29話 閉ざされた世界に咲く花
ここは夢幻世界
夢月と幻月と言う名前の悪魔の姉妹が作り上げた世界
そんな世界にも花畑はある
私はそこに一人で住んでいる
夢幻世界には私以外にも生き物は住んでいる
だけどみんな私を怖がる…私がただ普通より多く力を持って生まれただけなのに…
ああ…もうひとりぼっちは嫌…
……
「もう少し…ってところかな」
私は天使のような羽をパタパタさせながら水晶玉を覗き込んでいた
「何を見ているの幻月?」
するとメイド服を着た少女…私の妹の夢月も水晶玉を覗き込み始めた
「ちょっと前に私達が作り上げた女の子を見ているのよ」
水晶玉には花畑にいる腰まである緑色の髪の毛の少女が映っている
「何でこの子をひとりぼっちにしているの?変に力を与える必要もなかったと思うけど」
夢月は水晶玉から目を離して私の顔を見ていた
「分からないの?」
「分からないの」
夢月は本当に分からないようだ
愚かな妹め!
「じゃあ教えてあげる。神綺って覚えてる?」
「神綺?」
「ほら…あのアホ毛が付いた…」
「あっ…あの私達が新しく世界を作ったのを見て自分も作るって言い始めたあれね」
やっと誰か分かったらしい
「そう。それで私がしたい事は…」
「したい事は?」
私が次の言葉を言うために溜めていると夢月は目を輝かせながら私を見ていた
この可愛い妹め!
「その世界を破壊してやることだー!」
「おおー!」
私は胸を張って言うと、夢月はパチパチと拍手をしていた
「…でもあの子とどう関係があるの?」
夢月はまた水晶玉を覗き込みながら言った
「私はね…あの子をアルティメット・サディスティック・モンスター…略してUSCにしたいの」
「…まさかその歪んだ性格を作るためにひとりぼっちにし続けているの?」
やっと私の偉大なる計画を分かってくれたみたいね
「恐怖を与えることで自分の存在を認知してもらいたい。そう思わせる様にしたいの」
「それで恐怖を与える存在を神綺の作る世界に放り込む…」
「その通り!」
「流石幻月やることがえげつない!」
夢月は私の脇腹を肘で突ついていた
こんなにも素晴らしい褒め言葉をくれるなんて流石ね
「それじゃ私は観察を続けるわね」
「私も一緒に見ていたいな」
「なら一緒に見ましょうか」
私は水晶玉を夢月に見える様に持って、また少女を観察し始めた
……
私はお花とお話しをする事ができる
何時もひとりぼっちだけどお花が何時もそばにあったから話せるようになったのかな
「分かった…お水をあげるからちょっと待ってて」
とあるお花は喉が渇いたって言っているから私は水を汲みに行った
「はいどうぞ」
私が水を撒いてあげるとそのお花はお礼をしてくれた
「ふふっどういたしまして」
私が微笑んでいると他のお花が私に話しかけてきた
「どうしたの?…え?誰か倒れてる?」
私はそのお花から場所を聞いてその場所へと向かった
ここには誰も来ない筈なのに…
迷い込んできたのかな?
……
私はお花が教えてくれた場所に行くとそこには金髪で変な耳と尻尾を生やした男の子が裸の状態で藍色のお花の上で倒れていた
「大丈夫…?」
私は恐る恐るその男の子に声をかけた
でもその男の子は返事を返さない
「死んじゃってる…?」
私は男の子の首を触った
よかった…ちゃんと生きてる…
「とりあえず…私の家に運ぼうかな…」
私は男の子を背負って自分の住んでいる家に向かって歩き始めた
もしかしたら起きた時に私を見て逃げ出しちゃうかもしれない…でも…
「ほっとくなんて…できない」
私は家に着いたらお花のベッドに男の子を横にさせた
私は何故か疲れてしまったので椅子に座って眠り始めた
……
私は水晶玉から目を離して、幻月を見てみた
やはり予想通りプルプルと身体を震わせていた
「何よこいつ…」
「落ち着いて幻月」
「落ち着いてなんかいられるか!」
幻月は水晶玉を思いっきり地面に叩きつけて壊してしまった
「なんだあいつ!私の計画が全部狂ったじゃないか!ぶっ殺してやる!」
幻月は禍々しいオーラを発して今にも飛び出しそうであった
「夢月!ちょっとぶっ殺してくる!」
幻月は花畑へ向かおうとした
私はあの少年に興味があるから殺して欲しくないんだよね
…頑張って納得させてみましょう
「ねえ幻月」
「何!」
幻月はすごい形相で私を睨んでいた
ビビるな私…
「あの少年…利用できると思わない?」
「…どうやって?」
少し落ち着いてくれたみたいね
これで話をちゃんと聞いてくれるかな
「幻月は寂しさを利用するって言ったでしょ?」
「まあそうね」
「ならさ?依存した愛を利用するなんて…どうかな?」
私がそう言うと幻月は少し考えた後に、口が裂ける程ニヤリと笑ってみせた
私は幻月のこの表情が大好きである
「それも面白そうね…ならあの少年は殺さない方が良いわね」
「うん。だから観察を続けましょ?」
私がそう言うと幻月は何故かオドオドとし始めた
「どうしたの?」
「水晶玉…壊しちゃった…」
「もう一個作れないの?」
「作れないの」
…つまり観察する術が無くなったって事ね
「幻月って何処か抜けてるわよね」
「う、うるさい!」
幻月はポカポカと私を叩き始めた
すごく極悪なのにこんなにも可愛い一面があるのが最高だ
