そう言えばアニメ2期始まりましたね。
「休日くらいゆっくりさせて欲しいわね……」
「日曜日にあの人と顔を合わせたくありませんでした」
不機嫌な様子を微塵も隠そうとしない二乃と五月。
かくいうオレも2人とは違った理由であまり顔を合わせたくない。
家庭教師を付けてから初めての日曜日。
普段であればそれぞれ有意義と思える時間を過ごしているのだが、早朝に上杉から連絡が入った。
内容としては全員を家に引き留めておいてほしい、というものだった。
一応彼女たちの執事として、今回限りである事とこれからはそういう事は控えてほしい事は伝えさせてもらった。
アポなしで彼女たちの予定を潰させてしまったのだから、これからは姉妹たちの都合を考えてほしい。
そして予定の時刻となり、寸分の狂いもなくやって来た上杉は何故か意気揚々とした様子だった。
「この間の悪行は心優しい俺がギリギリ許すとしよう。そして今日はよく集まってくれた!」
「まぁ私たちの家ですし?」
「まだ諦めてなかったんだ……」
「今日友達と遊ぶ予定だったんだけど?」
「お前たちは家庭教師はいらないと言った。だったらそれを証明してくれ」
そう言って持参したクリアファイルから何枚かの紙を取り出し、姉妹たちに渡していく。
テーブルに近付き、何を渡されたのか確認すると問題用紙と解答用紙がそれぞれ1枚ずつ配られていた。
「一応聞くがこれは一体?」
「今からこいつらにはテストをしてもらう」
「……赤点ラインの人間だけに絞って教える、ってことか?」
「そういう事だ。合格ラインに到達した奴には金輪際近づかないと約束しよう」
上杉の言葉を聞いて姉妹たち……特に五月の目が光った。
「少しはやる気が出たようだな。それでは…始め!」
上杉の合図と共に姉妹たちは一斉にペンを走らせ始める。
効率だけを見ればそれが一番手っ取り早いだろう。
ただ、家庭教師の対象となる人数が5人だから雇用的には少し問題があるけども。
俺も少し目を通したくて上杉から問題用紙と解答用紙を借り、コピーを取らせてもらってから改めて問題に目を通していく。
問題用紙が手書きだったことには少し驚いたが、上杉の努力が滲み出ている味のあるテストだ。
ただ……。
(……出題の教科が偏りすぎじゃないか?)
国・数・英・理・社の5教科が1枚の問題用紙の中に詰め込まれているため、問題が少し偏ってしまうのは仕方ない。
だが、このテストは社会と数学に比重が置かれており、国語に至っては10点分あるかどうか、だ。
せめてこのテストの採点で少しでも彼女たちの本質を理解出来てくれればいいんだがな……。
その後も緊張の糸が張り詰めたリビングに秒針が進む音だけが響き、時間にしておよそ30分くらい経ったところでテスト終了の声が響いた。
上杉が答案を回収して一枚ずつ一問ずつ採点していく。
最初は仏頂面だったが、赤ペンを走らせるにつれてみるみるうちに冷や汗が流れ、表情もより険しくなっていった。
「採点終わったぞ。お前らすごいな、100点だ」
だが、と前置きしてから答案用紙をテーブルの上に叩きつけるように置かれた。
「5人全員合わせて、な!!!」
叩きつけられたテストの点数を眺める。
えっと…、最高点は三玖の30点で最低点は四葉の8点。
あとは一花が25点、二乃が17点、五月が20点だった。
歴史と数学が多めだったから三玖と一花が比較的点数が取れており、逆に国語の問題がほとんどなかった四葉は点数を稼ぐことが出来なかった。
それに乗り気が全くなかったテストだし、これくらいが妥当なところでしょ。
「そんな…!どうして…!?勉強したはずなのにっ……!」
五月だけはまた別の事情が絡んでいるのだが、合格ラインにもすら届かなかったことに呆然と、そして悔しそうに呟いた。
「お前ら…!」
ワナワナと身体を震わせる上杉が何かを言うよりも早く、姉妹たちはそれぞれ自分の部屋に逃げ去っていく。
「全員赤点候補かよっ!!!」
「まぁ、そういうことだ」
「お前!知ってたんなら早く教えろよ!!」
「まぁまぁ。でも……」
怒りで掴みかかりそうなところを寸前で躱し、姉妹たちの答案用紙を上杉に返却する。
それに仕えている側として、彼女たちがバカバカ言われ続けるのは正直いい気はしないのでフォローを入れさせてもらおうかな。
「テストの答案用紙をよく見てみろ」
「はぁ?これを見たってアイツらの馬鹿加減が分かるだけだ…ろ…!?」
鼻で笑うかのような状態だった上杉だったが、5枚並べた状態でテストの答案を目を見開いて食い入るように見始めた。
ようやっと気がついたか。
「偶然か、これは!?」
「偶然なんかじゃあ、ねぇよ」
否定したくなる気持ちは分からなくはないが、残念ながらこれは偶然でもなんでもない。
「彼女たちはな……」
___自分の得意科目なら点数が取れるんだよ。
『そうか。彼と接触したか』
夕食後、少し先にお暇して自分の部屋に戻り彼女たちの父親に報告の電話を行った。
『それで、彼はどうだい?』
「二乃と五月には相当毛嫌いされてるし、今のところ奴の味方は四葉だけだ」
『一花くんと三玖くんは彼の味方じゃないのかい?』
「一花は中立。三玖は……どうなんだろうな」
中立と言うわけでもなければ敵対視してるわけでもない。
他の4人とは違い、三玖だけに関しては今日だけでは判断しきれなかった。
曖昧な返事に興味を無くしたのかまぁいい、と返答が来た。
『じゃあ、僕は仕事が忙しいから切るよ。家庭教師をした事は逐一報告するように』
そう言ったきり、通話が切れた。
ケータイを机の上に置き、深くため息を吐きながら思う。
中間管理職ってのはこんなにも苦労するもんなんだな、と。
どっと疲れが来たため、部屋着に着替えてベッドにダイブする。
風呂は明日の朝イチで入り、明日以降の事は明日考えることとにしてそのまま目を閉じ夢の世界へと飛び込んだ。