カンピオーネ~生まれ変わって主人公~《完結》   作:山中 一

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中編 ロサンゼルス編 Ⅳ

 『まつろわぬ神』との戦いで、先鋒を務めるのは護堂だ。

 スミスはその権能の性質上、初見での戦いに向かない。必殺のアルテミスの矢は強大極まりない威力を持つ一方で、月に六発しか撃てないという制約があり、変身の権能も自由自在にとはいかない。護堂の『(エイト・アス)(ペクツ・オブ)(・サンダーボルト)』に類似した、複数の化身を使い分ける権能だ。

 そのため、比較的自由に権能を取捨選択できる護堂のほうが先手を取り、相手の様子を探る役割を担った。

 望むところである。 

 『まつろわぬ神』と戦う。日光のときとは逆の立場でだ。これで、貸し借りは帳消しだ。

 戦いのときが近付き、護堂は高揚する気持ちを感じていた。

 まだ、日が昇り始めたころに、護堂は目を覚ました。

 窓の外は薄ぼんやりとした藍色で、東の空から上る太陽の光が山の向こうから伸びてくる。ホテルの最上階なので、小鳥の囀りは聞こえないが、おそらく外に出れば賑やかな合唱が降り注いでくることだろう。

 身体を起こして周囲を窺う。

 窓の外を見て、眩さに目を細め、ついで隣に横たわる祐理を見る。

 穏やかな寝顔で、眠りに就くときよりも僅かに距離を縮めてそこにいる。真面目な祐理が、完全に無防備な姿で同じベッドにいるというのが、言い様のない背徳感をもたらしてくる。信頼されているのが分かるからこそ、触れがたい。

 男は狼、などというが、草薙護堂はそういった『俗説』には敢然と否を突きつける男だ。

 しかし、このことに関してはそれほど悩む必要もなかった。

「草薙さん。お早いんですね」

 護堂が目を覚ましたすぐ後に、祐理も目を覚ましたからだ。ゆっくりと身体を起こして、話しかけてきた。

「万里谷、起こしたか」

「いいえ」

 と、祐理は首を振る。

「わたし、普段からこれくらいに起きるんです」

「そうなのか? 早いんじゃないか?」

「巫女の修行は日の出から始まることも多かったので、癖になってしまったんです」

「そうだったのか」

 確かに、巫女には朝早いイメージがある。早朝の澄んだ空気と巫女の静謐な世界観が妙に合っているからだろうか。

 すっかり眠気も覚めてしまって、寝なおそうにも落ち着かない。

 かといって、護堂がすることもそう多くないので、顔を洗ってそれで終わりだ。後は、『まつろわぬ神』に対して、どのように戦うのかイメージトレーニングでもするしかない。

 祐理が身だしなみを整える間、会話をすることもなく、護堂は茫洋とした目で窓の外を眺めていた。

 ソファに座って、敵のことを考える。

 竜神。世界の始まりに関わった創世神話の竜神だという。名前に聞き覚えはなかった。聞くところによれば、南米の神格で、まだ五百年ほどしか歴史を刻んでいないという。

「草薙さん。大丈夫ですか」

 祐理が、護堂の姿に何を思ったのか、心配そうに尋ねてきた。

「何か、思いつめたようなお顔です」

「そうかな」

「はい」

 祐理は、そう言いながら護堂の隣に腰掛ける。大きな黒いソファはふっくらとしているのだが、それにしても静かだった。祐理がどっかと座る様子も想像できないが、こうした挙措の一つひとつに人間性が出るのだと護堂は思う。

