ガルパンバイク部のお話   作:日本を鳥戻す

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大洗に到着し、アヒルさんチームと大洗の街中を散策していた福田。
お昼ご飯を食べる場所についてアドバイスしてくれたのは、カモさんチームのあの人。

最後にウサギさんチームともばったり遭遇します。


これが私の単車道なのであります!

神磯の鳥居を後にしたらお昼時を少し過ぎた時間になっていた。食堂は結構混むので時間をずらしたほうが良いとのことだったの、でちょうど良い頃合いかもしれない。それに、唐揚げと串カツを食べていたので、なんとかひもじい思いをしなくて済んだ。

 

肝心の、どこで昼食を食べるかという点については、ああでもない、こうでもないと喧々諤々の議論があひる殿の間で交わされ、あわや交渉決裂か、という状況だ。

 

「交渉が決裂しても昼食が食べられるわけではないと思うのでありますが。」

 

そこに通りがかったのが、園みどり子だった。

 

「あら、アヒルさんチームじゃない。どうしたの?」

 

「あ、そど子さん、こんにちは。」

 

「ちょっと、そど子と呼ばないで!園みどり子よ!」

 

「そど子さんは、大洗女子学園の風紀委員長なのよ。」

 

と河西忍が教えてくれたのだが、福田は

 

「え!?風紀委員でありますか?」

 

と言って、河西忍の陰に隠れてしまった。

 

「福ちゃん、どうしたの?」

 

「ふ、風紀委員に目をつけられると、大変なことになるのであります!」

 

知波単学園で風紀委員と言えば、憲兵みたいなものであり、声をかけられた時点でその生徒は震え上がってしまうのである。ましてや風紀委員長となれば...

 

「そど子さん、今日は私服ですがどうしたんですか?」

 

普段は、制服の左腕に黒字に白い刺繍で「風紀」の文字が入った腕章を付けている姿だが、今日は普通の女の子の服装をしている。髪にも黄色いリボンをつけており、心なしか風紀委員としての厳しさはあまり感じられないような気もする。

 

「だから、そど子じゃないって何度言えばわかるのよ!もう。筑波の実家に顔を出していたのよ。さっき大洗駅に着いたところなの。」

 

「そうだったんですか。てっきり、大洗町の風紀を取り締まっているのかと思いました。」

 

そど子の反論を華麗にスルーしながら、近藤妙子が親しげに話す姿を見て、福田も少し安心した。

 

「今日の巡回当番はゴモ代とパゾ美なの。あら、そちらは知波単学園の福田さんじゃない。」

 

「そ、そど子殿、こんにちはであります!」

 

エキシビションでレオポンさんチームと一緒に防衛線を張っていた時、先輩たちが突撃したのを見て自分も後に続こうとしたところをカモさんチームに止められたのを思い出した。

それでも、やはり風紀委員という言葉から、少し怯えながら敬礼をしたが、そど子と呼んでしまったことには気付いていなかった。

 

「福ちゃん、バイクの免許を取ってここまでバイクで来たんですよ。」

 

「ふーん、ちゃんと安全運転するのよ。当たり前だけど、制限速度はきちんと守ること。無理な追い越しも禁止。あと、信号がなくても横断歩道を歩行者が渡ろうとしていたら、止まらなきゃダメよ。」

 

このままにしておくと、そど子の交通安全教室が始まりそうだったので、すかさず河西忍が口を挟んだ。

 

「あ、あの、そど子先輩、私たちお昼ご飯を食べようと思ってるんですが、どこかいいところ知りませんか?」

 

「お昼ご飯?そうねえ、巡回で歩き回ることは多いけど、お店はあまり知らないわね。」

 

もう名前について文句を言うのは諦めたようだ。

 

「そうですかあ。うーん、どこにしようかな。」

 

「あ、そうそう、この間風紀委員の子達が話していたんだけど、大進っていうお店が、おそばやカレー、定食とかいろんなメニューがあって、量が多くて、とても美味しいって言ってたわよ。」

