ショート ストーリーズ   作:犬屋小鳥本部

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これはフィクションであり、ファンタジーではありません。


本日、冒険者日和なり!

幼稚園児のとき、ぼくはおうちを出て初めての冒険に出掛けた。

 

『きょうは、ぼーけんしゃびより!』

 

そこでぼくはぼくと同じくらいちっちゃなお姫様がおっきな悪者(不審者)に襲われてるのを見た。

もちろんぼくは剣(という名前の角材)を振りかざしてお姫様を助けたんだ!

 

 

 

 

 

小学生になって、深い森(近所の森)に冒険へ出掛けた。

 

『今日は、ぼうけんしゃびよりだ!』

 

こ、怖くなんかないぞ!

でも、結局木の葉で滑って下まで降りちゃった。雨も降ってきて寒いから、たまたま見つけた穴(防空壕)に避難した。そしたら、奥でなんかがさごそ音がする。そーっとそっちに行くと、男の子がいた。冒険者仲間(迷子)だった。いっこ下のその子を部下にして、非常食(キャラメル)を分けた。

 

 

 

 

 

 

高学年になって、僕はその部下と一緒にあの日のリベンジに乗り出した。

 

『本日、冒険者びより!』

 

ダンジョン・「深い森」だ。

レベルは充分に上げてきた。アイテムもたっぷりと持ってきた。

1日かけて森を探検し、成功記念に2人で旗を立てた。

森は思ったよりも小さかったけど、僕たちは大きく成長した。

 

森の主には、会わなかった。

 

 

 

 

 

中学生になって、おれは剣道を始めた。

 

『本日、冒険者は特訓中』

 

冒険にはしばらく出掛けていなかったけど、全国の剣術武道会(剣道全国大会)に参加してたくさんの強者と剣と言葉を交わしたのはすごく楽しかった。

 

 

 

 

 

高校生になってコンビニのバイトを少しやった。

 

『本日、冒険者…はお休み中』

 

丁度そのとき万引きがいた。

小学生の時につるんでいた部下だった。

「おまえ、なにしてるんだ」と言いながら頭を殴り、店長のところに引きずっていって一緒に頭を下げたのはいい思い出かもしれない。

その後、部下は当時俺が所属していた剣道部に引き入れ地獄の猛特訓を強いた。

ざまあみろ。

 

 

 

 

高校時代にもうひとつ。

 

『危険!本日、冒険者エンカウント中!』

 

部下と一緒に学校から帰っていた帰り道。

雨が降ってたんで俺たちは近道をした。「深い森」を突っ切る強行突破だった。

そこでとんでもないものに遭遇した。森の主(イノシシ)だ。

俺たちは逃げた。すっごく逃げた。最終的に持ってた剣(ただの竹刀)でぶん殴って勝利した。

 

 

 

 

 

大学生になって、俺と部下でチームを組み全国武道会(日本全国剣道大会)へ乗り出した。

 

『本日、冒険者挑戦中!』

 

しかし、あと一歩のところで俺たちはぼこぼこにされた。覇者は強い。

 

 

 

 

 

大人になって、俺たちは城(会社)を建てた。

 

『本日、冒険者は転職中』

 

殿(社長)は大学で俺たちを叩きのめしたあの覇者だ。

今では俺と部下、殿で毎週宴会(呑み会)をする間柄だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰れば、幼稚園児の時に助けたお姫様が俺のお嫁さんとして待っていてくれる。

最高の冒険記を今まで記すことが出来たと思っている。

 

 

 

さあ、我が息子よ。小さき冒険者よ。

今度は君の番だ。

君は俺にどんな冒険(人生)を聞かせてくれるんだい?

悪者を蹴散らし、お姫様を救い、仲間を集め、それから、それから…

ああ、とりあえず今日は初めての冒険(おつかい)に挑戦してみようか。

気を付けて行ってくるんだよ?

きっと今日限定のイベント(出逢い)が待っているはずさ。

 

『本日、冒険者日和なり!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何年後かのある日)

 

 

………

 

 

という冒険記を、俺は聞かされた。

『冒険記だってー、まじウケるwww』

『先生の父親って中二病?』

初めてのおつかいで俺は隣町まで行ってしまい、町内放送で行方を探された。

『町w内w放w送www』

一時期、保健室登校してた。

いじめはする方じゃなく、される方だった。

少しリスカもした。

両親はすごくいい人間だと思う。それが俺にとってのプレッシャーにもなってた。

ぶっちゃけ、苦しかった。

『え、マジ話?』

『大丈夫か?先生』

引きこもってネトゲばかりしてた時期もあった。

「伝説の迷子冒険者」っていうユーザー、知ってるやついるかもしれん。

『あ、オレ知ってる』

『あの伝説と言われた伝説の…?』

第三希望の大学に入って、教師になんとかなれて、今俺はここにいる。

ろくな冒険(人生)を通ってきた気はしない。

 

 

それでも。

それでも、俺は冒険者だ。

自分で選んで自分で歩いてきた冒険者だ。

俺だけの冒険記を自分の手で描いてきた。

 

 

この春入学してきた新入生たちよ。

まだまだ若く幼い冒険者たちよ。

いつでも「冒険者日和」だと言ってたくさんのことをするといい。

この先輩冒険者(先生)が話をいくらでも聞いてやる。むしろ、たくさん聞かせてくれ。

 

くじけても、失敗しても、闇落ち間際までいってもいいんだ。ただ、闇落ちはするな。

俺たち冒険者は100%成功した勝ち組の「英雄勇者」集団なんかじゃないんだから。

 

 

 

話は長くなったな。では、改めて。

 

 

 

 

「本日、冒険者日和なり。

心から、君たち次世代冒険者と出会えて嬉しく思う。

さあ、君たちはどんな冒険を先輩に聞かせてくれるのかな?」




『本日、冒険者日和なり !』

「これはフィクションであり、ファンタジーではありません。」

本日上々?風向きそこそこ、何かが起こる気配あり。
聞いてみたまえ、冒険者の語り
聞いてみようぜ、あいつの話

あんなことがあったとさ
こんなことがあったとさ

それじゃあ次は
きみの話を聞かせてよ
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