「あの、竜神のことだ」

「それが、何か」

「大したことじゃないけどな。聞いたことのない名前だと思って」

「そうですね。わたしも、霊視が降りるまでは聞いたこともない神格でした」

 十六年間、呪術の世界に身を浸してきた祐理が知らないのだから、護堂が知らないのは仕方がないだろう。

「黄金の剣を砥ぐには、『まつろわぬ神』の知識が必要、ですよね」

 祐理は伏目がちになって、護堂の様子を窺う。恥じらいながらも何かを期待しているかのような仕草に、護堂はどうしようもない愛らしさを感じてしまう。

 祐理の言わんとすることは分かる。戦うために、必要不可欠とまではいかないものの、あれば勝率が大きく上がる。

 ウルスラグナの『戦士』の化身は、ジョーカーとも呼べる切り札だ。

 ただし、その特性ゆえに護堂単独では幽界にでも行かない限り使えない。『まつろわぬ神』の来歴に詳しい仲間の支援があって、初めて使用可能になる気難しい権能だった。

「万里谷。……すまん、また手伝ってもらえるか?」

 祐理は返事をするよりも前に、護堂の頬に手を添えて顔を寄せた。

「はい。わたしの力、少しでも草薙さんのお役に立ててください」

 囁くように言って、祐理は護堂とキスを交わす。

 一〇秒ほどしてから、祐理は惚けた表情で唇を離して呟く。

「草薙さん。もっと、わたしを感じてください。わたしの中の神の御姿を、そのご来歴を、すべてお伝えします」

 祐理は護堂に体重を預けるようにして、より深く唇を合わせる。

 護堂の唇を包み込み、ついばむようにキスをするのだ。

 舌を使い、唾液を絡めて互いを求め合った。そうする中で、祐理から護堂へ『まつろわぬ神』への知識が注ぎ込まれていく。

 最初に脳裏に浮かんだのは、十字架のイメージだった。

 それは、世界の象徴であると同時に宗教の象徴でもある。

 次いで、蛇の形をした杖を幻視する。

 護堂とスミスの倒すべき竜神の正体とその来歴が脳に刻み付けられて、護堂の右手が熱くなる。

 『戦士』の権能が使用可能の状態になったのだ。

 

 

 

 □

 

 

 

 

 降臨した『まつろわぬ神』は、ロサンゼルスに程近いエンジェルス国立森林公園の中に潜んでいるという。程近いといっても、地図上でのことで、実際の距離は車で二時間弱といったところであろうか。

 カリフォルニアは広大だ。カリフォルニアの中だけで登録されている保護地区は一万四千箇所にもなるという。一つひとつも大きく、日本とは規模の違いを実感させられる。

 エンジェルス国立森林公園は、その中の一つであり、先日竜神と遭遇したサンタモニカマウンテンズ国立保養地の数倍の面積を誇り、山頂からはどこまで続く山並みを俯瞰することができるだろう。

 日本の森のような鬱蒼とした雰囲気はなく、地形や気候の影響なのだろう。見るからに硬そうな低木が、赤茶けた地面を覆っている。

 護堂が立っているのは、サン・ガブリエル・キャニオン・ロード。エンジェルス国立森林公園の中を走る道路の一つである。

 山の斜面の作られた道なので、山の形に添って蛇行している。護堂が立つ場所は東西に道が伸びている部分で、北には断崖絶壁、南にはサン・ガブリエル貯水池が広がっている。ここは、ダム湖であり、近隣の水事情に大きな影響を与える湖なのだ。

 カリフォルニアは夏に乾燥し、冬に雨が降る気候なのだが、この年は乾燥が長引き、ダム湖の水位が下がっている。未だに雪が降っていないので、温暖化の影響も心配されているという。異常気象は日本に限った問題ではないということだ。

 ダム湖の中に黒い影が見える。

 護堂の身体が自動的に臨戦態勢を取ったことからも、あれが『まつろわぬ神』であることが分かる。竜神の親玉というから覚悟はしていたが、とてつもない大きさのようだ。

「貴様が来なければこちらから行くつもりであった」

 湖に翼が生える。蝙蝠の翼だ。ついで、水面が大きく粟立ち、豪快な水音を響かせて巨体が姿を見せる。

 その威容は、神話の怪物と呼ぶに相応しい。

 

 『まつろわぬ神』に勝負を挑むのにもすっかり慣れてしまったためか、護堂は自分の足でこの場に来ることに何の躊躇もなかった。

 いいところはスミスにくれてやるのだし、自分は前座なのだという軽い気持ちもあった。

「でかいな。昨日戦ったヤツよりもずっと……」

 それでも、気を抜いたら即死する。

 竜神の図体の大きさからしても、相手の打撃攻撃が掠めるだけでも重傷を負いかねない。

 護堂が戦った赤い竜は、三〇メートルほどだった。これでも、かなり大きいのだが、目の前の深緑色をした竜は、その三倍はありそうだった。一目連よりも大きい怪物に出会ったのは初めてだ。

「小さき者よ。二人目の神殺しよ。貴様と出合ったときは赤竜の姿であったか」

 のそりと、竜神が首を持ち上げる。あまりに大きいので、速度の感覚が狂って、とてもゆっくりに見える。

「あれは、あんた自身だったのか? てっきり、神獣か何かだと思ったんだけどな」

「余の配下は余の分身にも等しい。主に託されたあれらを無残に打ち砕かれ、余は我が身が切り裂かれるかとも感じたものだ」

 老練した声だ。

 静謐で、聞く者の心に響く声だ。

 だからこそ、その声の中に怒りが含まれているのを容易く感じ取れてしまう。

「四方を安んずるのがあれらの務め。それを邪魔立てする神殺し。主の威光を穢す魔王を前にして、どうして己が役割に邁進できるだろうか」

 竜というには長い腕が護堂の頭上を通り過ぎ、崖の上部に爪を立てる。五指が深く崖に食い込んで、岩壁がひび割れる。

「神殺しの魔王を余が潰す。世界を遍く主の光で満たすためにな」

 竜神は崖に食い込ませていた爪を横一文字に振るった。

 崖が切り裂かれる。

 巨大な岩石が護堂の頭上にばら撒かれて、落下してくる。一片が一〇メートルを超える巨岩だ。護堂は土雷神の化身を発動して、竜神の先制攻撃を難なくかわす。

 地中を移動して、離れた場所に再出現し、《鋼》の剣を生成する。一挺や二挺では、あの竜神の命には届かない。そもそもあの巨体なら皮膚も相当分厚いことだろう。剣が根元まで刺さっても、肉に届かないかもしれない。そう考えると、巨体がいい的とは思えない。身体の大きさに比例した、強靭な皮膚がその身を守っているからだ。

