剣努重来 〜非才剣士の成り上がり〜   作:嘯風弄月

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 暇つぶしにでもどーぞ。ちなみに今回からは一人称も使います。
 
 ツンデレ界最高のヒロインの爆誕だぜ!

 ちなみに分割いたします。思いの他書くことが多くなりそうなので。


剣王 1

 あー疲れた… ようやく畑仕事も終わって夜になるぜ。はぁ、父ちゃんも母ちゃんもすぐ怒りすぎだっての… いや、考えるのはよそう… 気疲れするだけだ。

 

 前向きに行動しなくちゃな!今日は祭りの日なんだ!あー…レナと一緒に行動しないとか… うぐぐっ… はぁ… あいついるといつも口煩いからなぁ… 母ちゃんが2人いる感じがして嫌な感じだぜ… けど、まあ何とかなるか!

 

 

 村の中央に大きな篝火が灯された。これから祭りが始まるらしい。これから色んな食べ物が沢山並ぶんだ!その中にはもちろん肉がある!肉なんてこういう日ぐらいしか食べられないからな!たっぷり食べてやる!

 

 

 「肉ばっかり食べる気でしょ、アルド」

 

 「げぇっ!レナ!」

 

 「んふふーちゃーんと制限させてもらうからね!」

 

 「おいおいおい!そりゃないぜ!こんな日ぐらいしか食べられないんだぞ!」

 

 「あら、食べられるだけいいじゃない。沢山食べたいなら私と別行動して食べにでも行けば?」

 

 「畜生…お前と別行動したら祭りにすら参加出来ねぇじゃねぇか…」

 

 「そういうこと!大人しく従ってもらうからね!あ、村長からお話があるみたいよ!」

 

 

 ゆっくりと杖をつきながら歩く村長。篝火の近くに着くとゆっくりと口を開いた。

 

 

 「皆の者、ご苦労であった。我が村は幸いにも作物に恵まれた。それは偏に皆の頑張りがあったからであろう。今日はその疲れをしっかりと癒し、また次に備えるとしようじゃないか。堅苦しい挨拶は程々にして、皆杯を持て」

 

 手元にある杯を皆持ち立ち上がる。

 

 「乾杯!」

 

 『乾杯!!』

 

 

 そうして大人達はお酒を、俺たちはジュースを一気に飲む!

 

 

 「くぅ〜たまんねぇな!」

 

 「ちょっとおじさん臭いわよ…」

 

 「いいだろ別に!お、あのステーキ美味そうだ!俺取って「ダメよ」ぐぇっ!」

 

 急に首元掴みやがって!呼吸出来なくなったわ!

 

 「何しやがる!」

 

 「私が取ってくるわ、アルドはここでじっとしてなさい」

 

 「うぐぐぐ」

 

 何もかも管理されるっていうのか…辛いぜ…

 

 

 「ほら、取ってきたわよ」

 

 「肉少なくない?野菜ばっかじゃない?草ばっかだよね、これ?」

 

 「あら、そんなことないわよ。ちゃんと中心に迫力があるようにお肉を持ったもの」

 

 「いや、これ…野菜で高さ増してるよね。肉の下から緑が見えてるよ、これ」

 

 「食べなさい」

 

 「いや、もっとお肉を増して…」

 

 

 

 

 「た べ な さ い」

 

 

 

 

 「ふぁい…」

 

 

 ムシャムシャと野菜を貪る。歯切れの良い音を立てる新鮮な野菜。これだけ聞くと美味そうだけど、これがまた苦いんだ… 周りの大人はこれが良いって言うけど俺にはよくわからんね。貴重な肉だ…ちゃんと考えて食べなきゃな…

 

 

 「ふふ、美味しい?」

 

 

 「まず…」

 

 

 

 

 

 「お い し い ?」

 

 

 

 「おいふぃいれす…」

 

 

 

 「ふふ、なら良かったわ」

 

 

 

 ニコニコと憎たらしい笑みを浮かべるレナ、その顔がただひたすらに憎たらしい。こいつが男だったらスネに棒をぶつけにいくぐらい憎たらしい。

 

 

 「ねぇ、アルド。食べ終わったらでいいの。少し私について来て欲しいわ」

 

 「ん?よくわかんねぇけどいいぞ。何するんだ?」

 

 「ふふ、それは秘密よ!」

 

 

 先程とは違う可愛らしい笑み、篝火に照らされその顔がいつもより可愛く見えた。そんな事を思ってしまった自分が何故か恥ずかしく、レナを視界から外す。

 

