ガルパンバイク部のお話   作:日本を鳥戻す

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銚子港に停泊した学園艦から、一路、アヒルさんチームが待つ大洗を目指す福田。
大洗への道中であったアクシデントと、大洗に着いてからアヒルさんチームと一緒に街中を散策するお話です。


大洗への遠乗りであります!

待ちに待った銚子港への寄港日、福田はいつもより早く目が覚めた。起床ラッパは午前6時に鳴らされるが、福田が目を覚ましたのは5時半だった。

 

布団から飛び起き、顔を洗い、枕元に用意していた服に着替えて、布団を畳んで部屋を軽く箒で掃いて掃除した後、昨夜のうちに作っておいたおにぎりとお茶で軽く朝食をとった。

あひる殿曰く、大洗は美味しいものがたくさんあるから、お腹を空かして来てねとということだったので、あまり食べ過ぎないようにと思っていたが、腹が減っては戦ができぬ。まあ、戦をしに行くわけではないのだが。

 

手早く後片付けを済ませて、財布やすまほ、ハンカチを入れた小さな背嚢と、ヘルメット、手袋を持って玄関に向かうと、廊下で西とばったり会った。西も起きたばかりのようで、寝巻に上着をひっかけた姿だが、福田を見かけるとおはようと言い、

 

「おお、今日はいよいよ単車で大洗に行く日だったな。」

 

「はい、楽しみで早く目が覚めてしまいました。」

 

「ははは、小学生の遠足みたいだな。そうだ、福田、出立を見送らせてくれ。」

 

「え、そんな...」

 

「いやいや、同じ単車を趣味とする同好の志の門出を祝いたいんだ。」

 

そう言うと、西は玄関の草履を履いて外に出た。

太陽が出たばかりで少し肌寒いが、空を見上げると、雲一つなく、遠乗り日和間違いなしの天気のようだ。

 

「では、不肖、福田、大洗に行って参ります!」

 

「ああ、道中気を付けるんだぞ。あと、あひる殿の皆様方にもよろしくな。」

 

西に見送られて、福田は寮の門を出て、学園艦の昇降口に単車を走らせた。

西は、門の外まで出て、その姿が見えなくなるまで手を振って見送った。

 

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タイミング良く学園艦の昇降エレベーターが降りるところだったので、エレベータに乗り入れて5分ほどで上陸できた。

ここからは、すまほに表示したナビに沿って走る。

 

銚子の街中を走り、124号線に出て利根川を超え、ひたすらアクセルを捻る。

早朝でまだ日が出たばかりなので少し冷んやりとするが、今日はパーカーの上に防寒着を着ているのでそれほどの寒さは感じられない。

124号線の交通量もそれほど多くはなく、制限時速を守りながら、ゆっくりと大洗へと向かう。

 

1時間も経ってはいなかったが、無理は禁物と、国道沿いのコンビニへと単車を入れた。

その時、駐車場の奥に複数台の単車、それもかなり大きい単車が停められており、その傍には黒い革ジャン、下も革のズボンを履いてサングラスをかけた男性たちがいるのがちらっと目に入った。

 

「あれが、西隊長の言っていたカミナリ族なのでしょうか。少々おっかないであります。」

 

と思いながら単車を停めて、スタンドを出して降りようとしたところで、

 

「あああっ!」

 

やってしまった。

 

気が付くと、目の前には横倒しになった単車が。

一瞬、茫然自失としてしまったが、視界には先ほどのカミナリ族の男性たちがこちらに来るのが見えた。

 

「あわわわわ...」

 

自分はどうなるのだろう、まさか、有り金を巻き上げられてしまうのか、あるいは、手籠めにされてしまうのか。

そんなことを考えていると、

 

「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」

 

と声が聞こえた。

 

思い切って顔を上げると、先ほどのカミナリ族の人たちが、横倒しになった単車を引き起こしてくれていた。

 

ようやく我に返った福田であったが、すぐに気をとりなおし、ヘルメットを脱いで、

 

「ありがとうございますっ!」

 

と頭を下げた。

 

「ここの駐車場は少し斜めになっているからね。だから俺たちもあっちの平坦なところに停めてるんだ。」

 

「大型は、倒すと引き起こしが大変だからね。」

 

顔を上げると、先ほどまでおっかないと思っていた人たちがにこやかにこちらを見ていた。

よく見れば、みんな年配のおじさん達で、みんなにこにこしていた。

 

