東方機人伝 ~機械人形と写影の賢者~   作:倫鈴

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第6話[戦闘記録 黒の女]

人里への道のりは平坦で、見渡せば橙色の田畑が遠くまで広がっている。

博麗神社の階段を下り右に、そこから真っ直ぐ歩き続けるなか、見渡す限りのこの光景が永遠に続くようにも思えた。

 

しばらくすると小さな林が目の前に見えてきた。

 

霊夢からもらった地図の通りならば、ここを抜ければ人里につくようだ。

私は地図を折り畳み、作務衣の内側にあるポケットに地図をしまう。

 

忘れ去られた地、妖怪や妖精という空想上の生物。

いまだこの世界についてわからないことが多すぎる。

この地の事はこの地に住むものに聞くとして、今考察しなければならないのは″機械″についてのことだろう。

妖怪や妖精を″忘れ去られたもの″とするならば人間の科学はそれに該当しないとみる。

 

この最低限の開拓しかされてない景色も、その証明の1つだろう。

アスファルトやコンクリートをしきつめ、道を平らにし、人工建築物を建てたり等、人間が便利な生活を行うための開拓。

それが一切されていない。

この世界では高次的な科学は存在していないのだろう。

 

よってこの世界には、私以外の機械人形はいないと見るべきであると推測する。

 

先端科学の結晶ともいえるhar型アンドロイドがこの世界いるとは考えにくい。

仮にいるとしても、原始、一定の人気を誇ったロボット、“asimo”ぐらいであろう。

 

と、いうことは、あまり私が機械であることを公言するべきではないかもしれない。

 

余計な騒ぎを招いては可能なはずのことも不可能になる確率が高いからだ。

 

そしてもう1つ、考えるべきことがある

 

それは私が、この世界に迷いこんだ原因だ。

これに対して考えられることは1つ。

リダクスに搭載された無数のアークエネルギーの影響。

恐らくこれしか可能性がない。

 

戦争中の研究で生み出されたそれは、核反応を大幅に促進させる次世代のエネルギーだ。

 

これをリダクスに積むことで、リダクスと“星の核”との爆発の威力を極大に上昇させることが出来る。

 

アークエネルギーがリダクスに上限搭載されていたことを考慮すれば……計算では当時の史上最強と言われた核兵器AN602、通称、ツァーリボンバの二万倍程の威力を誇ったとされている。

 

核兵器は人類の滅亡を早めるとして、永く封印されてきたが、“ニヒル”がその封印を解いた。

ツァーリボンバで終結していた核の歴史を再び動かし、彼らはツァーリボンバと同程度の威力をもつ、リダクスを作り上げた。

それだけでは星を滅ぼすことはできないが、核反応を大幅に促進させる、悪夢のようなエネルギーも付けたならば話は別だ。

 

そんなものが星の中心部で爆発すれば、文字通り、惑星ごと木端微塵だった。

アークエネルギーさえ生み出されていなければ、無駄な思考ではあるが、どんなに楽であったか想像に難くない。私たちは新種のエネルギーに散々振り回された。

 

しかしアークエネルギー、通称″Ae″には化学反応の″促進″だけでなく、不可解な複数の事象が確認されていた。

そう、例えば……

 

「ぐああっ!! だ、誰か助けてくれ!!!」

 

目前の林から声が聞こえてきた。

声色から恐怖の感情を検知。

悲鳴である。

私は急いでその声のする方へ向かった。

 

夕暮れの林の中は薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出している。

 

「くそ、なんで俺がこんな目にっ!!」

 

