隷属者はハグレ王国の夢を見るか   作:ベリーナイスメル/靴下香

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あなたの価値は如何程か

 鏡へ映った自分の姿を確認する。

 黒いタンクトップにホットパンツ、膝下まである大きい靴下。ホットパンツに通したベルト、腰側には使い慣れた短剣をまわして。

 やはり慣れた服装は良いものだとあなたは一つ頷く。

 

 二人がわざわざあなたが居た家から私物と思われるものを取ってきてくれたのだ。

 これもキーオブパンドラの試運転というか試用のついでだと言われたものの、自分を助けてくれたと思うべきだろうその事を含めて恩は積もるばかり。

 

 鏡を見ながら軽く身体を動かしてみたあなただが、やはり筋力の低下が一番顕著に感じられた。

 ここまで筋力が落ちてしまうほどにああしていた自分は本当に救えないなと自嘲もしてしまうが、取り戻せばいいだけだと意識を前向きに変換する。

 腰にまわした短剣を抜き放ち一度、二度。空気を切り裂く音はありがたくも以前と変わらない。そのままかつての自分をイメージして動いてみれば数段落ちるものの思う動きを取ることは可能だった。

 これならある程度戦闘はこなせるだろう、戦闘勘が衰えているのは間違いないだろうが。

 

 あなたは隷属者だ。

 

 当然というべきか与えられた命令に戦闘も含まれていた。

 何人……いや、幾つと言うべきだろう刈り取って来た命は多い。

 少なくとも日常と言えるほどには奪ってきたし、今も尚殺めるという行為への戸惑いはないと身体があなたへと伝えてくる。

 

 殺すという行為が好きというわけではないあなたではあるが、やれと言われて躊躇を挟まない位には得意でもある。

 暗殺者紛いのこともやったし、正面切っての戦いだって経験している。

 恐らく新たな主である二人よりもその経験値は高いだろう、二人の体躯や感じる強者のオーラとでもいうかそういったものはまだまだ弱々しいもので。

 それを補うことこそがまずはやるべきことなのかもしれない。

 

 なんて密かに息巻いていたあなたに留守番を頼み、二人は新たなハグレ王国の一員を探しに出かけている。

 

 これには隷属者のあなたをしてがっかりしてしまうものだった。

 護衛ならお任せ下さいと言いたい気持ちが大いにあったものの、まだ完全に体調が戻ったわけじゃないだろうと言われてしまえばぐぅの音も出ない。

 そう、万が一完全に回復していないという理由で役に立てなかった時の事を考えるとそれは自身の価値を喪失してしまうこと他ならないとあなたは考えたからだ。

 

 故にこうして鏡の前で自分の動きを確認する。

 言われたように確かな衰えはあるものの、確信したようにある程度は大丈夫。

 何、心配することはない。万が一、いざとなれば自身を賭して二人を生かせることが出来ればいいのだからと鏡のあなたは大きく頷いた。

 

「ただいまーっ!」

 

 入り口から大きな声が響く。

 デーリッチの声だと認識した瞬間あなたは残像を置き去りに走った。忠犬なんて言葉が連想されるだろう主の帰還を喜ぶあなたは尻尾があれば間違いなく砂埃でも巻き起こしている。

 そうして玄関まで辿り着いたあなたの目に飛び込んできたのは。

 

「わうっ!」

 

 首が三つ、顔が三つある紛うことなきお犬様であった。

 

「あぁ、ただいま。また無茶はしなかった? おとなしく休んでた? ……いや、うん。何してるの?」

 

 ローズマリーの言葉だと言うのにあなたの耳には届かない。

 それも仕方がないのだ、三つ首の犬と目があった瞬間走ったのは緊張。

 譲れない何かがあなたと犬の間に奔っている。

 

「へぇ……ぼろっちいけど結構綺麗に……って、何してるんスか」

 

