大家族の長男   作:柿の種至上主義

2 / 4
高評価してくれた人に驚きと感謝の中での投稿なので
実質、初投稿です。


思い出

 シャーロット家35女 シャーロット・プリンはジェルマ66 ヴィンスモーク家三男のヴィンスモーク・サンジとの結婚式の前夜、懐かしい夢を見ていた。

 

 昔の自分を第三者の視点で眺めることしかできない、なんとも歯がゆい夢。

 

 

 それはまだ自分が小さく、カタクリ兄さんを本当の父親だと思い込んでいた頃。そして、まだ自分が無力で何もできなかった頃。

 

 

「見ろよこいつ三つ目なんだ!!!」「キャ~~~~~~~~~~~!!!」「お化けだ~~~~~~~~!!!」「怪物だ!!!」「気持ち悪い!!!」

 

『我が子ながら気味が悪いね。前髪を伸ばしな!!!』

 

 

 年の近かったガキにいいようにされ、周りから散々言われる中で自分はただ泣くことしかできなかった。泣けばいじめっ子の思い通りだと分かっていたのに、周りの人間の言葉が、ママの言葉を思い出させてどうしても涙が止まらなかった。

 この時が、自分は醜い三つ目の化け物なんだと初めて思わされた時でもあったのだ。

 

 傍観者にしかなれない自分はガキどもを蹴散らすことも、目の前の弱者を叱咤することもできない。それでも自分はもうすぐ助けにとんできてくれる人がいることを知っている。

 

 

うちの大事な妹になにしやがる!!!

 

 

 滅多に見せない恐ろしい怒りの形相でやってきた兄さんにみんな蜘蛛の子を散らした様に逃げていく。カタクリ兄さんは逃げていった奴らをほっといてまだ泣いている私を慰めてくれた。いつだってカタクリ兄さんは私たち妹や弟のことを何よりも優先し、大事にしてくれる。

 次男のペロスペロー兄さんがママの代わりに代表として来賓の相手をできるようになるまでなんて、赤ん坊の弟や妹をあやすために来賓を待たせるなんてことが頻繁にあったのだと兄さんや姉さんが苦笑しつつも、嬉しさを隠しきれない、そんな顔で話してくれたのを思い出した。

 

 未だに泣き止まない私の途切れ途切れの言葉から状況を聞いたカタクリ兄さんは、自分の顔をよく見るように言ってきた。涙をぬぐいその先に見たカタクリ兄さんの顔の驚きは今でも鮮明に憶えている。

 

 普段は傷ひとつない(・・・・・・・・・)顔に、耳まで裂けその両端を縫い合わせた口があったことに小さい頃の私は絶句してしまった。驚いて何も言えない私にカタクリ兄さんはゆっくりと丁寧に話してくれた。

 

「たしか・・・クラッカーだったか・・あいつは小さい頃から痛いのが嫌でな、転んで擦りむいたりするとよく泣いてた。赤ん坊の頃なんかちょっと目を離した隙に横になろうとして頭をぶつけては泣いてたのをよく憶えてる。――――――泣き虫なあいつに、この口は怖かったんだろう」

 

 顔見る度に泣かれちゃ敵わんから見えんようにしたんだ、なんて大したことないように言うカタクリ兄さんに私は嫉妬した。自分の変なところを、周りの人間と違うところを隠せることに。

 次に私は期待した。カタクリ兄さんがそうしていた様に、私の目も隠してくれるかもしれないと。

 だけど、そう考えお願いしようとする前にカタクリ兄さんが口を開いた。膝をついて目線を合わせ、幼い私に言い聞かせるように

 

 

「たしかに俺がやれば三つ目は隠せる。けどそれは本当のプリンを隠すってことだ。ある人の言葉だがな、『みんな違ってみんないい』。俺はその通りだと思ってる。俺はプリンの見た目が変だなんて一度も思ったことはない。周りの人間の言葉なんか気にするな、お前のママの言葉なんか気にするな。言わせとけばいいんだ」

 

「――――――いつかきっと、ありのままのお前を好きになってくれる奴が現れるさ」

 

 嬉しかった。自分を気味悪がらない人がいてくれて。

 

 涙がまた出てきた。だけど全然つらくなかった。

 

 私に向けてくれる暖かい瞳が大好きになった。

 

 

ば、化け物だ~~~~!!!

 

 それまでのいい気分を台無しにする、ついさっきまで聞いていたガキの大声が響いた。見れば、さっき散り散りになったガキ共が戻ってきてこちらを見ていた。

 いやに響くのはさっきまで散々言われた言葉。だけどその言葉が指す相手は私じゃなかった。

 

 

「キャ~~~~~~~~~~~!!!」「口が耳まで裂けてる!!!」「お化けだ~~~~~~~~!!!」「怪物だ!!!」「気持ち悪い!!!」

 

 

 私のために見せてくれていた本当の口を見て、叫んだり気味悪がったり罵ったりする。

 自分が言われるのと同じかそれ以上につらかった、苦しかった。私のせいで隠していたのがばれてしまったと思ったらなおさらに。

 

 そんな私に、カタクリ兄さんは笑顔を見せて周りで騒いでる奴らに向き直った。

 

これが俺だ!!!文句あるやつはいるか!!!???

 

 口の両端を縫っていた糸を強引にちぎり、大口をあけて威嚇するように叫んでいた。

 

 

「キャ~~~~~~~~~~~!!!」「逃げろ~~~~~~~~~!!!」「喰われる~~~~~~~~~!!!」「化け物だ~~~~~~~~!!!」

 

お前らの言うその化け物に喧嘩売ったんだ。わかってんだろうな!!!

