東方狐流記   作:ももんがぴょん

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15話 彼女は一人取り残された

 

咲夜が今の時代から姿を消してから百年近くがたった

この日、朝起きると文夜の尻尾の数は5本に増えていた

 

「おはよう…ってまたあなた尻尾と妖力が増えてるわよ」

 

起きてきた永琳はリビングに入って文夜を見ると呆れた様に言った

 

「んー多分9尾になった瞬間に妖力は増えなくなるはずだよ?十尾の狐とか聞かないし、妖力が増えてるのは尻尾が増える時と一緒だし」

 

文夜は尻尾をくねくねさせながら言った

 

「昔から気になってたけれど、あなたはお風呂の時に尻尾が邪魔にならないの?」

 

永琳は尻尾を触りながら言った

 

「全然邪魔じゃないよ?何か無意識のうちに尻尾が動いててくれてるみたいなんだ」

 

「なるほど無意識なのね…あっあなたは月に人々が移住する話って知っているかしら?」

 

永琳は尻尾から手を離して言った

 

「えーっとあの急に決まったって話だっけ?寿命は身体に穢れが溜まるからこそ存在する。今までは地上に穢れは少なかったけど少しずつ増えて行っている…」

 

「だけども月は違う。あそこは穢れが一切ない…つまり寿命の概念が無くなる」

 

永琳は文夜に続けて言った

 

「お偉いさん達はよっぽど死にたくないみたいね…私がこの手で殺してあげようかしら…」

 

「永琳が人を殺めるのなんてダメだよ…」

 

「冗談だから大丈夫よ」

 

永琳は微笑みながら言ったが先ほどの顔はとても冗談で言ってるような顔では無かった

 

「そういえばどうやって月に移民するの?」

 

「私のお父さんがいろいろ頑張っているみたいなの。少し聞いた話だとロケットで月に移民するみたいよ」

 

文夜はその話を聞いた後、考え事を始めた

 

「どうしたのあなた?」

 

いきなり黙り込んでしまった文夜に対し永琳は心配そうに声をかけた

 

「ん?ちょっと考え事をしていただけだよ」

 

文夜は笑顔で答えたあと椅子から立ち上がった

 

「ちょっと電話をしてくるね」

 

「私は朝ごはんを作っておくわね」

 

文夜はリビングから出てあるところに電話をかけた

 

「…文夜です。今日の夕方あたりにお話しを…はい…忙しい中時間を作ってもらってありがとうございます」

 

文夜は電話を終えると良い匂いがするリビングへと向かった

 

「誰と電話していたのかしら?」

 

永琳は朝食を作りながら文夜に質問した

 

「んー秘密かな」

 

文夜がそう言うと永琳は近くにあったナイフを文夜に投げた

 

「っ!え、永琳?」

 

ナイフは文夜の頬を掠っていた

 

「…私がいるのに他の女ができたのかしら?」

 

永琳はふらふらと文夜の目の前に移動した…右手に包丁を持ちながら

 

「ねえ誰と電話していたの…?」

 

永琳は文夜の首元に包丁の刃を当てた

 

「え、永琳のお父さんとだよ!久しぶりに会って話してみたいなって思っただけだよ!」

 

文夜は永琳の目をしっかり見ながら言った

 

「…嘘はついてないみたいね」

 

永琳は包丁をおろしてまた朝食を作り始めた

 

「女ができていたら次はその首を切り落とすから」

 

「僕が愛してるのは永琳だけだよ…」

 

「私もあなただけを愛しているわよ」

 

文夜はこの時の永琳に少し恐怖を覚えていた

 

夕方、文夜は永琳の父親の研究室に来ていた

 

「お久しぶりですお父さん」

 

「片付いてないはあまり気にしないで欲しいな…」

 

永琳の父親は少し気まずそうに言った

 

「まあいきなり話しなんてどうしたんだい?」

 

「…お父さんは月への移民の計画の事をどう思いますか?」

 

