ガルパンバイク部のお話   作:日本を鳥戻す

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オレンジペコが原付免許を取得し、ローズヒップと横須賀にツーリングに行ったと聞いた澤梓。

「私にも載れるのかな。」

その梓の背中を押したのは、あのチームです。梓のバイクが魔改造されるかも!



私にもバイク乗れました!

「バイクかあ。私にも乗れるのかな。」

 

寮の自室で、澤梓は、オレンジペコから送られてきた画像を見てつぶやいた。

 

ローズヒップと横須賀にツーリングに行ったとメッセージが送られてきて、それに添付されていたものだ。スカジャンを着てバイクに乗っているオレンジペコの姿で、どうやらローズヒップに撮ってもらったものらしい。

 

もう1枚の画像は、大洗に遊びに来た知波単の福田がバイクに乗って敬礼しているものだった。こちらのバイクは、オレンジペコが乗っていたようなスクーターではなく、バイクっぽいものだった。小柄な福田が乗っても違和感が無いということは、少し小さめのものなのだろう。

 

オレンジペコとのメッセージのやりとりからは、免許を取ったその日にローズヒップにバイクを借りて練習したこと、初めてのツーリングで横須賀に行って名物のカレーやネイビーバーガーを食べたことなど、その楽しさが伝わってくるようだった。

「澤さんもバイクに乗ってみてはいかがですか?一緒にツーリングに行きましょう。」と言われ、「えーっ!私にもバイクって乗れるのかなあ。」と返信したところ、「大丈夫ですよ。私でも乗れたんですから。」と。

 

「ちょっと楽しそう。誰かに相談してみようかな。」

 

と、その日はベッドに入った。

 

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翌日、午後の戦車道の訓練を終えて、いつもどおりにウサギさんチームで帰ろうとしたところ、梓は「私、ちょっと用事があるから。」と言って、他の5人と別れた。

戦車倉庫に残った梓は、奥で戦車の整備について話しているレオポンさんチームのほうに歩いて行った。

 

「あれ、澤さん、どうかしたの?」

 

梓に気付いたナカジマが、声をかけてきた。

 

「M3はさっき簡単にチェックしたけど、特に問題なさそうだから、足回りとエンジンの確認さえすれば大丈夫だよ。」

 

てっきり戦車が気になったのかと思ったスズキが、梓に説明した。

 

「あ、あの、レオポンさんチームって、もとは自動車部ですよね。」

 

「今でも自動車部だけどね。ただ、最近は自動車よりも戦車をいじるほうが多いかな。」

 

笑いながら、ホシノが答えた。

 

「だったら、もしかしてバイクにも詳しかったりしますか?」

 

「えっ、バイク?まあ、自動車ほどじゃないけど、一応、バイクの整備もできるよ。車と比べて構造も簡単だし、整備の練習にはちょうどいいからね。」

 

そう答えたのはツチヤ。

 

「澤さん、バイクに興味あるの?」

 

「ええ、実は...」

 

そう言って、福田が大洗にバイクで来たことや、オレンジペコがローズヒップと横須賀にツーリングに行ったこと、それがとても楽しそうで、オレンジペコからバイクに乗っては、と言われたことなどを話した。

 

「ふーん、そうなんだ。確かに、バイクに乗ると行動範囲がすごく広がるからね。これまでなかなか行けなかったところでも、バイクだと行けるし。」

 

「えっ!ホシノさんって、バイクにも乗れるんですか?」

 

「いや、車の免許を取ったら、原付の免許もついてくるから。それに、自動車部の備品でバイクがあるんだけど、それに乗って買い物とか行ったりするし。」

 

「そうそう。たまに部品の在庫がなかったり、グリスが切れてたりすると、急いで買いに行ったりするよね。」

 

「そんな時に買いに行かされるのはだいたい私じゃないですか。」

 

と、ツチヤが口を尖らせて言った。

 

「そうだ、澤さん、せっかくだから、バイクに乗ってみる?」

 

ナカジマが、にっこり笑いながら梓に提案した。

 

「えっ!でも、私まだ免許持ってないし。」

 

「大丈夫だよ。あ、校庭に出ちゃうと風紀委員に怒られるから、戦車倉庫の中だけね。ツチヤ、悪いけどバイク持って来て。」

 