 ローズマリーの後ろからハーピーの子供らしき女の子が呆れた目をあなたに投げかけているがそれどころではない。

 先程まで戦いならなんとかなると考えていたあなたに早速その機会がやってきたのだ。

 

 その戦いは聖戦。

 まさしく一匹と一人の後ろには虎と龍が顕現していたし、雷の効果音が鳴り響いている。

 

「な、何やってるでち? えぇと、この子はベルベロスでち。仲良くやってほしいでちよ?」

 

 慌てたような、困惑したようなデーリッチの声があなたとベルベロスと言う名らしい犬の間に奔った緊張を解す。

 デーリッチが言うなら矛を収めよう、一人(あなた)と一匹はそう警戒を解いた。

 解いた筈だったが。

 

「わわっ、何また緊張感高めてるの!? 仲間! 仲間だからっ!?」

 

 解いた瞬間確かにベルベロスはあなたを鼻で笑った。あなたはそう感じた。

 まるでここにアルファは成ったと言わんばかりに、マウントとったど! と言わんばかりに。

 

 ところで、今晩の夕食はあなたが作ることになっている。

 無論命令されたわけでは無かったが、以前の主は帰ってきた時に食事が用意されていないことへ不服を顔に書いていたが故にそうするべきと思ったからだ。

 あなたは魔物を食したことはあれど犬を食したことはない、だが所詮は肉。三つ首であろうと魔物であろうと肉だ。

 しっかり焼いて香辛料をまぶせば食べられないものにはならないだろう。

 

「や、やめるでちっ!? その今夜はステーキよみたいな目はやめるでちっ!」

 

「わふっ」

 

「あーもう! ベルベロスもやれるもんならやってみろみたいな顔をしないのっ! さっきまでの人懐っこいおまえは何処に行ったんでちか!」

 

 舌打ちを我慢した事を褒めて欲しいなんて思うあなたではあるが、やめろと言われた以上仕方がない。

 優先されるべきは自身の意思ではなく主の命、たとえ悔しさで手が震えようとも遵守すべきものがここにある。

 

「……ちなみに私はあんまり肉ないからね? 食べないでよ? 唐揚げとか以ての外だからね?」

 

 そんな目をしていたのだろうかと自問するが、していなかった自信はない。

 つい八つ当たりでじゅーじゅー美味しいハーピーの唐揚げをと思ったりしなかった自信もない。

 

「ボス。私、実家に帰らせて頂きます」

 

「ちょっとまって!? 大丈夫、大丈夫だから!?」

 

 主を困らせるのは本懐ではないあなたは、頭を下げる。

 確かに食いでを考えるなら太らせてからだと、浅慮だったと過ちを認めた。

 

「いーやー!? 見世物小屋のほうがマシー!?」

 

「こらっ! キミも何言ってるんだ!」

 

 アルファに失敗したばかりだったからだろうか、あなたの発言は周りから見れば少し悪戯が過ぎたようだ。

 しかしながら、ハーピーの子供。ハピコがあなたに対して向ける視線の中に恐怖が交じる様になった事を確認したあなたは安堵した。

 どうやらこっちは成功したようだ、これで聖戦勃発も防げるというものだ。

 

 

 

 さて、そんな楽しい自己紹介タイムを終えたあなた達。

 お疲れ様会、歓迎会を含めた食事の中で上がった話題はやはり拠点の拡張に関して。

 偶然ではあるのだろうが、今こうしてハグレ王国の人口が倍以上になった今でも拠点の通路を防ぐ瓦礫を撤去できるような人材は居なかった。

 ハグレはこの世界に生きる人間という種よりも一回り、あるいはそれ以上に筋力が優れてはいるもののそれをしても力が足りない。

 

 あなたが仮に全盛期程の力を発揮できてもそれは叶わないだろう。

 軽装で身を包んだ姿の通り、あなたは分類するのであればスピードアタッカーだ。純粋な力に自信があるとは言い切れない。

 もしもあなたが瓦礫の撤去を行うのであれば少なくとも相応の道具が欲しいところだ。

 

