最凶の組のIS操縦士 ~家族の絆で空を行く~   作:木原@ウィング

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投稿が遅れて申し訳ありません
コロナウイルスのせいで決まっていた内定が消え去り、立ち直ってようやく働き始めた職場が大変で慣れるまで書けませんでした。


今回の戦闘シーン、滅茶苦茶作るのが大変だった。
マジですらすらと書ける人を尊敬します(;'∀')
後半の方は少し投げやりになってるかもしれませんがご容赦ください。


後書きに今回のマドカの武装についての説明を書いて置きます。
気になる方はぜひ、読んでください


互いに本気でぶつかれば周りも飲まれる物だ 

「なぁ、箒。それにマドカ。今日はクラス代表決定戦だよな?」

 

 

「あぁ、私の記憶ではそうだと思うが?」

 

 

「私の手帳にも同じように書かれているな」

 

 

「じゃあさ」

 

 

何で俺の専用機は未だにここに無いんだよ!?

 

 

クラス代表決定戦の当日、第1アリーナのAピット。そこには試合に出る一夏とマドカ、そして応援のために来ていた箒の3人が存在した。

 

 

しかし、そこには本来ある筈の一夏の専用機は影も形も無く試合の開始時間は刻一刻と近づいており焦りを見せる一夏。

 

 

「落着け一夏。こんな時は慌てても仕方が無い。漢だったらどっしりと構えていろ」

 

 

「いや、そうは言ってもさぁ。アリーナの使用時間だって限られてるんだぜ?」

 

 

「その時は私が先に出るだけの事だ」

 

 

「お、織斑君! 織斑君! 織斑君!!」

 

 

「や、山田先生。落ち着いてください」

 

 

Aピットに転がり込む様な勢いで入ってきた真耶は一夏の名前をずっと呼び続けるほどに慌てており、箒が何とか宥めようとする。

 

 

「い、一体どうしたんですか? 山田先生」

 

 

「山田先生、深呼吸しましょう」

 

 

あまりの慌てように一夏が逆に落ち着きマドカが真耶に深呼吸するように指示を出す。

 

 

「はい、吸って~吐いて~」

 

 

「すぅー、ハァー」

 

 

「吸って~『吸って~吸って~吸って~吸って~』おい一夏ぁ!?

 

 

「すぅーすぅーすぅーすぅーすぅー」

 

 

「吐いて! 吐いて良いんですよ山田先生ぇ!!」

 

 

「教師で遊ぶんじゃない!!」

 

 

バシィィン!!

 

 

「アダァ!?」

 

 

一夏の悪ふざけによって吐かずに永遠と息を吸い続ける真耶に吐く様に指示する箒。

そしてそんな一夏の悪ふざけに対して天誅を下す千冬。

 

 

「それで? 織斑先生に山田先生。慌てて来たと言う事は遂に来たのですか?」

 

 

「は、はい! 遂に来ましたよ! 織斑君の専用機が!!」

 

 

「そういう訳だ。大至急で最適化を行う急げ、アリーナの使用時間は限られているんだ」

 

 

「わ、分かりました!」

 

 

急いで先に行く真耶と千冬の後を慌てて追いかける一夏とそれに続いて箒とマドカも歩き出す。

5人が到着した所には『白』が有った。

 

 

「これが織斑君の専用機【白式】です!!」

 

 

「これが、俺の専用機……」

 

 

「すぐに装着しろ。時間がないから初期化と最適化は実戦でやれ。出来なければ負けるだけだ、分かったな?」

 

 

「あ、ああ、分かった」

 

 

千冬の中々の無茶ぶりに戸惑いながらも頷き、すぐにISを纏う一夏。

そんな一夏を心配そうに見つめる箒と少し考える様にしているマドカ。

ISを纏った一夏は確認するように手を開いたり閉じたり歩いてみたりなどをしている。

 

 

「動作は問題ないか?」

 

 

「あぁ、行けるぜ。千冬姉」

 

 

「おい、一夏」

 

 

「何だ? マドカ」

 

 

先程まで何かを考えていたマドカはそこで遂に口を開く。

カタパルトにISを乗せようとしていた一夏はマドカに向き直った。

 

 

「恐らくだが……セシリアは一週間前よりも圧倒的に強くなっている。気を付けろ」

 

 

「……あぁ! 分かっている」

 

 

