「ん…ここは…?」
私は目を覚ました
辺りを見回してみると木しかないので森の中なのかなって判断した
「私は何を…」
私は頭に手を当てながら必死に思い出そうとしたけど…
ダメだ…私はさっきまで何をしていたのか?何故ここにいるのか?を思い出せない
所謂記憶喪失ってやつかしら…
「…とりあえず移動してみましょう」
私はこの場に留まっていても何も変わらないと判断したので、行く宛も無い状態で歩き始めた
……
「誰かに…見られている…?」
歩き始めてから数十分近くが経ったけど私は今だに森の中にいた
それよりも先ほどから視線を感じるのだ
まるで何かが私を襲う為に息を潜めている様に…
「…気のせいよね。それよりも早く誰かと…あっ!」
私は地面に転がっていた小石を踏んでしまい、尻餅を着いてしまった
「いたた…」
私は何処か擦りむいていないかを確認した
…よかった運良く何処も怪我はしていないみたいね
私がホッと息をつくと、近くの茂みからガサゴソと音が聞こえた
「だ、誰!」
私は音がした茂みに向かって叫んだ
もしかしたら人かな?と私は淡い期待をしていた
しかし、茂みから出てきたものを見た瞬間にそれは絶望へと変わった
「ひっ…」
茂みから出てきたのは狼のような何かであった
それも一匹だけではなくて五匹はいる…
さっきまで感じていた視線はこいつらのせいだったのね…
「…降参よ。さあ私を美味しく食べなさい」
もう逃げようがない。私はそう判断して諦めた
だってそうでしょ?この状況を回避するには立ち上がってから走って撒かなきゃいけないのよ?無理に決まっている
狼のような何かは私に飛びかかろうとしたが…
「…え?」
それはいきなり転けたのだ。氷の上で滑ったかの様に
私はありえない光景を目の当たりにして思わず声が出てしまった
「大丈夫?」
私は背後から声が聞こえたので振り向くと、そこには腰くらいまで白銀の髪の毛を伸ばし、大きな剣を持った男の人が立っていた
「ちょっと待っててね?こいつらを殺すから」
男の人はそう言うと、立てずにいる狼のような何かの目の前に行き、剣を突き刺した
私は一目で分かった。もうあれは死んでいると
男の人は剣を引き抜いた後、その剣の周りに何かを纏わせた様だった
男の人はそれを一振りすると、他の狼のような何かの首が突然斬り落とされた
私はその光景を見て不思議と何とも思わなかった
普通なら気持ち悪いと思うのだろうけど、今の私は「ああ、死んだのか」としか思わなかった
……
「ふぅ…」
僕は妖怪を殺した後、女の子の目の前に立っていた
それにしても間に合ってよかった…こんな森の中で何をしているんだろう?って気になって後を付けてきた甲斐があったよ
「こんなところで何をしていたの?一人でこんなところにいたらさっきみたいな妖怪に襲われちゃうよ?」
僕は女の子と目線が合う様にしゃがんだ
それにしても…すごい格好だね…
服が紫色一色で統一されている…でも金髪な事もあるせいかすごく綺麗に見えるよ
「実は…分からないのです」
女の子は少し僕の事を警戒していた様だったけど口を開いてくれた
「分からない?」
「気がついたらここにいて…でもそれよりも前の事が思い出せなくて…」
僕は女の子の目をしっかり見ながら聞いていた
どうやら嘘は言っていないみたいだね…
それにしても記憶喪失か…
「何か覚えている事は無いの?例えば…名前とか」
「名前…私の名前はマエリベリー・ハーン」
女の子は少し考えた後に言った
マエリベリー・ハーン…すごく言いにくいね…
「じゃあメリーちゃんって呼ばせてもらうね。あと僕の名前は美音文夜。よろしくね」
僕は自己紹介をした後に握手をする為に右手を出した
それを見たメリーちゃんはにっこりと笑って握手をしてくれた
「よろしくお願いします美音さん」
「それで…名前以外に何か覚えてたりしない?種族とか」
「私は人間よ?」
メリーちゃんはきょとんとしながら僕の事を見ていた
「でも妖力しか感じられないよ?」
「うーん…じゃあ妖怪なのかしら」
大丈夫なのかな…心配になってきた…
「ねえメリーちゃんは行く宛とかあるの?」
「無いわよ?本当に何も覚えていないの」
「ならさ…僕と一緒に旅をしない?」
僕がそう言うとメリーちゃんは警戒した様に僕の事を見ていた
「えっちな事するんでしょ…」
「しないよ!」
何て事を言い出すんだこの子は
メリーちゃんは僕の反応を見てクスクスと笑っていた
「冗談よ冗談。でもどうして一緒に旅を?」
