大洗、知波単、聖グロの面々と、偶然出会った大学選抜の愛里寿、アズミが、美味しい海の幸やデザートを食べながら、いろんなお話をします。
2次会は当然、お部屋で女子会ですね。でも、やはり戦車道履修生。どうしても戦車道のお話になってしまいます。
Side 大洗・知波単・聖グロ
お風呂から上がって、ポットの氷水で乾いた喉を潤しながら、梓が嬉しそうに言った。
「まさか、愛里寿ちゃんと会えるなんて。」
「ほんと、びっくりしたであります。」
部屋に戻ってからは、みんな浴衣に着替えて思い思いに寛いでいた。
ねこにゃーと福田は窓際の籐椅子に座り、梓とオレンジペコは座椅子に座って冷水を飲んでいる。ローズヒップはと言えば、二つ折りにした座布団を枕代わりにして、畳の上に大の字で寝そべっている。アッサムがいたら間違いなく雷が落ちるような恰好ではあるが、オレンジペコはそんなローズヒップを見て「はしたないですよ」とは言うものの、それを咎めるようなことはしない。
「この間の試合では、大学選抜チームは敵だったけど、その後で西住さんと島田さんが仲良くなったみたいだね。」
「西住さんが戦った相手と仲良くなっていくのを見て、ダージリン様も不思議がっていました。でも、あのように仲間を作っていくのが、西住さんの戦車道なんですね。」
「でも、島田さんと仲良くなったのは、あのクマのぬいぐるみが好きだからじゃないかな。ボコって言うんだっけ?」
「試合の後、島田様が西住様に小さなぬいぐるみを渡していたのが印象的でしたわ!『私からの金賞よ』って。とても感動的なシーンでしたの。」
「金賞じゃありません、島田様は『勲章』っておっしゃってたんですよ。」
「あれから西住隊長、大洗に寄港するたびに愛里寿ちゃんとボコミュージアムに行ってるんですよ。」
「ボコ仲間だね。」
「みなさん、もうすぐ18時ですので、そろそろ食堂に向かいましょう。」
福田の合図をきっかけに、みんなは浴衣の上に丹前を羽織って食堂へと向かった。
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Side 愛里寿・アズミ
「こんなところで大洗連合の子達に会うとは、びっくりしましたね。」
「うん、でも、話してみるとみんなとても優しいし、なんだか楽しい。」
愛里寿とアズミも浴衣に着替えて、窓際の籐椅子に座って冷水を飲んでいる。
このホテルでは女性には色浴衣を貸し出していて、お風呂の帰りにそれぞれお気に入りの柄の浴衣を持って来たが、愛里寿は浴衣をうまく着られなかったので、アズミが着付けを手伝った。
「愛里寿ちゃんのこと、思わず隊長って呼んでしまいました。」
「大丈夫。私も前のみほさんの時みたいにアズミお姉ちゃんって言いそうになった。」
「その呼び方は2人でいる時だけですからね。」
「アズミは、あの子達のこと、どう思っているの?」
「どうって?」
「試合で負けた事。私は、あの試合でみほさんと西住さん達と戦って、これまで見たことのないような戦車戦を経験して、自分の糧になったと考えている。世間では島田流が西住流に負けたという風潮もあるようだが、私は気にはしていない。そんな機会は無いとは思うが、次回また試合をしたら、勝てると考えている。お母様も、あの試合に負けたことについては、特に咎めるようなことは言っていない。」
13歳の少女とはいえ、そこはやはり天才と言われただけあって、負けた事をいつまでも引きずるようなことはしていなかった。
この話をする間、2人は、隊長と副官という立場に戻っていた。
「そうですね。負けた事自体はやはり悔しいと思っています。ただ、大洗連合が勝ったことで大洗女子学園が廃校にならずに済んだので、それはそれで良かったんだと思います。」
「ふふ、正直言って、あんな負け方をして、なんだか清々しかった。」
「それに、大事なボコ仲間ができましたからね。」
「うん。」
アズミのその一言で、また愛里寿ちゃんとアズミお姉ちゃんの間柄に戻った。
「あら、もうこんな時間。そろそろ食堂に行きましょうか。」
「うん!」
アズミは、これも先ほどの色浴衣と一緒に借りてきた小さめの丹前を愛里寿に着せてあげてから、2人で食堂に向かった。
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福田や梓たちと、愛里寿とアズミが食堂に着いたのはほぼ同じぐらいだった。
入り口で部屋番号を告げると、係の人がテーブルに案内してくれた。福田が事前にお願いしていたとおり、梓たちと愛里寿たちは同じテーブルに席が用意されていた。
「すごい、お刺身の舟盛りがあるよ!」
「陶板焼きもあるようです。火を付けてその場で焼くのでしょう。」
「先付の盛り合わせも綺麗。」
適当に席について、お品書きに目を通す。
「デザートはあっちでバイキング形式になっているみたいですね。」
「別腹も準備万端ですわ!」
そこに、係の人が来て、飲み物の注文を聞いてきた。ただ、ジュースやお茶、コーヒーなどはデザートバイキングのところで好きなものを取って来れるので、お酒の注文のためらしい。
「あの、隊長、ビールを注文してもよろしいでしょうか?」
「うん、構わない。この中でお酒を飲めるのはアズミだけだし、今日は戦車道の合宿じゃないから好きなだけ飲んでもいいよ。あ、でも、飲みすぎないでね。」
アズミがビールを注文すると、他のメンバーは、各自、お茶やアイスティー、ウーロン茶などを取って来た。その際、デザートバイキングにどんなものがあるのかをチェックするのも忘れなかった。
席に戻ると、アズミが注文した瓶ビールとグラスも運ばれてきたので、みんなで乾杯することにした。
「じゃあ、乾杯は福ちゃんにお願いしようかな。」
梓がそう言ったので、みんなの目が福田に注がれる。
「コホン、では、僭越ながら、不肖福田、乾杯の音頭を取らせていただきます。」
「本日は皆様、遠くからの単車での走行、お疲れ様でした。また、思いがけなく大学選抜の島田殿、アズミ殿ともお会いし、この場にご同席頂けて嬉しく思います。この貴重な機会を通して、高校、大学の枠を超えた戦車道の懇親を図ってください。では、乾杯!」
「「「かんぱ~い!!!」」」