「まあ、怪我がなくて良かった。」

 

先ほどまでの恐怖心もどこかに消え、そう言えば単車はどうなったんだろう、と思って見てみたら、ミラーが明後日の方向を向いていた。どうやら、先ほど横倒しになった時に根元が緩んで曲がってしまったらしい。

 

「...」

 

どうやらそれに気付いたらしく、男性の一人が「おおい、○○、ちょっと工具持って来て」と言うと、大型の単車の横でこちらを心配そうに見ていた男性がサイドケースから工具袋らしきものを持って走って来た。

 

「うん、根元が緩んでいただけで、ミラーは曲がっていないな。」

 

そう言って、男性はミラーを元の位置に戻し、モンキーレンチで根元をしっかりと締めた。

ついでに、もう一方のミラーも念のために締めなおしてくれた。

 

「バイクって、エンジンの振動でどうしてもこういうところが緩んでしまうからね。」

 

「とりあえず元に戻したけど、後でミラーは調整してね。」

 

そうこうしていると、他の男性が暖かい缶コーヒーを手渡してくれた。

 

「まあ、びっくりしただろうけど、これでも飲んで落ち着きなよ。」

 

慌てて背嚢から財布を出そうとしたが、やんわりと辞退されたので、お礼を言って、缶コーヒーをありがたく頂いた。

西隊長と出かけた時に飲んだのは無糖だったが、この缶コーヒーはほんのりと甘かった。

暖かいコーヒーを飲んだことで、辺りを見回す心の余裕ができた。

 

「今日はどこから来たんだい?」

 

先ほど、工具を持ってきてくれた男性が聞いてきた。

そこで、自分が知波単学園の者であり、実は、最近免許をとったばかりで、単車で大洗の友人に会いに行くところです、と答えると、

 

「ああ、知波単か。そう言えば、先月、大洗で知波単と大洗が聖グロリアーナとプラウダを相手に戦車道のエキシビションをやっていたな。」

 

「俺、見に行ったよ。うちのかあちゃんが昔戦車道やっていて、是非見に行きたいって言ってたからな。」

 

驚いた、まさかあの試合を見ている人にこんな形で出会うとは。

 

「あ、あの、申し遅れました。私、知波単戦車隊、九五式軽戦車の車長を務めております福田と申します!」

 

そう言って、自己紹介をする時の癖で反射的に背筋を伸ばし、びしっと敬礼した。

 

「「「ええっ!」」」

 

今度はカミナリ族の男性達が驚いて、福田をまじまじと見た。

 

先ほど、試合を見に行ったと言っていた男性が、

 

「九五式軽戦車って、確か、立体駐車場で聖グロリアーナのマチルダを撃破したんじゃなかったかな。」

 

「そうなのか!?」

 

「ああ、かあちゃんが言ってたけど、あんな奇抜な作戦は初めて見たって。」

 

「へえー、そりゃすごいな。」

 

気が付けば、男性達の眼差しが尊敬の目に変わっていた。

確かに撃破したのは自分の車輌ではあるが、そもそもその作戦を考え出したのはあひる殿達であったのだが。

 

「いやー、まさかあの戦車に乗っていた子に会えるとは、縁とは不思議なもんだな。」

 

「実は、これから会う大洗の友人達は、あの試合で一緒に戦った大洗女子学園の戦車道履修者の人達なんです。」

 

「おおっ!」

 

その後、しばらくカミナリ族の男性達からの質問攻めにあい、気が付けば半時間ほどが経過していた。

 

「おい、そろそろ出発したほうがいいんじゃないか。大洗で友達が待ってるんだろう?」

 

「あ、はい、そうでした!」

 

単車を倒したショックと、その後で親切にしてくれたカミナリ族の人たちとの談笑に加え、思いがけない戦車道の話から、危うく本来の目的を忘れるところだった。

ミラーを締めなおしてくれた男性が、単車を動かして、道路に出やすいところに停めてくれた。

 

「気をつけて行くんだよ。」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

クラッチを握っていたために敬礼はできなかったが、代わりにペコリと頭を下げて、カミナリ族の男性達に見送られながら出発した。

 

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いろいろあったコンビニを出発して1時間ほど、ようやく案内標識に「大洗」の文字が見えてきた。