マドカからの忠告を受けて一夏も気持ちを引き締め直しカタパルトにISを設置し、アリーナに顔を向ける。

千冬もそれを見て、アリーナへのゲートを開く。

 

 

「勝って来いとは言わん。()()()()()()()()

 

 

「勿論だ!! 行ってくる!!」

 

 

その宣言と共に一夏はピットからアリーナに飛び出す。

凄まじい加速と共に一瞬で青い空が見え、その中央に青いISを纏ったセシリアが悠然と佇んでいた。

 

 

ーーーーーーーーーー        ----------

 

 

「あの、何故雷光さんがこちらに居るのでしょうか?」

 

 

「クラスメイトがこれから戦うのに応援に来ては可笑しいのかな?」

 

 

一夏達が専用機が届くのを待っているのと同時刻、反対側に存在するピットでセシリアと雷光が対面していた。

セシリアは集中していたのか目を閉じていたが、雷光の気配を感じ取ったのか目を開けた。

 

 

「それにしても……一週間でよくここまでなったな。俺の気配にも気が付けた」

 

 

()()()の訓練のお蔭ですわ」

 

 

「お父様、ね。その呼び方は初めてで新鮮だな。大体はみんな親父かおやっさん呼びだからな」

 

 

「まぁ、それは光栄ですわね」

 

 

雷光とのやり取りが可笑しかったのかクスクスと笑うセシリアと新しい呼び方に少し嬉しそうにする雷光。

 

 

「さて、もうすぐ一夏との戦闘だが……必ず勝てとは言わない」

 

 

「何故ですか?」

 

 

「物事には絶対などという物は存在しないからだ」

 

 

「絶対は存在しない?」

 

 

「あぁ、不測の事態が起きる可能性も有る。だから俺は絶対に勝てとは言わない。ただ、【()()()()()】それだけだ」

 

 

「……分かりましたわ」

 

 

雷光からのアドバイスを受けたセシリアは頷き、そのままピットからアリーナに飛び立っていった。

彼女のその姿を雷光はただ見つめていた。

 

 

 

「待たせたな、オルコットさん」

 

 

「いいえ、専用機が先程ようやく届いたと織斑先生から通信で聞いておりました」

 

 

「そうだったのか? まぁ、それでも待たせたのは事実だ。すまなかった」

 

 

先にアリーナで待機していたセシリアに対して遅れた事に対して謝罪する一夏。

そんな一夏の様子にクスリと笑うセシリア。

 

 

「ふふっ、貴方はお父様が言った通りの人物の様ですわね?」

 

 

「お父様? それって……」

 

 

「織斑さん、試合が始まる前に言わなければいけない事が有りますわ」

 

 

一夏が聞こうとした時、セシリアは真剣な顔をして一夏に向き直る。

セシリアはそのまま一夏だけではなく、ピットの中にも聞こえる様に通信の設定を弄り頭を下げる。

 

 

『織斑さん、そしてマドカさん。一週間前に教室で貴方達に対する数々の無礼な物言い。本当に申し訳ございませんでした』

 

 

「オルコットさん……」

 

 

「セシリア・オルコット……」

 

 

『あの時、私はとても愚かな発言をして貴方達を傷つけてしまいました。あの様な発言、謝って済む問題ではありませんが……謝らせてください』

 

 

「……顔を上げてくれ、オルコットさん」

 

 

一夏からの呼びかけに恐る恐るといった風に顔を上げるセシリア。

彼女の目に飛び込んできたのは満面の笑みを浮かべた一夏の姿だった。

 

 

「ありがとう。謝ってくれて」

 

 

「正直さ、あの日にあんなことを言われて本気で腹が立ったよ。親父さん達の事をろくに知らない奴に一方的に馬鹿にされて親父さんが何も言わないのを良い事に言いたい放題言われてさ」

 

 

「でも、それを反省して謝ってくれたんだろ? だったら、俺は許すよ。マドカには後で直に謝って上げてくれ」

 

 

「えぇ、勿論そのつもりですわ」

 

 

「そっか……それじゃあ、後顧の憂いなく戦えるな!」

 

 

「はい! わたくしも、全力で戦わせて頂きます!!」

 

 

互いに構え、眼差しは自然と真剣な物になる。

その瞬間、試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

 

「さぁ、踊りなさい! このセシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

 

 

「踊るのは苦手なんで、お断りさせてもらうぜ!!」

 

 