さまざまな飲み物が入ったグラスを、順番にカチンと合わせて乾杯する。特に、ビールが注がれたグラスと乾杯すると、自分も大人になったような気持ちになるので、全員がアズミと乾杯していた。
「さあ、食べるでございますわよー!」
「ローズヒップさん、これだけたくさんありますし、誰も取らないからゆっくり食べても大丈夫ですよ。」
「私はまず最初に銀シャリをいただくのであります!」
「お櫃はこっちにあるから、ボクがよそうよ。福田さん、お茶碗を貸して。」
「この舟盛り、すっごくたくさんの刺身があるよ。マグロ、はまち、甘エビ、イカ、タコ、鯵、鯛、あと、貝!」
「この煮魚は金目鯛ですね。」
「この先付、ビールの肴にぴったりだわ。」
「刺身蒟蒻って初めて食べたけど、とても美味しい。」
目の前に並べられた様々な料理を味わいながら、昼間のツーリングの話をする。
アズミも、先付と刺身を肴にしながらビールを飲んでいる。
乾杯を済ませたタイミングを見計らって、係の人が固形燃料に火を付けてくれた。
「隊長、火には気を付けてくださいね。」
「アズミ様って、なんだか島田様のお姉さまみたいですわ!」
愛里寿を気遣うアズミを見て、ローズヒップが言うと、
「うん、戦車道では私が隊長だけど、それ以外ではアズミもルミもメグミも、私にとっては優しいお姉さんだから。」
と愛里寿がアズミを見てにっこりと笑う。
「まあ、そんな風に思っていただけるなんて、感激です。ルミやメグミにも聞かせてあげたいですわ。きっと、嬉しくって卒倒しますよ。」
アズミが顔を赤らめて嬉しそうにビールをもう一杯飲む。
「そう言えば、ルミさんやメグミさんは一緒に来なかったんですか?」
梓は、大学選抜との試合の後、大学選抜のホームページを見て、アズミ、メグミ、ルミの3人は副官であり、3人のコンビネーションで繰り出すバミューダアタックという技が有名だということを知った。
「あの子達は別に用事があったみたい。今週末は戦車道の練習がなかったから、結構前から予定していたんじゃないかしら。私と隊長は、特に予定は無かったけど。」
「だから、アズミにお願いして温泉に連れて来てもらった。」
「もしかして、メグミ様とルミ様は彼氏とデートではありませんこと?」
ローズヒップがいきなりストレートな質問を投げかけて来たので、アズミは飲んでいたビールでむせてしまった。
「だ、大丈夫ですか?ローズヒップさん、あんまりプライベートなことに首を突っ込んじゃだめですよ。アズミさん、どうもすみません。」
オレンジペコが、ローズヒップの非礼を詫びる。
「はあ、大丈夫よ。残念ながら違うの。メグミは、高校の友人が長崎から遊びに来るからって、一緒にディ○ニーランドに行ってるし、ルミは、実家の法事って言ってたわ。」
「アズミもメグミもルミも、彼氏いないから。」
そこで、愛里寿がさらに爆弾発言をした。
「グホォッ!た、隊長!」
今度はビールを吹き出しそうになっている。
「だって、いつも3人でそんな話をしているし。」
「そ、そうなんですか?皆さん、とても綺麗でいらしゃるのに。」
「それに、私達から見たら、とても大人であります。大人の女性って感じがするであります。」
ねこにゃーと福田も、思わず聞いてしまう。
「それに、お酒を飲んでいるアズミ様って、なんだか色っぽいですわー!」
「ちょ、ちょっと、ローズヒップさん!」
「綺麗とか大人の女性って言われると、悪い気はしないわね。」
なんとか気をとりなおしたアズミが、にっこり笑いながら答える。
「でもね、私たちの大学って女子大だし、戦車道をやっているのも女性ばっかりだから、素敵な男性と出会う機会がほとんど無いのよ。」
「う~ん、それは、少し残念ですね。」
「まあ、今は彼氏を作るよりも、隊長のもとで戦車道をやるほうが私達にとっては大事なの。やっぱり、選抜されて、副官まで任されているとなると、それをきちんとこなせるようになりたいと思っているから。」
「な、なんだか、大人の余裕って感じがするにゃ。」
話が変な方向に行きそうだったので、梓が話題を変えるように言った。
「あ、あの、アズミさんは、中型のバイクに乗ってらっしゃるんですか?」
「ええ、中型だと高速にも乗れるから、行動範囲が広がるし。免許を取ったのは大学に入ってからよ。」
「では、いきなり自動二輪の免許を取得されたのでありますか?」
「そう。最初は免許を取るなんて思ってもみなかったけど、週末にどこかに出かける時にバイクがあればいろんなところに行けるな、と思って取ったの。」
「愛里寿さんは、アズミさんとタンデムだったんですね。」
愛里寿とはあまり話す機会が無かったので、オレンジペコも積極的に話しかける。
「うん、以前、みほさんにボコミュージアムに行こうって誘われた時、お小遣いがピンチだったんだけど、そしたらアズミが大洗まで乗せて行ってくれたの。それがすごく楽しかったから、たまに後ろに乗せてもらってる。」
「ボクとか福田さんが乗ってる小型二輪も2人乗りはできるけど、やっぱり中型のほうがいいよね。」
「私の兄も中型のバイクに乗っていて、小さい頃は良く後ろに乗せてもらいましたのよ。」
「西隊長も中型の単車に乗っているであります。私は、体が小柄なので小型二輪の免許を取得しましたが、ある程度慣れたら中型の免許に挑んでみたいです。」
「わ、私にも中型の免許って、取れるかなあ。」
梓は、今日の山道で原付で結構苦労したので、もう少し大きなバイクに乗りたいと思っていた。
「中型のバイクに乗るのって、原付や小型に比べると難しいと思うかもしれないけど、実際に教習所で乗ってみるとそれほどでもないわ。」
「そうなんですか。」
「まあ、クラッチ操作なんかはあるけど、それもすぐに慣れるわよ。」
「ボクも小型二輪の教習でクラッチ操作習ったけど、案外簡単だったよ。」
そこからは、自分たちがバイクの免許を取得したきっかけや、これまでに行ったツーリングの話で盛り上がった。
気が付くと、料理もあらかた食べ終わっていた。さすがに愛里寿は全ての料理を食べることはできなかったが、ひととおりの料理に箸をつけて、普段とは違う食事を楽しんでいた。
「あの、そろそろデザートバイキングに行きませんか?」
梓が、おずおずと他のメンバーに聞く。
