テーブルマウンテンの頂上。そこには剣を振るうしか能の無いセルアーマーがいた。

 そして同じく剣を振るうしか能の無いケンゴウがそこへ赴いた。

 己の剣の腕に絶対の自信を持ち、ただ愚直に「最強」を目指す二人の剣士の物語。

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 ちょっとバトル作品が書いてみたくなったので書いてみました。

 私の他の小説を読んで、そういった方向を期待しておられる方もいるかも知れませんが、ギャグはありません。

 ひたすらにバトルです。



ケンゴウVSセルアーマー

 風が吹く。

 

 その音のみが響くその場所は、テーブルマウンテンと呼ばれる山の頂上だ。

 

 そこには気配が二つある。

 

 風よりも音を立てることなく、ただそこに立ち尽くす。

 

 相対する相手の隙を逃さぬように。こちらが隙を作らぬように。

 

 風が流れ時間だけが過ぎ、二つの気配が交差する時、それは重なり合った一つの殺意へと変じた。

 

 

 ギィン!

 

 

 飛び出した両者の剣が同時に振るわれて火花を散らす。

 

 最初の激突が技比べだとするならば、いま行われている至近距離での鍔迫り合いは力比べ。両者は互角

 

 そしてまた剣を激しくぶつけ合って距離を取る。

 

 これが何度繰り返されたことだろうか。

 

 

「(……強い)」

 

 

 気配の一つ、セルアーマーは思う。

 

 

「(……噂に違わぬ強敵だ)」

 

 

 もう一つの気配、ケンゴウは思う。

 

 

「「(もっと剣を交えたい!)」」

 

 

 何故このテーブルマウンテンにケンゴウがいるのか疑問に思う者もいるだろうが、これは彼が魔物の範疇を超えたからに他ならない。

 

 この世界に生きる魔物の多くは、自分の生まれた不思議のダンジョンに住み、やってくる風来人を返り討ちにするためだけの存在だ。

 

 なかには個性を持つ魔物もいるが、基本的に外へと旅立つ魔物はまずいない。

 

 しかしこのケンゴウは違った。

 

 生まれたダンジョンに留まることなく、己の剣の腕を究めたかったのだ!

 

 

「(これこそ俺の求めし強者。不足無し)」

 

 

 面頬に隠された口元は笑みに歪み、爛々と輝く瞳は狂気じみた光を宿している。

 

 自分の生まれ育ったダンジョンを抜け出して旅をする中、ケンゴウはある噂を聞いた。

 

 こばみ谷という秘境には、テーブルマウンテンという大きな山があり、その山の頂上は太陽の大地と呼ばれている。

 

 その場所には己と同じように剣を極めんとする求道者が住み着いている、と。

 

 だから来たという訳だ。ただ、自分と相手の力を剣を通じて比べるために。

 

 賭ける対象は己の命のみ! 何とも分かり易い正々堂々とした公明正大な決闘である。

 

 

「(これだから剣は面白い)」

 

 

 何度となく剣をぶつけ合っても斬り伏せることの出来ないケンゴウを相手に、同じく表情の無い顔に喜びの感情を滲ませるセルアーマー。

 

 彼もまた求道者。死合いの決着としての死は望むところであり、これまでも何度となく多くの強者たちの命を奪ってきた。

 

 

「(これほどの剛の者が我と同じ理想を求めているとは運命神リーバよ、感謝する)」

 

 

 再び駆けだして剣を振るうセルアーマーは思う。

 

 剣の腕のみを追求するためにレベルアップを拒んでいる。

 

 上位種族である「クロムアーマー」や「チタンアーマー」へのレベルアップすら拒む彼は、それでも剣の技術のみでテーブルマウンテンで最強の風来人殺しと言われている。

 

 そうして幾度となく風来人を屠ってきた彼の剣は、返り討ちにしてきた風来人の経験血を吸い続け、「風来人キラー」とすら呼べる業物であるというのに、相手のケンゴウの剣にはヒビ一つない。

 

 これはすなわち、相手のケンゴウも己と同じ剣の腕のみを磨き、自らの剣を「風来人キラー」として鍛え続けてきた証だ。

 

