とある日シャミ子とミカンがたまたま二人っきりの時
「シャミ子、単刀直入に聞くわ、桃の私服のセンスどう思う?」
「・・・・・・・・ダサいです」
「そうよねぇ…ダサいわよね…」
「ミカンさんは桃と買い物に行かないんですか?」
「本当は行きたいんだけどそれよりウガルルを見てないと…」
「ママ」
「ママじゃないわ」
「そうですね…どうしましょうか」
「シャミ子?いま月4万円生活の呪いって解けたのよね?」
「はい、携帯の使用料で私の懐はカツカツですけど」
「なら…はいこれ」
「これは1万円!な!なんですこれ!」
「桃へのレクチャー代、これで桃を誘ってシャミ子の服を買って来て欲しいわ」
「そ…そんな!もったいないです!こんな…」
「いいの!桃はこのままだとダサダサ魔法少女として大成してしまうわ…ここでシャミ子が食い止めて!お願い!これは私からまぞくのリーダーへの依頼よ!」
「・・・・・・・・わかりました!桃をシャレオツ魔法少女にしてみます!まってろよ!桃!」
こうして桃色魔法少女改造計画(女子力向上計画)が始まったのだった
ふと頭の片隅で彼女の姿を思い浮かぶ。
あの桃色魔法少女、魔法少女の時こそフリフリでヒラヒラなスカートを履いているが、はたして私服の時はどうだったのか?と。
制服を除いても、スカートを着た彼女の姿を、シャミ子は思い返せなかった。
率直な疑問を桃に問いかけてみる。
「桃って制服と魔法少女の姿以外ってあんまりスカート履かないですよね?」
「あんまり似合わないから…」
「そ、そんなことない!きっと似合う!桃はその筋肉を誇った方がいい!」
桃はお腹が綺麗だ。
鍛えられた腹筋には、筋肉が身に付きおもわずさすってしまうほどに。
だからきっと細い足にも鍛えられた筋肉で、見惚れるほどに美しいはずだ。
少なくとも魔法少女の時に見える足はとてもきれいだった。
最押しの桃は可愛いのだ!かっこいい服もいいけど可愛い服を着せたい!あと足触りたい!
「…あんまり熱意こめて言わなくていいから」
「桃はお腹もそうですけど足もすっごく綺麗で!興奮してきた!!」
「落ち着け!」
「ふぎゅぅ!?」
恥ずかしいのか、私の体を背負い投げ、顔を赤らめながら桃は語る。
「そもそもスカートはあんまり持ってないんだよ、1着あったかどうか…」
「それなら…買いに行きましょう!私も新しい服を買おうと思っていたところだったんですよ!」
4万円生活の呪縛から解放され、今までは母親のおさがりか、古着がほとんどだったシャミ子。
しかし年頃の女の子。彼女は自分の好きな服を買いたいと思い、桃にも付き合ってもらうよう催促する。
「それならミカンが一緒に…」
「ミカンさんはウガルルちゃんの勉強道具を買いにすでに出てしまっています。ちなみにご先祖もゴミ拾いに出て行きました」
「そういえば、足し算ドリルを買いに行くとか言ってたっけ…」
「そして…見てください!」
誇らしげな表情を浮かべ、手元にある紙を桃の眼前に出し、見せつける。
1万円札、シャミ子の人生の中でもトップ3に入る大金である。
シャミ子がこんなお金を持っているわけがないと、不審に札を見返す桃。
「それ…どうしたの!?まさか盗んで…」
「そんなわけあるか!これはお母さんからもらったお金です!これで自分の好きな服を買いなさいと言われたのだ!」
「じゃあ別に私が一緒に買いに行く必要は…」
「駄目です!とにかく一緒に来るんです~!」
普段と変わらぬドライな対応、あれやこれやと理由をつけ抵抗する。
しかしシャミ子の『今度たまさくらちゃん弁当つくってあげますから』
という言葉に、さっきまでの抵抗も明後日に流され、あっさり降参し、シャミ子と桃はショッピングセンターのレディースファッションのコーナーへと足を踏み入れた。
「桃はあんまりこういう服屋さんへは行かないんですか?」
「適当なお店に入って選んでるからあんまりこういう女の子っぽいコーナーは入らないかな」
「桃って本当…あれですよね」
「…あれって?」
「なんでもないです。ほら!これなんかどうですか?」
シャミ子が持ってきたのは赤チェックミニスカートで、季節を問わず着こなせるマストアイテムだ。
桃の下半身に重ね合わせ、上着の選定に入る。
桃はというと棒立ちで『えっそんなに短いやつ?』という感じで浮かない顔をしている。
しかしシャミ子にはそんな桃の表情も見ず、真剣な眼差しで体を凝視する。
「んーこれだと上は…あっすみません!」
「はいはいーいらっしゃいませ~」
「すみませんこれの試着してもいいですか?」
「あっはいどうぞードレッサールームはこちらです~」
「え?」
「さてさて…上はこれで…これとこれ…あとこれっと~」
「しゃ、シャミ子?スカートを買うだけじゃなかったの?わざわざ着る必要なくない?」
「え?試着しないとどんなコーディネートかわからなくないですか?」
説明しよう!
