中野家の執事くん   作:K-Matsu

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最終巻発売されましたね……。

それでは、どうぞ。


Episode2 First Contact

なんでこうなったのか……。

 

グラウンドや野球場と言った屋外施設を案内しながら少し思い返してみよう。

 

1限目の授業が終わってすぐに校内放送で呼び出され、何か変な事したっけ……?と思いながらも職員室へ。

 

そこで展開されたのは……。

 

『転校してくる娘たちと知り合いらしいね』

『じゃあ彼女たちの案内よろしく』

『成績優秀なキミなら多少授業出なくても大丈夫でしょ?』

『その代わり案内してる間の授業は出席扱いにするよう言っとくからよろしくね』

 

ってことだった。

 

うん、やっぱりどう考えてもおかしいと思う。

 

まぁ、『やれ』と言われたらやるしかないけどさ。

 

外の施設の案内を終え、今度は校舎の中の案内をしようと移動していると姉妹たちが何か品定めをするようにまじまじと俺を見ていた。

 

「どうした?」

 

「制服着てるナナミくんはよく見るけどもやっぱり学校で見るとやっぱりいつもより違って見えるね」

 

「不本意だけど一花の言う通りね」

 

「言えてる」

 

うんうん、と四葉と五月も同意するように頷く。

 

いつもと至って変わらず普段通りなのだが、姉妹たちには少し違って見えているようだ。

 

「そう?」

 

「そうですよ。それに七海さん生徒会の副会長さんだったなんて知りませんでしたもん」

 

そうだったか……?と思ったが、確かに生徒会副会長になったことは姉妹たちに言ってないことを思い出した。

 

あの時は色々立て込んでてみんなピリピリしてたから言いそびれたんだった。

 

「副会長って言っても一般生徒と大して変わらないからなぁ……」

 

「七海くんの事だからてっきり全校生徒の顔と名前が一致してるものだとばかり……」

 

「まだ8割くらいしか一致してないからそれはまだ無理だな」

 

8割も一致してれば十分過ぎるような、と声が聞こえた気がしたけども気にせずに姉妹たちを引き連れて校舎内へと歩みを進めた。

 

 

 

 

校舎の中を案内していたが、半分もしないうちに昼休みの時間になった。

 

それぞれ食べたい物を厨房の人たちに言って代金と引き換えに受け取り席に着いていくが、先生や生徒で埋め尽くされた食堂で6人分の座席を確保できる筈がなく4人と2人に分かれざるを得ない状況だ。

 

話し合いの結果五月と俺、あとの4姉妹に分かれることとなった。

 

「おうどんと海老天2つにいか天にかしわ天にさつまいも天。あっ、プリンもお願いします」

 

「は~い」

 

「牛丼とうどんとサラダ特盛に牛乳にプリン。お会計はこの娘と一緒で」

 

「はいよ~」

 

「……いいんですか?」

 

「いいよ、これくらい。その代わり4人には内緒な」

 

五月はありがとうございます、と笑顔で答えた。

 

これが一花や四葉だとすぐに他の姉妹たちに話してしまい、全員何らかのタイミングで奢らなければならなくなる。

 

その辺五月は口が堅いので気軽に奢ることが出来る。

 

「水は?」

 

「お願いします。私は席取っておきますね」

 

「ん」

 

二手に分かれ五月は席の確保に、俺はウォーターサーバーの列に並ぶ。

 

それほど並んでいなかったため割とすぐに水を汲むことが出来た。

 

「さて、と……」

 

どこの席を確保したのか周囲を見渡す。

 

姉妹たちの制服は明日届くため、まだ転校してくる前の学校の制服のままだ。

 

一花たち4人はすぐに見つかったのだが、肝心の五月がなかなか見つからない。

 

あまり遠くには行ってないはず、と目線を奥の方から手前へ移すと五月の姿を見つけた。

 

どうやら無事に席は確保出来たみたいで、すれ違う先生や生徒たちとぶつからないように歩きながら五月の元へと近付いていく。

 

そこで五月を探すのに集中してて気が付かなかったが、目の前には1人の男子生徒が座っているのに気が付いた。

 

五月は不機嫌そうな様子を隠さず目の前に座る男子生徒を一瞥し、また男子生徒は五月を意に介さずプリントを見ながら黙々と食事を摂っていた。

 

ご飯に味噌汁に……生野菜?

 

生野菜が乗っている皿には肉の脂や揚げ物の衣が無く、ホントに生野菜だけが乗っていた。

 

こいつ、ホントにこれだけで足りるのか?