それにしてもあの少年…私達が作った生き物じゃない
しかも生まれたばかりな感じなのにあの少女を超える程の力を持っている
あの二人が共に依存し合い、強く成長すれば…私と幻月でも敵わないかもしれない
私は心の中では冷静に考えていた
……
私が男の子を見つけてから3日は経ったのに男の子は今だに起きなかった
「この子ずっと寝てる…このまま死んじゃったりしないよね…?」
私が心配になって近くで見守っていると…
「んっ…」
「あっ…」
その男の子は目を覚ました
そして身体を起こしてぼーっとしていた
「大丈夫?」
私が声をかけても反応してくれなかった
「もしかして…生まれたばかりで言葉が分からないのかな…」
「生まれた…多分…」
男の子は私の方を見てそう呟いた
「生まれたばかりなのに言葉は分かるんだ…」
そう言えば私も生まれてすぐに話せたっけ…でもお花は普通は言葉を覚えるのに時間がかかるって言ってたね…
「あっ…生まれたばかりなら名前をつけてあげる」
「名前…?」
男の子は首を傾げていた
「うん。あなたは藍色の花の上で見つけたから…あい…「藍」なんてどう…」
「藍…それが僕の…」
男の子は藍って名前を気に入ってくれたのか微笑んでいた
喜んでもらえると嬉しい…
「名前…付けてくれてありがとう」
「ふふっどういたしまして」
ああ…他の人と話すのってこんなに楽しいんだ…
「ねえ…もしよかったら…私と一緒に暮らしましょう?」
私はふと思い付いた事を言った
私を初めて受け入れてくれた人…離れたくない…
「…いいよ?」
藍は少し考えた後に答えた
「本当に!?」
私はあまりの嬉しさに大きな声が出てしまった
「行く当てもないし…それにあなたはすごい寂しそうだから…」
藍は私の事をちゃんと見てくれているんだ…
「…ばれちゃった?実は私こうしてまともにお話することすら初めてなのよ?…あれ?涙が出てくる…なんでだろ…」
私は気が付くと涙を流していた
「…辛かったよね今まで」
「え?」
泣いている私を見た藍はベッドから立ち上がってから私を抱き締めてくれた
「僕がいるから…もうひとりぼっちじゃないよ…?」
「生まれたばかりの男の子が言えるような事じゃないわよ…
でも…」
私は藍が裸である事すら忘れて強く抱き締めた
「今は…泣かせてくれないかな…?」
「うん…僕で良ければ受け止めてあげる…」
私は藍に抱きついたまま号泣した
今まで泣かなかった分を全部ひっくるめて今泣いているのではないかと思った
「…落ち着いた?」
10分後…私はやっと落ち着く事ができた
「うん…」
「そういえば君のお名前は?」
私は藍の質問に困った
「…私には名前が無いの」
「じゃあ僕がつけてあげる」
「本当に?」
「閉ざされた世界に咲く花…幽香、何てどうかな」
ゆうか…幽香…それが私の名前…
「じゃあ改めて…私の名前は幽香よ」
「僕の名前は藍。よろしくね」
藍は手を差し出したので私は握手をした
「本当に藍生まれたばかりなの?雰囲気とかすごく大人みたい…」
「何故か頭から知識が出てくる…そんな感じ」
「ふふっもしかしたら藍は誰かの生まれ変わりかもしれないわね」
私は冗談で言ったつもりだったけど藍は真剣に考え初めてしまった
「そんなわけ…ない…よね…?」
「冗談で言ったつもりだからあまり気にしないで?」
「うんそうする…あと…」
藍は少し言いにくそうにしていた
「どうしたの?」
「寒いから…服が欲しいな」
私はそう言われて初めて気がついた
藍は裸だって事を
「す、す、すぐに服を作ってあげるから待っててね」
私は顔を真っ赤にしながら部屋から出て行った
「はぁ…男の人の身体ってあんな風になっているんだ…」
私は藍の為にお花で服を作っていた
「そう言えば…尻尾があったからそれ様に穴を開けとかなきゃ…」
本当…こんな作業ですら楽しく感じる
誰かのために何かをやるって…すごく楽しくてすごく幸せ…
こんな私でも幸せになってもよかったんだ…
私は藍の喜ぶ姿を想像しながら作業を進めていった
〜とある大学の研究室〜
「さあ始まりました第三部!」
「まあ今回は本編ってわけじゃないけどね」
「それにしても藍…本当に生まれたばかりなの?」
「実は彼は文夜が失った妖力がまた集まって具現化したような存在なの」
「な、なんだってー!?」
「ただ本当に偶然なの。だから夢幻世界って別の世界で生まれちゃってるし」
「変に知識があるのは文夜の頃の記憶が残っているから、って感じ?」
「エピソード記憶は完璧に無いけどね」
「ふむふむ…もう別人って考えても良いわけね…そう言えば夢幻世界って何なの?パラレルワールド?」
「パラレルワールドじゃないわよ?ちゃんと現実世界にも繋がっているし」
「ドラクエで言うところの魔王がいる世界って感じね」
「まあそんな感じね」
「質問はもう無いかな」
「そう。なら今日はもう帰りましょうか」
「そうね」
「第三部…一体どんな展開になるのか楽しみね」
「早く竹取物語こないかなー」
「それはもう少し先よ」
「ちぇっ…」
こんばんは!第三部始まりました!
どうでしょうか今回のお話は?
東方旧作ネタを入れてみました!
そして文夜君の妖怪の部分だけのキャラも登場!
第三部も楽しく見ていただけると嬉しいです!
では…次回も見てください!