東方凱旋記 作:蒼い布
文章の拙いですが、ぜひ見てくださると嬉しいです!
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その日。一人の男性が、幻想郷から脱出した。彼は自分の街に帰ると、幻想郷のことを周りに言いふらした。面白い話であり、話し方も上手だったので、彼はたちまち人気者になった。
しかし、これが全ての始まりだった。
幻想郷は今日も平和だ。湖畔にそびえる真っ赤な屋敷も例外ではなかった…はずだった。
「……ん?」
大きな門の前で寝ていた赤い髪の少女は唐突に気配を感じて起き上がった。彼女の名は紅美鈴。ここ紅魔館の門番だ。
彼女は、メイドの十六夜咲夜の気配でが来る気配で起きれるように睡眠を鍛えていた。気配がすればすぐに起きることができる浅い眠りだ。
起き上がった彼女はあっという間に門番らしい立ち姿になり、あたりの気配を探った。が、いつもなら来るはずのメイドの気配がない。さては夢だったのかと思ったが、それにしてはあまりにも記憶が鮮明だった。とりあえずもう一眠りしようと視線を動かした時。夢は現実になった。全身を黒で包んだ人が倒れているのだった。何より目を引くのは首筋の爪痕だった。かなり体温が冷えていることに危機を感じた美鈴は、すぐさま紅魔館内に運び込んだ。
「……うう」
夢を見ていた。あの恐ろしい戦いの。真っ赤な目が薄い笑みを浮かべながらこちらに向かってくる。私は拳銃を構える。一発でも当たればいいのだ。が、その目の持ち主の瞬発力は異常だ。何発撃っても何発撃っても全て避けられてしまう。銃弾が底をつく。観念して体の力が抜けてしまった私に紅い目は容赦なく襲いかかり、喉に熱い痛みが走り、私は絶叫する。
紅い目のあざけるような笑い声を背に、私の視界は暗闇に落ちていった…
「ねえ!!!」
「えっ?」
私の意識は唐突に浮上した。同時に喉に鈍い痛みが走り、思わず呻く。
「大丈夫なの?」
痛みで霞む視界に、一人の少女が映る。
「あっ…」
思わず私は叫ぶ。ピントが合った目に映ったのは、紛れもなく紅い目だった。
こんなとこにまで夢が…今度こそその頭を撃ち抜いてやる…その一心で私は銃を取り出す。紅い目はこちらには向かってこなかった。顔に怯えの色を浮かべ、後ずさる。
…どうやら私の勝ちのようだ…
引き金を引き、勝利の銃弾が発射された刹那、少女が消えた。
「…え?」
瞬間移動?そんな技いつの間に…
恐怖感が頭を支配する。早く撃たないとやられる。私は夢中で引き金を…
「落ち着きなさい!!」
興奮状態だった頭から血が下がっていく。息切れをしながら辺りを見渡す。
視界に映ったのは白いメイド服を着た少女だった。
「貴方、さっきから銃を撃ちまくって。紅魔館を破壊する気なの?」
「いや…そんなわけでは…」
まさか夢が現実になったなんて言えないので、そう弁解するしかなかった。
「全く。服装からして違和感しかなかったけれど、とんだお騒がせ物ね。」
落ち着いてくると、いろいろなことを思い出してきた。
「…ここはどこですか?」
「ここは紅魔館よ」
「紅魔館?」
記憶が頭をかすめる。思い出していくうちに、私は冷や汗をかき始めた。
「どうしたの?真っ青よ?」
「…十六夜咲夜さんですね?」
「…私の名前をなぜ知っているのですか?」
予感的中。と。言うことは…
「さっき私が銃を向けたのはレミリア・スカーレットか…」
「貴方は何者ですか?」
名前を相手が知っていたら、問答無用で殺される。
「…言いたくない。」
咲夜の顔がふっと険しくなった。彼女は一瞬にして大量のナイフをかざしていた。
「お嬢様や、私の名前を知っているのは、関わりがあるからだとしか思えません。自分の名前を言わないと不審者とみなします。」
咲夜には一部の隙もなかった。私は観念した。
「…星月。」
「星月?」
「苗字などない。星月だ。」
私はいまにも処刑されるものと覚悟を決め、顔を上げた。
…え?
咲夜は、怪訝な顔でこちらを見ていた。
「知らない名前ね。」
私は唖然とした。そうか。知らないのか。ここの吸血鬼はまだ若い。事情を知らなくて当然だ。
「…何よ。さっきからじろじろ見て。」
「あ、いや。何でもない。」
とりあえずはここに居座るか。ご主人様が見つかるまで。
安堵に胸を撫で下ろすと、睡魔が襲ってきた。
「咲夜ー紅茶頂戴!」
「ただ今参ります!」
そんな他愛のない会話を聞きながら、私は夢さえ見ない深い眠りへと沈んでいった。
「幻想郷。か…」
聞いたところによると、忘れ去られたものたちが集う場所で、文明もあまり進んでいないと言う。
少女さえ倒せればいいのだ。
「忘れ去られたものたちよ…現実を見せてやろう…」
急遽任命された新領土管理庁の長官は、一人笑みを浮かべた。