ある指揮官とある人形 作:名無し
79式の小説があまり見当たらないので自分で作ればいいじゃんと思い立ち執筆致しました。もっと日本で79式を広めたいです。
とりあえずその1です。
リクエストは常時受け付けております。感想欄をご利用ください。可能な限り答えます。
追記(2020/04/10)
サブタイトルの修正、文章レイアウトの変更。
本文の内容には手を加えておりません
入手
報告書を作成しているとノックの音が響く。入ってよしと促すと見慣れない人形が1人。そう言えば本部の方に製造を依頼していたな。
「我が基地にようこそ。君が新しくここに着任する人形かな。」
「はい!指揮官さま!79式ただいま到着しました!ご命令を!」
ハキハキとした口調、ビシッとした敬礼。どうやら真面目な子のようだ。だか少し緊張しすぎているように見える。
「そう固くならなくてもいいさ。ここは補給基地、最前線じゃない。気を張り続けていては疲れるだろう。適度に気を抜くことをオススメするよ。」
目を丸くしてぽかんとそれはそうか。上司との初対面で緊張している時にこんなことを言われたら。状況を自分と社長に置き換えてみる。うん。そうなる。
「大丈夫かな、何やら動揺しているようだけれど。」
「い、いえ!79式、ご命令とあらば全力で気を抜きます!」
…まだ動揺しているようだ。
『指揮官さま!79式ただいま到着しました!ご命令を!』
挨拶
朝の準備もそこそこに自室を出て執務室に向かう。現在時刻は午前5時。基地の長たるもの部下の模範にならねばならない。故に誰よりも早く起き仕事に着くのは当然のことなのである。そうして意気揚々と扉を開くと
「指揮官さま、よくぞ来て下さいました!今日のご指示は?」
なんでぇ?まだ5時だよ?
「今日の副官は私ですから。副官たるもの他の人形の模範にならないと!。」
とても得意顔だ。ムフンとかドヤッみたいな擬態語がピッタリな。…なんか犬みたいだな。なんというかこう…褒めてほしそうな。いや撫でないぞ。セクハラになる。
「それにしても…早いな。79式。始業は7時だと伝えていたはずだが。一体何があったんだ?」
どうにかしてイケてる上司を保とうとしてみる。そこ。既に壊れてるとか言わない。
「それを言うなら指揮官さまも同じでは?」
『指揮官さま、よくぞ来て下さいました!今日のご指示は?』
部隊編入
書類作成を一旦区切り、休憩に入る。色々話しているうちに、まだ79式の配属先を伝えていなかったことを思い出す。
「79式、いきなりで悪いが戦闘と後方支援、どっちの方がやりたい?」
「どちらかと言えば戦闘でしょうか…。はい。その方が性にあってます。」
「わかった。なら君は第1部隊に編入だ。主に警備や護送任務を行ってもらう」
意表をつかれたような顔をしてこちらを見つめる79式。何が意外だったのだろうか。
「はい…。ですが私のような新参者がいきなり第1部隊に入ってもいいのでしょうか。第1部隊と言えばその基地の主戦力になるとよく聞いているのですが。」
思わずバツが悪そうな顔をしてしまう。補給基地としか伝えてなかったから当然と言えば当然の帰結なのだが。
「その…うちは補給基地ってのは前にも説明したよね。」
頷いてくれたので続きを話す。
「補給基地だから戦力は必要ないだろって最前線に引き抜かれたりそもそも来なかったりするからここの戦力は少なくて…。」
なんとなく察してくれたのか微妙な表情をしている。
「だからうち、2部隊しか居ないんだ。なんなら君がうちの最高戦力。」
2人して曖昧な笑みを浮かべる。
「まあそういう訳だ。第1にてその力、存分に発揮してくれ。」
「了解しました!79式、チームに加わります。」
『79式、チームに加わります。』
強化完了
時刻は午後10時。終業時間が過ぎ、もうすぐ消灯時間に差し掛かる頃。施設の施錠を確認していると工廠の電灯がまだ消えていないことに気がついた。今日は残業の報告など受け取っていない。誰が工廠を使っているのだろうか。他の場所はもう確認が終わったし、見に行くとするか。
「…は、どれ…強化すれば…。」
中に入ると微かに響く声と時折響く銃声。音の出処に目を向けると思い詰めた顔で射撃場に立つ79式がいた。大方、
『次は、どれを強化すればいいの?』
とでも言っていたのだろう。完璧主義の彼女は何やら納得していない様子である。まだこちらに気がついていないようなので外から声をかける。
「やあ、79式。調子はどう?」
「し、指揮官さま!?どうしてここに!?」