 「お、おう…そうかよ」

 

 「ん?どうしたのそっち向いて?何かあった?」

 

 そう言い徐々に顔を近づけるレナ。

 

 「うぉあ、あ… な、何でもねぇから!何でもないんだからな!ほら、食べ終わったから!食べ終わったから連れてけよ!」

 

 「ふふ!変なの!それじゃあこっち来て」

 

 そう言い村の北の森の方角に走り出すレナ。遅れまいと俺も走り出す。

 しかし村から出て少しした所で、草を掻き分けるような音が聞こえた。

 

 

 「今のは?いや、気のせいか…?」

 

 

 気のせいか、それとも野生動物だと思いそれを見逃した。それよりも早く追いかけなきゃな!

 

 

 

 

 

 アルドは見逃してしまったのだ、その正体を。草木を掻き分けるほどの大きな音を鳴らせる動物など、村の近くにはいないと言うのに。

 

 

 

 

 そしてこれがアルドの命運を決める出来事になった。

 

 

 

 

 

 

 走る事数分、森の奥にある池の前に着いた。

 

 「ここは…池?何でわざわざ池に… あっ」

 

 「見て、ほら。池の中に月が浮かんでる」

 

 その光景に息を飲む。普段であれば何もない普通の池に、綺麗な満月が浮かんでいたからだ。

 

 「ね、ここ座って」

 

 そう言いレナが指したのは倒木の上。ここに座れという事だろう。

 

 「あ、ああ…」

 

 「それじゃあ私も失礼するね」

 

 そしてレナは俺の隣に座った。風がふわりと彼女の匂いを運ぶ。普段の活発な姿との違いにドキドキしてしまう自分がいた。

 そんな事を考えていたら突如レナが何かを差し出して来た。

 

 「これね…オルゴール。このオルゴールはね…その…」

 

 ゆっくりとネジを回し、そして離す。この風景にふさわしい幻想的で、甲高い音が鳴り始めた。

 

 「お、おう… いい曲だな…」

 

 「私のお父さんが、お爺ちゃんが、そのお父さんが… お母さんを口説くために使ったオルゴールなんだ…」

 

 「てことは結構古いオルゴールなんだな」

 

 「そうなの… そ、それでね!いつも満月だったんだって!」

 

 「そりゃ素敵だな」

 

 どうやらレナの一族はロマンチストが多いらしいな。随分と洒落た事してるよ。

 

 「あのね…その、あのね!」

 

 「うぉ!急に大声出してどうしたんだよ!」

 

 顔を真っ赤にして涙目にしながらこちらを見つめるレナ。潤んだ瞳、

上気した頬、いつもよりしおらしいレナから視線を外すことが出来なかった。

 

 

 「ア、アルドのことが…」

 

 

 「あ、あぁ…」

 

 

 

 「私アルドの事が好きなの!」

 

 

 「え…」

 

 いや、それは…え、待ってくれ…

 

 「ア、アルドはどうなのよ!?」

 

 「お、おおおれは!おれは…き、きらいじゃないけど…」

 

 「ほ、本当に?」

 

 「こ、小うるさいと思う時もあったりするけど…嫌いじゃない…そもそも嫌いだったら関わってない…ぞ」

 

 「え、えへへ… ほんとはね、アルドといっぱいお話しがしたいから、その、構ってたんだけど、嫌われてないなら…嬉しいな…えへへ!」

 

 「な、何だよ…」

 

 「だから、大きくなったら絶対に結婚しようね!」

 

 「…いつかな」

 

 「うん!私が言いたかったのはそれだけ!そろそろ戻ろっか!」

 

 「ああ…そうだな」

 

 こいつと婚約か… まあ、悪い気は、うん… 少し嬉しいかもな…こうやって死ぬまで何事もなく過ごしたいもんだ。そう思い帰路に就く俺たちだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーー

 

 

 

 

 

 「ねぇ…なんか村の方明るすぎない?」

 

 「そうか?…いや、確かにおかしい。あまりにも明るすぎる!行きは此処まで明かりは無かったはずだ!村で何かが起きてる!」

 

 「早く行こう!」

 

 「ああ!」

 

 村の方角からの明かりが池の道中を照らす。これはあまりにもおかしい。光度が高すぎる。

 

 さっきまでの事など忘れて無我夢中で走る俺たち。そして村に着く手前、その原因を目の当たりにすることとなった。

 

 

 「嘘…村が…燃えてる」

 

 「ひでぇ…いったい何が…」

 

 燃え盛る村を茫然と眺める。

 

 「いつまでも眺めてたらダメだ!人を探すぞ!レナ!」

 

 「そ、そうだね!」

 

 さっきまでは村の中心に人が集まっていた、ならそこに行けば何らかの情報が得られるはずだ!