 

「(ぬぅん!)」

 

「(でぇい!)」

 

 

 両者一歩も引かず、剣を振るう。未だに決定打は一つも入っていない。

 

 少しでも気を抜けば一瞬で相手の命を狩り取る必殺の一撃を撃ち続け、避け続け、すでに疲労はピークに達しているだろうにどちらも構えを解こうとしない。

 

 当然だ。相手を超えるために、より剣の高みを目指すための勝負だ。

 

 疲れたから中断しようなどと、日和った考えは毛頭無い。

 

 

「(ズェア!)」

 

 

 剣は己自身。ケンゴウは己の体重を剣に乗せ、必殺の一撃を再び放つ。

 

 だが今度のそれはこれまで何度となく繰り返された斬撃とは違う。

 

 威力はそのままに剣速を大きく変えたのだ。

 

 

「(!?)」

 

 

 相手の剣速の変化により、間合いの取り方を見誤ったセルアーマーは対処に遅れた。

 

 ケンゴウ自身、これで勝負は決まったと思うほどの一撃が叩き込まれる。

 

 しかし、それで終わる程度ならテーブルマウンテン最強は名乗れない。

 

 セルアーマーはまだ勝負を捨てていない!

 

 

「(!?)」

 

 

 驚いたのはケンゴウの方だった。

 

 セルアーマーはケンゴウの必殺の一撃を避けることが不可能と見て、瞬時に避けることを諦めた。

 

 それは命を諦めたわけではない。勝ちを諦めたわけでもない。

 

 では何をしたのか?

 

 簡単だ。他の魔物には無い己のみの特技である武器の吹き飛ばし。

 

 それを<己の剣>に使ったのだ。

 

 

「(我の奥の手を使わせてくれたな。流石だ同じ剣の求道者よ)」

 

 

 セルアーマーの投げ放った剣は必殺の一撃を振るうケンゴウに避ける術はなく、かつて栄えていた黄金都市の壁を破壊しながら吹き飛ばす。

 

 

「(グッ、ムゥゥゥ、ウゥン!)」

 

 

 腹筋を固めることで鎧を貫通するほどのセルアーマーの剣はケンゴウの肉体に傷を付けることは無かったが、衝撃までは殺せない。

 

 瓦礫の中で呻きながらもケンゴウはすぐさま立ち上がろうとする。

 

 戦場ではどのような事態であっても相手から目をそらせば死ぬ。

 

 そんな愚かなミスで負けるようでは死んでも死にきれない。

 

 相手の攻撃を食らうことは恥ではないが、相手から目を逸らしたまま死んでは剣の名に恥じる。

 

 ケンゴウは叩きつけられた衝撃で意識が朦朧としつつも必死で身体を動かす。

 

 目的は目の前の同志を斬るため。

 

 最強の名を求めるため。

 

 

「(ハァァァァァ!)」

 

 

 ケンゴウが起き上がって最初に目にしたのは自分に向かって駆けだすセルアーマーの姿。

 

 セルアーマーは今、己の剣を投擲することでケンゴウの必殺の一撃を逃れたが、剣を拾わぬ限り同じ手は使えない。

 

 対してケンゴウは吹き飛ばされ強かに壁に叩きつけられながらも己の剣は手にしたままだ。

 

 勝負の行方はどう転ぶのか誰にも分からない。

 

 一直線に駆ける無手のセルアーマーか!?

 

 混濁とした意識の中、剣だけは離さずに起き上がったケンゴウか!?

 

 この場に第三者がいれば、それがどんな者であっても芸術とさえ思える二者の決着はどうなるのか!?

 

 両者の距離が無くなった!

 

 

「(セイッ!)」

 

 

 セルアーマーは距離を詰め、ケンゴウの鎧に刺さっていた己の剣を抜くと瞬時に振り下ろす。

 

 微塵の躊躇いもない渾身の一撃。

 

 セルアーマーの一撃はタウロス系の魔物が得意とする痛恨の一撃よりも早くて重い。

 

 ケンゴウはその一撃が自分に来るのを見ることは出来た。

 

 ……だが、そこまでだ。

 

 

「(……俺は死ぬのか?)」

 

 

 ケンゴウは刹那にも満たない時間、考えた。

 

 ここで死んだら自分はどうなるのか?