「そうですね。いろんなケーキやゼリー、フルーツがありましたからね。」
オレンジペコも乗り気のようだ。
「デザートのために、腹八分目にしておきましたのよ!」
「腹八分目って、ローズヒップさん、完食しているじゃないですか。」
「私は、お汁粉を食べたいのであります。」
「私も、お腹一杯だけど、ケーキは食べたい。」
「隊長、あんまり無理しないでくださいね。まあ、ここのケーキはすごく小さいから、少しぐらいだったら大丈夫かと思いますが。」
「じゃあ、とりに行こうか。ボクも、普段はネトゲしながらジャンクフードだけど、たまには食後にケーキとコーヒーなんてお洒落なデザートを楽しみたいし。」
そう言って、みんなでデザートバイキングに行くことにした。
しばらくすると、それぞれいろんなデザートを持って来ていた。梓は、フルーツケーキとチョコケーキ、ねこにゃーはロールケーキとブルーベリームース、福田は言ってたとおり、お汁粉、オレンジペコは苺ケーキとバタークッキー、ローズヒップは小さな鯛焼きとマロンケーキとプチシューを持って来た。
ケーキや鯛焼きはミニサイズなので、お腹一杯でもなんとか食べられそうだった。
そこに、少し遅れて愛里寿がお皿に何かを入れて持って来た。
「島田様、それは何ですの?」
「マシュマロとバナナにチョコレートをかけたやつ。あそこのチョコレートファウンテンで作った。」
「えっ?それ、楽しそう!私もやりたい!」
梓がそう言って愛里寿が指差した方向に行くと、他のみんなも取って来たデザートを置いて、チョコレートファウンテンのほうに行ってしまった。
「あれ、アズミはデザート食べないの?」
「まだお酒と料理が残ってますので。でも、後でフルーツは取りに行きますよ。」
「私、いろんな人とこんなにたくさんお話したの、初めて。」
「飛び級で大学に入られましたから周りは年上ばかりですし、今日のメンバーはほとんどが高校1年生だから、やっぱり年代が近いほうが話しやすいでしょう。」
「うん、みんな、優しくて、それに、話していて面白い。」
「じゃあ、もっとみんなといろいろお喋りしましょう。」
そこに、いろんなものにチョコレートをかけたデザートを持ったメンバーが帰って来た。
「チョコの滝に入れたら、バナナが落ちてしまいましたわ!」
「チョコが跳ねて浴衣に付いちゃった。」
「ぐふふ、鯛焼きのチョコレートかけを手に入れたボクに隙はないにゃ。」
「クッキーにチョコをかけると、また違う味が楽しめそうです。」
「あれ?お皿にくっついて取れないであります。」
福田が作って来た、プチシューにチョコをかけたものがお皿にへばりついて取れなくなっていた。
「あ、それね、チョコを付けた後、少し待って表面が固まってから置かないと、くっついちゃうの。」
「なるほど、ありがとうございます。次は失敗しません。」
積極的にみんなに話しかける愛里寿を、アズミは優しく見つめていた。
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デザートも食べ終わり、お腹が一杯になったので、そろそろ部屋に戻ることにした。
「まだまだ夜は長いですわー!」
「ローズヒップ殿は、元気一杯ですなあ。」
「私も、旅行ではテンションが上がってしまいます!」
「ボクは、この時間だとまだネトゲも始めていないにゃ。」
「では、少し休んだら2次会なんていかがでしょうか?」
オレンジペコは、聖グロの女子寮では消灯時間が決まっていてあまり夜更かしはできなかったので、こんな時こそ夜更かしをしてみたかった。
「女子会ですね、楽しそうですわ!」
「あの、女子会って、どんなことするの?」
愛里寿が興味津々でアズミに聞く。
「女の子同士で集まって、飲んだり食べたりしながらお喋りすることです。さっきの夕食も一応女子会なんですが、多分、お部屋でお菓子を食べながらお喋りすることだと思いますよ。」
「なんだか楽しそう。あ、あの、私たちも女子会に参加してもいいですか?」
愛里寿がオレンジペコに遠慮がちに聞く。
「もちろんです!私たちのお部屋に是非お越しください。実は、私、愛里寿さんといろいろお話してみたかったんです。」
「愛里寿ちゃんも来てくれるの?」
「では、アズミさんもいかがですか?私たちはお酒は飲めませんが、アズミさんはお酒を飲みながらでもよろしいのでは。」
アズミは、夕食の時に瓶ビールを1本だけ飲んだが、ちょっと物足りなかった。
「アズミも一緒に行こう。」
「ええ、喜んで。普段はメグミやルミと飲んでるから、たまには若い子達とお喋りしたいですね。」
「アズミ様、なんだかおじさんみたいですのよ。」
「お、おじさん!?」
「ローズヒップさん!アズミさん、たびたび申し訳ありません。」
「まあ、そう言われても仕方ないわね。じゃあ、飲むぞー!」
「アズミ、あまり飲みすぎないでね。じゃあ、後ほどお部屋にお邪魔します。」
と、約束をして、エレベーターで別れた。
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コン、コン。
「は~い。」
「今開けますのよ!」
ドアをノックする音を聞いて、オレンジペコとローズヒップが玄関のドアを開けて愛里寿とアズミを迎え入れた。
「お邪魔します。」
愛里寿が遠慮がちに部屋の中に入る。
「ようこそ、お待ちしておりました。」
「どうぞ、お好きなところにお座りください。」
部屋の中にいた福田と梓も、愛里寿とアズミが入って来たので、立ち上がって挨拶した。
食事を終えた後に部屋に戻ると、すでに布団が敷かれていたが、布団を半分に折ってクッションになるようにして、部屋の隅に寄せてあったテーブルを真ん中に戻してそこにお菓子と飲み物を置けるようにした。
「これ、みなさんで召し上がってくださいな。」
アズミが、お菓子とジュースの入ったビニール袋を差し出す。
「アズミと一緒に近くのコンビニに行って買って来たの。」
「どうもありがとうございます。」
「愛里寿ちゃん、一緒にお菓子、食べよう。」
2年生ということで一応上級生のねこにゃーが、丁寧にお礼を言う。梓は、自分の横に座布団を置いて、愛里寿をそこに座らせた。