 

 

 騒ぐ奴らをおっぱらった後、これからは変相しなくて済むから清々したな、なんて笑うカタクリ兄さんに私はなんて言えばいいか分からなかった。

 

 

 

 翌日、私は自分をいじめてきたガキ共のたまり場に一人で行き、全員のカタクリ兄さんとついでに私の記憶を消してやった。そこからは子どもも大人も関係ない、真実を知るやつは全員だ。理由はシンプルだった。耐えられなかったからだ。本当のカタクリ兄さんの顔を見て泣いたり、引いたり、怖いと口にする、まだかなり幼かった弟や妹の姿も、それをあやしつつも怖がらせてしまう自分の口の形を申し訳なさそうにするカタクリ兄さんの姿も見続けられなかった。

 まだ手に入れたばかりのメモメモの実の能力を何度も使うのはつらかったけど、自分のせいだし何より大好きなカタクリ兄さんがあんな風に見られるのが嫌だったその一心でやりきった。

 

 私は前髪を伸ばして第三の目は隠れているし、カタクリ兄さんの口もどこも変なところはない。真実を知るのは私より上の兄さんや姉さんだけ。

 この今見ている夢の出来事は、カタクリ兄さんとの部分だけ大切に憶えている。ガキ共なんてどうでもいい、記憶する価値などない。

 

 ただ、カタクリ兄さんの言葉の他に、頑張って記憶を消してきたことを報告した時のカタクリ兄さんの表情はなぜかとても記憶に残っている。

 

 

♦♦♦♦

 

 長い夢から覚めて傍付きに手伝ってもらってウエディングドレスを着て、時間まで待っているとタキシードに身を包んだカタクリ兄さんがやってきた。

 

「おはよう。昨夜はよく眠れたか?体調は悪くないか?何か不安だったりしないか?」

 

 結婚式当日でも変わらずすぐにこちらの心配をしてくるのはカタクリ兄さんらしかった。

 

「大丈夫よ兄さん、気にかけてくれるのは嬉しいけど心配し過ぎよ」

 

「それもそうか、それにしてもよく似合っているぞ。とても綺麗だ」

 

「もう!兄さんは何回も見てるでしょう」

 

 今着ているウエディングドレスはカタクリ兄さんと二人で選んだものだった。

 弟も妹も、これまで結婚した家族全員の結婚式の準備にカタクリ兄さんは参加していた。妹ならウエディングドレス選びを、弟なら結婚式の予定や余興の相談を、自分の結婚式の様に張り切ってそれでいて嬉しそうに態々予定を空けて一緒になってしてくれる。そして、その弟や妹の希望を第一にしてくれる。これまで結婚した兄さんや姉さんが嬉しそうに話してくれていた。

 

 そしてカタクリ兄さんは今回の結婚式の新婦である私と、これまでの姉さんたちと同じように、バージンロードを歩く新婦の父親役をする。この役は誰にも譲らないし、私もカタクリ兄さんじゃなきゃ嫌だった。

 本来なら5メートルある兄さんは、私の歩幅に合わせるために体格を私と大差ない変化させてくれる。

 

 ママの癇癪に対抗できるように、って言う理由もあったがそれ以上に人を見下ろしてしまうことを嫌ったカタクリ兄さんの”造形(シフト)”。日常的に使用してさりげなく相手の目線に合わせてくれる、そんな気遣いができるところも家族みんなから好かれる理由なんだろうな、なんてとりとめもないことが頭に浮かんだ。

 

 

「もうすぐ時間だ」

 

「ええ、行きましょうお父さん♬」

 

「だからそう呼ぶなと何度も言ってるだろう・・・」

 

 

 悩まし気にため息をつくカタクリ兄さんに私は申し訳なくなる。

 

 

「たしかに私に血の繋がった父親がいるのは分かるけど、育ててくれたお父さんはカタクリ兄さんよ」

 

「そしたら俺は未婚で子持ちになるだろう・・」

 

「カタクリ兄さんのお嫁さんは私たち全員が認めなきゃ許さないわ♪」

 

「それは実質絶対にOKしねえってことだろう・・」

 

 

 結婚式でのジェルマ主要幹部の殺害と乗っ取り。私が隠し持った銃で新郎を撃ち殺すこと。これらの計画すべてを、

 

 

「だってカタクリ兄さんは、私たちの大好きなお兄ちゃんだもの♬」

 

 

カタクリ兄さんだけ(・・・・・・・・・)がなにも知らない。

 

 

 




”造形”(シフト) オリジナル技

特殊な超人系の実、モチモチの実の能力の応用。自身の体積を増やして巨大化、圧縮することで小さくもなれる。限界はあるため小人族レベルまでの小型化などは不可能。体を作り変えることで全くの別人にも変装可能。ただし服装や見た目など外見を変化させるのみ。
芸術の「造形」から引用。

カタクリの二つ名を”維織”さんからの意見を採用させていただき、ビッグ・ダディ(大父)に変更しました。ご意見ありがとうございます。

今回はプリンちゃん視点でした。中々難しかったです。ご指摘等あれば感想やDMでお願いします。
評価と感想お願いします。作者のモチベに直結なので

結婚式編というかホールケーキアイランド編はかなり後にする予定です。
そこまで作者の執筆が続くよう頑張ります(無責任
それではまた次回
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。