窓から外の大通りを眺める。外は祭りでもやっているのか、華やかな装飾と大勢の人々が行き来している。
中でも人目を引くのが、華やかな衣装に身を包んだ主役の女性達だ。
「へー、華やかで綺麗だな、あんな風なのも可愛いなぁ」
キノが祭りの衣装に身を包んだ所を想像して、思わず一人で微笑む
「ねぇ、今誰を見てましたか?」
留守にしていたキノがいつの間にか、シオンの後ろに立っており俯きながら声をかけた。
キノはシオンをじっと見つめる、その目に光は無く深く暗く淀んで見える。
「キノさん?」
不審に思ったシオンはキノに近付くと、いきなりぐいっと両手で頬を挟まれ顔を近付けられる。照れる暇もなく、馬乗りになりマウントポジションを取られる。
「シオンは僕の者でしょう?約束したじゃないか!
僕がシオンを守る、シオンが僕を守ってくれるって。
ずっと一緒に居るって!」
「キノさん落ち着いて、僕は…」
「聞きたくない!」
キノは両耳を塞ぐと大声で叫んだ
「聞きたくない、他の女の子の話なんて聞きたくない。
シオンには僕が居れば良いんだ!僕がシオンを守るからだからシオンも僕だけを見てよ!」
「キノさん…」
「好きなんだ、シオンを初めて見た時から!
何をって思うかも知れないけど、この気持ちは本当なんだ!」
シオンはキノにベッドに押さえ付けられたまま、おとなしくキノの話を聞く。
「シオン大好きなんだ、愛してる。
誰にも渡さないから、ずっと一緒に居るから」
そっとシオンの顔に影がかかる、抵抗する間もなくキノにキスをされる。
息継ぎの合間にようやく、言葉を発する
「ちょっとまって…」
「待たない」
「キノさん誤解です!」
「何も誤解なんか無いよ、君を絶対離さないから
例え祭りの女の子に惹かれても、他の誰に惹かれても。
シオンだけは絶対に譲れないんだ!」
「僕が好きなのはキノさんです!」
「へ?」
マウントポジションのまま、キノはポカンと間抜けな顔を晒していた。
・・・・・・・・・・・・・・・
お互い机を囲んで椅子に座り、落ち着いて話を始める。
「じゃあ全部、僕の勘違いだったの…」
キノは項垂れて両手で顔を覆う、羞恥からか手からはみ出して居る顔や耳、更には首まで真っ赤になっていた。
「はい、初めから僕はキノさんの事を想像して、可愛い服も似合うと…だから待って下さいと何度も、うぅ」
シオンは恥ずかしそうに視線を反らす
「あ…はは…は、ごめんなさい
でも、さっきの告白は本心ですから」
「僕が好きだと言う事が…ですよね?」
「はい、愛してます」
「ありがとうございます。僕がキノさんを守る約束も勿論覚えていますし、僕もキノさんが好きです」
その瞬間にキノさんの目が、さっきのどす黒い目に変わる。
空気さえも凍りついて居る様に感じる。
「シオンも愛していますよね、ねぇ?」
「キノさん?」
「僕の事愛してますよね?そうですよね」
シオンが答える間もなくキノに、矢継ぎ早に話しかけられる。
「キノさん落ち着いて下さい、僕もちゃんと愛してます。
キノさんがあの国から、僕を救い出してくれた日から僕はキノさんの物です」
「シオンそれは恩を感じてとかじゃ…」
キノの顔が曇るが、直ぐ様シオンが否定する。
「それは違います、恩と好意の違い位僕にも分かります。僕もキノさんを愛してます」
「シオン!」
キノさんは机に片手を付くと、見事な体捌きで机を乗り越えて抱き付いて来た。
「シオン大好き、愛してる。なんだ両思いだったんだね」
「キノさん、今机を…どうやって動きました?!」
「そんな事よりも、両思いなら遠慮する事は何も無かったんだね。」
「キノさん…?」
シオンは嫌な予感がして思わず仰け反る。
「離さないよ、両思いだ。
えへへ、それじゃあ頂きます」
「頂きますって!待ってキノさん!」
「これからはキノって呼んで下さいね」
この後何が有ったのかは二人だけの秘密だ。
・・・・・・・・・・・・・・・
次の日の朝
キノが目覚めると同じベッドの、隣のシーツにシオンがくるまっていた。
「うぅ…待ってって言ったのに、酷いよキノさん」
メソメソとわざとらしく、顔を覆い泣き真似をしている。
「おはようシオン、それに呼び方はキノでしょ?」
泣き真似をしているシオンとは正反対に、キノは朝からニコニコで今にも鼻歌でも歌い出しそうだ。
「僕の話は流すんですね」
「流すんじゃ無いよ?恋人同士のじゃれあいだよ。
僕はこれからお風呂に入るけど、シオンはどうする?一緒に入る?」
体に何も纏っていないキノが、ベッドの上で大きく伸びをする。
急いで視線を反らしたシオンは、大声で否定した。
「キノの後で入ります!」
「えへへ冗談だよ、まぁ半分本気だったけどね」
クスクスと笑いながら、パチンとウィンクしたキノが、お風呂場に消えて行く。
両思いだと分かった途端に、キノからこうも遠慮がなくなった。
これから先一体どうなるのかと、シオンは頭を抱えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おい、お前お前だよ!」
シオンとエルメスで二人乗りしていると、乱暴に声を掛けられた。
「なんでしょうか?僕に何か用事でしょうか?」
「え?いやあんたじゃ無くて、あいつの事ですよ」
シオンを指差すと男は近寄って来た
「お前あの国はどうしたんだよ!」
「あの国はもう終わった国なんです、僕も旅に出る事にしました」
「てめぇ育ててもらった恩はどうするつもりだよ!
まさか、恩を忘れてるんじゃねぇだろうなぁ!」
シオンと男が言い合って居ると、間にキノが入る。
「待って下さい、彼は僕が貰いました。
名前を着けて、僕の者にしました文句が有るなら、僕にお願いします」
「ぐっ…」
男は悔しそうに言葉に詰まる、シオンは男に毅然と言い返す。
「僕は育ててもらった恩返しは、この数年国を一人で守って十分に返したつもりです。
これからは名付け親のキノさんに、恩を返して行くつもりです。」
「お前本当に今まで、国を一人で守ってたのかよ…」
男は唖然と呟いた、本当に国を守って居るとは思わなかったのだろう。
シオンを捨てる口実に国民達がついた適当な理由だったのだろう。
「分かったよ、絡んで悪かったな」
男はそう言うと足早に去っていった。
「シオンが答えなくとも、僕が追い返したのに。
大丈夫でしたか?」
「ありがとうキノ、キノのお陰で自信がついたんだ。
名前が有るってこんなに、自信が持てるんだね。」
にこりと微笑みキノの頭を撫でる。
「シオン格好いいです、宿屋に戻りませんか?」
「キノ全てが台無しだよ」
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