東方機人伝 ~機械人形と写影の賢者~   作:倫鈴

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第2話[遭遇]

 回路の接続が完了し、足が十分に動くようになると、周辺の探索をすることにした。

 これほど生命力に満ちた多くの植物を研究所外で見たことは、これまでに一度もなかった。

 技術革新と戦争によって本来あるべき“自然”は消滅し、ただ種の保存のために多くの生物は仮死状態にされ研究所の地下深くに格納されていた。

 自然とはどういうものだったか、研究所の科学力で作られた記録装置で体感する以外に、それと接することは不可能だったはずだ。

 元々自然系の記録装置は有用性がなく、製造日も古いが故にクオリティが低かった。

 そういうこともあり、記録と実物とのあまりの状態の違いに私は感動すら覚えていた。

 

 青々としたたくさんの植物達を1つ1つ分析しながら、一方でこの不可解な状況についての思考も静かに進めていた。

 確かに私のos、機体に損傷はなく、特に異常も見られない。

 新品同様の状態だ。

 しかし、そのような状態でも使用できなくなっていたosのシステムをいくつか発見した。

 “通信連絡機能”と“衛星情報の取得機能”だ。

 この2つは何度試行しても謎のエラーが発生してしまい、その原因もわからなかった。

 そしてもう1つ。

 osのメモリー機能に小規模な障害が発生しているようだ。

 それも博士や仲間達との一部の会話ログにだけ、激しいノイズが走りとても閲覧できる状態ではなかった。

 再起動による一時的なバグかと思い、大したことはないと思ったのだが……いくら時が経てどもノイズが修復されることはなかった。

 仕方がないので今解決できそうな事項から思索を巡らせていく。

 緑豊かなこの謎の土地。

 科学の発展、人口の増加により地上は開拓され尽したはずだ。

 それなのに見渡す限りの豊かな緑が存在している。

 衛星との通信も出来ないので座標も知ることが出来ない。

 何者かによって隠されていた森林なのだろうか。

 隠す理由も、森林を残す理由も、当時の情勢から存在するとは思えなかった。

 辺りには昔研究所で観察した小動物が記録で見たもの以上に活発に動き回っていた。

 可能ならば一匹捕らえて観察したいものだが……

 想定以上の素早さに一匹の小動物も捕らえることができなかった。

 ……まあいい。ここがどこか確認出来た後でしかるべき措置をとればよいのだ。

 まずは情報がほしい。

 人間、もしくはアンドロイドに出会えればこの事態についてのなにかを得られるだろう。

 第1目標を情報収集のできる場所の捜索として、木漏れ日のさす静かな森林のなかを歩きはじめた。

 

 