焦げ茶色の作務衣を着た一人の男が、茂みから尻もちをついて出てきた。

男は右手で左腕を押さえて、死物狂いな程に左腕を使って後方へ下がる。

左腕と両足から中程度の出血を確認。

なるほど、これでは男は簡単には逃げられない。

そしてもう一人、鬱蒼な茂みから出て来る影がある。

現れたのは、鈍く光る緋の大剣をその手に持った、長身の黒い女だった。

金髪のショートに小さな赤いリボン、顔は死者のように白く、西洋の黒い服をまとっている。

深紅に光る目が、目下の男を鋭く見つめながら、ゆっくりと歩く。

恐らくこの人物が男の腕と足にを斬傷をつけたのだろう。

近づいてくる女から逃げるように、後ずさりしていた男は、後ろの木に衝突し止まってしまった。

恐怖で腰が抜けているのか、立って逃げることも出来ないようだ。

「う、うああああぁっ!!」

無慈悲に振り下ろされる女の緋の大剣を前に、男は成すすべもなく──

しかしその斬撃は男に届くことはなかった。

「!」

「……えっ?」

黒い女も少し驚いたような顔をした。

男からは、締まりのない声が出される。

それは来ないと思っていた助けが来たからか。

もしくは私の手が、大剣を強引に振り払ったからか。

すかさず女の腹部へ蹴りを出すが、黒い女は後方へ回避した。

「私が抑えておく。今のうちに逃げろ」

「は、はいぃ!」

男はやっと立ち上がると、木を伝いながらそのままどこかへ消えていった。

目の前には敵意を露にした黒い女。

表情は変わらない。

しかし雰囲気が変わった。

獲物を奪われて気がたったのだろう。

 

短い金の髪が風で揺れる。

身体は大人の女性だがなぜだか頭部だけは、幼く感じられた。

小さなリボンがついているせいだろうか。

 

女は右手に持つ緋の大剣で空気を切ると、私へ距離をつめてきた。

見た限りかなりの重量がありそうな大剣。

女の行動は否が応でも制限されるはずだ。

 

コンマ1秒で女の次の動きを予測する。

行動予測。

『左 斜め 上 からの 切り下げ』

数ある可能性の中から、最も実行される確率の高い敵の行動を予測する。

予測の通りの左斜め上の振り下ろし。

右に避けて対応。

ブォン! と、空気の切れる音が私のすぐ横を通る。

 

次点の行動予測。

『右 斜め 下 からの 切り上げ』

人体の作りから可能な動きを推測し、次点の動きを予測する。

斜め下からの切り上げは大きく左にのけぞり回避。

 

次点の行動予測。

『左からの切り払い』

横から180度の斬撃。

大剣が来る直前に体を屈ませてこれをかわす。

 

次点の行動予測。

『上からの切り下げ』

片手から両手に大剣を持ちかえると勢いをつけて、垂直に振り下ろされた。

だがこれも、予測済みだ。

 

右足を後ろに動かし私の体を横にする。

空ぶった大剣が地を打つ。

深く刺さる。

そして無防備な女が現れた。

 

今度は私の番だ。

 

一足で黒い女に詰め寄ると、右手で相手の顔面に狙いをつけ拳を叩きつける。

間に合わないと判断したか。

大剣を手放し、両手で防御。

態勢を建て直そうと、黒い女は後方に動く。

しかしその隙は逃さない。

私はすかさず拳の追撃をいれる。

「……っ!」

繰り出されるパンチに、女は防御と回避で手一杯のように見える。

口元がわずかに歪んだ。

足の微かな動きを確認。

行動予測。

『足払い』

低い姿勢になり、女は足を横に払うが、これをバックステップで回避。

敵の攻撃を軽くいなしつづけるなか、ここでosから通知が届いた。

 

[以下のスキルを推奨。強拳Ⅰ(フィスト1)発動可能:エネルギー消費5%]

 

小打撃攻撃、強拳Ⅰ(フィスト1)。

私のエネルギーを5%消費して、パンチの威力を小程度あげるスキルだ。

戦闘の終息を遠回しに提案されたようだ。

向こうも攻撃をし続け息が上がっている。

ここが潮時か。

 

「osに発動要請を申告」

 

女がこちらに向かって突っ込む。

 