ホシノが言うと、倉庫の奥からツチヤがスクーターを引っ張り出してきた。

 

「これなら、さっき見たオレンジペコさんのと同じような原付だし、乗り方も自転車とほとんど同じだから、大丈夫だよ。あ、ちゃんとヘルメットは被ってね。」

 

あれよあれよと言う間に、梓がバイクに乗る準備が整えられた。

走り出しても戦車や壁にぶつからないように、ホシノがバイクを倉庫の一番端まで押して行き、スタンドを出してバイクを停めた。

 

とまどっている梓に対して、スズキが言った。

 

「こんな格言を知ってる?案ずるより産むが易し。」

 

「「「似てねー!」」」

 

すかさず3人から突っ込みが入る。

 

ツチヤに、エンジンのかけ方やアクセル、ブレーキなどを教えてもらい、いざ、エンジンをかけようとしたところで、梓が言った。

 

「それでは、ぶいぶい作戦、開始します!」

 

「「「「...」」」」

 

レオポンさんチームの間に、涼しい風が吹いたようだった。

 

梓は、顔を真っ赤にしながら、スタートボタンを押してエンジンをかけた。ヘッドライトが前方を照らし出し、小気味良いエンジン音が戦車倉庫に響いた。

いつの間にかフラッグを持って来たホシノが、梓の前にフラッグを出して、「よーい、スタート!」と言ったので、つられて梓はアクセルを捻った。すると、バイクがゆっくりと動き出した。梓は着いていた足をステップに乗せて、そのまま真っ直ぐバイクを走らせた。

 

「ペコちゃんが言ってたとおり、なんだか自転車と同じだな。」

 

倉庫の反対側の壁が近づいてくると、ブレーキをかけて速度を落とし、そのまま、一番端に停めていたポルシェティーガーのところで右に曲がり、戦車の後ろを走って戦車倉庫を1周してから、スタート地点に戻った。

 

「すごいよ、澤さん!初めて乗ったって言ってたけど、ちゃんと乗りこなせてたよ!」

 

ツチヤが興奮しながら走って来た。

 

「いやー、てっきりまっすぐ走るだけかと思っていたけどね。まさか、1周するとは思わなかったな。」

 

そう言いながら、ナカジマが近づいてきた。

 

「これなら、免許さえ取ればすぐにバイクに乗れるよ。」

 

「ありがとうございます。これで気持ちが固まりました。私、バイクの免許、取ります!」

 

「免許取ったら、このバイク、貸してあげるよ。」

 

「ありがとうございます。でも、そのバイクは自動車部のみなさんのものだから。」

 

「今度から、お使いは澤さんにお願いしようかな。」

 

と言ったのは、いつも使いっ走りをやらされているツチヤ。

 

「自動車部のみなさんのお手伝いができるのでしたら、喜んで。」

 

スズキがふと、思い出したようで、ツチヤに向かって言った。

 

「あ、そうだ。部室に原付の試験問題集があったよね。ツチヤ、ちょっと行って持って来て。」

 

「やっぱり私、使いっ走りじゃないですかー。」

 

「原付の試験は、交通法規がメインだから、練習問題をやりながら覚えるといいよ。」

 

スズキから渡された問題集を受け取って、梓はお礼を言った。

あまり長居すると戦車の整備の邪魔になるので、バイクに乗せてもらったお礼を言って、梓は戦車倉庫を後にした。

 

「やっぱり、レオポンさんチームに相談して、正解だったなあ。」

 

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自室に戻ると、梓はさっそくオレンジペコにメッセージを送った。

 

梓「ペコちゃん、私、今日、バイクに乗ったよ。」

 

ペコ「え?免許、取ったんですか?」

 

梓「ううん、レオポンさんチーム、あ、うちの自動車部がね、備品でスクーター持ってて、戦車倉庫の中で少しだけ運転させてもらったの。」

 

ペコ「いかがでしたか?バイクって、楽しいでしょ。」

 

梓「うん、倉庫の中を1周しただけだったけど、楽しかった。」

 

ペコ「じゃあ、免許取るんですか?」

 

梓「うん、試験問題集も借りて来たの。」

 