ブザーが鳴り響くと同時にブルー・ティアーズから青白いレーザーが百式に向けて放たれた。

一夏はそれを咬み一重で回避し、武器の刀を構えながら突撃する。

 

 

「今のを回避するとは、流石ですわね」

 

 

「初撃は気を付けるべしって教わってるからなぁ!!」

 

 

そのまま刀を力いっぱい振り下ろす一夏だったがセシリアはそれを危なげなく回避するとブルー・ティアーズの宙に浮いた四基の非固定武装が射出する。

 

 

「貴方の剣は重く直撃すれば恐ろしい事になるでしょう。ですので、早々にフィナーレと参りましょう! やりなさい、ブルー・ティアーズ!!」

 

 

「それがマドカの言っていた、オルコットさんのISの切り札! 自動遠核兵器か!」

 

 

一夏の周囲を縦横無尽に動き回るブルー・ティアーズ。

その銃口は全て一夏をしっかりと捉えていた。

 

 

「避けれるので有れば避けてみなさい!!」

 

 

その宣言と共に全てのブルー・ティアーズから一斉にレーザーが放たれる。

一夏はその内の一つに剣を当て、レーザーをそのまま受け流す。

受け流されたレーザーは迫っていた他のレーザーに当たり包囲網に一つの穴が出来上がり、そこに向けて一夏はすぐさま加速して脱出する。

 

しかし、セシリアは焦ること無くそこに向けてスターライトmarkⅢの引き金を引く。

ブルー・ティアーズのレーザーよりも太いレーザーが一直線に一夏に迫る。

 

 

「っく!! まだまだぁ!!」

 

 

レーザーを視認した一夏は軌道はそのままに剣を水平に構え一気に切り裂く。

 

 

 

 

「レーザーを切り裂いた!?」

 

 

「アイツの腕前だったら不思議ではない。私も出来るからな」

 

 

「凄いですね、織斑君。乗り始めたばかりだとは思えません」

 

 

ピットではセシリアと一夏の激闘を観戦している面々の驚愕の声が上がっていた。

箒と真耶は一夏のその行動に驚き、息を飲んだ。

マドカと千冬は表面では冷静にしていたが、一夏の実力でそこまでの芸当が出来たことに内心では驚愕していた。

 

 

「だが……」

 

 

「不味いな、……オルコットの猛攻が止まらない」

 

 

「「え?」」

 

 

「良く見てみろ、普通は自分の攻撃を切り裂かれたら驚いて動きを止めるか焦りを見せるだろう?」

 

 

「だが、オルコットは驚く素振りも見せずに的確に一夏に対しての追撃を続けている」

 

 

千冬とマドカに言われ、箒と真耶は再びセシリアに対して注目し直す。

確かにセシリアは焦る様子もなくブルー・ティアーズとスターライトmarkⅢで一夏に反撃させる暇を与えない様に連続で攻撃を叩き込んでいる。

 

 

「ほ、本当です! 切り裂かれたりしても動じることなくそのまま追撃しています!」

 

 

「一夏を間合いに入れさせない様にしっかりと距離を取りながら的確に打ち込んでいる……」

 

 

「以前、公開されていた試合映像の時よりも圧倒的に強くなっている」

 

 

「えぇ、入試の時の様子からは考えられない程の実力です」

 

 

「この一週間に、一体何が有ったのでしょうか……」

 

 

「恐らくだが……親父殿が原因だろうな」

 

 

マドカのその一言で箒と千冬が納得した様に頷いた。

真耶だけは首を傾げていたが、千冬から話を聞いていたので何となくだが納得はした。

 

 

「真木さん、凄いんですね。私、自身無くしちゃいます」

 

 

「何故だ? 山田教諭」

 

 

「え?」

 

 

セシリアの成長を目の当たりにして少しだけ暗くなった真耶に対して首を傾げるマドカ。

真耶に真っすぐと目線を向けてマドカは嘘偽りのない言葉を告げる。

 

 

「貴方の教え方は私としても分かりやすい。親父殿だって貴方の教え方はとても分かりやすいと褒めていたぞ」

 

 

「そ、そうなんですか?」

 

 

「あぁ、親父殿があんな風に褒めるという事は貴方の教え方は本当に分かりやすいと言う事です」

 

 

「だから自信を持ってください。貴方はとても素晴らしい教師です」

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

マドカの言葉に籠った気持ちを受け取り、眼に涙を溜めてお礼を言う真耶。

そんな二人を見て口元を少しだけ上げて微笑む千冬。

 