 柱や瓦礫を撤去するために力のある仲間が欲しい。

 

 そんなローズマリーの言葉に反応したのはハピコ。

 曰く力自慢のハグレが知り合いにいるらしく、その名をニワカマッスルと言うらしい。

 名は身体を表すとでも言うべきか、筋肉自慢の牛人間。

 まだヘンテ鉱山で岩を掘っていると有用な情報にローズマリーがお礼を言ったが、あなたはやや不満が募った。

 

 というのもハピコはどうやらローズマリーをボスと勘違いしているらしい。

 確かにローズマリーは王国参謀と言うに相応しい存在ではあるがこの王国の主ではない。

 主はデーリッチであり、王もまたそうだ。

 その事をしっかり教育せねばならないとあなたは心に決めた。

 

「あ、ちょっと良いかな?」

 

 場が解散となり、ハピコの後を追おうとしたあなたを呼び止めるのはローズマリー。

 ハピコにとってはファインプレイ、あなたにとってはロスタイム。

 とは言えローズマリーを無視するという選択肢がないあなたはローズマリーへと向きなおる。

 

「これからどんどん仲間を増やしていくつもりだけど……少し意見を聞きたくてね」

 

 意見という言葉にあなたは首を傾げる。

 そう言われても意見というものがないしそれを生むという思考がないあなた。

 むしろどんどん好きなようにやってくれればそれでいい、あなたはその姿を心から応援どころか実現するために力を尽くす所存なのだから。

 

「そう、それだよ。それがよろしくないんだ。いいかい? 私はこうやってキミに色々話をこれから投げかけるつもりだ。難しいかも知れないけれど、キミは少し自分の意見……いや、意思を意識したほうが良い」

 

 至極真面目にそう告げられたあなたの思考は混乱に陥る。

 自分は隷属者だ。

 その在り方はただ主の望みを叶えるための道具でしかない。

 道具は主の手によって振るわれその意のままに使われる。

 自分の意思とはそれを妨げるものでしかない、そもそもそれによって主の望みが叶わなくなってしまうなんて目も当てられないどころかあなたのアイデンティティーが崩壊する。

 

「何故キミがそうなったのかはわからない。いや、キミの言う通りキミを使えば確かに王国は繁栄するのかも知れない。だけどね、それは私もデーリッチも望んではいないんだよ」

 

 あなたにとってその言葉は難しいというか理解が及ばないものだった。

 以前言われた仲間という言葉。

 それを欲しているというのなら自分を使って仲間を増やせばいい。あなたはそう思っているし、そのための自分だとも思っている。

 

「それじゃあキミはハグレのままだ。ここに集った存在はハグレだけど、ハグレがハグレとして存在しなくていいためのここだ。それじゃあ駄目なんだよ、そしてそれをキミには考えて欲しい。それこそがキミをここに招いた理由の一つでもある」

 

 少し考えるあなただが、やはりその理由とやらはわからない。

 しかしながらそれを自分に求められているということだけはわかる。

 従ってあなたはローズマリーに頭を下げた、遂行できなくて申し訳ないと。

 

「……あぁ、先は長そうだ。うん、でも覚えておいてね? 考えるということを」

 

 そう言ってローズマリーはあなたの肩を叩いて部屋から出ていった。

 

 一人取り残されたあなたは考える。

 考えるということを考える。

 

 別に思考しないというわけではないのだ。

 与えられた命令はいつだって結果のみを求められた。

 その結果を結ぶための過程はいつだって手作りだった。

 だからこそあなたはこれ以上ないほどに命令を遂行することにかけては自信があったし、必ず何をしても結果を出せると疑わなかった。

 

 しかしそれでは駄目だと今言われたのだ。

 今のままではあなたを使わないと言われたに等しいのだ。

 

 どうすれば、あなたは使われることが出来るのか。

 