「小癪な足を持っているな、神殺し」

 現に、こうして竜神は護堂の連続射撃を物ともせずに突っ込んでくる。二〇、三〇と剣を飛ばすも、硬い鱗とその下の分厚い表皮に邪魔をされて満足なダメージにならない。

「反則ってんだぞ、それは!」

 一目連の権能で四重の壁を生成する。

 三枚目まで砕かれたが、四枚目でなんとか突進を防ぐことができた。

 しかし、相手は知性ある竜神だ。

 真っ直ぐ突っ込むだけの脳筋ではない。すぐに、壁を乗り越えてこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 大きな首を拉げた壁の上に持ち上げる。閉じた口の隙間から、火の粉が零れている。

「や、べえ!」

 護堂はとっさに、崖下に飛ぶ。下は湖だ。水の中に飛び込むと同時に竜神が火炎をばら撒いた。地面に吹き付けられた炎が濁流となって道を突き進み、数百メートルを焼き払った。

 熱風が吹き付けて、軽く火傷をする。

 身体は硬く、巨体はそのまま武器になる。炎の威力も赤い竜のときとは比べ物にならない。

「親玉らしいっちゃらしいけど、さすがにこれはなあ」

 攻撃が弾かれるのでは、牽制にもならない。竜神からすれば、小石が身体に当たる程度でしかないのだろう。一〇や二〇の剣を投げつけたくらいでは無意味だ。

 数を増やすのは愚策。

 ならば、質を高めるか、別の権能で勝負するべきだ。

 護堂は、伏雷神の化身で水中を高速移動し、対岸まで逃れる。一旦距離を取って、対応策を考えようとしたのである。

「逃げ足の速いことだ」

 竜神の呆れたような言葉が護堂の耳に届く。

 護堂自身の聴覚が研ぎ澄まされていることもあるのだろうが、竜神が何かしらの能力で護堂に言葉を届けているのであろう。

「だが、所詮は神々から奪い取った程度のものであろう。余と主の神威には及ぶべくもない」

 竜神は、四肢を崖に食い込ませて、全身の筋肉を引き締める。ゆっくりと、引き絞られた弓矢のように。直後、空気が死んだ。

「ッ……!」

 あの巨体で、竜神は一瞬にして護堂から二〇メートルほどの位置にまで跳んだのである。切り刻まれた空気が捻れ狂い、猛烈な突風となって四方に襲い掛かる。

 その突風だけでも、人間一人をミンチにするには余りある威力だ。

『弾け』

 護堂は言霊を用いて襲い掛かってくる突風を逸らす。次いで、目前に迫った尾に対して楯を可能な限り量産してぶつける。

「おおおおああああああああああああッ」

 凄まじい威力の尾だ。ムチのように使用しているが、その大きさが桁外れた。護堂から見れば電車が横薙ぎに向かってくるようなものだ。

 しかも、ここで護堂は対応を誤った。

 向かってくる尾の狙いは護堂ではなく、その足元の崖であったと気付くのに遅れたのだ。

 大質量に、崖が砕かれる。

 湖面に向かって真っ逆さまになる護堂に向かって、竜神が火を吹いた。

 土雷神の化身で回避することができない。足場がなければ地中に潜れないからだ。

「我は神々に代わり魔を討つ者。如何なる邪悪も、我が身に害を為すこと叶わぬと知れ」

 源頼光から簒奪した神酒の権能を発動する。

 破魔の神酒は、敵の権能を弱め、泥酔させることができる。大量の神酒を、自分に向かってくる紅蓮に叩き付ける。炎の勢いが削がれたところで、護堂は足を伸ばして崖につま先をつけ、土雷神の化身で再び地中に潜る。

 そうすることで、護堂は崖の上に出ることに成功した。

 崖の中に作られた道路にいる竜神からすれば、頭上を取られたに等しい。

「我は鉄を打つ者。我が武具を以て万の軍をまつろわせよ」

 一目連の聖句を唱えて呪力を底上げする。

 生成するのは五挺の神槍。

 一挺一挺が、アテナと打ち合った際に生成した日本刀と同格の力を込めている。

 竜神が気付くよりも前に、護堂は敵の巨大な首と背中に、垂直に神槍を叩き付けたのであった。

 

 

 

 □

 

 

 

