居候先である一筆家に戻ってきた404小隊の一行。
外は既に陽が沈んで空は紺色に染まっていた。
「ただいまー」
45は自宅感覚で声を掛け、三人もその後ろを歩いて入って行く。
「ああお帰り、異人町はどうだった?」
「……凄まじい場所だったわ」
一日で濃い体験をして、それ以外の感想が浮かばない45はとりあえず言っておいた。
大きなリビングでそれぞれ好きに過ごしている中、一筆が45に声を掛ける。
「ご飯いるかい?」
「んー……衣食は自分で用意するって言ったし、別にいいかな」
「そっか……でも、一緒に住む事になったんだし、欲しくなったらいつでも言ってね」
「でもタダって言うのも悪いわね……」
「それじゃあさ、こういうのはどう?」
会話に割り込出きたのは9だ。
「私達が材料を用意するから、一筆さんに作ってもらうっていうのは?」
「それならいいね、どうかな?」
9と一筆に言われ45は少し考えて決めた。
「うん、それならいいかな。時間が出来たら持ってくるからその時はよろしく」
「任せて、それより家の縁側は見た?」
「縁側?」
「自慢じゃないけど、家の庭すごく綺麗でさ、縁側で空や景色を眺めるのもいいんだ」
「へぇ……まだ寝るには時間もあるし、少し見て行こうかしら」
45はそう言って家の縁側に向かうのだった。
一筆家の和室には縁側がありその先には、こじんまりしているが緑が溢れ、花壇があり、一本の木が伸び、木の塀で囲まれたシンプルな庭が広がっている。
「悪くないわね」
404小隊がいた世界でも森はあったが結局は戦場である事は変わらず、息を付けるような場所ではない。
だが、この庭では45は不思議と心が落ち着いていた。
「ふぅ……」
縁側に腰を下ろし、目的も無く辺りを見渡すと、両膝に両肘を当て両手で頬杖を突く。
「ああ゛~~」
その時、後ろからだみ声が聞こえ、頬杖を止めて後ろを向く。
「416? アンタ、その手に持ってるの……」
「冷蔵庫漁ったらあったのよ~」
顔全体を真っ赤にし、千鳥足の416の手にはグレープサワーと書かれた紫色の350mlの缶が握られていた。
「全く、バレたら謝るの私なのよ?」
「うるさいわね。私は完璧だから何やってもいいのよ」
(完全に入ってるわね)
アルコールの低い酒で既にへべれけ状態になっている416の姿に小声で愚痴をこぼす。
「シラフになったら覚えておきなさいよ」
「はぁ~、これが本物の世界なのね~」
「しれっと私の隣に座るんじゃないわよ」
いつの間にか45の横に座っている416に呆れて厳しめに対応する。
「文句あるの⁉」
「あ、怒り上戸」
「アンタは何にも思わないの⁉ 私達は作られた存在だったのが!」
「私達は戦術人形よ? 今更それ言う?」
「それだけじゃない、私達が今まで見てきたものも、やってきた事も何もかもが作られていた! 全部茶番だったのよ!」
「茶番?」
「私達は何なのよおおおおおお!」
泣き上戸が入り、声を上げて泣き出す416の姿に45は思考を動かす。
(かなり気が立ってるわね、何て答えようかしら)
「でも、私達は生きている。それは変わっていないでしょう?」
(少しだけ熱くなれた気がするわね……)
「なによぅ……」
「たとえ全部が作り物でも、私達が通った軌跡は茶番だなんて思わない」
「かっこつけちゃってぇ……」
「それに、先の事は作られた側も作った側も分からない。私達は実質、生きている。それだけは確信が持てるわ」
「うぅ……ぐずっ」
「後、鼻啜らないでうるさいから」
「しきかーん……45がいじめるー」
「何でそうなるのよ。いじめてないわよ」
「あー……」
そう呻くと、後ろに倒れて動かなくなった。
「416?」
軽く頬を二発叩くが、寝息を立てている。
「コ、コイツ……散々騒いで寝やがった……」
「さっきから騒がしかったけどどうしたの?」
そこへ、一筆がやって来て、転がっている缶を見て問い詰める。
「あれ? もしかして君が……」
「あ、私達これでも成人してるから」
「そうなの⁉」
45のその場しのぎの嘘を真に受けて驚く一筆に続けて45が話す。
「それよりごめんなさい、衣食は自分達で用意するって言った手前なのに……」
「ううん別にいいよ」
「彼女、本当に酒癖が壊滅的に酷くって……」
「酷い?」
「ビール一本で大暴れするレベルでね」
「えぇ……」
生真面目そうな容姿と性格とは裏腹な酒癖に引いている中、45が416の両脇を抱え引きずっていく。
「今日はもうお休みさせてもらうわ」
「そっか」
「それじゃおやすみなさい」
「葉子ちゃん」
一筆に呼び止められ、416を引きずって部屋を出ようとした45は足を止める。
「何?」
「君も辛い事があったら、いつでも相談してね」
「一筆さん?」
「その……指揮官って人にはなれないと思うけれど……」
「……聞いていたのね」
「ゴメン」
「……ありがとね、いざって時には頼らさせて貰うわ」
一筆の優しさに45は微笑み、和室から出て行くのだった。
借り部屋に戻ると、四組の布団が敷かれており11は既に夢の中、だが9は起きていた。
「あ、45姉。布団敷いておいたよ」
「ん、ありがと」
45は9に感謝して、引きずってきた416を雑に布団上に投げ捨てると、自分の上着を脱ぎ416の頭に被せる。
「さっき騒がしかったけど、何かあったの?」
「416の顔を見れば分かるわよ」
45に言われ9は上着で隠された顔を覗く。
「あー……」
それで全てを察した9は、適当に言葉を発しつつ上着を戻す。
その間に自分の布団で横になった45は天井を見つめながら9に声を掛ける。
「明日も早いんだし、とっとと寝なさい」
「45姉」
「ん?」
頭を左に向けると9が45の隣で寝そべって目と目を合わせた。
「私達どうなるのかな?」
「何よ不安なの? 9らしくないわね」
「だってこんな事初めてだし、そういう45姉は?」
「確かに初めてだし、平気って言われたら全肯定出来るわけでもないし。んー……」
少し考え口を開く。
「孤立無援で今は手探りしかないけど、何かを掴める可能性もあるから不思議と不安は無いのよね」
「そういうもんかなぁ……」
「そういうもんよ。ほら、とっとと寝なさい」
そう言って45は悪童の顔で9の鼻をつまむ。
「んー」
呻く9を見て45は手を離すと起き上がり、改めて挨拶をする。
「それじゃ、45姉おやすみ」
「おやすみ」
9は自分の場所に戻っていき、45も明日の事を考えながら意識を消していった。
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