 ようやくと言っていい。

 あなたはようやく、自身の存在、その意思を初めて思考し始めた。

 

 

 

「随分閑散としているね、ほんとにそのニワカマッスルさんはいるのかな?」

 

「いると思いますよ。ここに首なしの幽霊が出るって噂を出したのはアイツだろうし」

 

 やってきたヘンテ鉱山に人の気配は感じない。

 しかしながら入り口から感じる微かな魔物の気配にあなたは目を細める。

 それほど強い魔物はいないだろう、あなたにとっては。

 しかし現在一緒にいる仲間達にとってそうであるかはわからないところだ。

 いざとなれば自分一人で魔物を殲滅し安全を確保すればいいかとあなたは軽い覚悟を決めた。

 

「あら? そんなに怖い顔をしていては福が逃げてしまいますよ?」

 

 険しい顔をしていたつもりはないが、笑顔の中に少し心配を含ませた表情で昨晩王国へとその身を寄せたらしい福の神様……通称福ちゃんがあなたへと声をかけてきた。

 何ということはない、先程も感じたがあなたにとっては取るに足らない相手であろうこの鉱山に潜む魔物たち。

 なんならあなた一人で先に鉱山へ突入し安全を確保せよと言われても容易く達成できると出来る限りの笑顔で返事をするあなただが。

 

「そういう、意味ではないんですけどね」

 

 心配という表情から困った表情へと変えた福ちゃん。

 その意味を察する事ができないあなたではあるが、困らせているのは福ちゃんであって主ではない。

 ならば然程気にすることでもないかと視線を再び入り口へと戻す。

 

 あなたでもわかっている事がある。

 今ここに集ったハグレ達は強くはない。かと言って強くなれないわけではない。

 そして強くなるには実戦経験が必要なのだ、あなたがこれまで積んできたように。

 ある意味このハグレ勧誘は修行でもある。

 こうして大なり小なり危険のある場所へと赴く必要が今後もあるのであれば力をつけることは必要不可欠。

 故に、あなたとしても自分ひとりですべての魔物を殲滅するなんて勿体ないことは可能な限りするべきではないと考えている。

 

 無論デーリッチやローズマリーへ危険が迫ればその限りではなく、迅速かつ火急にそのリスクを排除するため手段を選ばない所存だが。

 

「っと。やっぱり人は居なさそうだ。でも魔物の気配はするな……皆、気をつけて」

 

「わうっ!」

 

 鉱山へと足を踏み入れて見ればやはり閑散としているが、ローズマリーの言う通り魔物の気配が濃くなった。

 一鳴きしたベルベロスが気合いを入れたように尻尾を振り始め、同時にあなたも警戒を強める。

 丁度そんな時、魔物の一団がこちらに気づいたかのように向かってきた。

 

「よし! 迎え撃つよ!」

 

 ローズマリーの声を聞いてあなたは腰の短剣を抜き放つ。

 迎え撃つと言われた以上相手の出方を待とうとしたあなただが。

 

「先手必勝っ! ってね!」

 

「ばうわうっ!」

 

 ハピコとベルベロスが相手に先んじて攻撃を仕掛けた。

 待て待て命令違反だぞと慌てて同じく前衛に立っているローズマリーへと視線を向けるあなただが、さもそれが当然かのようにバックアップするためだろうか魔法の詠唱に集中している。

 となると命令違反は自分なのだろうか、迎撃の指示とは先制攻撃の指示だったかとあなたは少し混乱しながら慌てて魔物へと走った。

 

「おわっ!?」

 

「ばうっ!?」

 

 そんな状態だったからだろうあなたの攻撃行為は見事に味方の攻撃を邪魔してしまった。

 大ムカデに対して襲いかかろうとしていたハピコの動線に割り込み、ベルベロスのタックルを敵の代わりに貰い受ける。

 

 迂闊。

 痛み、ダメージもさることながらこれは目も当てられないとあなたは自嘲する。

 

