当サイト「誕生日登録」は皆様の誕生日をお祝いします!☆
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はっぴばーすでー とぅーゆー
はっぴばーすでー とぅーゆー
はっぴばーすでー でぃーあ
そこのあなた!
聞き慣れた誕生日の歌。そのサイトはBGMとしてその音楽を使用している。
怪しい怪しいホームページ。第一印象は誰でもそうであろう。
ポップなカラーと可愛らしいろうそくの立ったケーキのイラスト。
サイトの名前は『誕生日登録』。その名前の通り、誕生日と名前を登録することで利用できる通販サイトである。ただし、この通販は人生で一回しか利用できないという優れものだ。誰も利用しないだろう。
しかし、世間にはこのようなくだらないものに興味を引かれる人がいるものなのである。面白半分に登録して、そのまま忘れる人は意外と大勢いたりするのだ。
☆さあ、貴方も登録してみませんか?
人生でたった1回だけ、誕生日プレゼントを当サイトは贈りましょう!
対価は貴方の ☆
あたしにはお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるの。いっつもあたしをこども扱いするのよ。パパとママは、「二人ともあたしのことが可愛くて堪らないんだね」って言うけど、あたしだって立派なおねえさんなのよ?
あるとき、パパの使ってるパソコンが開いたままだったの。あたし、おねえさんだから、閉じてあげなきゃ!って思ったの。
そしたらね。画面に可愛いケーキの絵がろうそくの火を揺らして写っていたの。それと、お誕生日のお歌。あれが聞こえていたわ。
すてき!思わず笑顔になったわ。
まだ難しい字は読めないけど、なんだかお誕生日とお名前を書くみたい。
お誕生日っていったらお誕生日プレゼントよね!そうよ、きっとプレゼントが貰えるんだわ!
そう思ってね、あたし、自分のお誕生日とお名前を打ち込んだの。
そのあと、ママがおやつの時間だって呼びに来てくれたから、パソコンを閉じてそれっきり。
あれから何年も経って、私はお姉さんになったわ。
身長も髪も伸びて、大人の女性になるかならないかの微妙な年。
昔、そんな変なことがパパの部屋であったなんて忘れていたの。ううん。思い出す余裕なんてなかったわ。
数年前。家族旅行へ出掛けた先で私たちは事故に遭ったの。バスの衝突事故だったわ。体の小さかった私は、家族に守られて助かった。パパもママも、お兄ちゃんもお姉ちゃんも。みんな死んじゃった。みんな、私を助けようとして体をクッションにしてくれたの。
今じゃね。家に帰るのがすごくイヤ。あんなに賑やかだった家が、あんなに家族の声が響いていた家が、今じゃもう誰の声もきこえないの。
それでも、私はみんながいた家に帰るの。
たまに親戚や祖父母が様子を見に来てくれるから、生活には困っていない。
大丈夫よ。うん。大丈夫だから。
今日も私は家に帰らなきゃ。
そうだ、今日は私の誕生日だ。誰もいない、ひとりっきりの誕生日だ。
早く帰ってベッドに入ろう。
そう思いながら家に着いて、玄関の鍵を開けようとしていた時だわ。
ポストの近くに、ダンボールの箱が置いてあるの。可愛く包装されていて、リボンまでついた箱。
なにかしら?屈んで、もっとよく見ようとした時にね。
がたっ
がたたっ
くーんくーん
いきなりその箱が動いたの。中からは動物の声が。
思わず顔がひきつったわ。でも、中に動物が入っているなら出してあげないと可哀想でしょ?
私はリボンと包装を解いて箱を開けたの。
そしたら、中にいたのは可愛い可愛い子犬ちゃん。開けたとたんに飛び付いてきて、可愛いったらないわ。
可愛い金色のゴールデンレトリバーの子犬ちゃん。その子と一緒に箱の中にはメッセージカードが入っていたの。
私の名前と、誕生日、この子が来た日ね。それと、ハッピーバースデーの文字。
ふわりと思い出したの。
まだ家族が生きてたあの日に見た、パソコンに写るケーキのイラストと誕生日ソング。
「お誕生日、おめでとう。」
家族の声が聞こえた気がしたわ。
パパとママの笑顔が。お兄ちゃんが頭を撫でてくれる手が。お姉ちゃんが抱き締めてくれる柔らかさが。
すぐ隣にある気がした。
この日、私には新しい家族がプレゼントされたの。
もう、家に帰っても独りじゃないわ。待っててくれる家族がいるもの。
人生でたった1回だけ。そのサイトからプレゼントされたであろう私の家族は、不思議なことにとても長命だった。
私の命が消えるその時まで、ずっと一緒にいてくれたのよ。
私は二度と家族を失うことなく、一生を終えることができた。
ハッピーバースデー、私と大切な家族。
☆対価は貴女の笑顔です☆
一生に一回だけ利用できたそのサイト。
本当に必要な時に贈られたプレゼントは、私をいつまでも笑顔にしてくれた。
ありがとう。
それと、誕生日おめでとう。
最高の誕生日を、誕生日プレゼントを、ありがとう。