「なんか…ほっとけないって言うのかな?あといろいろ教えられると思うし…」
僕がそこまで言うと、メリーちゃんは顎に手を当てながら考え始めた
「…じゃあ一緒に行かせてもらおうかしら」
「うん分かった。これからよろしくね」
「お世話になります」
メリーちゃんはぺこりとお辞儀をした
礼儀正しい子だね…
「そういえば美音さんは人間なんですか?妖怪なんですか?」
メリーちゃんは自分から質問する時は敬語を使ってくれるみたい
諏訪子達と別れてもう数十年くらい経ったけど敬語を使われる何て沙奈枝ちゃん以来だよ…
「僕は人間で神様で元妖怪だよ」
僕はさっきのお返しのつもりでワザと分かりにくい風にいってみた
案の定メリーちゃんはよく分かっていない感じだった
「つまり神様って事?」
「まあそう言うことだね。普段は神様の力は抑えているけどね」
「なんで抑えているのですか?」
「実は…一回人に拝まれちゃって…」
昔、神力をバンバンに発しながら村に入ったら、村人が全員土下座して「ありがたやー」と拝まれる、と言うとんでもない事があったのだ
人って神力はしっかり感じられるんだって感心もしたけど…
まあ反応に困るのだ。あれをされちゃうと
だから僕は戦う時以外は基本抑えている。まあ戦いの時も抑えている時も多いけど
「拝まれる…私じゃ耐えきれないかも」
メリーちゃんは自分が拝まれている風景を想像したのかとても嫌そうな顔をしていた
「じゃあ美音さんは何の神様なの?」
「僕は多分、月の守り神だよ多分」
僕は確証が無いから多分を強調して言った
「月って事は…月夜見様?」
「あんなのと一緒にしないでくれ!」
僕はつい、声を荒げてしまった
反射的にやってしまった…メリーちゃんも驚いているみたいだし…
「ご、ごめんねメリーちゃん。驚いちゃったよね…?」
「い、いえ…気にしてませんから大丈夫ですよ」
メリーちゃんはにっこり笑ってくれているけど…何か申し訳ない…そうだ!
「お詫びと言ったらあれだけど…」
僕は神力で少し大きめの紫と白の中間あたりの色をした日傘を作って、メリーちゃんに渡した
「これは?」
「さっき驚かしちゃったからね…」
メリーちゃんはそれを受け取って傘をさして、クルクルと回し始めた
「ちょっと大きいけど…ありがとう!気に入ったわ!」
メリーちゃんは鼻歌を歌いながら歩き始めてしまった
「待ってよメリーちゃん!」
僕は急いでメリーちゃんの横に並んで歩き始めた
「勝手に行って迷子になったらまたさっきみたいな怖い目に合うよ?」
「美音さんはすぐに助けてくれるって信じているもの」
メリーちゃんはニコニコしながら言った
それ程信用してくれているって考えてもいいのかな?
「でも助けるにしても限度はあるから気をつけてね?」
「はーい」
僕たちはとりあえず村を見つける為に歩いた
村に着けば寝床もあるし食事もできるからね
こうして行き当たりばったりな僕とメリーちゃんの旅は始まった
ただ目的の無い旅だけど…それでもいい
だってそれの方が楽しいのだから
〜蓮子の部屋〜
「おはよう蓮子」
「おはよう妖怪メリー」
「失礼ね。私は人間よ」
「いいや妖怪よ!」
「ただ名前が同じだけよきっと!それに蓮子と同じ名前の人だっていたでしょ!」
「うっ…ならこの話は終わりにしましょう」
「全く…今回は何か質問ある?」
「文夜は諏訪子達と別れてからどんな風に生活していたの?」
「文夜は旅をしているのよ」
「それは分かっているわよ!」
「冗談よ冗談。それで村に訪れては妖怪退治の仕事を貰って、それを退治してお金をもらうって事を繰り返していたわけ」
「ふむふむ…そう言えばもう妖怪に対して何か特別な感情とかは無いわけ?」
「生きていく為には仕方が無いって割り切っている部分があるわね」
「なるほどね。私からはもう無いかな。そう言えば明日は七夕ね」
「笹の木買ってきましょうか?」
「良いわよそこまでしなくても」
「分かってるわよ。蓮子はどんな事を短冊に書くつもりなの?」
「私は我道走って書くわよ」
「…ガロード・ランって訳ね」
「あっ分かっちゃった?」
「少しはまともなことに変えてみたら?」
「失礼ね。私はふざけ倒すわよ」
「全く…」
こんにちは!今回は新しい旅のお供ができました!
本編で登場したメリーちゃんはだいたい5歳くらいの少女、と想像してください!
そう言えば…感想を頂いた時にどう返信すれば良いのか分からないのです…せっかく感想を頂いたのにちゃんと返信をすることができずすいません…
では…次回もみてください!