最凶の組のIS操縦士 ~家族の絆で空を行く~   作:木原@ウィング

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2番目はまさかの〇〇!?

「断る」

 

 

「何故だ!? 貴方だって今回の事の重要性は分かっているはずだ!!」

 

もう何度目になるのか分からないその問答が始まるとある豪邸の一室、そこで高級なスーツを着た男と和服を着た男がいた。

 

 

片方は眉間に深いしわを刻みつけ、もう片方は額に脂汗を浮かべて和服の男に縋りつく。

和服の男は面倒臭そうに頭に手を当てて溜息をつく。

 

 

「何度も言って居るだろう? 私はそんな事に付き合える程、暇人ではない」

 

 

「しかし! 貴方は【2人目】なんですよ!? 貴方には現状、莫大な利益が出るじゃないですか!!」

 

 

「利益がどうした? そんな物に興味など無い」

 

 

2人の男の会話は2時間近くずっとこの調子で平行線を進んでいる。スーツを着た男も粘り強く和服の男と交渉を続けているが和服の男はいい加減に帰ってくれないか。という感情が顔に出てきているのかスーツを着た男の顔がひく付いている。

 

 

「貴方の立場は理解しているつもりです……しかし、こればっかりはどうにも出来ないんですよ。私が離れるとどんな事が起きるか」

 

 

「いえ、ですから! そちらに関しては私達の更「貴方達の? まさか日本の暗部である『更識』を自分の私兵のだとでも言うつもりですか?」ッ!?」

 

 

その瞬間、和服の男から出るオーラが一瞬で変化した。

先程までの気だるげな雰囲気は消え去り、その全身から鬼の様なオーラが一気に放出する。

 

 

スーツを着た男は一気に額からの脂汗が増え、歯が上手く噛み合わないのかガチガチと不快な音が響き渡る。

何とか深呼吸をすることで少しはマシになったがそれでも恐怖は引いていないのか、眼が物凄く泳いでいた。

 

 

なぁ? 聞いているんだよ……何時から更識は貴方達の私兵になったんだよ?

 

 

「い、いいえ! そ、その様な事は決して有りません!!」

 

 

「そうですよね? 更識からそんな報告は一切聞いていないので……」

 

 

和服の男はそれだけ言うと放出していたオーラを消し、再び面倒臭そうな雰囲気に戻っていく。

それを見てスーツの男は一気に力が抜けたのか肩で息をするように上下させ始める。

 

 

「まぁ、そういう訳でもう帰ってください。私もこれ以上は時間を取れませんので」

 

 

「ま、待ってください! それではあまりにもッ!?」

 

 

疲れた様に肩を回して退出を進める和服の男に縋りつくように頭を下げるスーツの男。

そんなスーツの男を見る和服の男の目は何も映していなかった……

 

 

「……なぁ、しつこい。こっちが優しく言ってる内にやめておけよ?」

 

 

「し、しかし!! それでは私達は「【重要人物保護プログラム】」っひ!?」

 

 

忘れていないよな? お前らが勝手に決めて実行に移そうとしたクソみたいな計画だ

 

 

和服の男は先程のオーラでスーツの男がそれ以上、話が出来ない様に威圧する

心なしか、その目は少し光っているようにも見えていた。

 

 

アレを止めたのは俺達だ……お前等、アイツ等の身の安全を守るとか言って置きながら実際はただ逃げない様に監視していただけだったよなぁ? あ”ぁ”

 

 

お前等、『あの事件』の後には一切何もしなくなったよな? まぁ、俺達がアイツ等の身の安全を守るようになったからだろうが……だがよ、その後に一切何もしないってのはどういう事だったんだ?

