似合わないから、あの色にしたんだって。」

 

「私が乗ってるのはスクーターなんですけど、猫田さんのバイクも格好いいですね。配達用には見えませんでした。」

 

「あれって、原付じゃなくって、小型二輪なんだよね。配達の時は後ろの荷台に箱を積むんだけど、原付だとパワー不足だから。」

 

「じゃあ、猫田さん、小型二輪の免許お持ちなんですか?」

 

「うん、最初は原付の免許を取ったんだけど、そのお店のバイクに乗るのに必要だから、冬休みに実家に帰っている間に通って取ったんだ。」

 

「私も、いつか、小型二輪の免許取りたいんですが、今は原付でいろいろと走りたくって。」

 

「原付に慣れたら、すぐに取れるよ。」

 

「でも、原付だとあんまり遠くには行けないですよね。制限速度も30kmだし。だから、学園艦の遠いところに行くときとか、寄港した時に大洗の近くしか走ってないんです。だから、もう少し遠くに行きたいなあ、と。でも、1人だとやっぱり不安だから、誰か一緒にツーリングに行ける人いないかなあ、と探してたんです。」

 

「で、ボクと一緒にツーリング?」

 

「はい。あの、猫田さんがよければなんですが。」

 

「あ、うん、ボクもバイクで出かけたいなあ、と思ってたところだし。」

 

「本当ですか?じゃあ、今度寄港した時、一緒に出かけましょう!行き先は私が考えておきます!」

 

「ありがとう。ボクもなんだかすごく楽しみになってきた。」

 

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その日の夜、とあるSNSのチャットルームにて。

 

ねこにゃー「澤さんにツーリングに誘われたにゃ。」

 

ももがー「おおっ、いつの間にかそんなところまで進んでいたナリか?」

 

ぴよたん「それ、ちょっといやらしいっちゃ。」

 

ねこにゃー「ボクもたまには太陽の下に出て外の空気を満喫したいのにゃ。」

 

ももがー「私たち、だいたいインドア派だからナリね。」

 

ぴよたん「後輩と親交を深めるのはいいことだっちゃ。」

 

ねこにゃー「行き先は澤さんが考えてくれるらしいけど。」

 

ぴよたん「それだけ、澤さんがねこにゃーとのツーリングを楽しみにしている証拠だっちゃ。」

 

ももがー「さすが、アリクイさんチームのお母さん的なポジションにあるぴよたんナリね。」

 

ぴよたん「誰がお母さんじゃい!」

 

ねこにゃー「ウサギさんチームのお母さんは武部さんだけどね。」

 

ももがー「わかる。」

 

ぴよたん「わかる。」

 

ねこにゃー「澤さんとのツーリング、ボクも楽しみだにゃ。」

 

ももがー「先輩として、そこはうまくリードしてあげるナリね。」

 

ぴよたん「その言い方もちょっといやらしいっちゃ。」

 

ねこにゃー「あ、マルチの時間になったので、そろそろ出陣するにゃ。」

 

ももがー「今日こそ、敵の戦車からのドロップ集めて完凸させるモモ!」

 

ぴよたん「私は乗員の練度を上げるっちゃ!」

 

ねこにゃー「では、パンツァー・フォー!」

 

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「お疲れ様でしたー。」

 

戦車道の訓練が終わり、みんなが帰り支度をしている横で、アリクイさんチームは制服から体操着に着替えていた。

 

「では、すみませんが、レオポンさんチームのお手伝い、お願いしますね。」

 

隊長の西住みほが、アリクイさんチームの3人に向かって頭を下げた。

 

「おやすい御用だにゃ。」

 

「力仕事なら任せてナリ。」

 

「お役に立てて嬉しいぴよ。」

 

「澤さんも、お願いね。」

 

「はい!」

 

さすがにアリクイさんチームほどの力は無いが、梓もレオポンさんチームの手伝いをすることが多くなっていた。

 

今日の訓練は4対4に別れての模擬戦だったので、撃破された戦車の修理に時間がかかりそうだった。

そこで、梓だけでは人員が足りず、力仕事の得意なアリクイさんチームがレオポンさんチームの整備を手伝うことを申し出たのだった。

 

戦車倉庫では、すでにレオポンさんチームが各戦車の損傷状況の確認を済ませており、整備の手順について打ち合わせていた。

 

「じゃあ、私とホシノはレオポンの履帯修理、スズキは八九式のエンジン修理、ツチヤはⅣ号のシュルツェン交換をお願いするね。」

 

ナカジマが各自に作業を割り振る。

 

「あ、あの、ボクたちは何をすれば良いかな。」

 

「えーと、じゃあ、猫田さんはレオポンの履帯修理を手伝ってくれる?ももがーさんはスズキを、ぴよたんさんは、ツチヤを手伝って。」

 

「了解なり!」

 

「了解だっちゃ。」

 

「あのー、私は何をすれば良いでしょうか。」

 

