ハイスペックチート小悪魔天使幼馴染   作:神の筍

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 原作では夜凪を見て、カムパネルラとなりましたが、当作では草案段階でカムパネルラ役として抜粋/推薦されているという設定になります。
 テンポの仕様上、最低限の雰囲気を壊さぬようにとの処置ですのでご理解下さい。






 銀河鉄道の夜 
act-α 主人公1


 地面に這いつくばった照明が、男を照らしていた——。

 

 背後には無数の赤い座席が並び、正面を向けば荘厳な舞台が目を見開いている。呑み込まれるような雰囲気にも関わらず、男はその小さな世界を気に留めもせず雑に折った紙束にボールペンを走らせていた。時折眉を顰めれば縦に線を引き、横線かと思えば何重にも丸を付けて矢印を伸ばす。

 数分もすると作業が終わったのか、紙束から目を離した。

 神妙な顔は崩さず、かさついた唇の端が僅かに動いた。それと同時、舞台上奥から足音が聞こえた。足音は少しずつ大きくなり、やがて持ち主が男と同じ照明の下に姿を現した。

 

「何してるの?」

 

「見ればわかるだろ。仕事だ」

 

「それ、今回の舞台のじゃないよね」

 

「このご時世、舞台一つで食っていけるわけでもねえのさ」

 

「舞台一つで生きてるあんたが言う言葉じゃないでしょ」

 

 男は青年の皮肉めいた、ともすれば賛辞にも値するその台詞に溜息を吐いて返した。

 

「……それで、何のようだ?」

 

七生(ななお)たちが通しの確認をするから呼んで来いって」

 

「それくらいお前たちでやれといつも言ってんだろ」

 

「俺も言ったけど、直前だからってさ」

 

「はっ、いつまで経っても親離れできねえヒヨッコどもが集まったもんだ」

 

「集めたのはあんただけどね」

 

「うるせぇ」

 

 男は舞台に上がり、やってきた青年と消えてゆく。その後ろポケットには丸められた紙束がしっかりと入れられていた。

 

 

 

 

 

 第七話「 キカン也 」

 

 

 

 

 

「た だ い ま ぁ - !」

 

 前方一〇〇メートル付近、絹質の黒髪と広げた手を激しく振りながら迫ってくる一か月ぶりに見た夜凪家の主君たるや彼女の姿があった。季節は初夏へと移り、そのため恰好は半袖半パンとラフなものへと変わっている。

 

「お姉ちゃん!」

 

「姉ちゃん!」

 

 一〇秒を切るのではないかという速度でやってきた彼女は同じく駆け寄った弟妹二人と強く抱き合った。

 

「元気にしてた? 怪我してない? 風邪も引いていないかしら? 毎日ちゃんと食べてた? 」

 

 再開を喜ぶのは良いが、せめて家中で騒いで欲しいものだ。

 夜凪家は商店街へ繋がる一番大きな道に面しており、周囲には住宅街が広がっている。現在の時刻は休日のお昼とはいえ、まだらに主婦の姿が見えた。そのおかげか、あいつと弟妹――三人の姿は非常に目立っており、おまけに近くにいる俺も注目されているのだ。

 

「特に何もなかったから大丈夫だよ」

 

「おれも何もなかったよ」

 

「良かった……」

 

 安堵の顔を浮かべている。

 あいつが気にせずとも、体調管理含めて二人の健康は気遣っていた。この時期は初夏に入るため寒暖差についていけず、身体が出来ていない小学生は体調を崩しやすくなる。毎日梅肉おろしを癖の分からない程度にトッピングしたり、体内の循環を促進する食材を選んでいたので抜かりはない。

 余談だが、ひと月分の食費や弟妹二人にかかる、学業品などの諸経費はジャージ女から貰っている。どういう雇用形態なのかは分からないが、所属していることになるので給料が出ているようだ。CM、映画、多岐にわたる仕事はそれなりに貰っていると言っていた。もっとも、殆どはレイとルイの将来のための貯蓄に回されているようだが。

 最低限の生活から、平均的な生活水準が上がっただけでも良かったのだろう。

 

「あ——」

 

 視線が交わると、二人の頭を撫でて家の前にいたこちらに来る。

 

「二人を見てくれてありがとう。助かったわ」

 

「気にするな。レイとルイは良い子だ、苦にはならなかった」

 

「ふふん、もちろんでしょ」

 

 自慢気に無い胸を張っている。

 おくびには出さない。こいつは間違いなくプロポーションについて一言いえば、一〇の言葉と一〇〇の拳が降ってくる。そういうタイプだ。

 

「ここは人の目が多いから、積もった話は中ですると良い——レイ、ルイ、中に入るぞ」

 