 

 

耳が痛いというのはこの状況を言うのだろう。スーツの男は最早顔面蒼白などと言う物ではなく、ブルーマンも真っ青な程に顔が青くなっていた。

その様子を見た和服の男は話すことは何も無いと言う様に立ち上がり、控えていた1人の女性に声をかけた。

 

 

()()()、お客様がお帰りになる。お見送りを」

 

 

「はっ! 親父殿!! ……おい、こっちだ。さっさと立て!!」

 

 

マドカと呼ばれた女性は綺麗なお辞儀をするとスーツを着た男を玄関まで引きづるように運んで行った

改めてその部屋からようやく人が居なくなったのを確認した着物の男は脱力して携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。が、相手側は1コールで即座に応答した。

 

 

『もすもす終日~?』

 

 

「束か……こっちは終わった」

 

 

『あっ、ようやく? も~遅いよぉ~』

 

 

「すまん、相手があまりにもしつこく食い下がってきてな……やんわりと断っていたらこんな時間になった」

 

 

『もぅ、ら―くんは甘すぎるんだよぉ~あんな凡人なんかに優しくしちゃってさぁ~?』

 

 

「そう言うな、あんなのでもこの国では必要な人材だ。少しは恩を売って置いた方が良いんだよ」

 

 

束と呼んだ女性のあんまりな言葉に思わず苦笑する和服の男は、手元の書類に目を向けながら少し体を伸ばした。そしてある程度ストレッチをすると気持ちを切り替える様に再び真剣な様子で電話口の束に対して口を開く。

 

 

「それで……何か分かったか?」

 

 

『う~ん、ごめんねぇ。データが少なすぎて何でいっくんとらーくんが【IS】を動かせるのかは分からなかったよ』

 

 

「そうか……まぁ、仕方が無い、か。気にするな、束」

 

 

本気で申し訳なさそうな声で謝罪する束に対して特に気にしていない様に返事をする和服の男は、逆に束に対して申し訳ない気持ちになっていた。

 

 

「俺の方こそ、忙しい束に対して無茶な事を頼んだ。すまなかった」

 

 

『そんな! 全然だよ!! 私も気になってたし、それに……らーくんには返しても返しきれない恩が有るんだから!』

 

 

「そんな物は無いさ。俺は俺がやりたくて色々と手出ししただけだ」

 

 

『またまた~謙遜しちゃってさぁ~』

 

 

「親父殿……」

 

 

束と電話をしていた男の背後から先程、マドカと呼ばれた少女が頭を少し下げながら遠慮気味に声をかける。

 

 

「外務大臣は先程送り返しました。その報告を」

 

 

「あぁ、わざわざすまんな。マドカ、面倒臭い仕事だっただろう?」

 

 

「いいえ、あれ以上は親父殿の手を煩わせる訳には行かなかったので……」 

 

 

「そう思ったのはお互い様さ、マドカ。お疲れ様」

 

 

和服の男はそう言ってマドカの近くに寄って下げていた頭を優しく撫でた。

マドカもそれをとても気持ちよさそうに喉を鳴らして喜ぶ、その見た目はまさしくご主人に撫でられて喜ぶ家ネコのようだった。

 

 

『む~らーくん! マドっちばかりに構ってちゃ駄目なんだぞ~!!』

 

 

「あぁ、すまなかったよ束」

 

 

「年下に嫉妬するなど見苦しいぞ、篠ノ之束」

 

 

『うるせぇやい!』

 

 

「喧嘩するなって……」

 

 

「お嬢……おやっさん」

 

 

電話越しにやいのやいのと2人が喧嘩をするのを頭に手を当てて呆れていると扉をノックして1人の男がいそいそと入ってくる。

その男の顔には頬に1本の刀傷が付いており、歴戦の戦士を思わせる風貌をしていた。

 

 

「カイか……どうした?」

 

 

「はっ……先程『更識』のご隠居様の奥方から連絡が有りました」

 

 

「都紀からだと?」

 

 

束に一言、断りを入れてからマドカに携帯を手渡してカイに向き直る和服の男。

そのままマドカと束はギャーギャーとケンカの様な電話を続けている。

 