大層驚いた様子。気がついていないようなので苦笑しながら時計を指す。状況を理解したのか大慌てで片付けを始めるが、かなり長時間使っていたのかかなりの量の空薬莢が散乱しており1人では終わりそうにない。手伝うか。話したいこともあるし。
「指揮官さま!これは私の不手際です。ですから自分でやりますので…」
「1人でやって終わるの?」
「それは…その。でも申し訳ないというか…。」
「ちょうど話したいことがあったんだ。作業の片手間でいいから聞いてよ。」
「…分かりました。お願いします、指揮官さま。」
納得はいってないようだが頷いてくれたので片付けを手伝う。そして気になっていたことを聞いた。
「それで、何か悩み事?こんな時間まで根詰めて。」
「…いえ、指揮官さまにお話するほどのことでは」
「終業時間が過ぎてるのに申請無しで射撃場を無断使用。十分お話するほどのことだと思うけど?」
言葉に被せるように畳み掛ける。言ってからこれはちょっと卑怯かとも思ったが、大事な部下が何かに悩んでいることは間違いない。これを見逃すのはどうにも後味悪い。
あ、俯いちゃった。強く言いすぎたかな。
「別に責めてるわけじゃないよ。心配なんだ。普段しっかりしてる君が終業時間を見逃すほどのことなんてどうでもいいことだとは思えない。
…それとも、そんなに頼りないかな。」
少し微笑んで返答を促す。吹っ切れたのか少しため息をつき、不満気な表情をして答えてくれた。
「…卑怯ですよ、指揮官さま。これじゃあ、話すしかないじゃないですか…。」
「うん。確かにあれば卑怯だったね…。まあいいや。さあ、話してご覧。」
気がつくと頭を撫でていた。突然の事で驚いたのか79式の肩がはねた。…まずいな、完全にセクハラだこれ。内心汗だくになりながら様子を伺うと初めこそ体を強ばらせていたが既にご満悦の様子。合意ならセーフか?セーフか。セーフだろう。だかこのままだと話が進まないのでそろそやめよう。名残惜しそうな顔が見えた気がするが気のせいだ。
「実は最近、思うようなスコアが出なくて…。なかなか成績が伸びないんです。色々試行錯誤したのですが、もう何を強化したら良いのか…。」
表示されている79式の記録を見ると、確かにここ最近のスコアは伸び悩んでいる。スランプ、と言うやつだろう。人形にもあるんだな。コレなら知ってる。力になれそうだ。
「79式、君のその状態を表す言葉があるんだけど知ってるかな。」
「…いえ、分かりません。一体なんなんですか?」
「それはな、『スランプ』っていうんだ。何かに真面目に取り組んでいると誰にだって陥る。」
「では指揮官さまも経験があるのですか?」
「もちろん。そして抜け出し方も知ってる。まあそれは人によって違うものだからそのまま鵜呑みにすればいいって訳じゃないけどね。まず質問。最近、自分のこと褒めてないんじゃない?」
驚いているようで目を見開いている。図星のようだ。
「その様子だとそうみたいだね。自分で自分を否定しちゃダメだよ。どんどんネガティブになって落ち込んじゃうから。それにね、スランプに陥ることは悪いことではないんだ。それは今まで真面目に取り組んできた証であり、越えることが出来たら大きく成長できる。実体験だからね。断言できるよ。」
興味深いそうに聞いていたがまた俯いてしまった。まだ自分に自信が持てないのだろうか。
「大丈夫だよ。君はよく頑張ってる。副官業務もそうだしたまにある護衛任務でも。それに、そんなに焦らなくてもいいんじゃないかな。たまには立ち止まって、周りを見渡すことも大切だよ。走っているから見えるものもあれば、止まっているから見えるものもある。
…そうそう。初めに君に言ったこと、覚えてるかな。」
「えっと…。『適度に気を抜く』でしたよね。」
「そう。ゆっくり歩いていこう。1人では出来ないなら一緒に歩こう。幸い、時間はあるんだから。」
「はい。…ありがとうございます、指揮官さま。胸のつかえが取れたような…なんだかスッキリした気分です。」
そういった彼女の顔は晴れやかで、やる気に満ちていて、今までより柔らかな笑みを浮かべていた。悩みは解決できたようだ。うん。よかった。
「じゃあ帰ろうか。行こう79式」
「あの!」
どうしたのだろうか。振り返ると顔を赤く染めた79式がしどろもどろになりながら何かを言おうとしている。
「出来ればまた頭を撫でで頂けると…。なんでもありません。お先に失礼します!」
走って先に行ってしまった。初めの方はよく聞こえなかったし、いったいどうしたのだろうか。
『次は、どれを強化すればいいの?』
いかかでしょうか。手探りで始めた小説ですが。今後自分のペースで更新していくつもりです。お世辞にも早いとはいえませんがよろしくお願いいたします。