 

(真耶は自信の無さが欠点だったが、この様子だと大丈夫そうだな)

 

 

「あぁ! 一夏ぁ!!」

 

 

3人のやり取りを眺めていた箒がモニターに視線を戻すとブルー・ティアーズとスターライトmarkⅢの一斉射撃を躱し切れずに直撃を受けて爆風の中に消える一夏の姿が映し出されていた。

 

 

「お、織斑君が!」

 

 

「……フッ」

 

 

「ま、マドカ?」

 

 

「気が付いたか、マドカ?」

 

 

「えぇ……ようやくですよ」

 

 

「あ、あの織斑先生? 一体どういう事ですか?」

 

 

「機体に救われたんだ。あの馬鹿者は」

 

 

千冬のその言葉の後、爆風が一瞬で消し飛んだ。

その中央には真っ白い機体に包まれた一夏の姿がそこには有った。

 

 

 

 

 

「その姿は……一次移行(ファースト・シフト)!? まさか貴方は、今まで初期設定だけの機体で戦っていたって言うのですか!?」

 

 

「時間が予想より掛かったけど、これでようやく()()()()()()

 

 

「……成程、その為に懐に入ろうとせずに避けるだけだったのですか」

 

 

「舐めていると思われたのなら謝罪する。これでもピットで約束したことが有ってな」

 

 

「いいえ、私も()()()()()とお父様に言われているので。ようやく、憂いなく戦えますわね」

 

 

セシリアは油断なく、ブルー・ティアーズをさっきよりも早く飛ばしスターライトmarkⅢを構え直す。

一夏も新たに変わった近接特化ブレード 雪片弐型(ゆきひらにがた)を構え、先程よりも更に加速されたスピードで一瞬で自分の得意とする間合いに入り込む。

 

 

「貰った!!」

 

 

「甘いですわよ!!」

 

 

一夏はセシリアの胴を狙い全力で剣を振り抜くが、セシリアはスターライトmarkⅢを放り投げ手に近接用武装であるインターセプターを呼び出しそれを受け流す。

そのまま返す刀で一夏の腕に向けてインターセプターを振り下ろすがこれも一夏は回避する。

 

 

「射撃だけだと思ってたけど……近接戦闘も出来るのかよ」

 

 

「近接戦は苦手ですけど、一切手を付けないという訳ではありませんわ」

 

 

「違いねぇ、な!!」

 

 

気合を入れなおした瞬間、一夏の雪片弐型が淡く光り出すが一夏はそれに一目する事も無くセシリアに猛攻を続ける。

インターセプターを使い、受け流すセシリアだが攻撃が掠った瞬間に自分のシールドエネルギーが異常に減らされた事に気が付き驚愕の表情を浮かべた。

 

 

(か、掠っただけでここまで減らされた!? 幾ら織斑さんの刀が重いからと言ってこれは異常ですわ!?)

 

 

「今度こそ、貰ったぁ!!」

 

 

「まだですわ!!」

 

 

止めを刺そうと突撃してくる一夏に向けてセシリアは奥の手の一つで有るブルー・ティアーズのミサイルビットを射出し2つのミサイルを発射する。

 

 

「げっ!?」

 

 

それを見た一夏は慌てて片方を切り裂き、もう一つを回避するがその瞬間に雪片弐型の光が消え試合終了のブザーが鳴り響いた。

 

 

【試合終了 勝者 セシリア・オルコット】

 

 

一瞬、何の事か全員が分からなかったが試合が終わったと理解したのか観客席に居た1組の全員は大歓声を上げた。

セシリアと一夏も暫くは呆然としていたが理解したのか互いに手を差し出す。

 

 

「何か良く分かんなかったけど、良い試合だったよオルコットさん」

 

 

「こちらこそ、勉強になりましたわ。それとセシリアと呼んでください」

 

 

「良いのか? じゃあ、セシリア。今度は俺が勝つ」

 

 

「ふふっ、今度も私が勝たせていただきますわ」

 

 

互いに全力で戦えたからか満面の笑みを浮かべ健闘を称え合う2人。

そんな2人をピットから見ていた雷光も満足気に頷いていた。

 

 

ーーーーーーーーーー        -------------

 

「で、何で俺は負けたんだ?」

 

 

「機体の特性を理解していなかったのが原因だな」

 

 

