東方機人伝 ~機械人形と写影の賢者~   作:倫鈴

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第8話[行方不明]上

日が沈む。

夕方の薄暗い時は終わり、空は秒読みに暗くなってきた。

 

その空の中を今、私はルーミアを担いだ魔理沙という少女と飛んでいる。

 

…………箒にまたがって。

 

 

 

 

そのルーミアの保護を期待できる教師の家は、そう遠くかからないという。

箒で移動中の少しの間、この世界の魔法について話を聞くことにした。

 

「その魔法というのはどうやって操っているんだ? 

その、私はガイライジンだから初めて魔法というのを見るんだ」

 

違う世界から来た者を外来人というらしい。

この“幻想郷”に来てから学んだことだ。

 

「それにしてはそんなに驚いてないようにみえるぜ? ……まぁいっか 」

 

魔理沙は軽く咳払いすると魔法について語り始めた。

 

「そうだなぁ……魔法を出すこと自体は特に難しくないぜ。

おりゃ! って出せばいいだけだからな」

 

おりゃ! と出せばいい……? 

魔理沙の言葉を反復して言った。

それは疑問のつもりで言ったのだが魔理沙には相づちと受け取られてしまったようだ。

 

「そうそう! おりゃ!! っとな。

出すことは簡単なんだが……。

難しいのは魔法の構築なんだよな~

そこはもう勉強して学ぶしかないんだぜ」

 

「魔法の構築とはなんだ? 魔方陣かなんかを書いたりするのか?」

 

「書いたりする奴もいるけど、私は書かないな。面倒だし! 

魔方陣がある方が丁寧に、強大な魔法が放てるんだけどな。まぁ、それは置いといて。

魔法を使うときは大前提として、魔力を使うんだが、その魔力を組み換えないと魔法は使えないんだぜ」

 

「まぁ、簡単に言うとパズルみたいなもんだな。

使いたい魔法に合わせて魔力を変えるんだ。

水の状態変化みたいなもんだな! 

そうやって自分で魔力を合わせたりして魔法にするんだぜ!」

 

うむ。

つまりその魔力とやらが単体では魔法を使えないらしい。

変換させることで初めて放つことができるようだ。

 

「なるほど、大体分かった。

魔力の組み換えで魔法を使えるわけか。

では実際、どうやって魔力の“組み換え”を行っているか、聞いても良いか?」

 

新しい概念に関しての興味は尽きることはない。

魔力という未知のエネルギー。

知って損はないはすだ。

 

「おぉいいぜ! と言ってやりたいとこなんだが、もうすぐ着くぜ。

一言で言うなら感覚だな!」

 

そう話すと、箒がどんどんと下降していった。

箒が地面すれすれまで近づくと、私と魔理沙は箒から降りた。

時間がきてしまったのなら仕方ない。

またどこかで調べることにしよう。

 

「ほいっ、着いたぜ。ここがけーねの家。

あ、けーねが私の言ってた教師のことな! 

ここまでのお代はツケにしといてやるよ!」

 

なるほど、やはり金が必要だったか。

むしろ合理的だ。

ツケにしてくれるというから、後日、働く事のできる場所を探そう。

 

「……冗談だぜ? 

お代はいらないからまぁ貸しってことで! 

ルーミアはお前に預けておくな」

 

冗談だったのか。

よくわからなかった。

なぜ彼女はここまでしてくれるのだろうか。

 

そんなことを考えつつ、魔理沙からルーミアを受けとる。

まだ目を覚ましていない。

私は子供のように少女を抱っこした。

 

「あいつの言ってた通り、そこらに置いといても別に問題はなかったんだが、“衣狩り”が出てるからな。

それにお前も、そうする事が出来なかったようだし。

まぁ万一ってことで!」

 

捨て置く事にメリットあれどもデメリットはなかったはずだ。

私のバグ。

思考と行動の解離。

記憶障害によるものであれば、これは深刻なエラーだ。

 

「ルーミアが成長した姿になった、ってのは気になるけどな。

けーねには魔理沙から紹介されたと言えば事情を聞いてくれると思うぜ。

じゃ、これから霊夢と合流するからお別れだ。

じゃあな、アイ! 気をつけろよ!」

 

「あぁ、この借りは返そう。

色々ありがとう」

 

魔理沙はまたニカッと笑うと、箒にまたがり、猛スピードで空へと飛んでいった。

私が乗っていた時はあれほどの速さではなかったから、配慮してくれていたみたいだ。

必要不必要に関わらず、その配慮に感謝した。

 

 

 

「それにしても、人里の門で少し察していたが」

 

回りには古びた木製の家が立ち並んでいた。

何世紀前の建物だろうか。

ここが人里。私の世界の人間が忘れた生活の様。

だが……それにしても。

それにしても古過ぎるのではないか? 