 黒きマントを棚引かせ、ジョン・プルートー・スミスは戦場を高所から俯瞰する。

 暴れているのは深緑色の竜神と日本から来たカンピオーネ。

 優勢に戦いを進めているのは竜神のようだ。草薙護堂の攻撃は大半が竜神の硬い守りに弾かれてしまう一方、竜神の攻撃はどれもが必殺の領域にある。サルバトーレ・ドニの『鋼の加護(マン・オブ・スチール)』くらいでなければ、あの攻撃を受け止められまい。

「しかし、彼もうまくやっているな」

 敵の巨大さはそのまま機動力のなさにも繋がる。

 直線的な移動は凄まじいが、懐に入られたときにあの竜神は大きく距離をとって戦いをリセットする。そこに、攻略の糸口があるか。

 大きすぎるのも考え物ということか。

 それでも巨体に見合う再生力もあるので、なんとも言えない。

 明確に《蛇》ということはできないまでも、その系譜にある神格なのは言うまでもない。征服される神話を持たず、むしろ征服者の側の竜神なので、《蛇》の性質もかなり薄くなっていることだろう。《鋼》の神剣の効果が薄いのもあるいはその所為かもしれない。

 護堂が進んで先鋒を買って出てくれたおかげで、スミスはじっくりと敵を観察する時間が取れた。

 彼は借りを返すと言っていたが、貸し借りで言えばやはりスミスの借りのほうが大きくなるだろう。日光の事件のときは、スミスは斉天大聖の従属神と戦ったに過ぎず、今回は敵の大本との戦いに加えてアルテミスの被害者たちの解呪までさせてしまった。

 騒動を引き起こすのはカンピオーネの常だが、彼は巻き込まれるのも得意らしい。

 護堂の好意を無下にするわけにはいかない。スミスは、己の戦術を編み出すために、粛々と観察を続ける。

「厄介なのは巨体を利用した打撃と口からのブレスか。これだけならば典型的な竜神だが」

 そのとき、ポツポツと空から雫が落ちてきた。

 いつの間にか、上空に黒い雨雲が滞留していたのである。

「雨を呼んだか。竜神として持つべき権能はあらかた網羅しているようだな」

 とすれば、風や雷を操ることもできるのだろう。

 『竜』は古くから世界各国で水と関係付けられてきた。中南米の神話に登場する竜神も多くが水と縁を持つ。創作の度合いがかなり強い神格ではあるが、竜神の基本には忠実なようだ。

 

 

 

 

 □

 

 

 

 雨が大量に降り注ぎ、緩くなった地盤を、竜神の巨体が容赦なく打ちのめす。

 竜神が動くたびに小規模な地震が発生して、湖に沿って作られた道路は至るところが崩落していた。

 雨を呼ばれたことで、護堂は必殺の化身のうちの一つを失ったが、その代わり神速の自由度が上昇した。熱帯雨林のスコールを思わせる土砂降りによって、伏雷神の化身が使えるようになったので、余裕を持って回避できるようになった。

「貴様の酒は面倒だからな。手早く押し流させてもらう」

 護堂の神酒の権能を封じ込めるために、大雨を降らせているというのだ。

 さらに、空から無数の雷撃を降り注ぐ。天変地異を操るのが神々の常なので、今更驚かないが雨と雷のコンボは本当に厄介だ。避けたと思っても、水を伝って雷が襲い掛かってくる。走って逃げるのは基本的に不可能だし、護堂の神速は最も早い状態で雷速である。雷に先手を取られれば避けきれない可能性もあった。

「別に酒が切り札って訳じゃないしな。好きにすればいいさ」

 護堂は神速となって三次元的に飛び回る。

 相手の防御力によって、一手が遠いのは相変わらずだが、手数と機動力で攻めるスタイルの護堂には今の状態が望ましい。

「鬱陶しい羽虫が。あまり、余を煩わせるな」

 護堂が槍を投じようとしたそのとき、竜神が吼えた。爆発的な衝撃波と、全方向への雷撃が解き放たれ、護堂を巻き込む。

「う、わ……!?」

 雷撃は蛇のように暴れまわりながら、周囲にあるあらゆるものを焼き払う。水を伝うので、上下左右から護堂は雷撃に挟まれた。

 呪力を高め、楯と言霊を駆使するも耐え切ることはできなかった。

 墜落する護堂に追い討ちをかけるように、竜神の尾を覆いかぶさってくる。

 どこからともなく飛来した青白い魔弾が、竜神の尾を弾いた。破裂音が耳朶を叩く。

「ちょっと、遅いんじゃないか?」

 護堂は泥に塗れた顔を袖で拭い、身体を起こした。

 ヒーローは遅れて登場するものだと言わんばかりの、絶妙なタイミングで現れた黒装束に、護堂は不満をぶつけた。

「何、舞台が整うまで待つのは名優の基本というものさ。それを思えば、君はいい仕事をしてくれた」

「そうかよ」

 護堂も文句を垂れてはいたが、こうなることは初めから分かった上で戦っていたのだから文句を言える立場ではないが、もっと早く出てきてくれればこちらの苦労も少なかったのにと思わざるを得ない。