この桃色魔法少女は友達とわいわい言いながら服を着せ合いっこすることなく、基本的には自分のセンスでこれだ!という物しか着てこなかったのだ!
そのせいか、彼女のファッションセンスは女子中学生レベル…下手すれば男子中学生レベルで止まり、基本はTシャツ+シャツの組み合わせが多くなってしまっている!
ようはオシャレとは程遠い着こなししかできないのだ!
「とにかく着てみましょう!ほらほら早く早く!」
「えっちょっと」
「私も着替えますから見せ合いっこです!」
服を持たせ、無理やり試着室に放り込む。
私も隣の試着室に入り、手早く着替えを済ませ桃が出てくるのを待機する。
普段とは違う服装だからか、少し待たされると、少しづつカーテンが開かれる。
「ど、どうかな?」
「ふわぁ…やっぱり桃って足綺麗ですよね」
「あ、あんまりマジマジ見ないでくれないかな…あとやっぱり短くない…?」
赤チェックのミニスカート、上はニットで、かわいらしさとセクシーな印象を受ける。
スカートから伸びる足は想像通り、スラリと細く、だが筋肉の乗った足には厚みも十分備わっているので、思わず両手でぎゅっと抱きしめてみたくなる。
「そーっと」
「な、なに触ろうとしているのかな?」
「ちょっとだけ…ちょっと…」
「ふん!」
「んぎゃあ!?痛い痛い痛い!!」
「まったく…」
触ろうと延ばしていた両手を握られ、そのままぎゅっと握り絞められる。
想像以上の怪力に手が壊れてしまったかと思い、外された手を思わず見返す。
「うぅ…桃って恥ずかしがりやですよね…」
「うるさい!まったく…シャミ子はなんでそんな触りたがるのかな」
「そこに綺麗なものがあったら思わず触りたくなりません?」
「・・・・・・・・・・まったく…シャミ子も似合ってるよ」
「そうです?普段と似た様な服装ですよ?」
シャミ子はセミロングのスカートに、桃とお揃いの桃色ニットという着こなし、新品な服ということ以外は普段の着ている服と比べると、そこまで変化の見られない服装だ。
自分好みの服を選んだつもりだったが、普段気に入っている服装をついつい選んでしまったようだ。
「私はこれを買っちゃいますが…どうです?それ買いますか?」
「まぁシャミ子がオススメするなら買うけど…」
「じゃあこのまま着て帰りましょう!店員さーん!」
「はいはい~」
「この服をテイクアウトで!」
「どうも~ありがとうございます~」
服をそのままテイクアウトして、帰り道の河川敷。
魔法少女の時は魔法の力で、捲られるのを防いでいるスカートの桃。
普段とは違う履き慣れないスカートで少しソワソワしている。
「そういえば…今日はなんで私に服を買いにいこうなんて誘ったのかな?」
「それは…そのぉ…」
「まぁ別にいいけど…またたまに買いにいこうかな」
「どうしたんですか藪から棒に!」
「ミカンにも言われたんだよ、シャミ子と買い物に行ってきたらって」
「あぁ…そうですか…そうですよね…」
「どうしたの?」
「いえ…なんでもないです。なんでも。」
「ふーん…変なシャミ子」
日暮れの帰り道、スカートをはためかせ二人の少女はパンダ荘へと帰っていった。