ある指揮官とある人形 作:名無し
新型コロナウイルスの影響で家から出ることが出来ないので自分が想定していたよりかなり早いスピードで執筆できています。
皆さんも気をつけてくださいね。
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コミュニケーション1
仕事が終わり時計を見るとなんとまだ16時。今日は妙に仕事が少なく非常に早く仕事を終えることが出来た。いつもは終業時間ギリギリまで終わらないのでたまにはこういう日も良いかと思う。
「今日の業務はこれで終了だ。お疲れ様。後はもう好きにしていいよ。」
ペンを置き、伸びをした後にそう言うと、少し驚いた様子でこちらを見つめてくる。
「もう終わったのですか?いつもは終業時間まで作業を続けていますが。」
「終わったよ。ひと月前から鉄血達の行動が少なくてね。最前線の基地ですら指揮官が休みが取れるぐらいだって聞いたよ。これが続くといいんだけどね。」
とは言ったものの、本当にこの状態が続くとは思っていない。だからこそ何かが起こっても対応できるようにひと月かけて入念に資源を確保したんだ。
これだけあれば前線に融通する分を含めても十分だろう。
「まあ、そういう訳だ。さっき言った通り、今日の仕事は終わり。部屋で休むなり射撃場で訓練するなり、好きにしてていいよ。」
「指揮官さまはどうなさるのですか?」
「ここで待機…かな。指揮官が居ないと緊急時に対応が遅れてしまうし。」
「そう…ですか…。」
少し考える素振りを見せた。たしかこんな早く仕事が終わることなんてなかったな。いきなり自由時間を与えられても困るか。
あ、いい過ごし方を思いついたみたい。とてもいい顔をしている。
「では、79式、待機します。指揮官さま、いつでもご命令を!」
…こいつは何を言っているんだ?
「もうここですることはないよ?」
「はい。わかってます。」
「好きにしてていいんだよ?」
「好きにしてるだけです。」
ああ、やっとわかった。多分、一緒にいたいんだ。仕事としてではなく。
最近は忙しくて、ゆったりとした時間が取れていなかったな。
…なんだか意地悪したくなってきた。何故79式の自慢げな顔はこうも嗜虐心を煽るのだろう。
「じゃあ自室に帰って休めと言ったら?」
「…わかりました。79式、自室待機します…。」
頭を垂れて帰ろうとする。まさかの真に受けるとは。慌てて釈明を入れる。
「あぁストップストップ!冗談だよ冗談!ここにいていいから戻ってきて!」
手を引いてソファまで連れていき座らせる。まずいなやりすぎた。とてつもなく不機嫌だ。完全に拗ねてる。こっち見てくれない。
「悪かった。タチの悪い冗談だったな。反省してる。本当にすまない。」
反応はない。誠意を見せる作戦失敗。
「あー、な、何か食べたい物とかない?奢るよ?」
反応はない。食べ物で機嫌を戻す作戦失敗。
「ぅぁー、えっと何をしたら機嫌を」
「頭撫ででください」
今なんて言った?聞き間違えじゃなければ「頭撫ででください」?
でも聞き返せる雰囲気じゃない。これは本気で怒ってる。間違えたらまずいやつだ。恐る恐る頭に手を伸ばす。
…選択は正しかったようだ。
最初こそ無愛想な顔だったものの、時が経つにつれて機嫌が良くなっていった。今では鼻歌まで歌っている。
「なあ、そろそろい」
「ダメです。」
その日、解放されたのは日が沈んだ後だった。
『79式、待機します。指揮官さま、いつでもご命令を!』
コミュニケーション2
いつも通りの朝。いつも通りの
さて、話しを戻そう。問題とは何か。ズバリ、運べないのである。
これがいつも通りの資材の量ならばまだ何とかなった。1回で2人分運べば良いだけである。だが今回はイレギュラーがあったのである。本部から届けられた資材の量が異様に多いのである。問い詰めたところ0が1つ多かったことに気が付かずそのまま書類を通してしまったらしい。ちなみにここ補給基地では自前の部隊で稼いだ資材とは別に本部からも資材が届けられる。ここを中継して全線に資材が送られるわけだ。
0がひとつ多い、つまり10倍である。人並み以上の力があるとはいえ人の範疇を超えている訳では無い。いつもの2倍もって10往復。
ハハッ。
そろそろ現実逃避を終えねば本格的に仕事が間に合わない。急ぎのものはないが今日の仕事を明日に回すのは嫌だ。でももう少しだけこの現実から目を背けさせてくれ。そして呆然としていると誰かの足音が聞こえてきた。
「指揮官さま、何か問題でも?お手伝いしますか?」
あなたは神か!?いや女神だ!!