一夏の疑問をバッサリと切って捨てたのはISを纏ったマドカだった。

マドカのその言葉に良く分かっていない様な顔をする一夏。

それを見て溜息をつく千冬が先程の試合の終盤の一夏の画像をモニターに映し出す。

 

 

「見てみろ、お前の武装が光っているだろう?」

 

 

「え? あっ本当だ、何時の間に?」

 

 

「む、無意識に発動していたんですね」

 

 

「一夏……物事に集中しすぎると周りが見えなくなるのは相変わらずか」

 

 

あんなにも光っていたのに気が付いていなかった一夏に苦笑いする真耶と呆れる箒。

そんな面々を置いておいて千冬は話を続ける。

 

 

「織斑、お前のこの武装はISのバリアを無効化する機能がある」

 

 

「バリア無効化!?」

 

 

「そ、それって織斑先生がモンド・グロッソで優勝した時と同じ!」

 

 

「あぁ、全く同じ単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)が発現した」

 

 

「そ、それってあり得るんですか!?」

 

 

「あ、あの~単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)って何ですか?」

 

 

一夏と箒がおずおずと手を上げて質問する。

それを見てまだ授業で説明していなかったな、と思い至った千冬が簡単に説明する

 

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ) は、ISが操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する固有の特殊能力の事だ。普通だったら第二形態(セカンド・シフト)を経ないと発現しない大変珍しい物だ」

 

 

「それが織斑君のISで発現したんです。しかも一次移行(ファースト・シフト)で……」

 

 

「普通、同じ単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)が発現することは無い。無いのだが……」

 

 

「現にこうして起きていますからね。これは上が大慌てになりますね」

 

 

今頃、この映像を見ていたIS学園上層部が有れているだろうと想像した真耶は引きつった笑顔になる。

千冬も悩みの種が増えたと言わんばかりに頭を掻く。

 

 

「まぁ、ISには操縦者に危機が迫ると自動的に発動する絶対防御が有るが織斑の武装はその絶対防御を発動させる武器だと思え」

 

 

「ちなみに絶対防御は発動すると急激にシールドエネルギーが消耗するので戦闘時は途轍もなく驚異です」

 

 

「つまり、防御力を無視してそのままの威力を相手に叩き込める武装という事だ」

 

 

「でも、それって……」

 

 

「あぁ、一歩間違えれば相手が死にかねない力だ」

 

 

真剣な顔でそう告げた千冬の言葉は一夏に重くのしかかった。

それは自分が手にした力に恐怖を持っていることが見て取れた。

 

 

「……恐ろしくなったか? その力が」

 

 

「あぁ……力の使い方を間違えてしまったらって思うと」

 

 

「それで良いんだよ」

 

 

恐怖に飲まれかけた一夏に断言するマドカ。

一夏だけではなく箒や真耶、そして千冬もマドカに向けて視線を送る。

 

 

「恐怖を抱くと言う事はお前がその力がどう言う物かをしっかりと理解していると言う事だ」

 

「自分の力に恐れを抱かぬ者はその力を振るう資格のない愚か者だ」

 

「恐怖を持たない者は早死にする。だが、恐れるだけではなくその恐れを恥じろ、そしてその時に感じた屈辱も忘れるな。一欠片の勇気を持ち続けろ、そうすれば、お前は必ず強くなって立ち上がれる」

 

 

マドカのその言葉を聞いて一夏はハッとしたように顔を上げた。

その顔にはもう恐怖は無く自信が満ち溢れていた。

 

 

「あぁ、俺は自分の力を恐れるだけじゃない。その時の恐怖と屈辱を力に変えて見せる!!」

 

 

「ふっ、あぁ期待しているぞ。一夏」

 

 

「任せろ!!」

 

 

それだけ言うとマドカは再び前を向き、アリーナに出撃して行った。

残された面々は互いに頷いてモニターに注目する。

彼女の勇姿を自分たちの目に焼き付ける為に。

 

 

 

 

 

「……待って居ましたわ。遂に貴方と戦えるのですね」

 

 

「あぁ、待たせた。楽しみにしていたぞ、お前と戦えるのを」

 

 

「それは私もですわ。貴方の余裕を崩せる時を待って居ました」

 

 

先程とは打って変わって、好戦的な笑みを浮かべているマドカと先程よりも気を引き締めたセシリア。

互いに試合開始のブザーを今か今かと待ちわびている。

 

 