「ほう……珍しいな。神殺しが並び立つとは」

 尾の中央部分が黒く変色している。

 スミスの魔弾を受けた部分だ。

「大丈夫か。アイツ、結構強いぞ」

 スミスの弾丸の威力は護堂の大雷神の化身にも匹敵する。今の一撃は恐らく手加減したのだろうが、それでも敵の身体を貫通することができていない。

「問題あるまい」

 スミスは平然と言う。

「君も奥の手を秘した状態で五分五分なのだ。私がそこに参戦すれば、十分に勝利できるだろう」

 楽観的な思考だ。

 『まつろわぬ神』を相手にして数的優位がどこまで通用するか。《鋼》の神格ではないので、斉天大聖がしたような対カンピオーネの権能は使えないにしても、基本的に相手は格上だ。これで五分五分と言ってもいいくらいに。

「それもまた面白いだろう。ジャイアントキリングは、いつの時代も人の心を惹き付けて止まない最高の結末だ」

 スミスは銀色の拳銃を携えて、堂々と竜神の前に立つ。

「先日、私と戦ったときのことを覚えているようだが、改めて名乗ろう。我は、ジョン・プルートー・スミス。君の命をいただく、死神の名だ。覚えておきたまえ」

「貴様らの名などに興味はない。二人纏めて、余が誅するのみ!」

 竜神の身体から呪力が溢れる。

 緑色の光が四方に放射され、大地と水の気が四柱の竜神へと変化した。

 それぞれが異なる色の竜神だ。

「黒、黄、白、赤……なるほど、伝承の通りだな」

 スミスが呟きは、四柱の竜神の咆哮でかき消される。そして、その中央に座す、一際巨大な竜神が大声で笑った。

「貴様が徒党を組むのなら、余もまた己が軍勢を呼び出そう。四方を固め、世界に安寧をもたらすためにな!」

 四柱の竜神が、一斉に飛び立った。

 本体も合わせれば五柱だ。数的優位は、一瞬にして覆された。

「スミス。アイツらは俺に任せろ」

「いいのかね?」

「ああ、大丈夫だ」

 竜神が四色の炎を吐く。迫り来る炎に対して、護堂は右腕を振るった。

 直後、黄金の星雲が、四色の炎をかき消した。

「カンヘルの相手は俺がする」

「いいだろう。では、一番の大物は私がいただく」

 スミスの身体が溶ける。

 何も知らずに見れば、何事かと思ってしまう光景だ。

 瞬時に、ジャガーの姿を取ったスミスは、影に溶け込んで消える。テスカポリトカから簒奪した『超変身(メタモルフォセス)』の権能だ。贄を捧げることで、五種類の姿とそれに対応した力を獲得する。ジャガーの姿は、高速移動と影から影への転移だ。

 贄は人工の光。ここに来る前に、どこかから調達していたのだろう。

 スミスが転移した影は、竜神の巨体で生じた影だった。一瞬にして竜神の懐に潜りこんだスミスは、ジャガーから人型へ戻り、アルテミスの矢を撃つ。一度に二発。この魔弾の特性は、複数の弾丸を同時に撃つと威力が倍化するというものだ。竜神の胸で炸裂した弾丸は、硬い身体を苦もなく貫通する。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 大量の血が流れ出る。吹き飛ばされた肉片が飛び散る中で、スミスは再びジャガーとなって離脱する。

 なるほど、この戦い方をスミスと対峙した竜神――――カンヘルは嫌っていたのか。

 護堂は納得しつつ、言霊の剣を砥ぐ。

「お前たちの名である『カンヘル』は、もともとはアステカに伝わる杖の名だった。王や神官だけが所持できる権威の象徴である竜の杖の名を、お前たちを生み出したヤツが利用したんだ」

 黄金の星が護堂の周囲で燦然と輝く。

 黒、赤、黄、白の炎をそれぞれのカンヘルが吐き出すが、黄金の星がそのすべてを打ち消してしまう。護堂の下には、熱も届かない。

「神格を斬り裂く言霊の剣! それが貴様の切り札かッ!」

 赤いカンヘルが血を吐くような声で叫ぶ。

 『まつろわぬ神』にとってもこの『剣』は致死性の毒になる。ましてや、それは従属神程度の神格でしかないのだから、カンヘルたちには天敵も同然である。

「カンヘルは創世神話に関わる竜神だ。身体の色は方位を表し、世界創世のときに、唯一神に命じられて四方に住み着いた。それで、方角の概念が生まれた。だが、創世神話に関わりながら、お前たちの歴史は古くない。それは、お前たちが、古代から信仰された神格ではなく、キリスト教を布教するために創造された新しい天使だからだ」

