第0話[終末]
そのひときわ大きな爆発で、私の意識系統は稼働を再開した。
正確には振動による機体の再始動。
そんなことで予備電源がアクティベートされるて、どんな原始の機械だろうと考えたがしかし幸運だった。
回りは既に火の海であった。
視界の先、 正面には巨大な“リダクス”が青白く光っていた。
そうだ。私の任務は、この“リダクス”の停止。
世界を無に帰す計画を阻止すること。
“リダクス”のアークエネルギーが漏れて青白く光っている。
終末の卵が今にも孵りそうになっているのだ。
「任務を続行、リダクスを停止、停止する」
私の胸部を貫き後ろの壁にささったヴォイドの槍を、内部が露出した壊れかけの腕でゆっくりと抜くとその場で捨てた。
幸いにも動力部であるエネルギーコアには外していた。
『機タイ損傷りツ、92%。OSに複数の重dddあいなエらーあリ』
頭のなかで内蔵された声が響く。
ヴォイドとの最後の戦いで私の身体は相当な傷を負っていた。
辺りは小規模の爆発音が響き、空気を揺らす。
もうすぐここも崩れるだろう。
ノイズが酷い。視界もはっきりしない。
予備電源もすぐなくなってしまうだろう。
しかしやるべきことは分かっていた。
電力を脚部に集中させて使い物にならない左足を引摺りながら歩く。
終末を阻止するため。
それが私の、最後の任務だ。
仇敵の残骸が散らばるなか、“リダクス”へと脚を進める。
仲間たちは、兵たちは避難できただろうか。
メモリーに関する重大なエラーか、もう誰の顔も思い出せない。
それでも願わないわけにはいかなかった。
メモリーが損傷していようと、この思いだけは、絶対に壊れないはずだ。
“思い”なんてものは“私たち”にはあるはずのないものだったが、そう信じてやまなかった。
歩みを止める。
“リダクス”の目の前まできたのだ。
後はカウントダウンを続ける目の前の装置をハッキングすれば、“リダクス”は停止する。
地中の核に届くことなく、任務を達成できる。
露出された腕の内部からコードが伸びる。
それを“リダクス”の装置へ取り付けようとしたとき強い電撃が右腕に走った。
ヴォイドの、ひいてはその組織、「ニヒル」の最後の悪あがきか。
ハッキングコードを取り付けた瞬間、プラグがショートした。装置に細工を施されていたのだろう。
“リダクス”をこの装置ではもう止めることはできなかった。
装置に示された数字、あと30秒で終末の卵が真下に掘られた直下トンネルを抜け地中へ落ちる。
そのまま星の核へと衝突すれば、瞬間、星の核もろとも連鎖爆発しすべてが無になるだろう。
目の前で世界が終わる瞬間を見ることしか出来ない。
その絶望感を「ニヒル」は私に与えたかったのだろうか。
…………残念ながら、その目論見も、「ニヒル」の悲願も叶わない。
私のすることは分かっていた。
だからOSはいたって冷静な思考でいた。
アークエネルギーを無理やり詰め込んだ爆弾“リダクス”は、その性質上不安定な爆弾だった。
例えば電力の過剰供給によって些細な衝撃で爆発してしまう原始の機械のように。
装置を通り越して、柵から崩れるように降りる。
“リダクス”を覆うガラスまで来ると目の前のそれを渾身の力で破壊すると、同時に使用した右手も砕けた。
ガラスの破片が頭上から降ってくる。
しかしもう、“リダクス”と私のその至近距離に障害はなにもなかった。
大丈夫。もう撤退命令は出ている。
味方を巻き込むことはないはずだ。
露になった、青い光を増していく終末を前に、私は静かな気持ちだった。
訪れた終末の最後に想ったのは、博士と仲間たちだった。
「ありがとう。博士、皆……。私は────」
視界が落ちた。シャットダウンも寸前なのだろう。
演算も思考もない真っ黒な世界でただ唯一強烈に熱を持ち光を放ったのは、自分の“命”とも言える、私のエネルギーコアだった。
第1章へ続く
はじめまして。
小説投稿超初心者の倫鈴です。
少ない文字数でしたが見てくださってありがとうございました。
受験だということもあり、不定期で更新していきます。
感想をもらえると嬉しいです。跳ねあがります。
ではでは。