 

「そのお店、さっき髭釜商店街で見かけたのを覚えております!」

 

車長として常にキューポラから顔を出して周りの状況把握をするためか、福田はそのお店があったことを無意識に覚えていた。

 

「じゃあ、そこにしよっか。」

 

「でも、その子達、間違っても華さん定食は頼んじゃダメって言ってたわよ。物凄い量で、五十鈴さんしか完食した人いないんだって。」

 

皆でそど子に礼を言い、大進のある髭釜商店街のほうに向かった。

 

大進は、先ほど唐揚げを食べた鳥幸のすぐそばにあった。で、パネルが置いてあったのだが、それを見た一同は

 

「「「あっ!」」」

 

そど子のパネルだった。

 

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お店に入ると、もうすぐお昼時が終わる時間ではあったが、席は8割ほど埋まっていた。

幸い、左側の座敷が1か所空いていたので、そこに5人で座り、メニューを見てそれぞれが注文した。

 

「華さん定食って、どんなのかなあ?」

 

皆が疑問に思っていたことを、近藤妙子が口にした。

 

「私、お昼休みに食堂で五十鈴先輩が食べているの見たけど、凄かったよ。」

 

河西忍が答える。

 

「えっ?何を食べていたの?」

 

「どんぶりに山盛りのご飯に酢豚、ラーメンと、あと、小鉢が5つぐらい並んでいたかな。」

 

「ええっ、そんなに食べていたの?」

 

「でも、その後で、何か物足りないって言ってた。」

 

「あ、華さん定食、あれではないでしょうか。」

 

福田が指差したほうを見ると、お皿の上に巨大な豚カツが2枚、付け合せの野菜も山盛りになっていて、その横に山盛りのご飯があり、上に梅干しが乗っている。

どうやら、注文したのはテーブル席に座っていた若い男性のようだったが、置かれた品物を見て目を白黒させている。ショルダーバッグに華さんのアクリルキーホルダーをつけているので、おそらく華さんファンということで華さん定食を注文したのかもしれない。

 

その後、5人の食事も運ばれてきたので、それを食べながら、福田がなぜ単車に乗るようになったのかを聞いた。

 

「へえー、西さんとのツーリングがきっかけだったんですね。」

 

「教習所で初めてバイクに乗った時ってどんな感じだったんですか?」

 

「いろんな所に行って、美味しいものを食べられるなんて、いいなあ。」

 

そこで、今朝のコンビニでの出来事を話したら、みんな驚いていた。

 

「やさしいおじさん達で良かったね。」

 

「はい、人を見た目で判断してはいけないと思ったのであります。」

 

「私達の活躍を見てくれてたなんて、嬉しいなあ。」

 

「あれはうまくいったよね。」

 

「最初の練習試合の時は失敗したけどね。」

 

そんな話をしながら、気が付けばお皿も綺麗になっていたので、お店を出ることにした。

先ほど華さん定食を頼んだ男性をちらっと見たら、汗だくになりながら豚カツとまだ格闘していた。

 

華さん定食ほどではないが、さすがにそこそこ量が多かったので、腹ごなしにシーサイドステーションまで歩いて行くことにした。

途中、町営駐車場に置いてあったバイクが無事であることを確認し、福田は安心した。念のためにブレーキディスクにもロックをかけていたので、盗まれるということは無いだろう。

 

シーサイドステーションは、エキシビションの時は八九式中戦車と九五式軽戦車でマチルダと追っかけっこをしたぐらい広かったが、その後、工事が入っていたので規模は小さくなっていた。噴水も取り払われて工事中だった。

5人で、雑貨を扱う店や、大洗や茨城の名産品を扱うまいわい市場、戦車道のグッズを扱うお店を見て周った。福田はまいわい市場で、同じ寮にいる西、細見、玉田達のお土産に、全身にしらすが書かれたへんな動物(「大洗のマスコットキャラクターのあらいっぺだよ」と、磯辺典子が教えてくれた)の絵が書いてある煎餅を買った。

