スパイディのヒーローアカデミア   作:クトウテン

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思いの外高評価いただき驚いてます。
ありがとうごさいます。

ちなみににわかなので、スパイダーマンについての表記、
ヒロアカに関しての表記について何か違和感あれば教えてくださると恐縮です。
それは作者の才能あふれる伏線などではなく、ただのミスです。


3話

「やります。僕に、やらせてください」

「──よし来た! じゃあ早速、私の個性『ワン・フォー・オール』を」

 

嬉しそうなオールマイトには申し訳ないが、と思いつつ僕はその声を遮って指を一本立てた。

 

「でも、ひとつだけ条件があります」

「む?」

「その力は、オールマイトが持っていてください」

「……緑谷少年。しかし」

「まだ正直、自信がないんです。だからその時まで、そしてもし、オールマイトが僕以外の人にと思ったなら、それでいい」

「……分かったよ。でも言っておくぞ。私はもう、君に決めた。だから君以外に渡すつもりはない」

 

たぶん今、この世界で一番幸せなのは僕だろう。

なんてったって、憧れのヒーローにここまで言ってもらえたんだ。

 

「はい! ……あれ、というかそうなるとオールマイト。僕ってどうなるんですか?」

「うん? 何を言ってるんだい。僕が話してるのはただのスパイダーマンファンの君だろう? なら、問題ないね」

「……それもそうですね」

 

つまりこのまま、隠し通せと。

たしかにヒーローなら1つや2つ、秘密があった方がそれらしい。

 

「じゃあ、また連絡するからよろしくね。これ僕の連絡先」

「はい、ではまた。体調気をつけてくださいね」

「……はは、善処するよ」

 

あ、これしないやつだ。

そう思ってる間に、オールマイトは颯爽と出ていった。

 

 

 

 

あれからしばらく。

僕はオールマイトと同じ時間を共にした。

 

一緒に訓練したり、組手してみたり。

でもそんな日々ももう終わり。

 

「さぁ、緑谷少年。正直君に教えることなんて殆ど無かったけど……君、自分の戦闘理論確立してるしね……でも少しはタメになったかな?」

「勿論ですよオールマイト。実際自分がどれくらいの力を発揮していいのか、できるのか、よくわかりました」

「ならいいんだ。わかってるとは思うけど、雄英では君がスパイダーマンであることは絶対にバレないこと。わかってるね」

「はい!」

 

そうして迎えた試験当日。

やはり緊張する。ここが雄英。

ヒーローたちの登竜門。

 

恐る恐るとその門の向こうへ足を踏み入れる。

ここから──はじまるのだ。

 

「おいデクゥ!」

 

そこに、やけに刺のある、というより棘そのもののような声が聞こえた。

振り返ればそこにいるのは見慣れた幼馴染の姿。

 

「や、かっちゃん。おはよう」

「なんでテメェみてぇなザコがここに――」

「だから前学校でも説明したよね。僕にも個性が発現したんだって」

 

頭を振って答えても、当然それでは彼も納得しないことはわかっていた。

一番そばで彼を見てきたのは僕なのだから。

それくらい、よくわかる。

 

ズカズカとこちらに進み、かっちゃんは僕の胸倉を掴み上げた。

 

「だからってお前が強くなったわけじゃねぇだろカスが!! お遊びじゃねぇんだ!!!」

 

その言葉に笑みを浮かべる。

 

「うん、かっちゃんの言うとおりだ」

 

胸倉を掴みあげるかっちゃんの手を掴み、ぎりぎりと音を立てながらそれを強制的に離させる。

 

「ぐっ……! で、デクてめぇ……!?」

「個性があるからって僕が強くなったわけじゃない。――でも、もう僕は君が知っている僕じゃない。お遊びでもない。全力だ」

「クソ、ナードが……!」

「も、もー! そこの二人、こんな時に喧嘩はだめだって!」

 

そのやり取りを、突然女の子に止められる。

 

「なんだテメェ! 割ってくんじゃねぇ!!!」

「辞めなよかっちゃん。ごめん驚かせて、別に喧嘩してたわけじゃないんだ。僕は緑谷出久。こっちは爆豪勝己。実は同じ中学出の幼馴染なんだ」

「は、はぇ!? ウ、ウチの勘違い!? ごめんなさい!! わ、私は麗日お茶子って言います!」

 

多分無意識なんだろうけど、そういって手を握ってくる麗日さんにドギマギとしながらも笑顔で返答した。

 

「ッケ! やってられっかクソが」

「かっちゃん!」

 

呼びかけると、かっちゃんが足を止めた。

 

「試験、がんばろう。僕もかっちゃんに負けないから」

「知るか。俺は誰にも負けねぇ」

 

そうやり取りを交わして、かっちゃんとは別の会場へと足を進めた。

 

 

 

 

そうして迎えた試験は、

模擬の街を舞台として、仮想敵との戦闘によってポイントを獲得するものだった。

 

開始とともに走り出す受験者達同様に進む僕。

――あぁ、スパイダーマンになれないのがストレス!