「澤さんは、部材の在庫確認をお願いできるかな。そろそろ寄港日だから、豊年屋機工部に発注するリストを送らないといけないから。」

 

「わかりました。」

 

「あ、ぴよたんさん、部室に部材を取りに行くから、一緒に来てもらえますか?」

 

しばらくすると、部室からツチヤとぴよたんが帰って来た。梓は、まだ在庫確認に時間がかかっているらしい。

 

「いやー、助かりました。台車はあるけど、今日は結構な量だからもう1回行かなきゃと思ってたんだけど。」

 

ツチヤが、Ⅳ号のシュルツェンと細かな部品が入った箱を載せた台車を押して来たが、その後ろから、グリスの缶を2つ手にしたぴよたんが現れた。

 

「ええっ!?あのグリスの缶って、1個20kgあるんだけど。」

 

スズキが見て驚いている。

 

「これぐらい、軽いもんだっちゃ。」

 

「ぴよたんは装填手だから、アリクイさんチームの中でも一番力があるナリね。」

 

レオポンの履帯修理も、ねこにゃーが前回と同様に履帯の部品を支えて、ホシノがピンを打ち込んでいた。時々大きな音がするのは、ピンが入りにくいところをねこにゃーが打ち込んでいた音だった。

ナカジマは手が空いてしまったので、他の戦車のエンジンをひととおり点検している。

 

スズキのエンジン修理も、必要な工具をももがーが手渡ししたり、暗くて見えにくいところをライトで照らしてくれていたので、いつもより作業がはかどっていた。

 

Ⅳ号のシュルツェン交換も、ぴよたんが支えて、ツチヤがボルトを締める役割だったので、思いのほか早く進んでいた。

 

ひととおりの修理が終わると、最後に全ての戦車の可動部をグリスアップして、その日の整備は終了となった。

 

「いやー、まさか、こんなに早く終わるとは思わなかったな。」

 

ナカジマが、修理の終わった戦車を最終確認して言った。

 

「ほんと、助かるよ。アリクイさんチームがいなかったら、あと1時間以上はかかっていたよね。」

 

「履帯って、本当に重いからなあ。下手すると、2人がかりで持ち上げないとだめなものもあるから」

 

一緒に履帯を修理していたホシノが、いつもの苦労を思い出すように言う。

 

「そうだ。猫田さん、バイクの整備もしておいたよ。」

 

「あ、ありがとう。」

 

「クラッチケーブルの緩みを調整して、ボルトの増し締め、あと、エンジンオイルが汚れてたみたいだから、交換しておいた。乗ったら、フィーリング、変わるよー。」

 

「ま、まさか、魔改造なんてしてないよね?」

 

「いやいや、さすがにそれはないから。」

 

ツチヤは、前回手伝ってくれたお礼に、ねこにゃーのバイクを整備していた。

 

「澤さんとツーリングに行くの、今週末だったっけ?」

 

「うん、どこに行くのか聞いてないけど、ボクも他の人とツーリングって初めてだから、すごく楽しみだにゃ。」

 

そこへ、ようやく在庫確認を終えた梓が部室から戻って来た。

 

「やっと終わりました。すごくごちゃごちゃしてたから手間取っちゃった。」

 

それを聞いて、ホシノがツチヤに注意する。

 

「ツチヤ―、整備の基本は整理整頓だぞ。」

 

「えー、でも、私が整理してもすぐぐちゃぐちゃになっちゃうから。」

 

「まあ、普段は部材を放り込んでおくだけだからなあ。今度の休みの日にでも、一度部室を整理するか。」

 

ナカジマがそう言って、カレンダーを確認する。

 

「あ、そうだ。澤さんも一度、バイクを持っておいでよ。ツーリングの前に整備しておかないと。」

 

「いいんですか?」

 

「うん、猫田さんのバイクも整備したから。ツチヤー、澤さんのバイクもお願いね。」

 

「りょーかい。」

 

梓も、週末のツーリングのことを考えると、笑みが小べれてしまう。ふと猫田のほうを見ると、猫田もなんだか楽しそうだった。

 

「猫田さん、今度のツーリング、楽しみにしていてくださいね。」

 

「うん、ボクもあんまり遠出ってしたことないから、楽しみだにゃ。」

 

そう話す2人を見て、レオポンさんチームの4人も

 

「楽しんで来てね。」

 

「気をつけてね。」

 

「何かあったら誰かの携帯に電話してね。すぐに駆けつけるから。」

 

「お土産、楽しみにしてるよー。」

 

と声をかけた。

 

梓はそんな自動車部にお礼を言って、ねこにゃーと一緒に戦車倉庫を後にした。

 




今回も長くなりそうなので、分割しました。
アリクイさんチームなので、ネトゲネタと怪力ネタは外せませんね。

原付と小型二輪だと、走れる速さが違うので、ツーリング、どうしよう...
とりあえず行き先はなんとなく決まったのですが。

あ、次話の伏線もまだ仕込んでない...

新しいお話のアイデアが先に出てきてしまう...
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