ようやくお腹がこなれてきたので、大洗マリンタワーの上にある展望台に上って、その下にある喫茶店で軽くお茶しようということになった。

入場料を払い、エレベーターに乗ると、すぐに55mの展望台に到着した。

 

「うわあ。」

 

「大洗の町がおもちゃみたい。」

 

「学園艦って、本当に大きいね。」

 

「海の向こうに学園艦が見えるけど、どこの学校かな。」

 

「あそこの駐車場に福ちゃんのバイクが見えるよ。」

 

 

思い思いに景色を堪能してから、下に降りて喫茶店に入った。ここの喫茶店は、戦車道で有名な学校の名前を取り入れたメニューが人気だったが、さすがにサンダースバーガーや大洗カジキドッグは食べられなかったので、紅茶やパンケーキを注文した。

福田が紅茶を注文しようとメニューを見たら、やはりそれは聖グロリアーナのメニューになっていた。どんな味だったのかがいまいちわからなかったので、自分と同じ一年生の「オレンジペコ」という紅茶を注文した。

そうなると、話に上がるのは聖グロリアーナのことで、物まねの得意なアヒルさんチームは、紅茶を飲みながら「こんな格言を知ってる?」「リミッター解除ですわー!」とそれぞれが得意な物まねを披露し、しまいには他の学園のメンバーの物まねまで始まる始末。結局、近藤妙子がアンツィオ高校隊長のアンチョビの物まねをしたのが一番似ているということになった。

 

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楽しい時間は過ぎるのが早いというが、気が付けば午後4時を回っていた。

まだ日は高いが、ここから銚子までは、おそらく3時間はかかるだろう。

さすがに暗い中をバイクで帰るのは危ないので、福田はそろそろお暇することをアヒルさんチームに告げた。

会計を済ませてエレベーターで1階まで降りて、サンビーチ通りを渡ったところで、きらめき通りを駅のほうから6人の女の子が歩いてくるのが見えた。

 

「あ、あれ、ウサギさんチームの子達じゃない?」

 

「ほんとだ。おーい、梓ちゃーん!」

 

佐々木あけびが声をかけると、

 

「アヒルさんチームだ!」

 

と、5人が同時にこちらを向いた。1人だけ、別の方向を見ていたが。

 

「こんにちはー!」

 

と、走りながら元気よく挨拶したのは、やはり桂利奈で、他のメンバーもこちらに駆け寄ってきた。

 

「あれ、福田さん?」

 

「みなさん、こんにちはであります!」

 

いつもどおりの敬礼をした福田を見て、

 

「なんかー、いつも制服だから、雰囲気違うよねー。」

 

と、宇津木優季がパッと見の感想を述べる。

 

「福ちゃん、バイクでここまで来たんだよ。」

 

と佐々木あけびが言うと、

 

「「「えっ!」」」

 

「バイク、カッコイイ、見せて見せて!」

 

桂利奈が目をキラキラさせながら言った。

 

皆で駐車場に移動して、福田のバイクを囲んでまたひとしきり話したが、あまり遅くなると危ないから、と磯辺典子が言ったので、みんなで見送ろうということになった。

ウサギさんチームも福田を見送ると言ったので、福田はゆっくりと準備をした。

少し冷えて来たので、ウインドブレーカーを羽織り、ヘルメットを被って、手袋をはめた。

 

単車に鍵を指してハンドルロックを解除してから、出口のところまでよいしょ、よいしょと押していく。

いったんスタンドを出して、跨ってからイグニッションをオンにすると、ヘッドライトが点いて前方を照らす。福田の単車は、最近多いLEDのライトで、白い光線のような光が前方を明るく照らす。

それを見たウサギさんチームが、うわあ、眩しい、と目を細める。桂利奈が「ビームだー!」と喜んでいる。

 