「グッ、グガアアアアア!!!!」

 

単調な攻撃を予測。

ついに我慢できなくなったのだろうか。

表情は敵意をむき出しにした獣のようになり。

疲労がたまったのか、あまりにも隙だらけであった。

うむ、この上もなく好都合だった。

 

[発動要請を確認 スキル準備完了]

 

エネルギーが集中する。

 

女が飛びかかった地点。

 

わかりきったその行動地点に向けて、

その右腕は赤色の光をまとう。

 

「実行、強拳Ⅰ」

 

刹那繰り出したその一撃は、女の腹を的確に射抜いた。

 

「……ガハッ」

 

口から血が飛び散る。

少量の血を吐いた女は、そのまま膝をつき、地面に倒れた。

発熱した手が冷却され通常を取り戻す。

 

戦闘終了。機体部位に損傷なし。

 

自身の体に異常がないことを確認すると、うつ伏せの女の前で膝立ちする。

女の体を仰向けにすると、気を失っていることを確認した。

「対象のオブジェクトをスキャン。

…………これは」

女の損傷部位を確認するため身体を読み取ると、まず人間の作りとは少々異なった作りであることがわかった。

これだけでも非常に興味深いが、もう1つ。

女の身体からアークエネルギーの残滓を確認した。

驚くべきことだった。

なぜ高次科学の産物であるAeがこの女の体内に? 

SH型の専用機械でないと、Aeは体内に保管できないはず。

実験生物にAeを投入した実験では、過剰な身体の強化に耐えられず、見るも醜い身体になって絶命するという結果がでていた。

確かに片手で、最初、この女は自身の身長ほどある剣を振り回すほどの怪力を有していたが……しかし女の外見に奇形部分は見られない。

新たなケースか。

しかしこの女はスキャンから、人間ではない可能性が高い。

この場で何者かを判断するのは不可能か。

ひとまず今の戦闘と、この女の記録を登録する。

まずはこの女を安全な場所へ連れていかねば。

安全な場所。私が今知っている安全(と思われるよう)な場所は1つしかなかった。

……背負うしかないな。

そうして女の手をとったその時だ。

突如女の腹部が黒く染まり始める。

「!」

その闇は女の全身を飲み込む。

腹から、胸、足、腕、肩、首、頭、髪。

全てが真っ黒な闇に染まっていく。

即時にスキャンするが、この闇に異常は感知されなかった。

正真正銘、ただの闇なのだ。

女の全身が黒一色に染まる。

そして突然その闇が晴れた。

 

闇から現れたのは、小さな女の子だった。

 

先程の女との、服装、髪型、髪の色の一致を確認。

赤色のリボンも健在であった。

 

ただ違うのは、その身長と、雰囲気。

闇が晴れた瞬間、女は幼女になっていた。

いわば妖女から、幼女である。

違和感を感じていた顔部分も、よく見れば少し幼くなっているが、この姿でのこの顔が、本来正しいものだと感じた。

 

Aeの投与による退化反応が見られたことはない。

むしろ逆だ。身体強化。化学反応の促進。

もしかするとこの退化現象は、この女の子自身にまつわるものなのだろうか? 

……いや、今は人里への移動を最優先にしよう。

小さくなった、黒服の金髪の女の子を背負う。

いつの間にか刺さっていたはずの大剣は消え、地に痕跡を残しただけだった。

 

作務衣の内ポケットから地図を取り出す。

そういえばキャプチャー保存をすればいいものを、ずっとこの地図を所持している。

なぜだか暖かみを感じるからだろうか。

物理的ではない、どこからか来る心の安らぎを。

 

この先を真っ直ぐ行けば、この林を抜ける。

もう夜は近い。

人里という目的地へも、着々と近づきつつあるのだった。




戦闘シーンって…難しい。
リボンが外れていないのは何故なんでしょうかね。
※二次創作生まれなのでタグ追加しました。
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