ペコ「私もローズヒップさんから問題集借りました。がんばってくださいね。」

 

梓「うん、免許取ってバイク買ったら、一緒にツーリング、行こうね。」

 

ペコ「ええ、是非。今から楽しみです。」

 

メッセージのやりとりを終えると、梓は原付免許試験をオンラインで申し込んだ。

 

大洗女子学園の学園艦では試験を受験できないので、大洗に寄港した際に上陸して試験を受ける必要があるが、幸い、今週末は寄港すると聞いていた。

あとは、試験に向けて問題集をやるだけ。ウサギさんチームには、原付免許の試験勉強をすると伝えて、しばらくはまっすぐ帰ることにした。梓は帰宅してから寝るまで、ひたすら問題集に取り組んだ。

 

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無事、原付免許を取得した梓は、訓練の後に戦車を整備するレオポンさんチームのために、備品のバイクで、部品を買いに行ったり、整備が遅くまでかかる時に夕食のお弁当の買い出しをするなど、バイクの練習も兼ねてレオポンさんチームを手伝っていた。

ツチヤは、自分が使いっ走りに行かなくて済むので喜んでいた。

 

「ところで、澤さんはバイクはどうするの?」

 

梓が買って来た部品を受け取りながら、スズキが聞いた。

 

「ペコちゃんと同じようなスクーターがいいかな、と思ってます。自動車部の備品で乗り慣れましたし。」

 

「そうだね。クラッチ操作もいらないし。」

 

「でも、やっぱりバイクって結構高いんですね。一応、貯金はあるんですが、ヘルメットやグローブも買わないといけないし。」

 

「そう言えば、大洗の〇〇機工部の人が、バイクが余ってるって言ってたなあ。」

 

「私たちがいつも部品を買ってるお店だよ。学園艦で手に入らない部品は、いつもそこに取り寄せてもらってるんだ。」

 

ナカジマが教えてくれた。

 

「ホシノ、電話して、余ってるバイクを安く譲ってくれないか、頼んでみてくれる?」

 

ホシノが携帯を取り出して、相手としばらく話していたが、電話を切るとこちらに向かって明るい声で言った。

 

「原付スクーターで1台、乗っていないのがあるから、それで良かったら安く譲るよって。」

 

「本当ですか!」

 

「うん、中古で買ったのはいいけど原付だとやっぱりスピードが出ないから使い勝手が悪くて、125ccのスクーター買ったんだって。それで、原付は乗らなくなったから、どうしようかと思っていたそうだよ。」

 

「もしかすると、あれかなあ。」

 

ツチヤが思い出すように言った。

 

「この間、お店に行った時に置いてあったんだけど、パステルカラーの結構きれいなスクーターだったよ。」

 

「じゃあ、今度の寄港日に見に行こうか。」

 

「はい、是非、お願いします!」

 

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学園艦が大洗に寄港した日、梓はレオポンさんチームと一緒にバイクを見に行き、一目見て気に入ったので、その場で代金を支払って譲ってもらうことにした。名義変更に必要な書類も準備していたので、近くの役場に行って手続きをして、無事、バイクは梓のものになった。

 

「いやあ、親父さん、助かりました。」

 

ナカジマがお店のご主人にお礼を言った。

 

「大洗女子学園の戦車道チームは、ウチのお得意さんだからね。確か、澤さんはM3の車長だったよね。」

 

「はい!」

 

「じゃあ、この軍手をあげるよ。ウチで作ってるんだけど、結構評判がいいんだよ。」

 

そう言うと、ピンク色の軍手を渡してくれた。軍手の甲には、ウサギさんチームのシンボルである、両手に包丁を持ったウサギが描かれていた。

 

「ありがとうございます!」

 

「バイクの整備は、私たちに任せてね。」

 

「ボアアップしようか。」

 

「いや、それだと原付じゃなくなるから。」

 

「やっぱ、足回りは手を入れないとね。」

 

「バイクでドリフトできるかなあ。」

 

自動車部の血が騒ぐのか、バイクを目の前にしたレオポンさんチームが、魔改造について話し合っている。

 

「い、いえ、このままで大丈夫ですから。」

 