 二人を家の中に入れる。

 どうだ、完全に俺の手中にある。今後お前が二人の面倒を見るのは厳しくなっていくぞ。

 

「む、そう言えば」

 

 入る直前、ジャージ女の言伝を思い出す。

 

「落ち着いたら、午後には事務所へ来てほしいと言っていたぞ」

 

「今日?」

 

「ああ、ジ——柊さんからも、連絡が来ていただろう?」

 

 危うく失言しそうになったが、すぐに言い直す。噛んだとしか思わないだろう。

 彼女は気にした様子もなくスマートフォンを取り出すと、指を動かして操作する。

 何を考えているか分からない——こいつはそんな評価をされること多々あるが、一年経てばその表情を読み取ることは簡単だ。僅かに開いた瞳孔から、連絡はあったが気付いていなかったのだろう。

 

「……無かった」

 

「本当か?」

 

「……うん」

 

スマホ(それ)使いこなせてないことを誤魔化しても意味ないぞ」

 

「……違うもん」

 

 手押し相撲が如く問答をする気はない。

 たまさかこうして意味のない意地を張るのはやめて欲しいものだ。

 

「……」

 

「どうかした?」

 

「いや……」

 

 一月ぶりにこいつを見たとき、妙な違和感があった。

 男子、三日会わざればなんて言葉もあるが、それはきっと女子であるこいつにも通用する。ましてや一月、無人島で映画撮影だ。変わらないほうがおかしい。しかし、何が変化したのかといえば——容姿が変わったわけでも、性格が変わったわけでも、雰囲気が変わったわけでもない。

 そう……こいつは————無地だったTシャツに悪戯書き(・・・・)を施して帰ってきたのだ。

 壊滅的なファッションセンスを持ち、何故かそれを自信満々に見せてきては「メンズ物もある」と進めてくるとんでもない感性を十七年間は保持し続けたこいつは、遂に適当な人間が来てもある程度はお洒落に見える白いTシャツに囂々(ごうごう)と幾つもの黒ペンを走らせていた。

 これが巷で話題の、信じて無人島に送り出した友人が白いTシャツに悪戯書きをして帰ってきたという奴だろうか……だが、そんな俗物的なものであると偏屈に決めつけるのは早計な可能性もある。

 

「それはどうしたんだ?」

 

「……? これは——」

 

 裾まわりを伸ばして見せつけてくる。

 

「撮影が終わってからバーベキューをしたんだけれど、そのときに撮影メンバーが思い出にって言って書いてくれたの」

 

「ああ……そうか、なるほど。良かった——んん、良かったじゃないか」

 

 勘違いだった。

 勘違いで良かった。

 これがもし純粋に遊びで書いていたとすれば、往来で説教をしなければならなかった。

 

「大切なものだ。また時間のあるときに、飾ることの出来るようにホームセンターでも行こう。良い額縁があるはずだ」

 

「本当? 飾れるなら飾りたいわ。初めての映画だったし、とっても楽しかったから」

 

「その話はレイとルイに、な」

 

「うん」

 

 溢れんばかりの笑みを浮かべて家に入る彼女の背中には、前と同じように幾つものサイン(・・・)が書かれていた。

 裾を伸ばした彼女の手のひらに天使の羽が握られていたことに気付くのは、もう少し先である。

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

 

 無事弟妹と友人に顔を見せた夜凪は自身の所属する『スタジオ大黒天』に足を運んでいた。

 一番座り心地の良い椅子に踏ん反り返る黒山と、デスクチェアを前後逆にした柊が手を振って迎える。暫くぶりではあるが、特に喜び合うこともなく坦々と今回の撮影で得たものを話す。時折、柊が百城千世子の話題に声音を浮つかせる以外、黒山は静かに聞いていた。

 

「次の仕事は?」

 

 真っ直ぐと腕が伸びた。

 黒山の口が半円を描くと、机の上にあったクリアファイルに纏められた書類が投げられる。

 

「——()だ」

 

「劇……?」

 

「ああ、演劇だ。

 撮り直しも効かず、その日の本番一回きりで最高の演技をしなきゃらならねぇ……今のままのお前じゃあ無理だろうな」

 

 客観視された己の評価に、負けず嫌いが鎌首を上げそうになるが押さえ込む。

 何もかもが草案段階のうち、一枚の表紙を手にした。

 寡黙な夜空、

 瞬きをする星々、

 そして——鉄の棺桶。

 

「『銀河鉄道の夜』……一々説明しなくとも学校の授業で少しくらいはやったことがあるだろ?