単車を倒してしまったのは残念だったが、最初は怖いと思っていたカミナリ族のおじさん達に助けられた。しかも、あのエキシビション戦を見ていてくれたことがわかり、自分がその試合に出ていたことを知るととても驚いていたし、自分がマチルダ戦車を撃破したことを知っていたのがすごく嬉しかった。

 

「本当に、縁というのは面白いものでありますな。」

 

単車に乗っていなかったら、このような出会いはなかっただろう。

福田は、ますます単車が、遠乗りが好きになっていた。

 

すまほのナビに従って51号線から側道に入ると、、右手に潮騒の湯が見えた。

エキシビションの後でみんなで温泉に入ったことを思い出す。あの時、知波単メンバーはサウナに入って我慢大会をしていたのだが、福田は真っ先に音を上げて、水風呂に飛び込んだ。

 

そんなことを思い出していると、目印の大洗シーサイドステーションが見えて来た。確か、待ち合わせ場所の町営第一駐車場はそのすぐ前と聞いていたが、案の定、すぐに左手に駐車場が見えた。

 

信号を左折して、駐車場の入口からバイク置き場に向かう。駐車場には、大洗女子学園のメンバーをボンネットやドアに描いた車が何台か停まっていた。

 

「あれが、痛車というものでしょうか。」

 

幸い、入口近くの単車置き場の周りに停めている車は少なかったので、そのままゆっくりと進んで、単車を停める。今朝のこともあるので、左足をしっかりとついて、エンジンを止める。スタンドを出して、ハンドルを左に切ってからキーを抜き、ゆっくりと降りる。

今回は転倒することなく、無事に降りられた。

 

ふと横を見ると、他にも単車が数台停めてあった。

1台は、先ほどのコンビニで出会ったカミナリ族の人と同じような、黒と銀色の大きな風防が付いた大きな単車だった。後ろには大きな箱がついていて、荷物もたくさん入りそうだ。

自分ではとてもあんな大きな単車は運転できないだろう。間違いなく、足が届かない。

もう1台は、少し形は違うが西隊長と同じような色合いをした黄緑色の単車で、なぜかプラウダ高校の校章のステッカーが貼ってあった。

 

ヘルメットを脱いで、背嚢からすまほを取りだし、あひる殿に伝言を送信したら、すぐに返信が来た。「今すぐそちらに向かいます!」とのことだった。どうやら、丁度学園艦から降りたところらしい。

 

辺りを見回すと、痛車を囲んで談笑するグループがいたり、目の前にある食堂「藤乃屋」の従業員が外を履いていたりしていた。

 

すぐ近くの道路に面したところに停めている車の傍では、年配のおじさんが、大きめのすまほのようなものを手に何かぶつぶつと呟いている。時々、「なんでそっちに行くんだよー」「落ちないー」と言っている。どうやら、あのすまほで何かテレビを見ているのかもしれない。

 

5分もしないうちに、「福ちゃーん!」という声がしたのでその方向を見ると、あひる殿達がこちらに向かって歩いて来ていた。

 

「ご無沙汰しております、あひる殿!」

 

同じ戦車道を履修する者として、福田は敬礼した。

それを見て、近藤妙子と河西忍が、

 

「もう、福ちゃん、今日は戦車じゃないよ。」

 

「そうそう。」

 

と笑っている。

 

「うわあ、本当にバイクで来たんだ。」

 

福田の横にある単車を見て、佐々木あけびが言った。

またたく間にアヒルさんチームが単車を囲み、興味津々で眺めている。

 

「へえー、スマホをナビ替わりに使ってるんだ。」

 

「ねえ、ちょっと触ってもいい?」

 

「ええ、どうぞどうぞ。」

 

排球部主将の磯辺典子が、ハンドルやシートを触っている。

他のメンバーは皆背が高いが、磯辺だけは福田と同じぐらいの背丈なので、丁度いいかなと思っていたところ、案の定、

 

「これ、跨ってみてもいいかな。」

 

と言われたので、

 

「ええ、是非試してみて下さい。」

 

と了承した。

念のために服装を確認したが、オーバーオールの半ズボンを履いていたので、大丈夫だろう。

 

「そおれ、っと。」

 

サーブを打つような掛け声で、磯辺典子は軽々と片足を上げて、ストンとシートに座った。

 

「うーん、やっぱりカッコイイよね。」

 