オレンジペコは、コップを持って来てジュースを注ぐ。福田は、お菓子の袋を空けて、みんなが手に取りやすいように小分けにして置いた。
「あれ?アズミさんは?」
「私にはこれがあるから。だから、ジュースとお菓子はみなさんでどうぞ。」
そう言って、アズミはもうひとつのビニール袋から、缶チューハイとチーズ鱈を取り出した。
「アズミ様、さすがですわ!」
「私ひとりだけごめんなさいね。でも、さっきのビールだけじゃなんだか物足りなくって。」
「いえ、この中でお酒が飲めるのはアズミ様だけですから。でも、やっぱりなんだか大人っぽいですね。」
オレンジペコも、お酒を飲むアズミを見て、夕食の時の福田と同じように思った。
「では、2次会は堅苦しい挨拶は抜きにして、始めてしまいましょう。」
福田は、この雰囲気のせいか、いつもの生真面目な態度を和らげて、さっそくお菓子に手を伸ばした。
オレンジペコやローズヒップも、クッキーやポテトチップスに手を伸ばす。
愛里寿も、ジュースを一口飲んだ後、クッキーをひとつ取って口に運ぶ。
アズミは、缶チューハイのプルタブをカシッと開けた。
「島田様って、おいくつの時から戦車に乗っていらっしゃいますの?」
唐突に、ローズヒップが愛里寿に聞く。
「お母様に戦車に乗せてもらったのは3歳ぐらいだったけど、あんまり覚えてない。でも、自分で戦車を動かしたのは、6歳ぐらいだったと思う。」
「そ、そんな小さいころから。ボクが6歳のころは...あ、買ってもらったゲーム機で遊んでたにゃ。」
「それで、小学校に上がってから、本格的に戦車道を教えてもらった。」
「西住隊長も、小さい頃に家のⅡ号戦車でお姉さんと一緒に遊びに行ってたって言ってました。」
「やっぱり、流派の家元の家にいると、戦車に触れる機会が多いんですね。」
「西隊長は、中学生のころから戦車道を始めたと聞いております。」
「じゃあ、その頃から突撃されてましたの?」
「いえ、突撃は知波単の伝統でありますので。過去に全国大会で4位になった際、全車両で突撃して勝利したので、その後、突撃が伝統になったと聞いております。」
「今では、知波単と言えば突撃ってイメージですね。」
「あ、あの、島田殿にお伺いしたいのですが。」
福田が正座に座りなおして、真剣な顔つきで愛里寿に聞いた。
「我が知波単はその突撃によって確かに過去に勝利したこともありますが、近年は全く勝てておりません。それゆえ、全国大会どころか、練習試合での成績も芳しくなく、私としては歯がゆい思いをしております。この間のエキシビションでも、大洗の方々の指示を守らずに突撃してしまい、ご迷惑をおかけしたのが非常に悔やまれます。もしよろしければ、島田殿から何らかのご助言を賜れればありがたいのですが。」
福田から、戦車道についての相談を受けた愛里寿は、少し考えるようにして、体を福田の方に向けてから、言った。
「突撃は、戦車道においてひとつの有効な戦術ではある。」
「や、やはり、そうでありましたか!」
「しかし、使い道を誤れば、ただ無鉄砲に突っ込むだけになってしまう。突撃して相手を倒せればいいけど、突撃している最中は隙が多いから攻撃を受けやすくなるし、全速力で突撃していると、相手からの攻撃を躱すのが難しくなる。」
「そもそも、あくまで突撃は手段であり、それ自体が目的ではない。戦車道の目的は、相手を倒すこと。それができない状況で無闇に突撃するのは、愚かなこと。」
戦車道で隊長を務めている時のような凛々しい表情になった愛里寿が、先ほどまでとは違った隊長としての口調で厳しい意見を淡々と話す。それを聞いた福田は、それも真っ当な意見であり、自分もうすうす感じていたことだったので、沈んだ表情になってしまっていた。
「でも」
愛里寿が、言葉を区切って話を続けた。
「知波単の戦車道のレベルは非常に高い。九七式中戦車を中心とした編成で、火力と装甲は弱いが、それを十分に補えるだけの練度はある。重戦車はないけど、福田さんの乗っている九五式軽戦車もあるから、編成によっては様々な戦術をとることができると思う。」
「さっき言ったような、突撃が有効な戦術となるには、それが一撃必殺として使われなければならない。そのためには、そのような状況に持って行くための戦術の運び方も考えておく必要がある。」
「今の知波単は伝統をはき違えているのではないか。隊員たちも、突撃することが伝統を守ることと考えているのかもしれない。伝統は大事ではあるが、それに縛られてはいけないと思う。先輩から受け継がれた伝統を生かすための戦略を考えることが一番重要であることをしっかりと理解しなければならない。」
「今の知波単に、それは可能なのでしょうか?」
「隊員たちの考え方を根本から変えるには、時間がかかると思う。それに、それを主導する者が変革するという強い意志を持っていなければならない。今の知波単の隊長は西絹代さんだけど、彼女は隊員たちから慕われていると聞いている。ただ、彼女一人では変革を推し進めることはできないかもしれない。だから、福田さんがそれを支える立場になれるかどうかにかかっていると思う。」
「知波単は、上下関係が厳しいそうだけど、福田さんが粘り強く意見を言っていけば、いつかは聞き入れてもらえると思う。だから、頑張ってほしい。」
「あ、ありがとうございます!不肖、福田、西隊長を支援しながら、粉骨砕身で知波単の改革を目指すのであります!」
さっきとは違って、晴れやかな表情になった福田が、愛里寿に最敬礼でお礼を言った。ただ、あまりにも勢いよくお辞儀したので、テーブルにおでこをぶつけてしまった。
「ふ、福ちゃん、大丈夫?」
梓がびっくりして福田のもとに駆け寄った。
「大丈夫であります!この痛み、知波単の伝統を変革するための産みの苦しみと思えばどうってことはありません!」
「い、いや、それは少し違うとおもうにゃ。」
「この間の試合では、西門で待ち構えていた知波単部隊はゲリラ戦法みたいなので戦ってたそうね。うちのパーシングもそれでやられたって聞いたわ。」
窓際で話を聞いていたアズミが、思い出すように言った。
「その後も、沼地で待ち伏せしたり、砂場に突っこんだパーシングの動きを封じて撃破したり。」
「あ、あれは、アヒル殿との共闘で成し遂げたものなのです。」