「すまん、79式、非番のところ悪いが手を貸してくれ!」
思わず駆け寄り手を掴む。逃がしてたまるものか。非番だろうが知ったこっちゃない。こっちはそれどころではないのだ。
「ぅえ!?は、はい!お手伝いします。」
突然の奇行に驚いた様子だがこちらの顔を見て落ち着いてくれたようだ。
とてつもなく情けない顔をしていたに違いない。
「それで、一体何をお手伝いすれば…うわぁ…。」
顔をひきつらせている。それはそうだ。普段ではありえない大きさの資材の山がそびえ立っているのだから。
「これを1人では運ぼうとすると10往復以上はしなくちゃならなくて…。2人だとどれくらいで済ませれそうかな。」
「指揮官さまも考慮に入れて計算すると…。おおよそ4回程かと。」
流石は人形。それも近距離戦闘が多いSMGタイプ。SGよりは劣るものの十分に高い力である。ちなみに普段は資材を2等分して運んでいる。自身の体力維持に繋がる上、貴重な副官とのコミュニケーションの機会だからね。
「非番なのに済まないね。」
運び終えてからそう伝える。あれからなんやかんやで3往復ですんだ。まあいつもより多く持っただけだけど。おかげでかなり息があがってしまった。
「いえ、これくらいならいつでもお任せ下さい。」
「なにかお礼をしたいんだが…。そうだ。何をして欲しい?可能な限りなんでも答えるよ。」
非番なのに仕事を手伝わせて何もなしだとさすがに申し訳ない。『なんでも』なんて言ってだいじょうぶかって?79式はそんな子じゃないから大丈夫。
「お礼だなんてそんな…。そう言えば指揮官さま。今日の副官は?」
「ああ、私の不手際で今日後方支援の第2の子に頼んでしまっててね…。支援の方を優先させたから今日の副官はいないんだ。」
「でしたら、私に今日の副官をさせてください!」
期待に満ちた目でこちらを見つめてくる。耳と激しく振られる尻尾を幻視しそうなくらいに。
「いいのか?せっかくの非番だぞ?」
「いいんです。私がしたいんです。それに、なんでも答えてくださるんでしたよね?」
数秒前の自分よ。発言には気をつけた方が良いぞ。まあ副官がいなくて困っていたことは事実だし、本人がいいと言っているなら問題はないのだろうが、彼女らにとって数少ない非番なのだ。それを自分の不手際で潰すのはやはり申し訳ないというか…。と渋っているとみるみるうちに落ち込んでいく79式。
そんな姿を前に断れるはずがなかった。
「ああ、むしろこちらからお願いしたいくらいさ。人手が足りなくて困っていたことは事実だ。お願いしてもいいかな?」
途端、打って変わって喜色満面の顔で答えてくれた。
「はい!79式、これより副官業務に入ります!」
上機嫌で着いてくる彼女を後目に考える。
そろそろ無理に目をそらすのはやめよう。さて、準備しないとな…。
『なにか問題でも?お手伝いしますか?』
コミュニケーション3
荷台に揺られながらで周囲に目を凝らす。現在は護送任務の
「指揮官さま、79式を使うんですか!?」
「ああ。故郷にいた頃から使っていてね。…話したことなかったか。」
すごい勢いで首を縦に降っている。目もすごい輝いてる。
「とは言ってもカスタムは全くしてないんだけどね。君はどんな感じで使っているんだい?ストックだけでなく色々いじってるようだけど。」
とても話したそうにしているので話しを振る。待ってましたと言わんばかりに
口早に語り始める79式。今までに見た事のないほど嬉しそうで楽しそうだ。
AKシリーズやAR-15シリーズなどとは違いこの銃はマイナーな部類だ。初めて話題を共通できて嬉しいのだろう。…「可愛いなぁ。」
「ふぇ!?」
あ、口に出てたかな。出てたっぽいな。79式顔真っ赤にしてるし。
「指揮官さま?お疲れなんですか?」
「いや、元気だよ。君が可愛いのも事実だ。」
「ぇぁ…。し、仕事中は真面目にしてください!指揮官さま!まぁ…褒めてくれるのは嬉しいけど…。」
「…そうだな。もうすぐ見張りの交代の時間だ。切り替えて真面目にするか。行こう。79式。」
今はまだ
…交代の時間だ。
「頼りにしてるぞ。」
「…はい。79式、参ります!
」
『仕事中は真面目にしてください!指揮官さま!まあ・・・褒めてくれるのは嬉しいけど・・』
というわけで、その2でした。その3は主に戦闘場面のボイスなので今まで通りの甘々は難しいと思われます。この基地ではあまり見ることの出来ない指揮官と79式の真面目なやり取りにご期待ください。