 

「で? 一体どんな要件での連絡だった?」

 

 

「それが……先程の外務大臣に対しての謝罪らしいのですが」

 

 

「何だ、そんな事か。気にするなと伝えておいてくれ」

 

 

「いえ、実はそれだけじゃないんです」

 

 

「何だと?」

 

 

「何やら……おやっさん、真木 雷光(まき らいこう)は【IS学園】に来るのか聞いて欲しいと」

 

 

カイのその言葉を聞いて真木 雷光は少しポカンとした表情を浮かべ、動きが止まってしまう。

少し呆気にとられた雷光は溜息をついてそのまま部屋を出て行ってしまった。

 

 

「カイさん、親父殿はどうしたんですか?」

 

 

マドカは束との電話を終わらせたのか片手に雷光の携帯電話を持ちながらカイに質問をする。

 

 

「あぁ、いや……おやっさんはIS学園に行くのかって更識家の奥方から連絡が有ってな」

 

 

「都紀さんが? 一体何を考えているのやら……」

 

 

「恐らく、現当主がIS学園に居るからじゃないのか?」

 

 

「あぁ、楯無か。確か今は生徒会長をやっているんだったか?」

 

 

「そうだ。それにおやっさんとはもう何年も直接は会えていないからな。それもあんな連絡を入れて来た原因なんじゃないか?」

 

 

「日本の暗部の現当主でも、やはり人の子だな」

 

 

「はっ、どの口が言っているんだよ」

 

 

少し馬鹿にした様に笑うマドカの頭を優しく撫でるカイ。

マドカも少し嫌そうな顔をするだけで特に手を払うような事をせずに、されるがままになっている。

 

 

「お前がここに来た当初からは考えられないな」

 

 

「あぁ、私としても信じられないさ。私がここまで変わるなんて……」

 

 

「後悔しているか? そんな風に変わった事を」

 

 

「まさか、それこそあり得ないさ」

 

 

顔に少しだけ影を落としながら自虐するように笑ったマドカに対して、少しだけ心配そうに声をかけたカイの質問に満面の笑顔で答えるマドカ。

 

 

「私は……あの人に、この【真木組】に救われたんだ」

 

 

「……良い顔で笑えるようになったじゃねぇか」

 

 

「五月蠅いぞ、カイさん」

 

 

ーーーーーーーー     --------

 

「なぁ、都紀さんよ。アンタも頭は大丈夫か?」

 

 

「連絡をくれたのは良いんだけど開幕から酷い言い草じゃない? 雷光君」

 

 

「あまりにも予想外なアホな質問をされたんだ。初っ端から悪態を付きたくもなるだろう……」

 

 

マドカがカイとじゃれ合っている頃、雷光は屋敷の固定電話から先程電話を寄こして来た更識に対して少しの悪態を込めて電話をしていた。

 

 

「それで? お宅は一体何を考えているんだ?」

 

 

「まぁ、考えているのは織斑一夏君の護衛を貴方に頼みたいって事ね」

 

 

「一夏の? それだったら貴方の所の当主がやれば良いだろう? 現生徒会長なんだろう、確か?」

 

 

「そうなんだけど……刀奈ちゃんは今、世界各国からの要望を対処するのが忙しいみたいで」

 

 

「成程な……それで同じくISを動かした俺に護衛の依頼を出したいって訳か」

 

 

「話が早くて助かるわ」

 

 

都紀からの気の抜ける様な内容の話を聞いて雷光の額の皺は物凄く深く刻まれていく。

その様子は仕事を片付けた端から新たな仕事を持ち込まれるブラック企業の平社員の様だった。

 

 

「あのなぁ、生憎と俺は俺の組から離れる訳には行かねぇんだよ」

 

 

「雷光君が心配しているのって離れている間に敵対している組織が何かするかもって不安が有るからでしょ?」

 

 

「そうだよ……俺らの世界は隙を見せればやられる世界だ。それは貴方の家も良く知っているだろ」

 

 

「うん、嫌って程ね。でも……『日本で最も力を持ち恐れられている最凶の極道』においそれと手を出すところが有るの?」

 

 

「日本国内には無いと思うが……最近は外国のマフィア共からのちょっかいが何件か確認されている」

 

 

「外国からか……でも、貴方の組は貴方が離れるだけで崩れる程信用できないの?」

 

 

「そんな訳あるか……だがな」

 

 

だがな、じゃない!