 途中、気になった植物や動物を観察、分析をしながらしばらく歩くと、木陰のない場所へ出た。

 森林から出たのだ。

 今まで樹の葉の影で日差しが遮られていた中を歩いていたので、少し日の光が眩しく感じた。

 目のレンズが自動で適切に調整されると、目の前には少々幅の狭い石の階段がずいぶんと長く上へと続いていた。

 右手の方に道はなく、先ほどの森林が続いているだけで、階段の右脇の方にも続いている。

 左には、通ってきたものとは別の森林が続いており、階段を登る来訪者を出迎えているようだった。

 向かって左手には、澄みきった青い空のもとに、すっと長く少し整備された土の道が真っ直ぐと続いていた。

 道の両側にもいくつかの樹々が道に影を作っていたが、その先の左右にある広い土地には浅く水が張っており、無数の稲が等間隔で植えられていた。

 いわゆる田んぼというものか。

 木々が途中までなのは田んぼの開拓によるものか。

 遠くに見えるだけだがこれも実物を見るのは初めてだった。

 続々と表れる新たな発見についつい足を伸ばしそうになるが、今は情報収集を優先しなければならない。

 視線を階段へもどす。

 石でできた階段などほとんど見慣れないものだったが、なんにせよ自然の産物によって出来たものではない。

 人工の物があるということはこの先に人間の居住地かなにかがあるのだろう。

 アンドロイドでも大した違いはないが……。

 階段の頂上にはなにやら変な形のゲートのようななにかがある。

 太陽による逆光で黒く見えるが、目の補整機能で視界を調節すると少し汚れた朱色のゲートであることがわかった。

 謎のゲートをスキャンで分析してみると、なにかしらの木材と、少量の鉄で作られていることがわかった。

 この先の主を守る装置かと思ったが特に仕掛けもないようなので、ただの飾りだと断定した。

 周辺にトラップも確認されなかったので私は目の前の石の階段を上り始めた。

 害をなすつもりなど毛頭ないが、相手がそれを理解してくれるとは限らない。

 また、相手側から攻撃を仕掛けてくる可能性もいれて、周辺を警戒しながら私は一段一段階段を登った。

 仲間との通信も現在地の座標確認も出来ない今、警戒しておいて損はない。

 しかし何かが起きる事もなく、私は階段を登りきろうとしていた。

 薄汚れた朱色のゲートが間近に迫るなか頂上の先に見えてきたのは、とても古いと見える横に広がるようにして建てられた木造の建築物だった。

 これは……

 目の前の建築物をスキャンし、私の今までの学習記録と照合する物を探すと……一件のワードがヒットした。

「ジンジャ……神社?」

 それは二十年前の戦争によって全て消失したはずの、紛れもない、神社という宗教的建築物だった。

 イメージ画像よりも古いものに見え、名称も不明だったが、その建築様式は非常に似通ったものだった。

 私はまた半ば混乱することになった。

 あの災禍で生き残ったものがあったのか? いや、そんなはずはない。データベースでは消失を免れた宗教的建築物はなかったと記録されていた。

 それに二十年も経過しているなら生き残りの建物などとっくに見つかっているはず……。

 生き残りと思われた神社について様々な可能性を検討していると、不意に後方から風が吹き、反射的に私は後ろ向いた。

 

 そしてそれが視界に映されたのだ。

 

「……おかしい。やはりこんなことはあり得ない」

 頭のなかがエラーで埋まっていく。

 雄大に広がる緑と遠くに見える大きな山の景色。

 山頂からの眺めはとても美しく…………“ビル1つないその光景”は、私のosをいとも容易くバグらせることになった。

 こんな場所があるはずがない。科学と戦争、また他の様々な問題により、どの土地も開拓され尽くしたはずだ。

 なのになぜ……時空間移動でも起こったとでも言うのだろうか。

 処理落ち、などという機械の失態は犯さないが、それでもosの処理、ならびに思考のためにそのまま立ち尽くしていると、神社とおぼしき建物のある後方から、困惑と怯えの感情を内包した誰かの声が聞こえてきた。

「あ、あの~。すみません。な、なんで裸の状態でそんなところに立ってらっしゃるんですか?」

 人物指定がなかったが私のことだろう。

 機械にハダカなんていう状態はないが、私の型である人間型の特性上、機体は人間の身体の外見に精密に作られている。

 目が覚めたときには衣服を着ていなかった。

 衣服は復活しなかったのだろうか。

 人間に会うのだから、服を調達しなければならないことを考慮すべきだった。

 もう遅いが。

「あなたを害するつもりない。少し話を聞きたいだけだ」

 手をあげながら声のする方へゆっくりと振り向く。

 そこには箒をもち、警戒と奇異の目をこちらに向け、

 明らかに人間のものではない耳と尾を携えた……そう、犬のような少女の姿があった。











こんにちは。
初めての小説投稿から4日が経ち今回で計3話分を投稿することができました。
複数回見直しはしているのですが投稿したらまた新たなミスをみつけ、すぐ書き直してしまいます。
まるでYouTubeのコメントを編集済みにしてしまうような気持ち悪さと滲み出る初心者感ですが、出来る限り投稿前に完全な状態で出すことができるよう、これからも投稿していきます。

東方機人伝第2話を見てくださり、ありがとうございました。
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