グラーフ・ツェッペリンという艦娘は読書が好きである。という話はよく噂されるし、他の基地でもそういう話を聞いた。
事実、相部屋になっているここのグラーフはよく本を読んでいる。それこそ暇さえあれば本を手に取るぐらいには。もっと構って欲しいのに。
前に、なんでそんなに読むのかと聞いてみた。
「なんて言うかな。本は私を新たな世界へと連れてってくれるんだ。小説はその物語の中へ、学術書は私が知らない世界を切り開いてくれる。それがとてつもなく面白いんだ」
よくわからなかった。小説ならまだしも学術書も? あんなに小難しい本を読んで何が面白いのだろうか?
気になってグラーフがいない時に彼女の本棚から私でも読めるイタリア語の学術書を手に取って読んでみる。最初の一ページで投げ出した。
次に本棚を漁って見ると奥の方に私でも読めそうな日本の恋愛小説を見つけた。堅物なイメージ──実際、奥手で恋愛ベタだった──なグラーフがこういうのも読むんだなあと思いながらページを捲ってみた。想像以上に、面白くてふと気がついたら一時間経っていた。
もう少しでグラーフが帰ってくるから急いで適当な紙を栞代わりに挟んで本棚にしまった。
それから私は何事もなかったかのように帰ってきたグラーフを出迎えていちゃついた。
それから数日、グラーフの隙をついては小説を読み進めた。確かに面白いとは思うが、グラーフの言う新しい世界はこれっぽっちも見えてこない。どうしてなんだろう?
わからないまま読み続けて最後の章まで読み進めたところで遂にグラーフに見つかってしまった。
「別に私の本棚から取って読むのは構わないが、よりによってそれを読まれるとはな……」
怒られるっと思って身構えたけどそんなことはなかった。奥に隠していた形だったから見られたくないのかなーとなんとなく考えていたけどそうだったみたい。
「いや、その……。昔、私がアクィラにどうアプローチすればいいかわからなくてな……参考にと思って買ったんだ」
思わず吹き出してしまった。読みたくて買ったのではなく、私の為に……ちょっと嬉しい。
でも血胸参考にはならなかったみたいで、私の記憶がそれを保証している。
「わ、笑わないでくれ。あの時は本当に参っていて、どうすればいいのか分からなかったんだ。それで提督に助言を求めてその本を勧められて、読んだが……まあ結果は言わなくていいな」
恥ずかしそうに言うのがどこか面白くて笑いが止まらない。
「そこまで、笑わなくてもいいだろう。私だってアレを蒸し返えされると結構来るものがあるんだ」
流石に笑い過ぎたみたいでグラーフは拗ねてしまった。何度か深呼吸をして笑いを押さえ込んでよしよしをする。謝りながら。
「まあ、いいだろう」
直ぐに機嫌が良くなって色白な頬をほんのりと赤くした。本当にこういうところが可愛い。
あ、そうだ。
グラーフに一緒に本を読まないかと誘ってみる。すると驚いたように目を丸くした。
「アクィラと? 私が読んでいる時にあんなに構って欲しそうにしていたのに?」
聞き捨てならないこと聞いたかもしれないけど一旦流して、そうですよと肯定する。グラーフは若干困惑しながらも来ていたコートをハンガーに掛けてから、読みかけの本を取ってきた。
そして二人で良く過ごすソファへ座る。
最初に私が本を開いて読み始める。グラーフはまだ困惑気味だがとりあえず何かの学術書を読み始めた。
そこで私は自然にグラーフの肩へ寄りかかる。グラーフの体温が、鼓動が心地いい。小説の中でも主人公が同じように恋人の肩に寄りかかってリラックスしている。
結局、新しい世界こそ見えてこないが、読んでいてとても心が穏やかになる。グラーフは言わなかったけど本にはこういう効果もあるんだろうな。
「ねえ、グラーフ。こうして本を読むのも悪くないですね」
私がそう言うとグラーフは一瞬驚きながらも認めてくれた。
それから、二人で一緒に本を読む習慣が生まれた。私は恋愛ものばっかり読んで、グラーフは堅い小説やSFもの、学術書なんかをよく読んでいる。ジャンルも読むスピードも違うけど、時には内容に二人で共感して、反論して、喧嘩したりもした。
喧嘩した次の日は何事もなかったようにいつものようにソファに座って謝ってから本を読んだ。また喧嘩したけど。
ただ、こういう日々は今まで以上に楽しかった。グラーフに迫っているような気がして誇らしかった。ベッタリくっつきながら読めて嬉しかった
こういう日々がいつまでも続きますように。
アクグラはいいぞ最高だ
アクィラ視点から見たグラーフは格好いいし、可愛い。でもグラーフ視点から見たアクィラはとてもかわいい。本気で。
あと小説はいいぞ最高だ