鉄が“この人里に”ほとんど使われていない。

忘れ去られた物が流れ着くのがこの幻想郷なら、もう少し文明レベルが上がっているはずではないか。

けーねという教師の家はその例外ではなく、瓦のついた古来の建物だった。

 

ルーミアに関する自分のバグのこともある。

まずは訪ねてみるしかないだろう。

 

けーねの家の、木製の簡易な扉を叩く。

コンコン。

すると家中の奥の方から誰かの反応があった。

 

「……! はーい、今行きます~」

 

ガチャッ、と扉が開く。

 

「どちら様でしょうか…………っ!」

 

青のメッシュが入った銀髪に青いワンピース。胸元には赤いリボンをつけた女性が出てきた。

驚いた顔をして。

 

「その黒い服と金の髪、ルーミアなのか!?」

 

家から出てくると私の後ろに回り、ルーミアの顔を確認する。

 

「やっぱりルーミアじゃないか! 

気を失っているのか。

あなたがルーミアを見つけてくれたのですか?」

 

「あぁ、私は見つけたというよりたたか……」

 

「そうなんですか! 

立ち話もなんですから。

どうぞ家に入ってください! 

あなたのお話を聞きたいです」

 

速い口調でそういうと、その女性は足早に家の奥へ行ってしまった。

 

微少な緊張、困惑、そして多大な安堵の感情を確認。

ルーミアを探していたのだろうか。

許可が出たので家へ入ることにした。

 

「失礼、します」

 

扉を閉める。

 

家には先ほどの女性しかいない。

つまりこの女性が、魔理沙の言っていた、けーね、という教師だろう。

 

家の中も外見に応じた広さであった。

訳19.4㎡。

横に12畳のたたみ程の広さを、右半分はキッチンが見え、左半分にちゃぶ台と布団が敷いてあった。

 

けーねはキッチンからお茶を2つ持って、ちゃぶ台に置くと、私に近づいてきた。

 

「ルーミア、預かります。

あなたはどうぞ、そこの座布団に座ってください」

 

私はけーねに、抱っこしていたルーミアを渡す。

その時osにノイズが走った。

 

 

この動作を、私は過去に行ったことがある? 

 

しかしその正体を掴むことはできなかった。

 

 

 

「どうしましたか?」

 

動きの止まった私に声をかけるけーね。

その声に気づき、稼働を再開した。

 

「あぁ、いや何でもない。

そこに座ればいいのだな?」

 

「はい。

ルーミアについてお話を聞きたいので」

 

そういうとけーねは、受け取ったルーミアを布団に寝かせる。

もしかしてルーミアの母親なのだろうか。

自分の布団なのだろうが、そんなことは関係なしと言った風だ。

 

けーねに促され、私はちゃぶ台の近くに置かれた座布団に正座する。

そういえば正座など、どこで私は覚えたのだろうか。

ただこの懐かしい感覚は、障害のある記憶によるものだろう。

やはり私は、私の生い立ちについての記憶が閲覧出来ない。

戦闘や私の世界の情報などはほとんど覚えているのに。

その事に曖昧な不快感を覚えつつ、けーねはちゃぶ台を挟んだ向こう側の座布団に座った。

 

私とけーねの手元には、ひんやりとしたお茶が置かれていた。

 

「私は上白沢慧音。この人里で教師をやっています。

先にあなたの名前を伺ってもいいですか?」

 

やはりこの人がけーね、慧音という人物だった。

 

「……アイだ。

今日この世界に迷いこんだ。

ガイライジンというものらしい」

 

そう言うと慧音は少し驚いたような顔をした。

 

「外から来たのですね。

その事も含めて、ルーミアを保護するまで────いや、ここに来るまでの話を聞かせてほしいのですが、大丈夫ですか?」

 

「問題ない。

一度ここに来るまでの事を話した。

付け加えて話すだけだ」

 

私は慧音に、魔理沙に話したことと、加えて同じく彼女に助けられたことを話した。

その後どこかへ急ぐように箒で去ってしまったことも。

途中目を見開いて驚いている所もあったが、慧音が続けてほしいと言うので、最後まで話した。

 

一通り話した後、慧音の顔はどこか暗い表情をしていた。

 

「ルーミアが本来の形態に戻ったのか。

でも一時的に戻っただけでリボンはまだついている。

一度博麗に見てもらうべきか……」

 

慧音は自分が一人言を言ってることに気がつくと、軽く苦笑いして私に話しかけた。

 

「ははっ、すいません。

それで、魔理沙がここまで送ってきてくれたんですね。後で私も感謝しないとな」

 

ここで今度は私が、慧音に話を聞く。

 

「ルーミアを見て驚いた顔をしていたが、一体どういう事情があったのか教えてくれないか? 

知りたいことが複数あるのだが、まずはそれが聞きたい」

 

ルーミアに気づいたとき、慧音は少々取り乱したように見えた。

もしかしたらこのルーミアに、私のバグの原因があるかもしれない。

個人的な質問だったが、慧音は快く承諾してくれた。

 

「そうですね、どこから話すべきか……。

ルーミアには仲の良い妖怪が何人かいるんです。その中でも特に仲が良いのは、チルノ、ミスティア、リグルの3人。

その3人からある日言われたんです」

 

 

 

「『ルーミアがどこにもいない』って」

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