ある指揮官とある人形 作:名無し
今回は戦闘中のボイスを使用しました。真面目な指揮官と79式の真面目なやり取りをお楽しみください。使用していないボイスについては後ほど回収するのでご心配なく。
それではどうぞ。
出撃
「
無線機を前にそう声を出す。その声はいつもの5割増で硬い。
「
帰って来る声も同様。そこに油断はひとつもなく、思わず機械を連想させるほどに平坦で冷たい。
「HQ了解。任務内容の確認をする。アルファ1。内容を述べよ。」
それも当然。今から彼女らは文字通り死地に赴くのだ。自分は彼女らの指揮をするのだ。そこに気の緩みはあってはならず、ひとつの失敗が死を招く。
「アルファ1、了解。今回の任務は防衛。現地にて既に鉄血と交戦している
故に全力を出す。もう誰も失わぬために。大切なものを取りこぼさぬために。自分は自分のできることを。彼女は彼女ができることを。
「HQ、確認した。その内容で問題ない。チームアルファ、準備はできているか。」
地図上の青い点が作戦予定地に輝いている。部隊が到着した。お喋りはここまでだ。
「アルファ1以下4名、全員出撃準備完了しています。」
命令を入力し、ヘリの扉を開く。さあ、仕事の時間だ。
「HQ了解。…行ってこい。奴らに力を示せ。」
「了解です。いざ出撃!」
『了解です。いざ出撃!』
敵と遭遇
部隊は送り出した。今自分にできることは祈ることのみ。司令部で指揮官として働かなくてはいけない以上、今感じている焦燥感や無力感は避けられないものだろう。部隊の現在地を示す青い点を眺めながら、様々な可能性を考慮する。伏兵がいたら。救援対象が既に壊滅していたら。
ああ、やはりこの仕事は性にあわない。
地図に複数の赤い点といくつかの青い点が浮かび上がった。そろそろ会敵だ。
「HQよりチームアルファへ。敵部隊の接近を確認。戦闘準備を。」
「アルファ1よりHQへ。了解。全員警戒態勢へ移行。目標地点へ向かいます。」
通信が途切れる。もう指揮官にできることはない。もうそろそろ接敵する時間だ。この世界に神がいるのなら、どうか彼女達を無事に返してくれ。そう祈る。それから程なく、司令部に無線が入る。
「敵と遭遇、直ちに作戦体制に移ります。」
『敵と遭遇、直ちに作戦体勢に移ります。』
勝利
そろそろ戦闘が終わったころだろうか。うちは大破が出ない限りは戦闘中は通信はしない方針をとっている。 連絡が来ないということはだれも重症を負っていないか、あるいは…。っと、無線を受信。
「こちらHQ、どうした。」
「チームアルファ、作戦成功!指揮官さま、私の活躍見てました?」
思わず安堵の息が漏れる。張り詰めていた緊張の糸も緩み、いつもの雰囲気が戻ってくる。
「残念ながら見ることはできなかったな。うちにそういった機器の類はないのは前にも言っただろう?」
そう、うちは前線ではないのでリアルタイムで戦況を確認出来るドローン等は配備されていないのだ。ちなみにこのやり取りはこれで通算3回目である。
「…そうでした。」
そしてこうやって落ち込むのも通算3回目である。
「だからまた話を聞かしてくれるか?どこで、どんなことがあったのか。」
ああ、きっと今はとても嬉しそうな顔をしているのだろう。帰ってくる声がいつもより数段弾んでいる。
「了解しました。79式、これより帰還します!」
「救援感謝する。補給基地の指揮官殿。」
「ひゃい!?」
突如乱入する無線。しかしそれは当然のこと。今使ってるチャンネルは
「ああ、間に合って良かったよ、前線の。被害の方は大丈夫か?」
「な、なんで?ハッキング?いやそんなはずは…。」
「ああ、施設は少々やられたが…。人的損失は起きていない。」
「え?こ、公開?どうして?いつの間に?」
「それは良かった。…ところで、その口調どうにかならないのか?何年の付き合いだと思ってんだよ」
「もしかして…今までの会話全部…。ぅぅうう」
「お前の方こそ。公開無線で何度も惚気ないでくれないか。…さすがに可哀想だ。」
ちなみにこのイタズラは3回目。流石に
「指揮官さまのバカ!」
乱雑に無銭が切られる。ちょっとやりすぎたかな。
「はぁ、懲りないな、お前。」
呆れたような声。少しバカにされているようにも感じる。軽く反撃してやるか。
「そうだ、お前の方はどうなんだ。進展したか?」
「…切るぞ」
有無を言わさず切断された。だがあの反応、間違いなく何かあったのだろう。堅物の友人にようやく春が訪れたことを喜びながら、ヘリポートへ足を向けた。
『作戦成功!指揮官さま、私の活躍見てました?』
というわけで、その3でした。
え?甘い?難しいとは言いましたが出来ないとは言ってません。
冗談はこれくらいにして。次回からはまたほのぼのスタンスに戻ります。
それでは。