ショート ストーリーズ   作:犬屋小鳥本部

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いつのまにか
かわっている


雑。

新しいタオルを買ってきた。一目見て気に入った色と柄。なかなかに安い。

古いものと交換に、その日のうちに使い始めた。

 

肌触りがいい。癖になる。

顔をそれで拭くと、つい笑顔になる。

 

ただのタオル。毎日使うタオル。

意外と親密な関係になれた気もする。そんなタオル。

 

拭いて、洗って、乾かして。また拭いて使う。

それだけなのに親密な関係。

タオルだからさ。

 

でも、所詮タオルにすぎない。

何度も何度も使ったタオルは次第にくたびれていく。

だって布でできたタオルだからさ。

 

使って使って、使い続ければタオルは布切れとなる。

そんなとき、ぽつりと降って湧いたように主人は新しいタオルを購入して布切れとタオルを交換するだろう。どんなにお気に入りのタオルだったとしても、いつかはぼろ布に変わってしまう。

 

『ぼろ布よ、転生せよ。』

 

とまでは思わなくても、ちょっともったいないかな。と感じてしまうこともある。

本当に、本当に、ごくわずかな気まぐれで体力も気力も余っていて、時間も余裕があったとき。その元タオルだったぼろ布は変身の瞬間を迎える。

 

『これが、最期の姿だ!』

 

雑巾。

 

雑巾です。これ以上はない、タオルの最期の姿です。

ああ、雑巾。役に立ってくれ。最期の瞬間までその糸を磨り減らし、生を全うするのだ。

 

こうしてタオルは使い古され、雑巾として変身させられて生涯を終えていくのであった。

 

ここはあえて「変身」と言い、「降格」とは言わない辺り親密さを示した主人であった。

なんてケースは本当にごく稀である。普通、そこまでタオルごときに愛着なんて持たないし、雑巾にしてまで手元に置こうとも思わない。

雑巾に変身したタオルの前任はどこに行った。それまで自分のいた居場所を奪われたタオルはどこに行った。

きっと変身する機会さえ与えられずに捨てられた。

なんにも考えられることなくゴミ箱なりごみ袋なりに放り込まれて、数日後には焼却炉の中だ。主人の記憶の中には糸屑一本残さず消えてしまう。

だって、ただのタオルだったんだから。

 

 

 

 

 

 

人だって時には同じだろう。

どんなに頑張ってもいつかは「こいつは限界だ」と言われて追いやられる。

「まだできます」と叫んだところで声が届かなければゴミ箱行き。運が良くて二度目の出発だと意気込んでは変身する。

変身してみても良い方向へ必ずしも変われるとは限らない。使えれば上々。変われること自体が幸運なのだ。

 

世間で言われるきらびやかな「変身」というものは、きっとそのための用意がされたものなんだ。

準備が万全にされ、変わるための力が貯蓄され、その機会をずっと待っていた。そういうものなんだ。

だから、軽々しく「へんし~ん」などと言って雑な変身の道を辿ると当然雑な変身を遂げることになる。

 

タオルは最期に変身したとしても、大抵は雑巾に変身する。残った力がもうないからだ。

それでも雑巾に変身したタオルは幸せなんだろう。最期の最後まで使ってもらえるのだから。

 

奇跡の変身。まさかの変身。

 

できなければゴミ箱行き。失敗してしまった以前に、変われるかもしれない機会さえ与えらず奪われた我らごみ集団。

 

 

 

ああ、変わりたいな~。

この雑な生き方から変身してみたいな~。

 

そう思いながら、今日も重い体を起こす朝。

「よっこらせいっと」




変↓身
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