「何やってるの!? くそっ! 一回退くよっ!」

 

 完全に態勢を崩してしまったことに危険を感じたローズマリーから撤退の指示が飛び、苦虫を噛み潰しながら従うあなた。

 撤退を支援するためだろう、ローズマリーの放った氷魔法は見事過ぎるほどに相手の足を止めて無理なく撤退が行えた。

 

 まさに顔真っ赤状態のあなた。

 何がこの程度の相手なら容易いか、もう羞恥心だとかなんだで胸焼けが酷い。

 

「はぁっ、はぁっ、このあたりまで退けば大丈夫かな?」

 

 途中見つけた簡易結界、魔法陣の場所まで戻ってきたあなた達は大きく息を吐いて呼吸を整える。

 その最中であっても向けられる、何やってんだコイツといった意味を多分に含んだ視線がとても痛く感じるあなた。

 

「大丈夫でちか? ヒール!」

 

 そんな中デーリッチが心配そうにあなたへと治癒魔法を使ってくれる。

 優しいデーリッチの心遣いではあるが、今のあなたにとってはその優しさでさえも鋭いナイフに切り裂かれたかのような痛みと変わる。

 思わず心配そうな瞳を向けてくれるデーリッチから目を逸したくなるが、そんな無礼を出来るはずもなく非常に居た堪れない。

 

「いや、びっくりした。もしかして戦闘経験無かったとかです?」

 

「わふわふ」

 

 それなら仕方ないと言外に含んだ調子でハピコとベルベロスより水を向けられるが、この様を見せてしまっては何を言っても言い訳にしかならないだろうあなたは曖昧に謝罪するしかできなかった。

 これはある意味互いの能力が最悪の形で噛み合った結果だ。

 もしも仮にあなたと同等の戦闘技術をハピコ、ベルベロスが持っていたのならそもそも戦闘行動、攻撃態勢に移った二人に割り込むことなんて出来ない。

 二人が攻撃態勢に入って尚それよりもあなたの行動の方が勝っていて、追いついてしまったというのがこの状況の真実だろう。

 

 かと言ってそれを伝えるわけにもいかない。

 前言通り言い訳にしかならないし、何よりその程度でこの醜態を晒してしまった自分を認めたくないあなた。

 全盛期の自分ならそもそも割り込んで尚二人の攻撃を避けた上で対象の魔物を屠っていただろう。

 

 やはり力を取り戻すことは急務だと改めて実感するあなただった。

 

「ばうっ! ばうっ!」

 

「ん? ベルベロス? どうしたんでち?」

 

 一際強く感じる魔物の気配。

 ベルベロスが察知したように、この脇道の先にいるのはここら一帯に出没している魔物の中でも一つ頭を抜けた存在だろう。

 

「まぁ本筋じゃないだろうし……ん? どうしたんだい?」

 

 デーリッチに任せるよと続けようとしたローズマリーを遮ってあなたは言う。

 

「えっ!? い、いや無茶だ!? そんな一人でなんて!?」

 

 慌てるローズマリーへと首を振る。

 そうだ、これは汚名返上の機会だ。

 醜態を晒してしまった自分を改めてもらう機会なのだ。

 

 自分は役立つ、いや、役に立てる存在である。

 その証明をさせて欲しいと懇願するあなたへ向けられる視線は訝しさに満ちていたが。

 

「大丈夫なんでち?」

 

 デーリッチが静かにあなたへと尋ね、それに然と頷いた。

 

「ちょっ!? デーリッチ!?」

 

「わかったでち。でも絶対無事に戻ってくるでちよ?」

 

 そう言ってあなたを送り出してくれた。

 不思議とあなたの心は温かい。

 そしてやはり、この温もりを手放さないでいるためにもこの行為は必要だと思うあなた。

 

 信じて送り出してくれたと言うには過分に心配を瞳に含ませた可愛い主へと頭を一つ垂れ。

 あなたはかつての世界へと身を再び投じた。

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