「アヒル殿?」
「八九式に乗ってる、うちのアヒルさんチームのことです。全国大会の決勝戦では、マウスの上に乗って、砲塔の動きを封じたりしてました。」
梓が補足する。
「エキシビションの時も、知波単で唯一生き残った私の九五式とアヒル殿とで共闘して、立体駐車場で聖グロのマチルダを撃破できました。」
「おそらく、彼女たちも八九式の火力や装甲が弱いのを知っていて、そのような戦術で戦う術を身に着けたんだと思う。」
愛里寿が、大洗に行った時に会ったアヒルさんチームのメンバーを思い出しながら言った。
福田の話を聞いていたオレンジペコは、聖グロも過去からの伝統に縛られていることを思い出し、愛里寿に聞いてみた。
「あの、聖グロも、一応強豪校とは言われてますが、良くて準優勝止まりなんです。隊長車のチャーチルを中心とした浸透強襲戦術は得意なんですが、相手がそれを躱して体制を立て直して向かって来ると、どうしても勝てないんです。」
「でも、聖グロは私たちが唯一勝ててない相手なんだよね。」
梓が、練習試合やエキシビションを思い出しながら言った。
「全国大会では、結局黒森峰に敗れてしまいました。」
「あれは、本当に悔しかったですわ!」
今度は、愛里寿はオレンジペコのほうを向いて答える。
「聖グロが、OG会の意向によって新しい車輌の導入を妨げられていることは知っている。歴代の隊長達もそれをなんとかしようとしていたみたいだけど、なかなかうまくいかないらしい。これがいつ実現するかはわからないから、今の戦力を前提で話すと、おそらく、クルセイダーの使い方が鍵になると思う。」
「そうなんでございますの!?」
ローズヒップが驚いて腰を浮かす。
「チャーチルとマチルダは、進攻速度は遅いけど、火力と装甲に強みを持つ。一方で、クルセイダーは、火力と装甲は弱いけど、その速さによる機動力が強み。だから、お互いの強みを生かし、弱みを補うような戦術ができれば、今の戦車でも十分に強くなれるはず。」
「聖グロのクルセイダーと大洗の八九式は似ていると思う。八九式は、火力は弱いけど、その機動力を生かして偵察や相手を攪乱する役割で、大洗の戦術に幅を持たせている。クルセイダーが同じように相手を攪乱することで、浸透強襲戦術が躱されたとしても相手が大勢を立て直せないような戦術になる。それに、クルセイダーの火力は八九式よりも強力だから、いざとなれば攻撃部隊にもなりうる。大学選抜のチャーフィーとやりあったぐらいだから。」
「わかりましたわ!私もアヒル殿に弟子入りしますわ!」
「それはちょと違うと思うにゃ。」
「でも、ローズヒップさん達が弟子入りしたら、人数が増えるからバレーができるって、アヒルさんチームのみんな、喜びますよ。」
「なるほど、バレーが秘訣なんですのね。では、私もバレーの練習を始めますわ!」
「ローズヒップさん、聖グロにバレー部はありませんよ。」
「だったら、戦車道の訓練にバレーの練習を取り入れるよう、ダージリン様に進言しますわ!」
愛里寿のアドバイスを受けたローズヒップは、自分が率いるクルセイダーが鍵となることを聞いて、やる気満々だった。
「しかし、島田殿、私が言うのも何ですが、そんなに気軽に高校生の戦車隊に助言を提供しても良いものなのでしょうか?」
知波単や聖グロに惜しみなくアドバイスをする愛里寿に、福田が素朴な疑問を口にした。
「この間は、訳あって大学選抜と大洗連合になった高校生チームと試合することになったけど、普段は大学生と高校生が試合をすることはまずない。だから、大学選抜にとって、高校戦車道が脅威になるということはない。それに、たとえ試合をすることになっても、次は勝つ自信がある。」
「むしろ、高校戦車道で力を付けた選手が大学に進学して、大学選抜に入ってくれることのほうがメリットになる。もちろん、高校戦車道での成果がそのまま通用するほど大学選抜は甘くないが、それでも高校生時代に力を付けておくことにこしたことはない。」
「優秀な後輩が入ってくれたら、私達も嬉しいですしね。」
アズミも、愛里寿に同意する。
「うん、お母様も、高校の戦車道を調べて、常に優秀な選手を探している。西住流家元ともたまに情報交換しているみたい。お互いに、大学戦車道連盟、高校戦車道連盟と立場は違うけど、日本の戦車道を盛り上げていくことでは利害が一致しているから。」
「私自身も、これまで高校戦車道のことはあまり知らなかったけど、この間の試合の後で過去の大会や練習試合の記録を読んで、今の高校戦車道のレベルの高さに驚いた。それに、大学選抜ではありえないような奇抜な戦術が用いられている。」
「確かに、プールや池に隠れて待ち伏せしたり、観覧車を撃ち落として包囲網を崩したり、街中の風景に擬装するなんて、これまで見た事ありませんからね。」
アズミが、先日の試合を思い出しながら、愛里寿の説明を補足する。
「今の大学選抜は、お母様が大学戦車道連盟理事長をやっているからというわけではないけど、島田流の色が濃くなっている。そこに西住流が入ってきて、双方が有機的に融合すれば、これまでとは違った戦術や戦い方が生まれると思う。」
「西住さんのお姉さんは来年卒業だし、西住さんも1年後は卒業だから、この2人が大学に進んで戦車道を続けたら、そうなる可能性もあるにゃ。」
「あと2年もすればアズミ達は卒業してしまうけど、西住さんやみほさんだけじゃなく、今の強豪校の隊長格の人達が入って来る。彼女たちのポテンシャルを考えると、アズミ達の世代を上回れるかもしれない。」
「ダージリン様も、この間の試合の後、大学選抜に入りたいとおっしゃってました。結局、普通のやり方では通用しなくて、T-28が橋を渡るところを、下から撃ち抜くという手でしか勝てませんでしたから。大学選抜チームの練度は、高校とは比べ物にならないと感じたそうです。」
「だから、将来大学に入って来る高校生がより強くなれるようにアドバイスすることは、私達大学選抜チームにとってもメリットがある。」
女子会とは言うものの、やはり戦車道の話になってしまっていた。愛里寿も、大学選抜チームの隊長として真剣に話していたので、気が付くと、お菓子やジュースにはほとんど手を付けていなかった。