「……貴方に対する謝罪は、試合が終わってから直接する事にしますわ」

 

 

「あぁ、試合前にされては興が冷めてしまう。それは嫌だろう? お互いに……」

 

 

「そうですわね。その通りですわ」

 

 

その瞬間、試合開始のブザーが鳴り響く。

セシリアはその瞬間にブルー・ティアーズを解き放ち、マドカはその手に1つの刀を呼び出した。

 

 

「行きなさい!! ブルー・ティアーズ!! 貴方に相応しき狩るべき相手です!!」

 

「『起きろ! 浅打(あさうち)!!』久し振りに喰い応えが有る相手だ!!」

 

 

ブルー・ティアーズが水を得た魚の様に素早く動くがそれよりも速くマドカは一瞬でセシリアの懐に入り込む

スターライトmarkⅢを盾変わりに構え、マドカの一閃を何とか退けるが勢いを殺せず、セシリアはスターライトmarkⅢを手放してしまう。

勿論、そんな大きすぎる隙を見逃すマドカでは無くそのまま追撃を行う。

 

 

「懐に入り込まれてはご自慢のブルー・ティアーズも使えないぞ! さぁ、どうする!?」

 

 

「っく! まだまだぁ!!」

 

 

鋭い連撃を受けるが何とか受け流したりするが、捌き切れない攻撃によってセシリアのシールドエネルギーがみるみる減っていき、観客の誰もがマドカの勝ちを確信し始めた。

マドカも早々に決着をつける為に更に攻撃の速度を上げようとしたその瞬間、マドカの眼前に閃光が走りISのシールドエネルギーが減り始める

 

 

「何!?」

 

 

「油断したのはそっちですわ!!」

 

 

動揺したマドカの胴に向けてセシリアの渾身の回し蹴りが直撃し、マドカはそのまま吹き飛ばされる。

それに対してブルー・ティアーズが縦横無尽に駆け巡り連続で攻撃を当て始める。

レーザに当たり、マドカのシールドエネルギーもドンドンと減るが体勢を立て直したマドカはブルー・ティアーズからの攻撃を受け流し、切り裂き的確に攻撃を捌いて行く。

 

 

「ブルー・ティアーズは確かに単体では脅威だが、慣れてしまえば道と言う事は無い!」

 

 

「でしたら、これなんてどうですか!?」

 

 

未だにブルー・ティアーズからの攻撃を捌くマドカに対してセシリアは突撃する。

その行動に観客達やピットに居る面々、そして戦っているマドカですら驚愕した。

スナイパーとしての利点、距離を自分から詰めるという愚行に誰もが理解できていなかった。

ただ1人、セシリアにその戦法を教えた男を除いて。

 

 

「受けなさい! これが私の新しい戦法です!!」

 

 

宣言と共にセシリアの両手には小型のサブマシンガンが装備されておりマドカに向けて発砲する。

先程の閃光の正体を理解したマドカはその攻撃を腕だけで防ぐがその背後をブルー・ティアーズで撃ち抜かれる。

 

 

「っぐ! まさか、ここまでやるとは」

 

 

「侮りましたわね? 戦いはまだここからですわよ!」

 

 

距離を詰め、背後はブルー・ティアーズが狙い前方はサブマシンガンを連射するセシリア。

マドカはブルー・ティアーズを無視し前方のセシリアに向けて浅打を振り下ろす。

それを最小限の行動で回避したセシリアは意趣返しとして裏拳をマドカの顔面に叩き込む。

 

 

「ガハァ!?」

 

 

「おまけです!!」

 

 

裏拳を放ち、そのままサブマシンガンを叩き込む。

武術と銃器の扱いを合わせたガン=カタに押され始めるマドカ。

再び分からなくなり始めた試合に熱狂の声を上げる観客達。

それはピットにいる一夏達も同じだった。

 

 

「スゲェ……二人とも」

 

 

「はい、マドカさんの攻撃も捌き方も凄いですが」

 

 

「慢心を無くし、勝利に貪欲になったオルコットも目覚しい成長だ」

 

 

「あ、あの動きは……何なんですか? 銃火器を撃ちながらの格闘など」

 

 

「あれはガン=カタという戦闘スタイルだ。今までのアイツだったら絶対に取る筈の無い戦法だ」

 

 

「という事は」

 

 

「あぁ、恐らくだが……親父さんの仕業だろうな」

 

 