文夜は真剣な顔で質問した

 

「…はっきり言って無謀だと思うし不可解なところもあるしね」

 

「不可解なところ?」

 

「この都市が跡形も無く破壊できる程の兵器を作ってくれってね」

 

文夜は目を大きくして驚いた

 

「万が一の為にこの都市の情報を残しておきたくないとは言っていたけどおそらく本命はこの理由だと思う」

 

永琳の父親は文夜の肩を掴んで言った

 

「文夜君を排除したい、だ」

 

「…幾ら何でもそれはありませんよ。たった僕一人を排除する為だけにこんな大掛かりな事はしませんよ」

 

文夜は冗談を言っているのかと思っていたが彼の目を見ているととても冗談には見えなかった

 

「根拠はあるのですか…?」

 

「明確な根拠は無い…でも今あるヒントの中からこの答えを見出すのは容易だと思うよ」

 

永琳の父親は文夜の肩から手を離した

 

「一つ文夜君に聞いておきたい事があるんだけど良いかな?」

 

「…何ですか?」

 

「君は…どうするんだい?」

 

文夜は少しだけ考えた後に覚悟をきめたような顔をして言った

 

「僕は戦います。例えこの身が滅びるとしても愛する人を守るために戦います」

 

「…なら僕は文夜君が少しでも生き延びる確率を上げるお手伝いをしてあげるよ」

 

永琳の父親は納得したような顔をした後に一冊のノートを文夜に渡した

 

「これは?」

 

「私が作り上げてしまった悪魔の兵器…かな」

 

文夜はノートを黙々と読んだ

 

「…使い方次第で富にもなる素晴らしい発明じゃないですか」

 

ノートを読み終えた文夜はそう言った

 

「私はこれすらも耐える事ができるシェルターを作る。万が一私達が予測している自体になってしまったら是非使ってくれないかな?」

 

「使わないのが一番良いんだけどね…」

 

文夜は苦笑いしながら言った

 

「そうだ…永琳の調子はどうかな?」

 

永琳の父親の質問を受けた文夜は少し気まずそうな顔をした

 

「少しは落ち着いてきたようですけどやはり…」

 

「…最愛の娘を失った傷はそう簡単には治らない……か」

 

「僕は咲夜が生きている事を信じていますから」

 

文夜は背を向けて研究室から出ようとした

 

「…ロケットで月に移民する日にまたここに来てくれないかな?」

 

「…わかりましたお父さん」

 

文夜は研究室を後にした

 

「…もしかしたらこの選択肢は最大の間違いだったかもしれないね」

 

永琳の父親は椅子に座りノートにペンを走らせた

 

1年後…永琳は飛行場に来て、月に行くためのロケットに乗っていた

飛行場には20を超えるロケットがあり、今の地球に住む全ての人類が一箇所に集まっていた

 

「輝夜と依姫と豊姫じゃない。同じロケットだったのね」

 

永琳は輝夜達が楽しそうに話しているのを見つけたので声をかけた

 

「久しぶり〜」

 

「お母さんが同じシャトルで嬉しい!」

 

輝夜と豊姫は再会を喜んでいたが依姫はキョロキョロ周りを見渡していた

 

「お父さんは何処に?」

 

「ちょっとやることがあるから先に行っててって言われたのよ」

 

永琳がそう答えると輝夜はいつもとは違い元気がなさそうにしていた

 

「ちゃんと来るよね…?」

 

「ちょっと輝夜!」

 

依姫は暗い事を言う輝夜に肘で脇腹あたりを突ついた

 

「なんだろう…凄く嫌な予感がするの…」

 

「私は文夜を信じてるから大丈夫よ」

 

永琳は少し震えてる輝夜の頭を撫でながら言った

 

「ねえ依姫ちゃん…あそこに何か見えない…?」

 

窓から外を見ていた豊姫は少し離れたところを指差した

 