「すっごくためになるお話ですわ!島田様、今日は本当にありがとうございます。あ、お菓子は遠慮なく食べて頂いてよろしいのですわよ!」
ローズヒップが、場の雰囲気を変えるように愛里寿にお菓子を勧める。
「愛里寿ちゃん、好きなもの食べて。」
梓も、この雰囲気では愛里寿もお菓子を摘まみにくいだろうと思って、ローズヒップと同じようにお菓子を勧めた。
「隊長、戦車道の時と普段では気持ちのスイッチが切り替わりますからね。」
アズミが、自分も場の雰囲気を変えるのを手伝おうと、2本目の缶チューハイを開ける。
「う、うん、ありがとう。この、小さなおかきとピーナッツが入ったの、食べてもいい?」
「柿ピーですね。どうぞ。アズミさんもおツマミにどうぞ。」
オレンジペコが柿ピーの小袋を愛里寿とアズミに勧める。
「私は、小さいころから戦車道をやっていて、それ以外のことはあまりしてこなかったの。飛び級で大学に入って、そこで戦車道の隊長をしているけど、本当はみんなと同じように高校生活をしてみたかった。だから、今日みたいにみんなといろいろお喋りするの、すごく楽しい。」
「私たちも、戦車道の時間だけじゃなくって、お昼ご飯は隊長と一緒に食べたりするんだけど、やっぱり年上だからか、ちょっと遠慮がちみたいなの。だから、隊長が皆さんとこんな風に楽しくお喋りできて、本当に良かったわ。」
アズミが、愛里寿の楽しそうな顔を見て、みんなにお礼を言った。
「また、大洗に遊びに来てね。西住隊長も、愛里寿ちゃんとボコミュージアムに行くの、すごく楽しみにしてるから。」
「知波単にもぜひお越しください。戦車隊一同で精いっぱいおもてなしいたします。」
「聖グロにも来て下さいね。紅茶の園でのティータイムで、美味しい紅茶をご馳走します。」
「ティータイムでは、いろんなお菓子も出ますのよ。」
「ありがとう。高校生活を経験するために、大洗に行ってみたけど、みほさんと戦えなくなると知って、結局取りやめてしまった。あれからいろいろと考えたけど、まだどの高校に行こうか悩んでるところ。」
「だったら、かわりばんこにいろんな高校に行けばよろしいのではございませんこと?」
「え?」
「今週は知波単、来週は聖グロ、その次はサンダースみたいに、週替わりでいろんな高校に行けばよろしいのですわ!」
「それって、なんだか楽しそう。いろんな学校の高校生活を体験できるってのもいいかも。」
「しかし、入学を前提とした体験入学ならわかりますが、そんな風に転々といろんな学校に通うことは可能なのでしょうか?」
福田が、もっともな意見を言う。
「でも、福田さん、大学選抜との試合の際、私達、大洗女子学園に短期転校しましたよね。」
オレンジペコが、ローズヒップの発言を聞いて、思いついたように言った。
「あれって、少し強引な手段だったかもしれませんが、前例がありますので、実現不可能というわけではないと思います。」
「そうか、あの時は特殊な事情があったけど、今回は名目上、短期転校の目的を戦車道履修者との交流という形にすれば、大学選抜チームの隊長、しかも島田流の指導を受けられるとなれば学校側にもメリットがあるから、受け入れられるかもしれないね。」
ねこにゃーが、オレンジペコが言いたかったことを引き継ぐ。
「確かに、島田殿が我が知波単に短期入学していただければ、先ほどの話のようなこともできるかもしれません。私などの言うことは先輩方から一蹴されるかもしれませんが、島田殿の口から言ってもらえたら、耳を傾けると思います。」
「聖グロも同じです。戦車道の指導として、クルセイダーを生かした戦術を考える手助けをいただければ、非常に有り難いです。」
「大学選抜チームによる高校戦車道との交流。島田流の指導。確かにもっともな理由にもなる。けど、私の我儘のためにそんなことをお願いしてもいいのかな。」
「よろしいんじゃないでしょうか。」
これまで話を聞いていたアズミが、愛里寿に答えた。
「家元、隊長に高校生活を経験させてあげたいとおっしゃってました。それに、大洗連合との試合の後、これからは高校戦車道との交流も必要ということで、西住流家元と話しているそうです。」
「かと言って、私たちが高校に行くのはなんだか違うような気がします。もちろん、OGということで母校を訪問するというやり方もあると思いますが、その前段階で、隊長自ら各校を訪問するというのをパイロットとしてみてはいかがでしょうか。」
「この間の大洗の体験入学は2日間だけだったから、また来てほしいな。今度は愛里寿ちゃんと一緒に戦車道やってみたいし。」
愛里寿が前回大洗に来た時は、うさぎさんチームとはあまり遊べなかったので、梓もそのアイデアには賛成だった。
「でも、西住流本拠地の黒森峰は、ちょっと難しいかもしれませんね。」
窓際で、アズミの向かい側に座っていたねこにゃーが思い出したように言う。
「ううん、お母様と西住流家元って、実は昔から結構仲が良いし、最近よく電話で話しているみたいだから、二人の間で話がつけばできないことはないと思う。」
「さっきも話したように、大学が島田流、高校が西住流のように見えるけど、流派の壁のためにそれぞれの戦車道の成長を妨げられるというのは好ましくない。」
「黒森峰は、西住さんが卒業したら次は逸見さんが隊長になると聞いている。おそらく、逸見さんは西住さんのやり方を踏襲すると思うけど、それでは行き詰ってしまう。全国大会の後は、これまでの電撃戦術にこだわらず、訓令戦術も取り入れるなど、柔軟性を身に着ける訓練をしているらしい。だったら、そこに島田流のエッセンスを組み込めば、逸見さんとしての独自の戦術ができるかもしれない。」
「そうすると、来年の全国大会では黒森峰がさらに強敵になりますね。」
オレンジペコが、来年は自分たちが黒森峰と戦うことになることを想像した。
「大丈夫ですのよ。次回は、私のクルセイダー部隊が黒森峰を攪乱して、勝利に貢献しますわ。だから、島田様、ぜひ聖グロに来て私達を鍛え上げて下さいませ!」
「我が知波単もです!なんとか来年の全国大会までには意識改革を推し進め、突撃以外の戦術も身に着けてこれまでとは違う知波単戦車隊を作り上げるのであります!」
「あ、あの、もう一度大洗にも遊びに来てほしいな。」