一夏は苦笑いしながらも嬉しそうな顔をしていた。

それは、自分が幼い頃から知っている雷光の変わらないお人よしさに対してだったが。

 

 

「あ”ぁ”~俺もあそこで戦いたいなぁ!」

 

 

「お前はもう少し、機体に慣れてからだな。それに時間も無い」

 

 

「え? でもこの後って親父さんの番じゃ?」

 

 

「真木さんは辞退したよ。専用機の調整が間に合わなかったそうだ」

 

 

「えぇ!? 何で!?」

 

 

「それは本人に聞くと言い。少し……いや、かなり怒っていたがな」

 

 

「親父さんが怒るって……また身内に何か有ったのかな?」

 

 

「それは後で聞け……む?」

 

 

千冬はそれだけ言うとモニターに注目するがマドカの様子を見て面白そうに笑う。

それに釣られて一夏や箒、真耶もモニターに目を向けるとマドカの持っている武器が変わっていた。

 

 

「あれって?」

 

 

「マドカの奴……本気になったぞ」

 

 

「どういう事ですか?」

 

 

「忘れたか? マドカはこう言った筈だ。『()()()()()()()()()()()()()()()()()』と」

 

 

「それって、つまり……」

 

 

「あぁ、オルコットを認めたという事だろう」

 

 

教室でのマドカの言動を思い出し、千冬のその発言に全員が嬉しそうに頷く。

それはクラスメイトの成長と今後のライバルになる新たなる存在の誕生を喜ぶ様だった。

 

 

 

 

 

「……ここまでやるとは、予想外だったよ」

 

 

仕切り直すかの様に距離を取り浅打を消すマドカ。

その様子を攻めずにじっと見つめ待つセシリア。

お互いに半分を切ったシールドエネルギー、だからこそセシリアは慎重にマドカを見定める。

 

 

「一週間前の発言を取り消そう。今のお前は……()()

 

 

「あら、嬉しいですわね。ようやく認めて貰えた様ですわ」

 

 

「あぁ、だからこそ……私も全力を出させてもらう!!」

 

 

両方の腕を前に掲げ、マドカは目を開き大声でその名を呼ぶ!!

 

 

水天逆巻(すいてんさかま)け『捩花(ねじばな)』!!」

 

 

掲げられたマドカの手に水が渦を巻き伸び、その水で出来た二振りの刀が出現する。

その刀を見たセシリアは何かを感じ取ったのは目を離さない様に再び距離を取る。

が、その瞬間に自身の背中に何かが突き刺さった。

 

 

「がっ!? な、何が!?」

 

 

()()()()()()()

 

 

「はっ!」

 

 

背中に意識を向けた瞬間にマドカは両方の腕の刀を振り下ろす。

が、その時の刀身は先程よりも明らかに伸びており回避するにしても範囲が広すぎた。

本能的に下に向けて瞬時加速(イグニッション・ブースト)で避け、マドカに向けてブルー・ティアーズの射撃とサブマシンガンによる射撃を試みるセシリア。

 

 

「無駄だ、その攻撃では捩花は突破できない」

 

 

その宣言と共にマドカの周囲に水で出来たバリアの様な物が出現する。

レーザーがそのバリアに触れた瞬間、マドカのISのシールドエネルギーが僅かだが回復しセシリアは目を剥く。

 

 

「その水は……エネルギーを吸収するのですか!?」

 

 

「吸収できる……が、出力が大きすぎると突破されるのが弱点だがな」

 

 

「でしたら!!」

 

 

ブルー・ティアーズの残存器にマドカに向けて攻撃させるがマドカの周囲にあるバリアを破るには至らない。

それでもめげずに攻撃するセシリアに止めを刺そうとマドカは両手に握った捩花を1つに束ねた。

 

 

「私に捩花を使わせたのだ。それは誇っていい、だから……もう終わりだ」

 

 

せめてもの手向けにとマドカは全力で振り下ろす。

その瞬間、セシリアのシールドエネルギーは0になり試合開始のブザーが無情にも鳴り響いた。

 

 

【試合終了!! 勝者、織斑マドカ!!】

 

 

観客の大歓声を背に二人は向かい合う。

その顔はとても晴れやかで一週間前までいがみ合っていた2人とは思えない物だった。

 

 

「完敗ですわね」

 

 

「……何を言っている? 私の予想よりも圧倒的に強くなっていた。むしろ、評価を覆された私の負けの様な物だ」

 