 

 これまでの剣の修行が全て無駄になるのか?

 

 死にたくない。もっと極めたい。

 

 普通なら諦めるような状況にあっても、ケンゴウは諦めなかった。

 

 剣への執念からだ!

 

 

「(俺は、もっと強くなりたい!)」

 

 

 セルアーマーの斬撃は今のケンゴウでは目視するので精一杯という、単純に重く早い一撃。

 

 今の自分では死ぬしかない。

 

 ならば、今の自分をこの場で超えればよいではないか。

 

 

「(オォォォォォォーーー!!)」

 

 

 この瞬間においても剣の道を目指す者として離さなかった己の剣を強く握る。

 

 強く強く、握る。

 

 剣の全てを己の体の一部として取り込み、自分の体を動かすが如く、自然な動きで目の前で襲い来る死の気配を斬り伏せる。

 

 言ってしまえば簡単なことだ。

 

 自分を斬ろうとしてくる斬撃を、同じ軌道で後出しで相手よりも早く振るえばこちらの剣が相手を斬れる。それを実行しているのだ。

 

 そして……、剣が再び重なった。

 

 

 ギィィィィーーン!!!

 

 

 風を切り裂く金属音が響き渡る。

 

 決着はどちらの勝利なのだろうか?

 

 

「(ふっ……)」

 

「(ほぅ……)」

 

 

 セルアーマーとケンゴウ。両者の剣はぶつかり合うと同時に相手の剣を吹き飛ばし合っていた。

 

 くるくると宙を舞って地面へと突き刺さる両者の剣。

 

 ケンゴウの剣はセルアーマーの前に。セルアーマーの剣はケンゴウの前に。静かに落ちて地面に突き立つ。

 

 

「(……まさか、武器弾きの技まで互角とはな。剣を弾かれたのは初めてだ)」

 

「(それはお互い様だ。我はこれまで同族からも剣を弾かれたことなどないというのにな)」

 

 

 剣はなくとも互いに視線は外さない。

 

 どうやらこの勝負は引き分けのようだ。

 

 これまで自分と同格の強者との死合い。お互いに反省点と成長の伸び代を理解出来たのだ。

 

 次に戦う時はさらに手強くなるだろう両者は視線でこの勝負の結末に納得し合った。

 

 決着がつかないというのが決着だと、お互いが互角の力量であることに納得したのだ。

 

 

「(俺の剣をお前に預けよう)」

 

「(ならば次に死合う時はお互い更に高みへといることだろう)」

 

 

 今回の経験を己の糧とするため、セルアーマーはケンゴウの剣を手にする。

 

 ケンゴウもセルアーマーの剣を取る。

 

 両者は互いに背を向けて歩きだした。

 

 これから先、どのような戦いを迎えるのかは分からないが、両者の絆は剣で繋がったのだ。

 

 剣を振るい続ければ見えてくる世界がある。

 

 その世界が、その視界が再び重なった時。その時こそどちらかが倒れることになるのだろう。

 

 

 こうして、テーブルマウンテンから最強のセルアーマーは最強のケンゴウと戦ったことで姿を消すが、他の土地で新たな噂がすぐに聞こえだす。

 

 ケンゴウの剣を手にした最強のセルアーマーと、セルアーマーの剣を手にした最強のケンゴウの噂を。風来人たちは語り継ぐ。

 

 それは遠くない未来。

 

 そして、両者が再び相まみえるのはもう少し先のお話。

 

 

 

 

 

 




 シレンシリーズって似た性能の魔物が結構いますからね。
 いっそのことシリーズ化して似た話を書くのもアリかもしれませんが、とりあえず今のところはシレンの連載作品を書くつもりはないので短編で書いてみました。

 私個人は64よりも砂漠の魔城が一番遊んだ作品なので、セルアーマーの方が嫌な思いでは多いですね。
 64も面白かったのですが、両親が揃って遊んでいたので私はほとんど見ているだけでしたからね。

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