「聖グロのティータイム、知波単の純日本風の校舎、大洗のあんこう鍋、それに、オクシュアルテスとして歴史談義したり、バレーボールしたり、名誉風紀委員になったり、パーシングと同じ馬力の車に乗ったり、ネトゲやったり。どれも面白そう。」
「ローズヒップさんは、愛里寿さんに勉強も教えてもらったほうが良いのでは。」
「うぐっ、そ、そこは大丈夫、と思いますわ...」
「私は、外来語を教えていただきたいです。我が知波単は、みんな外来語が苦手なのであります。」
「愛里寿ちゃん、大学生だから、高校の勉強もバッチリだしね。」
愛里寿は飛び級で大学に入ったため、高校の授業は受けていないが、高校の教育課程の知識は身に着けていた。
「喜んで。みんなと一緒に授業を受けるのも楽しみ。」
「みんなで集まってお菓子食べながら宿題しようね。」
これまで悩んでいた転校の話が思わぬ流れで自分が考えていたよりさらに楽しそうな形で実現できるかもしれないとわかって、愛里寿はやはりこの場に来て良かったと思った。
その後も、女子会らしく、洋服の話や、紅茶の話、好きなテレビ番組の話(ボコの話は誰もついて行けなかったが)など、お菓子を食べながら話のタネは尽きなかった。
チューハイを飲んでしまったアズミは、廊下の自販機で買って来たワンカップを飲みながら、メグミやルミとの飲み会とは違う話を新鮮な気持ちで聞いていた。
「そう、それでね、あ、あれ?愛里寿ちゃん、眠くなっちゃったの?」
「もう、結構夜も更けて来たからね。」
梓が、目を閉じてうつらうつらしている愛里寿に気付くと、ねこにゃーが時計を見た。
「では、そろそろお開きにいたしましょう。」
丁度頃合いと見た福田が、みんなに声をかける。
「後片付けは私達がやりますから、アズミさんは愛里寿さんを連れてお戻りください。」
寝落ちしている愛里寿を見て、オレンジペコがアズミに言う。
「ごめんなさいね。じゃあ、お願いするわ。今日は本当にありがとう。」
アズミが愛里寿を抱えて玄関に向かう。
「あ、悪いけど、お酒の缶や瓶は廊下の自販機の横のゴミ箱に捨てておいてね。高校生の泊まったお部屋からそれが見つかると、大事になるから。」
「了解であります。」
福田が、アズミの飲んだお酒の缶と瓶を別にまとめる。
「じゃあ、皆さん、お休みなさい。」
「お休みなさい。」
愛里寿が寝入っているので、梓たちは小声でお休みの挨拶をした。
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翌朝、福田達は、少し早起きして朝風呂を楽しんでから、朝食を食べるために食堂に向かった。ホテルの朝食はバイキング方式になっており、席に着いた後は、各自がそれぞれ自分の好きな料理を取って来た。
「やっぱり福ちゃんは和食なんだね。」
福田が抱えたお盆を見て、梓が言う。
福田のお盆には、ご飯にお味噌汁、納豆、切り干し大根、鯵の干物、梅干し、海苔、温泉玉子が乗っていた。
「はい。知波単の食事は基本的に和食ですし、やはり朝食にご飯とお味噌汁は欠かせません。」
「私も朝ご飯は和食派かな。」
「おかずやお漬物がたくさんあるので、普段の朝食より豪華になりました。」
「ボクは普段はカロリーメイトで済ましちゃうけど、こういうところだといろいろ食べたくなるよね。」
ねこにゃーのお盆には、ご飯にお味噌汁、豆腐、目玉焼きにウインナー、サラダ、フルーツなど、和洋折衷の様々な料理が乗っていた。
「私はやっぱり洋食ですね。」
そう言うオレンジペコは、トーストにホットミルクティー、オムレツ、スライスハム、サラダ、ブルーベリーソースをかけたヨーグルトが乗っていた。
「ペコちゃんの朝食って、なんだかおしゃれだね。」
「お待たせしましたわー!」
最後に戻ってきたローズヒップは、山盛りご飯にお漬物数種、鮭の切り身、ソーセージ、ベーコン、玉子焼き、サラダ、小松菜の胡麻和え、豆腐、きんぴらごぼう、コーンスープ、フライドポテト、フルーツなど、統一感の無い料理が所狭しと並んでいた。
「こういうところでは、普段だと食べられないものを食べてしまいますのよ。」
取って来た料理の話をしていると、アズミと愛里寿がお盆を持って来た。
「おはようございます。ご一緒してもよろしいかしら。」
「あ、おはようございます。どうぞどうぞ。」
丁度、同じテーブルの席が2つ空いていたので、オレンジペコがその席に着くようにを勧めた。
「アズミさんの朝食って、お洒落ですね。」
アズミのお盆の上には、クロワッサンとコーヒー、ハムエッグに、サラダとヨーグルトが乗っていた。
「BC自由学園の女子寮にいた時は、だいたいこんな感じだったから。」
「島田様は、純和食ですわ!」
愛里寿は、ご飯にお味噌汁、梅干し、佃煮、鯵の干物、玉子焼き、シラスと大根おろしを取っていた。
「普段はトーストとコーヒーだから、たまには和食の朝ご飯が食べたいな、と思って。」
「バイキングの朝食って、その人の性格や趣味が反映されますね。」
賑やかな朝食で、昨日と同じく愛里寿もとても楽しそうにしている。
「ところで、今日はみなさんどこかに行かれるのかしら?」
アズミが、みんなに話しかける。
「大涌谷と芦ノ湖に行こうと思っております。」
福田は、大涌谷と、芦ノ湖で関所を見てから1号線で帰るルートを考えていた。
「私たちは、この近くでかまぼこ作り体験をしてから帰ります。澤さん達と大涌谷に行きたいのですが、帰りも時間がかかると思いますので。」
「愛里寿ちゃんとアズミさんはどうするの?」
梓が尋ねる。
「御殿場のアウトレットで、アズミに服を見てもらうの。以前、アズミ達がショッピングで服を勧めあったりする話を聞いて、私もやってみたいと思ったから。それに、アズミって、アルバイトでモデルやってるからお洒落には詳しいし。」
「『月刊戦車道』の表紙のアズミ様、すごく恰好良かったですわ!」
「隊長のお洋服を見繕ってくれって、家元に頼まれたのよ。軍資金も預かってるのよ。」
「私の洋服はいつもお母様が買って来てくれるけど、たまにはちょっと違う雰囲気のが欲しいな、と思って。」
「島田殿はお綺麗なので、どんな服でも似合うと思います。」
「アウトレットでショッピングって、なんだか大人って感じですね。」