 カンヘルの発祥の地はメキシコ。数百年前にスペインによって征服された国だ。当時のスペイン人たちは、キリスト教を広めるために、現地の宗教や文化を取り入れたカンヘルという守護天使を生み出し、キリスト教への改宗を促したのだ。

 マヤやアステカの文化では世界が十字型になっていると信じられており、方位は色で示された。

 マヤ神話のバカブやチャクが黒、白、黄、赤の色を持っているのと同様だ。

 四方を守る竜神は、聖書の天使とは似ても似つかぬ悪魔のような外見をしている。これも、旧来の信仰の影響を排除できなかったからであろう。

 もっとも、聖書に登場する天使たちも多くはバビロニアやインド、エジプトの蛇神を下地にして誕生した神格だ。旧約聖書の青銅の蛇(ネフシュタン)の呼び名がインド神話のナフシャに影響を受けていたり、バビロニアの雷神にして蛇神のセラピムが取り入れられて熾天使(セラフィム)になったようにだ。

 とすれば、外見は別として蛇の姿を象るのは、原点回帰のようなものであり、別段奇妙というわけでもない。

「忌々しい、我らの素性を不躾にも暴き立てるか」

「賢しげな口を利く。汚らわしい神殺しが」

 黒と黄のカンヘルが、高速で飛び回り、炎弾を撃ち込んでくる。

 黒のカンヘルは北、黄のカンヘルは南に陣取っている。祐理から与えられた知識に照らし合わせると、彼らがそれぞれ司っている方位だ。

 火力と呪力が上昇している。

 白のカンヘルは東、赤のカンヘルも西を背負って炎を放ってくる。

 一柱の強さが前回戦ったときよりも強い。自身が司っている方角を背負い、本体から直接呪力供給を受けることで力を増したということか。

 従属神は、『まつろわぬ神』に比べれば非力だ。四柱集まっているので、厄介だが、本体ほどではない。現に、カンヘルの炎は四方から攻めかかりながらも護堂の言霊の剣と対消滅すらせずに斬り伏せられている。

 力押しでも押し切れるが、念には念を入れて敵を追い詰める。

 従属神と本体を繋ぐ糸。

 ウルスラグナの『戦士』の権能を使用しているとき、護堂は敵の本質を見極める目を得る。『強制言語(ロゴス)』の影響もあり、明確に従属神と『まつろわぬ神』を結びつける糸を見つけることができた。

「カンヘルは四方に配置された四柱だけじゃない。原初にして統率役とも言うべきカンヘルがいた。その名はセルピヌス。あそこでスミスと戦っているあんたたちの親玉だ」

 黄金の剣がカンヘルではなく、カンヘルとセルピヌスを繋ぐ縁を断ち切った。主から切り離された従属神は急速に力を失っていく。

「貴様ッ!」

 牙を剥く赤いカンヘルに護堂は一目連の神槍を投じる。その穂先に、黄金の言霊を纏わせた。赤いカンヘルは炎を吐いて神槍を迎撃するが、剣の言霊がカンヘルの炎を無力化してしまう。守りすらも斬り裂いて、無防備になった肉体に、神槍が食らいつく。

「ごあああああああああああああああッ」

 心臓を抉られて絶叫する赤いカンヘルに、言霊の剣が無数の矢となって襲い掛かる。言霊の剣は、一目連の剣のように物理的なダメージを与えるわけではない。しかし、命の源を削り取る強烈な毒となって神格そのものを侵す。

 赤いカンヘルの墜落は、その他の三柱の連携を崩すことに繋がった。

 そうなれば、もう護堂の勝利は揺るがない。

 連携による優位性は、連携が崩れた時点で敗北へ直結するものでもある。

 言霊の剣は粒を重ねて刀の形状を取る。

 もはや、守りは考えなくてもいい。

「四匹纏めて、ぶっ飛べ!」

 黄金に輝く剣という剣が、カンヘルの身体に突き立ち、その神格を斬り裂いていく。剣が突き立ったところから、大量の呪力が漏れ出る。

 赤いカンヘルに続いて、神格に致命的なダメージを負った三柱のカンヘルは断末魔の叫びを上げる間もなく力尽きて地に墜ちる。もはや息をするのもやっとという状態に陥った四柱の頭に、護堂は槍を突き立てて止めとした。

 

 

 カンヘルの消滅を確認してから、護堂はスミスの様子を窺う。

 魔鳥の姿となったスミスが、セルピヌスを翻弄している。頑丈な身体を誇るセルピヌスも、魔鳥の放つ毒の羽によってじわりじわりと動きを鈍らせている。

 後は、どのタイミングで必殺技を使うのかというところまで来ているようだ。

「おのれッ、神殺し! この世の静謐を乱す不届き者! 主の威光を穢す不信心な愚者めが!」

 爪を振るい、牙を剥き、炎を放つ。

 世界の守護者というよりも、世界を亡ぼす魔物のようだ。

 護堂は『戦士』の権能の状態を確認する。

 カンヘル用の言霊だが、その主であるセルピヌスにも十分に通用する。

 四柱のカンヘルに使用したので、ずいぶんと切れ味が落ちているものの、まだいくらか使える状態だ。

 