 

 

耳元で手榴弾が爆発でもした様な怒声が雷光の耳を襲い、一瞬だけ目の前が揺れた。

あまりの衝撃に少し音が聞き取りにくそうに片耳を抑えながら電話を続ける。

 

 

「貴方は自分の組の人達を信じてるんでしょ!? だったらそれに任せて貴方を必要としている子供達の方に行くべきよ!」

 

 

「子供達って……」

 

 

「一夏君や箒ちゃん、それに簪ちゃんに刀奈ちゃん達だって貴方の所の子供みたいな物でしょ?」

 

 

「前者2人は確かにそんな感じだけど、後者2人はお宅の家の子だろうに」

 

 

「そうだけどそうじゃないんだってば!」

 

 

「分かってるよ……」

 

 

都紀の言い分に納得はしている様に頭をかいて答える雷光。

その様子が電話越しに分かるのか、くすくすと笑う声が聞こえてくる。

 

 

「だったらもう諦めて来てしまいなさいな」

 

 

「……はぁ、他にも反論を用意しているんだろ?」

 

 

「えぇ、勿論。それにそっちの懸念はこっちでも対処するわよ」

 

 

「……出すのか? お前の懐刀の6人を」

 

 

「えぇ、そっちの幹部7人と合わせて13人ね」

 

 

「またアイツ等が集まるのか。それだったら勝てる奴など殆どいないな」

 

 

「そういう事。だから安心しなさい」

 

 

覚悟を決めたのか、雷光はそのまま電話を切り再び自分の部屋へと戻っていった。

 

 

――――――     ―-----

「それで親父殿。IS学園に行くと言うのは本気ですか?」

 

 

「あぁ、楯無からの要請でも有るからな」

 

 

「【真木組】はどうするのですか?」

 

 

「それに関しては家の幹部と楯無の懐刀6人を集結させる」

 

 

「本当ですか!? おやっさん!」

 

 

マドカとカイが目をむき驚いて叫ぶ。

特にカイの方は驚き、興奮している。

 

 

「あぁ、任せるぞ。カイ」

 

 

「……任せてください、おやっさん」

 

 

「親父殿、私は……」

 

 

「マドカ、お前は俺と一緒に行くか?」

 

 

「一緒に? ですが……」

 

 

雷光に誘われた事にとても嬉しそうに目を輝かせるマドカだったが、その内容に少し躊躇う様に俯いてしまう。

 

 

「マドカ……」

 

 

「無理だったら俺達と留守番でも良いんだぞ?」

 

 

「……いいや、私も付いて行くよ」

 

 

拳を握り、覚悟を決めた顔をして雷光とカイに力強く宣言する。

その宣言を受けて、カイは嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、雷光は安心した様に目を伏せる。

 

 

「本当に良いんだな?」

 

 

「はい、大丈夫です!」

 

 

「……そうか。それじゃあ、仕度をしておけ」

 

 

「分かりました!」

 

 

「カイ……分かっているな」

 

 

「勿論だ、おやっさん。()()()()()()

 

 

カイは真剣な顔をして自分の頭を指でコンコンと叩いて示す。

その内容は2人にしか分からないようでマドカは首をかしげて見つめている。

 

 

「さぁて、久し振りに子供達の顔を見に行くとするかね」

 

 

そう宣言した雷光の顔はとても獰猛そうな笑顔だった

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