 

「七海くん!聞いてください!この人が……」

 

「あんたが勝手に座ってきたんだろ?」

 

話の腰を折られた上にぶっきらぼうに吐き捨てられ、五月の不機嫌度合いがさらに増してしまった。

 

「それにあんた生徒会の副会長だろ?他校の女子生徒を連れ込むなんて何考えてんだ?」

 

そしてその矛先はこちらにも向いてきた。

 

「この女子生徒は今度ここに転校してくるんだ」

 

「ふ~ん……」

 

男子生徒は興味ない、と言わんばかりの生返事だけして手に持っていたプリントへ視線を戻した。

 

五月程ではないが確かにムッとなる気持ちが分かる。

 

言葉のキャッチボールというか最低限のコミュニケーションもすら放棄しており、いかにも『ガリ勉』の悪いイメージをそのまま体現していた。

 

「ごちそうさま」

 

男子生徒は食事を終え、お盆を持って立ち上がった。

 

「お昼それだけで足りるのですか?」

 

「あぁ、満腹だね。あんたら見てると胸焼けしそうだ」

 

そしてこの男子生徒は五月に目を向け、とんでもない爆弾を落としていった。

 

「特にあんたは頼みすぎだ」

 

__太るぞ、と。

 

流石に女性相手に無神経な発言に五月は言葉を失い、そして男子生徒の姿が見えなくなったと同時に怒りが頂点に達した。

 

五月の怒りを収めるため、食後のデザートとして頼んだプリンを献上する羽目になったのは言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

すっかりご機嫌斜めになってしまった五月を宥めつつ学校案内を続けたり、帰りのホームルームで転校生紹介として俺が所属するクラスに三玖が入ってきたり、三玖との関係性を追求されたりとなんやかんやあった後の放課後。

 

姉妹たちに断りを入れて先に帰っていてもらい、生徒会の雑務をしているときだった。

 

『~♪』

 

「!……マジかよ」

 

テーブルの上に置いていた俺のスマホが鳴り出し、発信主の名前を見てため息を出し、悪態をつかずにはにはいられなかった。

 

しばらく出ようか出ないか迷った挙げ句、しぶしぶ電話応対する。

 

「………はい」

 

『水瀬くん。今日は娘たちの案内ご苦労様』

 

「……やっぱあんたの差し金だったか」

 

『学校の先生たちには申し訳ないが、気心や事情を知ってる相手の方が娘たちも警戒しなくても済むだろう?』

 

「そりゃそうだが……」

 

双子ですら珍しいのにそれが五つ子なんて案内をするはずだった先生も気を遣うだろうし、ましてやこんな時期に転入。

 

まさか『どうしてこの時期に転校してきた?』だなんて聞こうもんなら、何が起きるか分かったもんじゃない。

 

それでも出来ることなら前もって言って欲しかった、というのが正直なところだ。

 

「それで本題はなんなんだ?まさかそんな話をするために電話してきたんじゃ無いんだろ?」

 

この人がこんな世間話の類いをするためにいちいち電話してくるような人ではないし、そもそもそんなに暇な訳がない。

 

『明日から彼女たちに家庭教師を雇うことにしたんだ」

 

「家庭教師、だと?」

 

耳を疑った。

 

「正気か?」

 

『もちろんさ』

 

伊達や酔狂を言うような人間ではないことが分かっているからこそ、彼女たちに家庭教師をつけるなんて正気の沙汰とは思えなかった。

 

『そこでキミには彼のサポートをお願いしたい』

 

「……承知した」

 

『江端経由で家庭教師の身辺調査の報告書をキミの部屋のポストに入れておいた。夜になったら目を通しておいてくれ』

 

そう言い残して通話が切れた。

 

なんというか……。

 

「大丈夫、なのか……?」

 

一抹の不安は消えそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

夜ご飯を食べ終え姉妹たちが各々くつろぎ始めた頃合いを見て、自室へ引き上げてから例の家庭教師の身辺調査の報告書に目を通す。

 

粗方目を通してから報告書を置き、天井を見上げる。

 

「家庭教師、あいつかよ……」

 

そう呟かずにはいられなかった。

 

一番上のページには『上杉風太郎』という名前と、五月にとんでもない爆弾を落としていった男の顔写真があった。

 

 




原作も終わり、最終巻も出ましたがアニメ最終話が終わるまでには完結させたいと思います。

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