 

 

 □

 

 

 

 魔鳥となったスミスは口から吐いたアルテミスの矢でセルピヌスの目を射抜く。片目が潰れたセルピヌスは首を大きく振って苦悶の様子を見せる。

 これで、残りは二発。

 月に六発という制限があるだけに無駄撃ちは厳禁だ。

 セルピヌスも弱ってきた。止めを刺すならば、今を於いて他にない。

 スミスは素早く上昇し、セルピヌスの頭を狙う。その動きは、あたかも獲物に襲い掛かる猛禽のようであった。

 スミスが勝負に出たことを、セルピヌスは察した。翼を大きく広げ、四肢を緊張させる。次の一瞬で、上空のスミスに食らいつく。強靭な筋肉をバネとし、巨大な翼によって生じる推進力で加速し、スミスよりも速く攻撃を仕掛ける算段だ。

 セルピヌスの突進の速度は神速にすら迫るものであり、スミスの機動力を上回る速度だ。傷つくことを恐れずに突撃してくるとなれば、その威力は凄まじいもので、生半可な攻撃ではスミスの肉体ごと打ち砕かれるだろう。どちらの一撃が早いか、一か八かの勝負となったかに見えたそのとき、やおら飛来した黄金の剣がセルピヌスの翼を射抜き、四肢を串刺しにした。

 セルピヌスの重量を支えていた四肢が力を失い、彼はその場に伏す形となった。黄金の剣を四肢に受けたことで身体を支えることができなくなり、崩れ落ちたのである。

 ここに、勝敗は決した。

「ナイスアシストだ。草薙護堂」

 黄金の剣を投じた戦友を一瞥もせず、心からの賞賛を呟くに止める。

 魔鳥の身体が燃える。

 青黒く染まったおぞましい炎は、太陽の象徴だ。よってその贄は雨なのだが、炎を操る我が身すらも供物として求めてくる。

 変身と同時に土砂降りの雨が上がり、太陽が顔を覗かせた。テスカポリトカ第三の変身体『殲滅の焔』は、雨と自身を贄として発動し、すべてを焼き払うスミスの必殺の一撃なのだ。

「滅びのために我が大業を数え上げよう! 我は終末を呼ぶ夜の斧。世界終結の幕を降ろす、黄泉よりの使者!」

「ぬう、おおおおおおおおおッ!」

 長い首を擡げて、セルピヌスは炎を口腔内に蓄える。

 そして、スミスの焔とセルピヌスの炎が空中で交わり、一つの黒い焔の塊となってセルピヌスの大きく開いた口の中に飛び込んだ。

 壮絶な撃ち合いは一瞬にして決着となり、セルピヌスは黒い焔によって頭を砕かれ、喉から尾の先まで両断されて砕け散った。

 

 

 

 □

 

 

 

 南米にのみ伝わる聖書の天使との決戦は、護堂とスミス、二人のカンピオーネの勝利となった。

 砕け散ったセルピヌスの遺骸は風化を早めたかのように急速に劣化して風に溶けて消えた。

「あれだけ猛威を振るった神様が何も残さないで消えるってのもなぁ」

 諸行無常の響きあり、ということだろうか。セルピヌスが遺した爪痕は、自然災害として処理される。結局、かの神格がこの世に与えた影響は皆無と言っても過言ではないのだ。

「もとより不死の世界にいるべき存在だ。この世に迷い出てきた彼らが、何かを残すようなことがあってはならないのだよ」

「きついなそれも」

「人の世だからな。信仰の上の神ならばまだしも『まつろわぬ神』は災厄にしかならない。天使の骸などの聖遺物は時として邪教の活動を促進することにも繋がるからな」

「あんたはそれで苦労してたんだったな」

「優雅な物言いではないが、そのようなものだな。尤も、これでしばらく彼らの活動はないだろう。羽を伸ばすにはいい機会だ」

 今回の騒動の原因も《蝿の王》である。しかし、彼らはセルピヌスを呼び出した際に壊滅的打撃を被った。多くの術者が死に至ったことで活動は停滞するだろう。スミスが動かずとも、SSIの職員で十分に対処可能なほどに実力差は開いた。

「では、私はこれで失礼しよう。君には今回大いに迷惑をかけたからな。アニーから十二分に礼をさせよう。残り滞在期間は短いだろうが、目一杯ロスを楽しんでくれたまえ」

「くれるってんなら貰うけど、俺はあんたに借りを返しに来たんだ。このくらいは当然だろ」

 護堂の返答を聞いて、スミスはバイザーの奥で小さく笑う。

「無欲なことだ。まあ、君がそれでいいというのなら、これで貸し借りはなしということにしよう。次に会うときに友人となっているか敵となっているか分からないが、できることなら矛を交えたくはないものだな」