レオポンさんチームに任せると、しまいにはEPSまで付けられそうだったので、この場から離れたほうがよさそうだった。

 

「じゃあ、私、このバイクで大洗を少し走ってから学園艦に帰ります。」

 

乗って帰ると思っていたので、学園艦のショップで買ったヘルメットは持って来ていたし、服装も、バイクに乗るのに適したものを着ていた。

 

「気を付けてね。」

 

店主とレオポンさんチームに見送られながら、梓はバイクでお店を後にした。

 

特に行くあては無かったが、とりあえず商店街を東に走り、肴屋本店のカーブの先の信号を右折し、曲松商店街を走る。その先を道なりに進んで、今度は東町商店街を同じく東へと進む。

商店街であれば、ゆっくりと走っていても邪魔にはならない。そう思って時速30kmを超えない程度でゆっくりと走りながら、アクセルの吹かし方やブレーキの感覚、曲がる時の体の傾け方を体で覚えて行った。

磯前神社の鳥居の信号を過ぎると、左側の道に入って坂を上る。急な坂なのでアクセルを捻って、エンジンの力でぐいぐい進むと、磯前神社の駐車場に着いた。

梓が商店街を走りながら思いついた行き先は、磯前神社だ。やはり、まずは神社にお参りして、交通安全、無事故無違反をお願いしようと思ったからだ。

 

手水場で身を清め、門をくぐって、本殿の前で手を合わせて、

 

「これからバイクを楽しめますように、みんなといろんなところに行けますように、危ない目に遭いませんように。」

 

と、お願いした。

 

お参りを済ませると、社務所の売店で交通安全のお守りを買い、門の外に出た。

気が付くとお昼近くになっていたが、バイクがあるので、普段は行けないようなところに行こうと思った。

今走って来た商店街のお店は、学園艦が寄港した時に歩いて行こうと思えば行けるので、少し離れたところにあるお店をスマホで探して、バイクで向かった。

 

磯浜町の住宅街の中にあるせんな里食堂は、港や神社から少し離れているせいか、お昼時でもそれほど混んでおらず、地元の人が数組いる程度だった。

メニューを見て、竜田揚げ定食を注文し、オレンジペコと福田にバイクを手に入れたとメッセージを送ると、すぐに返信があった。

 

福田 「澤殿もいよいよ単車乗りですね。いつか一緒に走りましょう。」

 

ペコ 「是非、写真を送って下さい。」

 

そう言えば、走るのに夢中になって、写真を撮っていなかった。あとでどこかで撮って送ろうと、心の中のメモに書いた。

竜田揚げ定食を食べながら、次はどこを走ろうかと考える。なんとなく、景色が良いところを走りたいな、と思ってスマホで大洗の地図を見ると、磯前神社からアクアワールドに向かう道ならば、右に海、左には先日エキシビションが行われた大洗ゴルフ倶楽部を見ながら走れそうだった。

アクアワールドからは、折り返す形で祝町から大洗駅方面に向かえば、学園艦にも戻りやすい。

ルートも決まったので、会計を済ませて外に出た。

 

先ほど来た道を磯前神社のほうに戻り、鳥居のある交差点を左折する。宮下旅館街を過ぎると、一気に視界が開けて、海が見えた。

 

「気持ちいい~。」

 

天気が良かったので、海の青さがひときわ鮮やかだった。

 

「あ、そうだ、写真撮らなきゃ。」

 

県営駐車場にバイクを乗り入れ、海に近いところに停めてスマホで何枚か写真を撮った。

すぐに福田とオレンジペコに送っても良かったが、もう少し走りたいという気持ちの方が強かったので、送るのは後にして、再びバイクで走り出した。

祝町のT字路を左折して、いささかりんりん通りを抜けて、東光台前の交差点を右折して、大洗駅に向かう。

ココスの前を過ぎると緩い下り坂になっているため、スピードが出過ぎないように注意して走る。

 

セブンイレブンがある大洗駅入口交差点を直進すると、大洗駅が見えて来た。信号を右折して駅のロータリーに入り、駅の入り口の少し先にバイクを停めた。

駅をバックにバイクの写真を何枚か撮っていると、男性が「撮ってあげましょうか?」と声をかけてきた。確かに、バイクの写真は撮っているが、自分は写ってないので、バイクに跨っているところを撮ってもらった。