福田は、自分もあんな風に見えているのかな、と考えていたところ、磯辺が

 

「みんなも跨ってみなよ。」

 

と言った。

 

「えー、でも、今日はスカート履いているから...」

 

と顔を赤らめる佐々木あけびを見て、福田は心の中で先日のことを思い出した。

 

「佐々木殿のほうが、細見殿よりも乙女度が高いでありますな。」

 

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ひとしきり、単車談義が終わったところで、単車を駐車場に置いて、一行は大洗の街中に向かった。

まだお昼までには時間があるし、まずは街を案内したいという申し出を福田は快諾した。エキシビションの時は戦車に乗っていたため、さすがに街並みを眺めることはできなかったので、改めてゆっくりと周りたいと思っていたのだ。

 

サンビーチ通りの松並木の歩道をを歩くと、すぐにマリンタワーが見えた。この道はエキシビションの時にマチルダに追いかけられてあひる殿と走った道だ。そう思いながらマリンタワーを見上げると、朝と同じく雲一つない青空が広がっていた。

 

信号を曲がって商店街のほうに向かい、髭釜商店街を歩くと、魚忠というお店に近藤妙子の立看板が置いてあった。また歩くと、今度は、ジョイショップタグチというおもちゃ屋さんに佐々木あけびの立看板が、さらに進むと、鳥幸というお肉屋さんの前に磯辺典子の立看板が置いてあった。

 

「ここの唐揚げ、すっごく美味しいんですよ。」

 

磯辺典子が、自分の立看板があるからか、自慢するように言った。

お昼までには時間があるし、早朝におにぎりを食べただけだったのですでに空腹が限界に近づきつつあったのと、

 

「大洗はね、食べ歩きも美味しいんだよ。」

 

と近藤妙子が言うので、皆で一つずつ、唐揚げや焼き鳥を注文した。

 

「このお店は私のパネルを飾ってるんだけど、実はご主人はアンツィオ高校の安斎さんのファンなんだって。」

 

と、口を少し尖らせる。

目の前の駐車場を見ると、停めてある車にはアンツィオ高校の校章のステッカーが貼ってあった。

 

「大洗のお店はね、私たちのパネルを飾って大洗女子学園の戦車道を応援してくれているんだよ。」

 

と、河西忍が言うと、

 

「最近は他の高校の人たちのパネルもあるよね。」

 

「大学選抜の時の、島田愛里寿さんや、なんでも戦車道連盟理事長のパネルまであるんだって。」

 

と、佐々木あけびや近藤妙子が笑いながら教えてくれた。

 

「もしかすると、わ、私達知波単学園の立看板もあるのでしょうか?」

 

てっきり、大洗女子学園の生徒だけかと思って気付かなかったが、良く見るといろんなお店に立看板が置かれている。確か、この肴屋本店という旅館は、プラウダの戦車と聖ぐろりあーなの戦車が突っ込んだところだったと記憶しているが、そこには聖ぐろりあーなのだあじりん殿の立看板が置かれていた。

その先にある大和呉服店には、ショウウインドウにあんつぃお高校の戦車道隊隊長の安斎殿(どぅーちぇと呼ぶらしい)が飾られている。すると、お店の中から、あんつぃお高校を模した服を着た男性が、紙袋を抱えて嬉しそうな顔をして出てきた。

 

曲松商店街をさらに歩くと、いろんな高校の戦車道履修生の立看板が置かれているのに気づいた。福田はあちこちをきょろきょろ見ながら、あれは黒森峰の逸見殿、あちらはさんだあすのケイ殿、と、次々に見つけるのが楽しくなってきた。途中のスポーツ用品店には、我らが西隊長の立看板が置いてあったので、お店の人に断りを入れて、すまほで写真を撮った。

 

さらに進むと、ウスヤ精肉店と書かれたお店があり、名前はわからないが、ここにも大洗生徒の立看板が置いてあった。

ここで河西忍が、

 

「ここの串カツ、すごく美味しいのよ。」

 