 その中の登場人物の一人が、次の仕事だ」

 

 『銀河鉄道の夜』。

 宮沢賢治、遺作——主人公、ジョバンニとその友人カムパネルラが銀河鉄道と呼ばれる機関車に乗って様々な人間と出会う作品だ。完結していない最終話を夢想するファンは未だ根強く、今もどこかで二人の旅路の結末が描かれているだろう。

 

「……」

 

 黒山は敢えて、配役の決まっているカムパネルラであることを伝えなかった。

 伝えていれば、それもまた夜凪らしい(・・・・・)演技になると予想している反面、伝えなければその予想すらも凌駕した演技が見れるかもしれないと思ったからであり、それ以上に自身の作り上げる作品に登場する役者になることを望んでの打算だった。

 何より、監督が監督だ。

 例え才能を持とうが、役者歴半年に満たぬ夜凪が参加出来る世界ではない。その誰かは顔にも口にも出さぬものの、面白いと思った男が見出した面白い人間に興味を持ったから、という奇運の巡り合わせが隠れている。

 無論、夜凪が無臭(・・)だった場合は白紙になること間違いないのだが……彼女に限ってそれはないというのは関係者の一致である。

 

「けいちゃん、これ」

 

 傍にいた柊が差し出したものを、夜凪は反射的に受け取った。

 

「……?」

 

「来週末にやる演劇のチケットだよ。事務所の繋がりで偶然手に入ったからけいちゃんにあげるね」

 

 余談だが、繋がっている先は当然『劇団天球』で、関係者席用に余っていたチケットをいつの日か手伝いに柊が訪れた際に貰ったものである。

 二枚——柊と、もう一人いたのだ。

 ここで柊のお節介、またの名を野暮が発動してしまう。彼女は器用さから今の場面を予想して、夜凪に二枚あげるつもりだったのだ。さらにその先、夜凪ともう一枚のために彼女が誰を誘うのかも予想して。

 柊の言い分をもう一人が聞いていれば、彼はすぐにチケットに記された劇団名を照らし合わせて、心の中で彼女を罵っていただろう。

 

「二枚あるし、友達と行ってきたら?」

 

 柊は我が事ながら夜凪を——勝手に——理解した自身の行動ににやけそうになる顔を制し、再度釘を打つ。

 

「あ、ほら……えーっと、たしかレイちゃんとルイ君を見てくれてた友達がいたよね。お礼も兼ねて一緒に行ったらどうかな。私もけいちゃんの家に通ってた手前話すことがあったんだけど、結構そういうの好きなタイプじゃない?」

 

 直接色ごとに結びつけるのではなく、お礼という言い訳。そして、柊という客観視した人物が述べる芸術作品を好むのではないかという付加価値。さらには語尾を夜凪に委ねる形にすることで「たしかにそうかもしれない」という感情の起伏を生み出す余薀のない構成だ。

 

「誰と行くにしろ、観るべき部分と学ぶべき部分……まずは演劇がどういうものか知ることだな。

 CMや映画と違ってリアルで観せるのが演劇。最初はそれに触れてこい」

 

「分かったわ」

 

 夜凪は渡されたファイルにチケットをしまい、黒山に今日の用事は終わりなのかと尋ねた。

 

「ああ、とりあえず当分は演劇が中心になる。まる一月の撮影期間で乱れたリズムをこっちの生活に整調するのも忘れんなよ」

 

 規則正しい生活をしていたとはいえ、夜凪の本業は学生だ。本分はともかく、久しぶりの学校生活に戻るには本人が思っているよりも苦労するかもしれない。

 

「……ええ」

 

 ——それは、百城千世子と共演したという事実も含めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 めっちゃデスアイランドで景ちゃんと千世子ちゃん出演してるのを主人公が知るの引き伸ばしてる(伸ばしちゃった)けど、東京ってピカピカした看板多いし、そういうとこに広告っていっぱいありますよね?
 ましてやデスアイランドっていう原作人気漫画かつ、スターズの俳優いっぱいムービーだから絶対宣伝されてる。むろん、千世子ちゃんドアップで。

 じゃあ絶対主人公見てるやん!

 最悪だぁ……こういうスカスカな部分出てくるとやるせなくなるなぁ……。
 主人公の名前出してないのも思い付かなかっただけだし……当初、王賀美海とかにしてさぼろうかと思ったけど、それじゃあ血筋とかで千世子ちゃんと張り合ってるって印象になるので没案になりました。
 そういうとこ拘って、細かいところに気が配れない、集中力散漫や……これも全部コロナでインターンとか就活の予定が総崩れになったせいや……



 主人公と景ちゃんの関係について、スキャンダル云々どうしようかと思いましたけど、環があんな感じだった黒山さんも余程じゃない限りは気にすることはなさそうですね。良かった…。






原作登場人物の背景も少し増やしてほしい

  • 主人公が直接関わるようなら
  • できれば
  • 別に良いかなぁ
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