オレンジペコが、少し羨ましそうに言う。
「大洗にも以前はリゾートアウトレットがあったけど、今はシーサイドステーションって名前が変わって、お店もだいぶ入れ替わったんだよ。」
「ほんと?今度、みほさんとボコミュージアムに行った時に寄ってみる。」
「その時は、連絡頂戴ね。」
賑やかな朝食を終えて、それぞれの部屋に戻り、出発の準備をする。
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「今日もとても天気がいいですわ!」
「ツーリング日和ですね。」
「帰るのが惜しいのであります。」
「このお宿、温泉もご飯もすごくよかったにゃ。」
「また来てみたいですね。」
ホテルをチェックアウトして、バイクのところで出発準備をしながら、これからの行程に思いを馳せる。
「あら、皆さんもこれから出発なのね。」
そこに、アズミと愛里寿が荷物を手にやって来た。
「はい、二手に別れてしまいますけど。」
スマホのナビを操作していたねこにゃーが答える。
「あ、あの、アズミさんのバイク、見せてもらってもいいですか?」
中型バイクに興味津々な梓が、アズミのバイクを見ながら尋ねた。
福田の小型二輪とは違い、少し大きめのレーサーっぽいバイクで(後でスーパースポーツというタイプと教えてもらった)、ライムグリーンと黒のカラーが映える車体を梓は気に入っていた。
「いいわよ。なんだったら、ちょっと跨ってみる?」
「いいんですか?」
「ええ、どうぞどうぞ。」
アズミにロックを解除してもらい、サイドスタンドは降ろしたままで、ハンドルを真っ直ぐにして跨ってみる。足をステップに置いて、ハンドルを両手で握ると、タンクの上に被さるような前傾姿勢がなんだかアグレッシブで気持ちがアガる。
「澤さん、とても似合ってますよ。」
「乗っている姿がカッコイイのであります。」
オレンジペコと福田が、バイクに跨った梓を見て褒める。
「やっぱり、こういうのがバイクっぽくっていいよね。」
バイクを降りながら、梓が感想を言う。
「でも、車体が大きいし、重そう。それに、止まった時に足がつきにくいから、ちょっと不安かな。」
「まあ、最初はそう思うけど、それほどでもないわよ。スクーターに慣れたらいつかチャレンジしてみたらどうかしら。」
「はい、いつかは中型免許を取って、こんなバイクに乗ります!」
「じゃあ、私たちはそろそろ行くわね。皆さん、道中お気を付けて。」
そう言って、アズミはフルフェイスのヘルメットを被った。
「はい、アズミさんもお気を付けて。愛里寿ちゃん、ショッピング、楽しんでね。」
「うん。」
愛里寿を後ろに乗せたアズミのバイクは、ホテルの駐車場を出て、御殿場アウトレットに向けて走り去った。
「じゃあ、ボク達もそろそろ行こうか。」
「了解であります。準備万端であります!」
「澤さん、猫田さん、福田さん、お気を付けて行ってらっしゃいませ!」
「福田さん、幹事、ありがとうございました。とても楽しかったです。」
ローズヒップとオレンジペコに見送られ、梓と福田、ねこにゃーは、大涌谷へと向かった。
「では、私たちもそろそろ行きましょうか。」
「かまぼこ手作り体験、楽しみですわ!」
こうして、楽しいお泊りツーリングは、それぞれが次の目的地に向かってお開きとなった。
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side 大学選抜
「アズミお姉ちゃん、澤さんやオレンジペコさん達と会えて、すごく楽しかったね。」
「ええ、私も可愛い後輩たちと交流できて、とても楽しかったです。」
アズミは、愛里寿と2人っきりで温泉に行くということで、メグミやルミからは滅茶苦茶に羨ましがられていた。思いがけず高校戦車道メンバーと出会ったことで、その目論見は半分ぐらいしか達成できなかったが、先の試合で戦った大洗、知波単、聖グロのメンバーと打ち解けることができたのは、それはそれで嬉しかった。
「(一応、隊長の浴衣姿を携帯で撮ってメグミとルミに送ってあげたから、まあ、大丈夫よね)」
138号線を走り、トンネルを抜けると、雄大な富士山の姿が目に飛び込んできた。
「うわあ、富士山、とても綺麗。」
「雲が無いから、麓までくっきり見えますね。」
「あ、あれがアウトレットかな。」
「そうですね。愛里寿ちゃんに似合う服があるといいわね。」
「うん、ショッピング、とても楽しみ。」
「じゃあ、いろんなお店を見て回りましょう。」
「うん!」
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side 大洗・知波単
「すごい、あそこからお湯がぼこぼこ湧き出てるよ!」
「硫黄の臭いが凄いね。」
「後で、あのくろたまごというものを食べてみましょう。1個食べると寿命が7年延びるそうです。」
「まるで回復アイテムみたいだにゃ。」
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side 聖グロ
「オレンジペコさん、ご覧ください!戦車をイメージした蒲鉾ができましたわ!」
「それのどこが戦車なんですか?」
「砲塔をイメージしたんですのよ。」
「それって、単に魚のすり身を棒状にしただけでは。」
「こっちは履帯に見えませんこと?」
「単に平べったく伸ばしただけに見えますが。」
「そういうペコさんはどんなのを作ったんですか?」
「私は、ハート型と星型を作りました。」
「さすがですわ、ペコさん!乙女っぽい蒲鉾ですわ!」
「(乙女っぽい蒲鉾って、どういう意味なんだろう)」
いかがでしたでしょうか。
バイクの話と言いながら、後半はそれ以外の話で盛り上がってしまったようです。
なので、最後の駐車場にもバイクの話を急いで詰め込みました(汗)。
箱根は、ツーリングだと日帰りでしか行ったことはないのですが、社員旅行で何回か泊まったので、その時のイメージで書いてみました。
やっぱり、温泉ツーリングは泊まりで行きたいですね。
セリフの書き分けが難しかった(ローズヒップと福田を覗く)...
口調や文脈で誰のセリフなのか察していただければ、ありがたいです。