 

 煩わしいほどに鼓動を刻む胸を、抑えながら走る。とても嫌な予感しかしない。

 

 そうして着いた広場には人が居た。それはかつて生きていた、人だったものだ。

 

 

 

 「レナ!見るな!」

 

 「え?何?」

 

 「頼む、見ないでゆっくりと後ろに下がれ」

 

 「わ、わかったわよ…」

 

 それらは皆あちこちを、光のない目で見つめ続けていた。夥しい程の流血、ねじ曲がった首に、嗅いだことのない焦げた異臭。その中には父ちゃんも母ちゃんも居た…

 

 正直言えば俺も辛い… 吐きそうだ…ただ明らかに此処はやばい。何とかしてレナを連れて逃げなきゃ行けない。

 

 

 「親分!ガキが2匹生きてましたぜ!!」

 

 煙と火でよく見えなかったがどうやら奥に人がいたらしい。間違いない、盗賊だ。

 

 「クソッ!レナ!逃げるぞ!盗賊だ!殺される!」

 

 「う、嘘でしょ…何で盗賊が…」

 

 「知らねぇ!クソッ!クソォ!クソがァ!皆殺された!殺されちまったんだ!次は俺らだ!」

 

 「わ、私の、パパと、ママも?」

 

 「ああ、そうだよ!だから逃げるぞ!守ってくれる人なんていねぇんだ!」

 

 「う、嘘よ…そんなこと…」

 

 

 そう言いレナは歩き出してしまった。俺だって認めたくない。認めたくねぇんだよ!けど!それ以上に!

 

 

 

 

 「俺はお前を死なせたくねぇ!頼む…辛いだろうけど…俺と一緒に!生きてくれ!俺は!お前が好きだから!」

 

 

 

 「う…うわぁぁぁん!一緒に、一緒に生きよう!」

 

 「へっ…泣きながら返事すんなよ…」

 

 

 とは言え厳しい状況だ…減速しちまったからちょっとずつ奴らが近づいてる。俺たちの速さじゃ村を出てもすぐ捕まっちまう。どうすれば…どうすればいい!

 

 「アルド!村長の家!地下通路よ!」

 

 「そうか!扉を頑丈にして地下通路を通れば!俺ら2人ならまだしも大人は簡単には通れねぇ!行くぞ!」

 

 幸いにも村長の家は池の方角だ。このまま向かえばすぐに着く!

 

 

 

 「頼む!開いていてくれ!」

 

 そう願い扉に手をかけるが開かない。

 

 「クソ!こんな時に…」

 

 「鍵を壊そうよ!」

 

 「けど…そうしたら…」

 

 「大丈夫よ!私たちがすぐに通路を通り切れば追いつけないはず!」

 

 「ぐっ…そうだな!せーのでぶつかるぞ!」

 

 「うん!」

 

 「せーの!!」

 

 大きな音を立て開く扉。扉はそれ程、頑丈では無かったらしい。思いの外簡単に壊れた。どちらにせよこれをバリケードにしたところで期待は出来なさそうだな。

 

 「よし!行こうぜ!」

 

 

 

 後ろを振り返りレナに声を掛ける。すると急にレナが俺に倒れ込んできた。

 

 

 「お、おい!どうしたんだよ!急に…よ」

 

 

 

 「うぁ…い、いたい、よ…」

 

 

 レナの背中には矢が刺さっていた。結んでいた髪が矢に切られ、リボンが床に落ちる。

 

 

 「おい…レナ?レナ!?しっかりしろ!?聞こえるか!?クソ!」

 

 

 こうなったら運びながら逃げるしかない。そう思いレナを抱えようとした時、レナが話しかけてきた。

 

 

 「置いて、いって…」

 

 

 「置いてけだと!?ふざけるなよ!絶対助けるって!一緒に生きるって決めたんだぞ!?」

 

 

 「もう、わたし、は、しぬから…」

 

 

 「何で…何で庇ったんだよ!?俺だったら大丈夫だったかもしれないんだぞ!」

 

 

 「だって…すきなひと、には、きずついて、ほし、く、ないもん…」

 

 

 「そ、それは俺だって同じだ!お前まで死んだら…俺はどうすりゃ良いんだよ!」

 

 

 「これを、もっていって…」

 

 

 そう言いレナが手渡してきたのはレナの血で汚れたリボン、そしてオルゴールだ。

 

 

 

 「わたしを、みんなをわすれないで… おねがい、いきてほしいの…」

 

 

 「…くっ」

 

 

 「あるどは、たいせつ、なひと、だから…しあわせに、いき、て…」

 

 

 「う、うぉぉぉぉぉお!!!」

 

 

 ごめん、ごめん…俺だけ生きてごめん… ちゃんとお墓作ってあげられなくてごめん… 必ず!お前の分も生きてやる!絶対に忘れたりするもんか!