「では、本日はどうもありがとうございました!」

 

と福田が敬礼すると、

 

「気をつけてねー。」

 

「また来てねー。」

 

「今度はこっちが遊びに行くよー。」

 

「知波単の皆さんによろしくねー。」

 

「着いたら連絡ちょうだいねー。」

 

とアヒルさんチームやウサギさんチームが叫んだ。

それが出立の合図かのように、スタートボタンを押してエンジンを始動し、ギアを1速に入れる。

みんなが見ている前でエンストは格好悪いので、ゆっくりとギアを繋いで走り出す。

うん、うまく発進できたであります。

 

歩道のところでいったん停止し、交差点を右折してサンビーチ通りに入ると、丁度、アヒルさんチームとウサギさんチームが歩道から手を振ってくれていた。ギアチェンジでアクセルとクラッチを操作していたため、敬礼はできなかったが、ペコリと頭を下げて、アクセルを捻って加速した。

 

アヒルさんチームとウサギさんチームは、全員、バイクが見えなくなるまで手を振っていた。

 

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一度通った道だからか、帰りは往きよりも早いように感じた。とは言いながらも、1時間近く走った後は、無理をしないために休憩しようと、コンビニに立ち寄った。そこで買った缶コーヒーを飲みながら、今朝のことを思い出す。

あの時もらった缶コーヒーの甘さは美味しかったでありますなあ、やっぱり、自分は無糖のコーヒーよりも甘いコーヒーのほうがいいな、と。

 

さて、あまり遅くなると西隊長達も心配するだろうし、寮の門限の午後10時には間に合わなくなる。単車に跨り、再び銚子への道に走り出す。すでに辺りは暗くなりつつあったので、前方の車と距離を空けて慎重な運転を心がける。

 

暗くなってきて、周りの景色が見えず、前を連なって走る車のテールランプしか視界には入らないので、視線は前方に向けながら、今日一日のことを思い出しながら走る。

コンビニで初めて転んだこと、その時にカミナリ族のおじさん達に助けてもらったこと。あ、あの人達はとても親切だったので、カミナリ族ではないですね。それに、エキシビションを見てくれていて、自分の戦車がマチルダを撃破したことを知ってくれていたし。

 

大洗に着いてから、みんなで食べ歩きしながら街中を散策したこと、いろんなお店にいろんな立看板があったこと。そうだ、西隊長の立看板があったことも報告しなければ。

そう言えば、他の知波単戦車道メンバーの立看板はどこにあったのでしょう。まあ、また次回、大洗を訪れた時の楽しみにとっておきます。

 

磯前神社の絵馬も見たし、神磯の鳥居の景色はとても綺麗でした。

風紀委員長のそど子殿にお会いして、美味しい食堂、大進でしたっけ、を教えてもらいました。

その後、シーサイドステーションでいろいろと見て回り、まいわい市場でお土産も買いました。

帰りには、思いがけずウサギさんチームの皆さんにもお会いできました。

 

そんなことを考えていたら、遠くに学園艦の灯りが見えて来た。

利根川の橋を渡ると学園艦はもうすぐ。でも油断は禁物。寮に着くまでが遠乗りなのです。

 

寮に戻ったら、西隊長に今日撮った写真を見てもらおう。道中の話もいろいろとしよう。

そうだ、今度「週刊バイクテレビ」がある時は、西隊長と一緒に見よう。ちょっと夜更かしになるが、寝巻で、お菓子を食べながら見るのは、楽しそうです。

そうか、単車は、乗ることも楽しいですが、乗っていなくても楽しいのであります。

 

そう、これが私の単車道なのであります。

 




これで、福田編は完結です。
いろいろと書いていたら、3部構成になってしまいました(汗)。

今回も、フォロワーさんが登場しています。
あと、声優ネタも入ってます(笑)。

実は、今回の話はまた別の話につながっていますが、それはまた後日。
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