「あれは…っ!妖怪の群れじゃないか!」

 

依姫は目を細めて見るとそれは数え切れない程の量の妖怪であった

 

「ねえ…あの大きい剣を持ってるのって…お父さんだよね?」

 

輝夜が別の方向を指差すとそこには妖怪の群れに対峙する様に立つ文夜の姿があった

すると突然4人の耳に文夜の声が聞こえてきた

 

『あーあー聞こえる?』

 

「…っ!文夜!どうゆうことなのよ!!」

 

声を聞いた永琳は窓を叩いて叫んだ

 

『この計画はそもそも無謀だったんだよ…妖怪の食事は人でしょ?つまりね…全人類が詰まったロケットは妖怪達の食料庫みたいなものなんだよ…』

 

「だからって…何で文夜がそこにいるのよ!!」

 

 

永琳が叫ぶといつもとは違い、トーンが低い文夜の声が聞こえた

 

『僕は人間が好きなんだよ…だから護る…それ以上の理由がいるかな?』

 

「あなたが良くても私が嫌よ!お願いだから…私を一人にしないで…!!」

 

永琳はその場で泣き崩れた

 

『ごめんね永琳…愛していたよ』

 

文夜がそう言うともう声は聞こえなくなりロケットは発射準備に入った

 

「嫌よ…嫌よ嫌よ嫌よ嫌よ嫌よ!!」

 

永琳は周りの目を気にせずに泣き叫びながら自分の髪の毛を毟るかの様に頭をかいていた

 

「あ、暴れないでお母さん!!」

 

「落ち着いて!」

 

豊姫と依姫は永琳を落ち着かせようとしたが…

 

「私達に任せてください」

 

「…あなた達は誰ですか」

 

「私達は医者です。ですから任せてください」

 

突如現れた医者と名乗る者達は豊姫に声をかけると暴れる永琳に鎮静剤を打った

すると永琳は気を失った

 

「お母さんに何をしたのよ!」

 

「落ち着いて輝夜!」

 

医者と名乗る者達に輝夜は怒鳴って殴ろうとしていたが依姫はそれを止めた

 

「大丈夫です…八意様を安全な場所で寝かせるだけですから」

 

そう言うと彼らは永琳を抱えて何処かに行ってしまった

そこには不思議そうに輝夜達を見るものしかいなかった

 

一方文夜は…

 

「本当、永琳には悪い事をしちゃったね…」

 

一枚の紙を見ながら呟いていた

 

「お父さんからもらった紙にはこれからの予定が書いてある…シェルターの場所は…よしっ!」

 

全て目を通した文夜はその紙を丸めて投げ捨てた

 

「あそこまで大きく出たんだ…絶対にここは通さないよ」

 

そう妖怪の群れを睨みながら呟いたあと、目が真っ赤になり文夜はまるで妖怪の様に咆哮を上げた

 

その頃八意邸…

 

「…地上に残されたのは私と文夜君だけかな」

 

永琳の父親はリビングにいた

 

「この都市を全て破壊する事ができる兵器なんて二個もいらない…設計図と私が無くなればもう二度と作ることもできないしね」

 

彼は一冊のノートを持ちながら椅子に座った

 

「この思い出がたくさん詰まった家で死ねるなら本望かな…一人って事を除けばね…」

 

「…一人じゃありませんよ」

 

突然声がしたのでそっちの方を見ると柚木がいた

 

「なんでここに…」

 

「死ぬときぐらいは一緒にいましょうよ?あなたは研究ばっかりだったんだから」

 

柚木は涙目で抱きついた

 

「…永琳だけじゃ無くて君にも寂しい思いをさせていたんだね……私は駄目な夫だね」

 

「こうして最後の時を一緒にいられるだけでも私は幸せでしたよ」

 

二人は口づけを交わした

 

数十分後…全てのロケットがこの地上を離れた

更に数分後、地上へ向けて核が放たれ都市は跡形もなく吹き飛んだ。文夜がいる場所を残して...