 

 

 だから今は、少しでも遠くに逃げなきゃいけない!

そう思い地下通路のドアを開け急いで逃げ込む。あの状況下で矢が飛んでくるんだ、すぐ捕まるぐらいには近い!上からも音が聞こえる!奴らが来たんだ!

 

 「逃げるんだ!逃げて逃げて逃げて!絶ッ対に!生きるんだ!」

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーー

 

 

 

 

 

 「ハァ…ハァ…月の明かりだ!やっと着く…」

 

 そうして地下通路を抜け出てきたのは街道沿いにある大樹の根元の穴。後は此処から町の方に向かって走れば!

 

 

 「フゥ…フゥ… 待てよクソガキ!手間取らせやがって!」

 

 「嘘だろ…何でもう追いついて…」

 

 「へへ!俺は1番小柄で身軽だからな!狭い通路からガキ捕まえるぐらい問題ねぇわけよ!」

 

 「ク、クソ…俺は死ねないんだ…死ぬわけにはいかないんだ…」

 

 男から距離を取るべく走り出す。

 

 「そうはいかねぇな!」

 

 足を出すと同時に男は瞬時に距離を詰め、そして俺の腹に容赦のない蹴りを浴びせた。

 

 「ガァッ!!」

 

 蹴り飛ばされ木に思いっきり背をぶつける。肺の中の空気が全て排出されるような感覚。立ち上がろうにも呼吸が出来ない。

 

 「コヒュ…コヒュ…」

 

 「ケケケ!どうした?呼吸がしたいのか?」

 

 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる男。自身の無力さがただだだ腹立たしい。

 

 一瞬だけでいい… 何とかして隙を作って逃げるんだ…

 

 「最近イライラ溜まっててさぁ…お前、サンドバッグになってくれよ」

 

 そう言い男は俺の首を掴む。今しかねぇ!

 

 「誰がなるかよ!バーカ!」

 

 こっそり握っていた土を男の顔にかける。それに怯んだ男は俺を手放した。茂みだ!茂みと木を利用して少しでも時間を稼ぐんだ!

 

 

 「クソがぁ!逃がさないっつったろ!」

 

 その言葉と同時に男が裏拳を繰り出してきた。完全に無防備な状態でそれを喰らった俺は後ろに吹き飛ばされる。

 

 視界がチカチカと明点する。鼻から呼吸が出来ねぇ… それでも…這いつくばってでも…俺は…生きなきゃ…

 

 

 「散々手間かけさせやがって!殺す!今殺す!これは決定だ!」

 

 すると男は腰からナイフを引き抜いた。再び俺の首を掴みナイフを顔に近づける。その時刀身に俺の顔が写った。負け犬のような、絶望した目だ。

 

 こんな、クソみたいな死に方できるか… 最期まで希望を捨てちゃいけねぇ!

 

 

 「ハハハ!死ねぇ!ガキ!」

 

 

 

 

 迫りくる刃、しかし俺は決して目を瞑ることはなかった。最後までその刃を見つめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 そして突如、ナイフの刃が消えた。

 

 

 「え」

 

 

それは誰が上げた声だったのだろう。俺か、それともこの男か、あるいは両方か。この不可解な出来事に声が出た。

 

 

 

 「みっともない大人が居たものだ。子どもを痛ぶって悦に浸る外道が」

 

 

 

 先程までは此処に居なかった存在、見知らぬ男が剣を片手に隣に立っていたのだ。

 

 そして突如空から何かが地に落ちてきた。それはナイフの刃だ。つまりこの男は俺たちに一切視認されず近づき、剣を抜いてナイフを斬ったということ。あまりにも異常であった。

 

 

 「見事だったぞ、ガキンチョ。お前の生きる意志に感服した。少し手伝いをしてやろう、お前が生きる為のな」

 

 

 

 

 

 




 
 オルゴールって17世紀頃の発明なんですね。小説って書く時こういうの調べたりするから勉強になりますわ。

 
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