 

「このバイク、可愛いらしかねー。」

 

スマホを返しながら、男性が話しかけてきた。

 

「ありがとうございます。実は、今日、買ったばかりなんです。」

 

いい時間になっていたので、そろそろ帰ろうと思い、港のほうにバイクを走らせると、途中でレオポンさんチームの車に会った。レオポンさんチームの後ろをついて行く形で学園艦まで戻るところで向こうもこちらに気付き、後部座席に座っていたナカジマとツチヤがこちらを見て手を振っていたが、それに手を振りかえす余裕あるぐらい、梓はもうバイクに乗り慣れていた。

 

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その日の夜、梓は、オレンジペコと福田にバイクの写真を送った。

 

梓「これが私のバイクです。海が見える駐車場と、大洗駅で撮りました。」

 

ペコ「すごく素敵なバイクですね。」

 

福田「恰好いいであります!」

 

梓「レオポンさんチームの知り合いの店の人に、安く譲ってもらったんだ。」

 

ペコ「早く一緒にツーリングに行きたいです。」

 

福田「上に同じです!」

 

梓「学園艦の寄港日が合えばいいね。」

 

ペコ「ローズヒップさんもお誘いしていいですか?」

 

梓「是非!」

 

福田「人数が多いほうが楽しいのであります。」

 

ペコ「ローズヒップさん、横浜から行けるツーリングスポットに詳しいんですよ。」

 

福田「「週刊バイクテレビ」という番組があって、いろんなところに単車で遠乗りしています。一度、ご覧ください。」

 

梓「うちの学園艦で見られるかなあ。」

 

福田「ネットで動画も見られるようになっています。」

 

梓「じゃあ、そちらを見てみます。」

 

ペコ「私も、ローズヒップさんと一緒に見ます。」

 

福田「あとでリンクを送るであります。」

 

 

同じ戦車道履修生で一年生というのもあるが、バイクという共通の趣味があるからか、話が尽きることはなかった。

 

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「お早うございます、梓さん。」

 

「お早うございますですわ、澤さん!」

 

「お早うございます、ペコちゃん、ローズヒップさん。」

 

大洗駅のロータリーには、梓、オレンジペコ、ローズヒップの3人がそれぞれのバイクで来ていた。

 

大洗女子学園と聖グロの戦車道の練習試合が行われるということで、双方の学園艦が大洗港に寄港し、3日間ほど停泊するということが分かったため、3人は試合の翌日にツーリングに行こうと計画をしていた。

福田にも声をかけたが、生憎、その日は知波単の学園艦は太平洋上を航行中であったため、「無念であります。みなさんからの写真を楽しみにしています。」との返信だった。

 

「昨日の試合、お疲れ様でした。やっぱり、聖グロにはなかなか勝てませんね。」

 

「でも、澤さんが乗っているウサギさんチームのM3は、ほとんど最後まで残ってましたね。」

 

「結局、アッサムさんに撃破されちゃって、最後は西住隊長のあんこうチームだけになってしまいましたが。」

 

「私はレオポンさんチームにやられてしまいましたの。」

 

「ローズヒップさん達のクルセイダー部隊は相手を攪乱する役割だったのですが、逆にそちらの罠に引っかかってしまいました。」

 

「まさか、あのポルシェティーガーがあんなに速く走るとは思いませんでしたわ。」

 

「あの戦車は、自動車部の皆さんが魔改造していますから。EPSまでついていて、5秒間だけ、すごい速度が出せるそうです。」

 

昨日の感想戦の話が尽きそうにないので、梓は今日のツーリングに話を変えた。

 

「お二人とも大洗の街中をバイクで走るのは初めてですよね?」

 

「ええ、戦車では何回も走っていますので、だいたいの地理は把握していますが。」

 

「原付だからあまり遠いところには行けませんが、近場でいろんなところに行ってみるというのはいかがでしょうか。」

 

「それも楽しそうですわー!」

 

「では、午前中は少し遠出して、ひたち海浜公園に行きましょう。」

 

「どんなところなんですか?」

 