 

「ふふっ、お上手ですわね」

 

 

「冗談では無いんだがな……」

 

 

「……マドカさん、改めて。一週間前での貴方のお父様に対する数々の無礼な物言いと貴方に対する侮辱。謝らせてください」

 

 

「……一度だけだ。二度目は本気で叩き潰すぞ?」

 

 

「えぇ、肝に命じますわ」

 

 

「なら良い。さぁ、試合は終わったんだ戻るぞ?」

 

 

それだけ言うとマドカはさっさと自分のピットの方に帰還して行った。

セシリアもそんなマドカに対して頭を下げて雷光の待っているピットに帰って行った……

 

 

ーーーーーーーーー        ------------

 

 

「お疲れ、マドカ。凄かったな! お前の武装」

 

 

「あれは中々の物だな。刀身が伸びていたのは一体どんな理屈なんだ?」

 

 

「あぁ、それは後で教えるから少し休ませてくれ」

 

 

マドカは少し不機嫌そうに頬を膨らませてISを解除するとそそくさと控室の方に歩いて行った。

そんな様子に首を傾げる一夏と箒。

千冬だけは何やらニヤニヤと笑っていたため、一夏は質問する。

 

 

「なぁ、千冬姉。マドカ、なんか不機嫌じゃなかったか?」

 

 

「それはな……試合終了前にマドカはオルコットに一杯食わされたんだ」

 

 

「どういう事ですか? 織斑先生?」

 

 

「何だ、気が付かなかったのか? オルコットは捩花に斬られる寸前に閉まっていたスターライトmarkⅢを展開して最大出力で撃ち抜いたんだ。バリアは突破出来たが威力は墜ちていて仕留めきれなかったみたいだがな」

 

 

「えぇ!? あの一瞬で!?」

 

 

「あぁ、最後に一撃を喰らってしまって悔しかったんだろうな」

 

 

「そういう事か……何というか、可愛いな。マドカって。箒もそう思わないか?」

 

 

「ふふっ、あぁ。案外、負けず嫌いなんだな。マドカは」

 

 

マドカの不機嫌な理由を知り可笑しそうに笑う一夏と箒。

 

 

 

 

「お疲れ様、セシリア」

 

 

「ありがとうございます。お父様」

 

 

セシリアの方のピット、そこでは行く時と同じように待っていた雷光とスッキリとした顔をしたセシリアが向かい合っていた。

 

 

「強かっただろう? あの二人は」

 

 

「えぇ、お父様の言った通りの人達でしたわ」

 

 

「そういうセシリアだって、一週間前よりも強くなっていたぞ。あのマドカに武装を使わせたんだからな」

 

 

「それ、マドカさんにも言われましたわ」

 

 

「おぉ、やっぱりそうか」

 

 

カラカラと笑う雷光と口元に手を当てて微笑むセシリア。

少し笑うと雷光はセシリアの頭に手を当てて撫でる。

 

 

「良くやった……特に最後のマドカに一矢報いたのは素直に凄いと思ったよ」

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

「これからも、精進しよう。俺も、みんなも一緒なんだから」

 

 

「はいっ、はいっっ!!」

 

 

悔し涙を流すセシリアとそれを慰める雷光。

暫くの間、2人はそうして過ごしていた。

こうして一年一組のクラス代表決定戦は幕を閉じたのだった。




織斑マドカの専用機

【浅打】

マドカの専用機の名前にして武装の一つの刀の名前。
名前の由来は「何者にもなれる無限の可能性」という意味が込められている。
武器の性能としてマドカの力を制限するリミッターとしての役割も有りその気になればこの刀から剣気を放つことも出来る。
この刀での必殺技は斬撃を飛ばす技、名称は無斬(むざん)
元ネタはBLEACHの斬魄刀、浅打



【水天逆巻け 捩花】
マドカの切り札の一つである二振りの水で出来た刀。
この武装の真骨頂は空気中の水分などを利用して使用することも可能な点でISから放出されるナノマシンにより制御する。
敵武装からの攻撃をある程度吸収することも可能だがそれの許容量はあまり多くは無い。
セシリアの背中に刺さったのは空気中の水分から作った刀でこれは遠隔操作兵器と同等の物である。

元ネタはBLEACHに登場する斬魄刀 志波海燕の使用する捩花
尚、元ネタではトライデントだが今作では刀に変更している
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