「同感だ」

 それから、護堂とスミスは握手を交わして分かれた。スミスはジャガーに変身してどこかへ消え、護堂は土雷神の化身を使って戦場を後にした。

 

 

 護堂と祐理が羽田空港に戻ってきたのは、セルピヌスの戦いから二日後の日曜日であった。

 最後の一日をロサンゼルスの観光に費やした護堂は戦いのことなどすっかり忘れて旅行気分を味わっていた。ロサンゼルスに渡った目的を達成した後だったので、存分に楽しむ余裕があったのである。

「護堂さんは、どこにいてもトラブルに巻き込まれるんですね」

 というのは祐理の言だ。

「それは、別に俺が望んでることじゃないからなぁ……まさか、神様が出てくるなんて思わなかったし」

 ターミナルでロサンゼルスで過ごした日々を思い返すと、当初の予定を大きく逸れた日程だったことに驚かされる。これまでの海外旅行が尽く予定通りに運ばなかった――――主に『まつろわぬ神』やカンピオーネとのゴタゴタに巻き込まれる所為もあって、旅行らしい旅行は経験していないのである。今回のロサンゼルスの旅も結局『まつろわぬ神』と遭遇してしまった。

 行く先々で神様と出会う可能性など、天文学的数字なのではないか。

「祐理にも迷惑かけっぱなしだったな」

「そんなことはないですよ。わたしは、護堂さんの助けになれたのなら、それでいいのですし。これからも頼っていただけるのでしたら幸いです」

「ああ、うん、そうだな。頼りにしてる」

 護堂は照れくさそうに頬を掻きながら視線を人込みに彷徨わせる。

 人込みの中に、見知った顔を見つけて軽く手を振る。

 恵那と晶である。その後ろには冬馬もいた。

「王さま、また神様と戦ったんだって? 大変だったね!」

「お帰りなさい、先輩。お疲れ様でした!」

 楽しげに笑う恵那と嬉しげな表情でいそいそと駆け寄ってくる晶が口々に言う。

 見目麗しい女子が一堂に会して一気に華やいだ。

「あの、明日香さんの姿が見えませんが、どうかされたのですか?」

 祐理が恵那と晶に尋ねる。

 特に明日香が迎えに来るとは聞いていないが、いつものメンバーという括りにすると一人いないのが気になるのだろう。

「ああ、なんかね、馨さんの実験に付き合わされてるみたい。ほら、あの人の頭の中にしかない術式とかもあるからさ」

「ああ、なるほど」

 恵那の答えを聞いて、祐理は納得して頷いた。

「あ、そうだ。ねえ、王さま。今回は祐理が頑張ったみたいだけど、もう神降ろしも使えるようになったし、次は恵那にも出番ちょうだいね」

「先輩。わたしも、頑張れます。次に敵が出てきたら、わたしに任せてください」

 恵那の主張に晶も負けじと言う。二人の戦闘力があれば、『まつろわぬ神』との直接的な戦闘以外ならば、大体任せることができる。

 それから立ち話をしていると、不意に護堂は祐理のショルダーバッグがずり落ちそうになっているのに気付いた。

「なあ、祐理。バッグが落ちそうだぞ」

「あ、はい。ありがとうございます、護堂さん」

「よければ、持つぞ」

「いえ、そんな。そのようにしていただかなくても、軽い荷物ですので」

 祐理は護堂の申し出をありがたく思いながらも断った。

 重い荷物はスーツケースに入っている。ショルダーバッグには、財布などの携行品くらいしか入っていない。

 護堂と祐理の自然な会話に、

「あ、……え?」

 晶はぽかんとした表情を浮かべる。そして、恵那はニヤリと笑って祐理と肩を組んだ。

「祐理、向こうでなにがあったの?」

「え、いや。特に何があったというわけではないのですけど」

「嘘」

 間髪入れずに晶が否定する。

「今まで苗字で呼んでたのに、海外から帰ってきていきなり名前呼びなんて。一体何があったんです!?」

「そうだね。王さまと何があったのか、きっちり話してもらうよ!」

 祐理が恵那と晶に囲まれる。女子が固まったところで、冬馬が護堂に話しかけてきた。

「草薙さん。どうでしたか、初の外遊は?」

「いつも通りでしたよ、いい意味でも悪い意味でも」

「なるほど、草薙さんらしいです」

 冬馬は苦笑を漏らして、護堂たちの進路を指差した。

「駐車場に車を停めていますので、どうぞ」

「ありがとうございます」

 護堂は礼を言って、冬馬の後に続いたのであった。




本編では影が薄かった祐理だけども、実はメインヒロインとして構想したキャラ。話の流れで晶がドンドン濃くなったけれども、キスの回数は祐理がダントツだったり大事なところはしっかりと押さえていたりする。



紅茶のほうに英語の感想が来てビビッた。

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