 

 

月に到着したロケットの中で…

 

「ねえ豊姫ちゃん、依姫ちゃん」

 

地上を離れてから一言も喋らなかった輝夜は泣いている二人に声をかけた

 

「ぐすん…何よ輝夜ぁ…」

 

「これでヒックくだらない事ヒック言ったら殺す…」

 

泣いている二人に対し輝夜は今まで見たことがない程真剣な顔で言った

 

「私はお父さんを月の守護神として祭っていこうと思うのよ」

 

「月の守護神…?」

 

依姫は少し何を言って言っているのか分かっていないようであった

 

「ぐすん…良い考えね…私も手伝うわよ…」

 

豊姫は涙を拭きながら頷いた

 

「私達を護ってくれたお父さんを…誰にも忘れなんかさせない…」

 

3人は文夜を神として拝めようという考えを広める為に頑張った

妖怪が攻めに来ようとしていたところを大勢の人が目撃していた為か、1週間後には守護神として信仰が集まっていた

 

とある部屋…そこにはベレー帽をかぶった女性がいた

 

「月夜見様!八意永琳の身柄を確保しました!」

 

そこに医者と名乗っていた者達が永琳を連れて部屋に入ってきた

 

「そうかそうか…それはご苦労。そなたらは下がって良いぞ」

 

「はっ!!」

 

月夜見と呼ばれたその女性がそう言うと男達は永琳を近くにあったベッドに寝かせた後部屋を出た

 

「はぁ…人前じゃいちいちあの喋り方にしないといけないのは面倒くさいわね…」

 

月夜見は永琳の頭を撫でながら言った

 

「私が用があるのはあなたの頭脳だけ…あなたの記憶は封印させてもらうよ…そっちの方があなたも楽でしょ?」

 

そう月夜見が言うと永琳は頷いた様に見えた

 

「ふふふ…穢れも排除できて月の頭脳も手に入った…私の邪魔するやつはもういない…」

 

月夜見は高笑いをした

 

【第一部古代編完】

 

 

〜大学の研究室〜

 

 

「とうとう第一部完ね!」

 

「やっと一部が終わったって感じじゃない」

 

「いやー空気だった八意さんもちゃんと活躍してたわね!」

 

「何かあの映画の博士みたいな事をしてたわね」

 

「あの映画?」

 

「気にしないでちょうだい」

 

「分かったわよ…そういえば気になってる事があるんだけど質問良いかしら?」

 

「良いわよ?」

 

「この時の地球って一体どんな感じになってるのかしら?」

 

「あーそれね…まずね今の地球みたいに大陸は分かれていなかったの」

 

「ふむふむ」

 

「さらに大陸は今と違いもっと小さかったの。で、そこまで大きくない一つの島の中央に都市があって、都市以外の土地には山とかがあって妖怪が住んでいたってわけ」

 

「人口はどれくらいかしら?」

 

「東京に住む人の数と同じくらいよ」

 

「結構いるわね…次の質問!」

 

「何かしら?」

 

「目が赤くなったってあるけどなんなの?」

 

「文夜って半妖でしょ?」

 

「うん」

 

「で、昔豊姫に言った表情から今の心境を読み取れない様にしようかな、って感じのやつ覚えてる?」

 

「そんなことあったわね」

 

「それの応用として、自分の中の人間の部分をできる限り隠して妖怪になりきっていたのよ」

 

「なるほどね」

 

「まあその時意識はぶっ飛んじゃうけど」

 

「戦うマシーンみたいになるってことね…まあ私の質問はこれで今のところは無し!」

 

「それじゃ、第一部を最後まで見てくれてありがとね」

 

「次からは第二部!楽しみにしててね!」




はい第一部が終了しました!少し日本語がおかしいところがあるかもしれませんね…指摘などはバンバンください!
次からは諏訪大戦の第二部が始まります!見てください!
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