「5月はネモフィラっていう青い花が丘の一面中に咲いているのが有名ですが、今の時期であればコキアの紅葉が見られます。」

 

「では、早速参りましょう。急がないと、紅葉が終わってしまいますのよ!」

 

3人は、大洗駅を出て左に曲がった。東光台の交差点を左折してもいいが、海沿いを走ったほうが気持ちいいので、そのまま直進し、磯前神社の鳥居がある交差点を左折して宮下旅館街を北上した。

 

「このあたり、覚えてますわ。エキシビションの時、クルセイダーで走りましたの。」

 

「確か、あちらに見えるアクアワールドの駐車場が最終決戦したところでしたね。」

 

「私たちはプラウダのノンナさんのIS-2に序盤で撃破されちゃったんで、モニターで見ていました。」

 

「私はヘッツァーに砲撃されてしまいましたの。よほど腕のいい砲手が乗っていたに違いないですわ!」

 

あの時の砲手は河島桃で、ふだんはちっとも当たらないはずが、偶然当たってしまったということは言わないでおこうと梓は思った。

 

海門橋を渡ってひたちなか市を抜け、海沿いの道を走ると、30分ほどでひたち海浜公園に着いた。

駐輪場にバイクを停めて、見晴エリアまで歩いてくると、丸い形をしたコキアが丘一面に広がっていた。

 

「まんまるい形をしていて、とても面白いですわー!」

 

「今はちょっと色が薄いけど、もう少ししたら真っ赤に染まるんですよ。」

 

「でも、この緑とオレンジのグラデーションも綺麗ですね。」

 

スマホで写真を撮りながら、3人は見晴の丘を歩き、麓の休憩所でお茶を飲みながら一休みした。

 

「さっき見た看板の写真で、青いネモフィラが咲いているのも素敵でした。また、その季節になったら来てみたいですね。」

 

「その時もまたバイクで来たいですね。」

 

まだ午前中なので、まだまだ時間はある。

 

「じゃあ、次に行きましょうか。」

 

「次はどこに行くんですの?」

 

「大洗に戻って、お昼ご飯です。港から少し離れたところに、美味しい鰯料理を出してくれるお店があるんですよ。」

 

「やっぱり大洗は海鮮物が美味しいですからね。」

 

駐輪場に戻り、さっき来た道を海門橋までもどり、そこからはいささかりんりん通りを走る。東光台の交差点を右折し、大洗駅に向かう道を走って途中で右折すると、目的地である「味処 大森」に着いた。

 

「ここらへんも覚えてますわ。あちらの涸沼川のところで、うちのクルセイダー隊のクランベリーがルノーB1bisに弾き飛ばされましたの。」

 

ひたち海浜公園を出る前に梓が電話で予約を入れておいたので、お店に入るとすぐに席に通された。

 

「ここって結構有名だから、予約しておいた方が安心ですから。」

 

「鰯料理が美味しいっておっしゃってましたけど、これですか?」

 

メニューを見ながら、オレンジペコが鰯御膳を指差した。

 

「そう、鰯の刺身にタタキ、天ぷらに、鰯のすり身が入ったおつゆがついてるんです。」

 

「あと、ここにある葛切りも美味しいんです。作り立てをすぐに出してくれて、賞味期限が25秒だそうです。」

 

「25秒もあれば十分ですわ!」

 

注文を終えて、お茶を飲みながら、梓は気になっていたことを聞いてみた。

 

「それが、横須賀で買ったスカジャンですか?」

 

「ええ、そうです。でも、これを着ていると不良みたいって、ダージリンさんに言われてしまいました。」

 

「ペコさんと、これを着てラーメンを食べにバイクで出かけた時ですの。」

 

「でも、綺麗な色で、素敵ですね。私も1着、欲しいなあ。」

 

「今度、横浜に来ることがあれば、一緒に買いに行きましょう。」

 

「私の父の知り合いがやっているお店だったら、安くしてくれますのよ。オレンジペコさんのスカジャンも、少し汚れてたからって4割引きにしてくれましたの。」

 

「梓さんがスカジャン着たら、ウサギさんチームの方々に不良呼ばわりされるかもしれませんね。」

 

間もなく、鰯御膳が運ばれてきたので、いったん話を切り上げて料理を堪能することにした。

 