 

もしこれでスパイダーマンの力を使えれば、だれにも負けない自信もあるのに。

 

僕は走り出した。

それでも超人的な肉体は健在なわけで、一般人よりもはるかに速いスピードで僕は壁を蹴りトップに躍り出た。

 

『おっと一見普通にしか見えねェのが前に躍り出た!? ありゃどういう個性だ!』

 

目の前には仮想敵であるドローンの姿――いや!

その時スパイダーセンスが、それ以外の情報を察知した。

 

それは自分の後方にいた受験生を狙う、別ドローンの攻撃!

それを右腕を伸ばして、受験生に当たる直前の所で止める。

 

「あ、ありがとう」

「どういたしまして」

 

返事をしながらゴム弾を射出しようとしていた射出口をへし折りかかと落としで地面に墜落させる。

 

「よし、じゃあ僕は行くからそいつ倒しちゃって!」

「えぇ!?」

 

そんなやり取りをしてまた僕は駆け出した。

 

右を見れば転んだところを狙われる女子生徒。

左を見れば敵を追うのに夢中で後ろのドローンに気づいてない男子生徒。

 

あぁクソ。厄介だな!

何かないかと目を向ければ地面にはちょうどいいサイズの瓦礫。

 

「ナイス!」

 

それを二つ拾って、敵に向かって投擲!

 

散々にウェブシューターで鍛えた投擲技術と、スパイダーマンとしての能力が、それを確実に命中するものへと変える。 

 

ゴウン! と鈍い音を立てて二体のドローンが地面に落ちる。

 

それを驚いた顔で見る二人の受験生に、声を掛けた。

 

「君たちはそのAIに攻撃して! 関節部が脆いからそこを破壊すれば動けなくなる!」

 

そんなこんなで20分が経過。試験もいよいよ終盤に差し掛かり、僕はハッとした。

 

「……やばい、僕何も倒してないじゃん」

 

夢中になってたら自分がとどめを一回もさしていないことに気が付いた。

 

どうしようか、そう思ったときに、目の前をふよふよと通るドローン(ポイント)。

 

「……まてぇえええええ!!!!」

 

ちなみにこの光景、監視側からはばっちり取られていたそうで、大爆笑されていたそうだ。

 

 

 

「ポイント置いてけ! この!」

 

空を飛ぶAIに向けて石を投げるヒーロー志望。

仮にもこれをやってるのがスパイダーマンと知っている者からすれば涙が出そうな光景だ。

 

走って追いかけながらしばらく、六度目の投石によって、ようやくドローンが地面に墜落していくのが見えた。

 

「よし!」

 

後は近づいてあれを壊すだけで、最低成績は回避できる──安堵の息をもらしたその時だった。

 

ガガガガガガ。

不快な機械音。足元に響く大きな振動。

 

振り向けば、そこにはあの0Pの巨大ロボがいた。

そしてその足元には、瓦礫によって動けなくなった、今朝の女の子。

 

「おいおいおいおい。冗談だろ僕。待てよ、目の前に夢の舞台が待ってるんだぞ。こんなところで躓けないだろ?」

 

──巨大敵が、緩慢な動きで腕を振りあげた。

 

「そうだ、これだってあくまで訓練だし、きっとそんな大した怪我はしないって」

 

──女の子に助けは向かわない。誰も、彼女を助けようとはしていない。

 

「きっと大丈夫だ。きっと――きっと――……大丈夫──の訳がないだろ!?」

 

DOOM!!! 足に全力で力を籠めて、走り出す。

それは、ドローンが墜落した方向とは真逆だった。

 

その歩みは地面を砕き、空を飛ぶようだ。

振りかぶった巨大な鉄の拳が、唸りを上げて振り下ろされる。

 

間に合え。

間に合え!

 

「間に、合えぇぇええええええ!!!!」

 

ズドン!!!

 

その激突した音は、今日響いたもので一番大きな音だったと誰もが言った。

 

 

 

 

私は、きっとこんな場所に来るべきではなかったのかもしれない。

父と母は、応援してくれるようで、私の見ていない場所ではいつも心配していたのを、知っていた。

 

だってどんくさいし、運動神経だってよくないし。

でも私も力になりたかった。

 

二人の役に立ちたかった。

 

でも、それもきっと終わる。

目の前にそびえる、巨大な機械。

 

なるほど、これは確かに歯が立たない。

 

見た瞬間に、受験者のみんなは一斉に逃げ出した。

私もそうしようとしたところで、脚を躓き、落ちてきた瓦礫に足を挟まれなければそうするつもりだった。よりによって、ここで転んじゃうか。

 

私らしいミスに、皮肉の笑みが漏れた。

 

ごめんね、お父さん、お母さん。

やっぱり私じゃ、ダメだったよ――。

 

振り下ろされる拳に、目をつぶった。

 

「やぁ、今朝の女の子。元気?」

 

その声が、届くまでは。




ありがとうございました。
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