と言った。すでに先ほど食べた唐揚げも消化しきっていたので、一本ずつ串カツを注文した。

ふと横を見ると、大きなプレハブ小屋があり、その中で買ったものを食べられる休憩所になっているようだった。

買ったばかりの揚げたての串カツと、サービスで入れてもらったお茶を持って、5人そろって入ると、中には先客が数組いた。奥のテーブルには、先ほど駐車場で見かけた恰幅の良いおじさんと、これも先ほど大和呉服店で見かけたあんつぃおの服を来た男性に、茶髪でこちらも少し恰幅の良いにこにこした男性が、なにやらすまほを操作しながら談笑していた。どうやら、あれは何かのゲームをやっているらしい。

 

福田達も、串カツを食べながら談笑していたが、このままではいつまでたっても前に進まないということで、話を切り上げて席を立った。

 

しばらく歩くと、さかげんというお店の前に大きなダンプカーが停まっていたが、プラウダ高校の隊長カチューシャ殿の絵が書いてある荷台を立ち上げていた。良く見ると、これもあちこちにプラウダ高校の校章や、IS-2の砲手であるのんな殿の絵が書かれている。

おそらく、ダンプの傍にいる、赤いベストを来て、頭に鉢巻きを巻いている方が持ち主なのだろう。もう一人の男性は、こちらも恰幅が良く、ダンプの横に停めたスクーターを指差して何か話していた。スクーターを良く見ると、水着姿の女子高生の絵が貼ってあった(磯辺殿が「あれは大洗女子学園の生徒会副会長で、ヘッツァーに乗っているカメさんチームの操縦手の小山柚子先輩ですよ」と教えてくれた)。いささか破廉恥な雰囲気をしたスクーターではあるが、ナンバーを見ると飯能市とあり、ここまでこのスクーターでどのくらいかかったのだろうと思った。

 

さらに進むと、目の前に大きな鳥居があり、見覚えのある風景だなと思ったら、大洗磯前神社と書いてあった。ああ、ゴルフ場で聖ぐろりあーなとプラウダ高校に挟まれた後に脱出した道か。

 

坂を上がり、駐車場の脇から場内に入って、手水場で作法通りに手を洗って口を濯ぎ、神社の境内に入ると(ちゃんとお辞儀してから入った)、目の前に本堂が静かに佇んでいた。

ここまで安全に来れたこと(立ちごけはしたが)と、帰りの道中の安全を祈願し、お参りをした。

 

本堂の横には、様々な絵馬がかけられており、その一角には戦車道履修者のイラストが描かれたものがたくさんあった。

 

「あ、これ、桂利奈ちゃんじゃない?」

 

「ほんとだ、すごく良く似てるね。」

 

「あはは、あいーってセリフも書いてあるよ」

 

「やっぱり西住隊長の絵が多いね。」

 

「あ、キャプテンの絵もありますよ。」

 

「えっ!?どれどれ。」

 

「本当だ。根性!って書いてある。」

 

「こっちに、我らが西隊長の絵もありました!吶喊!って書いてあります。」

 

思い思いに絵馬を見て楽しんでから、境内を出ると、先ほどの手水場の先に石段が見えた。

 

「エキシビションの時、Ⅳ号はここを駆け下りたんだよね。」

 

「冷泉先輩が、サイドアンダーミラー欲しい、て言ってた。」

 

石段を下りながら、福田は、ここを駆け下りる戦車ってどんなんだろう、と考えていた。

 

道路を渡り、路地を抜けると、目の前に岩場があって、そこに鳥居があるのを見つけた。

 

「ここはね、神磯の鳥居って言って、神様が降り立ったところて言われてるんだよ。」

 

と磯辺典子が説明してくれた。波も穏やかで、とても綺麗な景色だったので、福田はすまほで何枚か写真を撮った。そのうちの1枚は、ちょうど波飛沫が岩場から鳥居のほうに広がっているところがタイミング良く撮れていた。

そう言えば、西隊長と出かけた時も一緒に写真を撮っていた。単車で出かけた先でこんなふうにいろんな写真を撮るのも楽しいな。

そうだ、今度、寺本殿に上手な写真の撮り方を教えてもらおう。

 

気が付くと、すでにお昼を過ぎており、そろそろ昼食を食べに行こうということになった。

 




思ったより長くなってしまったので、分割しました。
途中のコンビニで大型バイクに乗った集団とのお話は、是非書きたかったんです!

ちなみに、みんなの私服は、スマホゲームの「戦車道大作戦」の★4おでかけ衣装をイメージしていただければ。

あと、ところどころに私のフォロワーさん達が友情出演しています。
これ、今後の恒例のネタにしようかな。

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