「この鰯の刺身、すごく美味しい!」

 

「このタタキも、お箸が止まりませんわー!」

 

「やっぱり新鮮ですからね。」

 

3人が食べ終えると、梓は、葛切りを持って来てくれるようにお願いした。

ほどなく、黒蜜がかけられた葛切りが運ばれてきた。

 

「さあ、時間との戦いですわ。いざ、勝負!」

 

賞味期限は25秒ということだったが、10秒もしないうちにローズヒップは食べ終えていた。

この時だけは、オレンジペコはローズヒップの早食いが羨ましく思った。

 

「ふう、お腹一杯ですわ。」

 

「ちょっと腹ごなしが必要ですね。」

 

「じゃあ、この後は大洗の街中を歩いて散策しましょう。お腹がこなれたら、商店街の食べ歩きもできますし。」

 

「甘いものは別腹ですのよ。」

 

お店を出て、少し走って町営第一駐車場にバイクを停めてから、梓に案内されて3人は街中へと向かった。

 

永町商店街を歩いているところで、オレンジペコが魚忠のところで足を止めた。

 

「ここ、覚えてます!最初の練習試合で西住さんを追い詰めたところです。」

 

「そうなんですか、あの時、私達は戦車を置いて逃げ出しちゃったし。」

 

「仕方ないですよ。聞いたら、あの時が初めての試合だったそうですから。」

 

「どんな感じだったんですか?」

 

「チャーチルとマチルダでⅣ号をここに追い詰めたんですが、いざ砲撃しようとしたら、横の路地から金色の戦車が飛び出して来たんです。」

 

「38tですね。あの時は、みんなで戦車をいろんな色に塗っていて、生徒会の人たちは金ぴかにしていましたから。」

 

「そこで砲撃されたんですが、幸い、弾が変なところに飛んで行ってしまったので、すぐに撃破されました。」

 

「ああ...」

 

おそらく、と言うか、間違いなく河嶋桃が撃って、外したのだろう、と梓は思った。

 

「その隙に、Ⅳ号が路地から逃げて、みんなで追いかけました。」

 

話しながら進んでいると、ローズヒップが足を止めた。

 

「澤さん、このみつだんごって何ですの?」

 

「団子に甘じょっぱい蜜と黄な粉がかかったお団子ですよ。食べてみましょうか。」

 

少し歩いてお腹もこなれつつあったので、一人一本ずつ注文した。すぐにできあがったので、外のベンチでいただくことにした。

 

「串にお団子が3つあって、60円って安いですね。」

 

「これならいくらでも食べられそうですわ!」

 

「お祭りの時なんかの特別メニューで華さん盛りというのがあって、300円で6本分のお団子が食べられるんですよ。五十鈴先輩は、それを3皿ほど頼んでました。」

 

「さすがにそれはちょっと。」

 

みつだんごを食べ終えて、さらに先に進む。肴屋本店のところに来たら、ローズヒップが宿を見上げた。

 

「私が突っ込んだところですわ!建て替えて新しくなってますのよ。」

 

「クラーラさんの戦車の燃料タンクが爆発したんですね。」

 

「クルセイダーは無事だったので、すぐに離脱したんですの。あの後、きちんと謝りましたのよ。でも、何を言っていたのか全然わかりませんでしたわ。にっこりされていたので、怒ってはいなかったと思うのですが。」

 

さらに歩いて、気が付けば磯前神社の鳥居のところに来ていた。

 

「ここ、午前中に通ったところですね。」

 

「はい。やはり、磯前神社には行かないとと思いまして。」

 

信号を渡り、斜めに入る坂道を上って、駐車場の横から境内に入った。

参拝を済ませ、門の外に出ると、目の前の石段を下る。

 

「エキシビションの時、あんこうチームはここを下ったそうですよ。」

 

「カチューシャさんとノンナさんもそれを追って下ったんですね。」

 

下り終えると、道路を渡り、路地を抜けて海沿いに出た。堤防の先には岩場の中に鳥居が建っていた。

 

「あれが、神磯の鳥居です。」

 

「海の中に鳥居があるなんて、とっても素敵ですわ。」

 

「ローズヒップさん、あそこの岩場には登っちゃダメですよ。」

 

「そうだ、ここで3人で写真を撮りませんこと?」

 

「いいですね。誰か撮ってくれそうな人、いるかな。」

 

「ちょっと、そこのお方、写真を撮ってくださいませんこと?」

 

梓が探すまでもなく、ローズヒップが近くにいた、リュックを背負ってキャップを被った男性に声をかけた。

 

「ああ、いいですよ。3人で海をバックにすればいいんですね。」

 

「あそこの鳥居が写るようにしてほしいんですの。」

 

ローズヒップが男性にスマホを渡して構図を指定した。

 

3人で並ぶと、男性のほうを向いた。

 

「じゃあ、撮りますよ。」

 

「お願いします!」

 

シャッター音がして、撮り終えたスマホを男性がローズヒップに返した。

念のために写真をチェックしているローズヒップの横から、オレンジペコと梓が覗き込んで見たら、3人の後ろにいい感じで神磯の鳥居が写っていた。

 

「おじさま、ばっちりですわ!」

 

「ありがとうございます。」

 

お礼を言って、3人は神磯の鳥居を後にした。

そこからは、エキシビションの時の話をしながらサンビーチ通りを歩く。

サンビーチ通りは、ツーリングの帰りなのか、バイクもたくさん走っていた。

 

「あれ?あの人って。」

 

スクーターではなく、後ろに荷物を載せて運ぶようなバイクに乗っていたのは、後ろで長い金髪をまとめた、背の高い細身の女性だった。

梓は、なんとなくその姿に見覚えがあるような気がしたが、走り去るバイクの後姿だったのではっきりとはわからなかった。

 

気が付けばマリンタワーのところまで来ていた。

 

「後で、マリンタワーにも上ってみましょう。大洗の町全体と、海もよく見えるんですよ。」

 

「それは、素敵ですね。」

 

「私、高いところ大好きですの!」

 

シーサイドステーションでいろいろと見て回っていると、日が落ちてきてそろそろ夕焼けが出てくる頃になった。

 

「マリンタワーから見る夕焼けも綺麗ですね。」

 

「あそこにおっきな船が見えますわ!」

 

「さんふらわあですね。ここから北海道の苫小牧まで行けるんですよ。」

 

梓は、大学選抜との戦いの後、あの船でこの大洗まで戻ってきたことを思い出した。あの試合に勝てなければ、いまごろどうなっていただろう。こんなふうに、他校の生徒と一緒にツーリングに行くということもできなかっただろう。

そう考えると、本当にあの試合に勝ててよかったと思った。あの試合には、オレンジペコやローズヒップも、大洗女子学園に短期転校という形で参戦してくれたのだ。

 

「大学選抜では、本当にありがとうございました。」

 

「どうしましたの?梓さん。」

 

ローズヒップが不思議そうに尋ねる。

 

「いえ、さんふらわあを見ていたら、大学選抜との試合のことを思い出して。」

 

「学園艦の解体が撤回されて、本当に良かったですね。」

 

オレンジペコがにっこりと笑って言った。

 

「ええ。だから、私たちが、いえ、みんなで守った学園艦での生活。あと2年以上ありますし、もっともっと楽しみたいと思います。」

 

「私も、もっといろんなところにツーリングで行ってみたいですわ!」

 

「私も、せっかくバイクという新しい趣味ができたから、これからもみなさんと一緒に走りたいです。」

 

オレンジペコと同じくバイクという新しい趣味を見つけた梓は、この先も、戦車道とバイクで、学園での生活を楽しむことができるのが、とても嬉しかった。

 

「本当に、戦車道をやっていて、良かった。」

 

3人は、山の向こうに沈みつつある夕陽を見ながら、また、ツーリングに行こうと約束した。

 

 




いかがでしたでしょうか。

念願かなって、オレンジペコやローズヒップと、大洗近辺をお散歩ツーリングした澤梓(福田が一緒ではなかったのが残念ですが)。

ちなみに、筆者はひたち海浜公園に行ったことはありません...

味処 大森さんにもまだ行ったことないのです。鰯料理と葛切り、食べたいなあ。

今回も、次につながる伏線を入れてますので、次話をお楽しみに。
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