ショート ストーリーズ   作:犬屋小鳥本部

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☆最後の部分だけ読んでね☆



恋に興味があるそこのあなた。こんな恋はどうですか?



恋をしたことのない自分がただひたすら恋について考える話。
こんな最後の恋、どうですか?


クチをふさいで

運命なんてあるのでしょうか。

一目惚れなんてあるのでしょうか。

 

女の子は夢を見る。ボンヤリふんわり夢うつつ。

男の子は幻を見る。手の届かない蜃気楼はすぐ消える。

定められた運命の出会いなんて、あるのでしょうか。たった一回見ただけでこの人だと思える恋なんて、あるのでしょうか。

 

 

 

友人Aさん。あの人は年上の人と付き合っているらしい。

大人の彼、彼女。リードをしてくれる、大人のビターなお付き合いをプレゼントしてくれる。ただそれはビターであってベターではない。

それは本気のお付き合いなの? きっと相手はお子さま相手のただのお遊び。

 

先輩Rさん。あの人は二股しているらしい。どっちが本気の恋なの? どっちも本当の恋じゃない。

きっといつまで経っても本気になんてなれやしない。恋を知らないあの先輩はかわいそう。

 

後輩Dさん。あの人は先生の誰かと付き合っているらしい。禁断の恋。バレちゃいけない禁じられた恋。

そんなの妄想。禁じられている以前にそれは犯罪。恋じゃなくて、それは罪。

 

 

 

周りのみんなは恋をする。

まばたきをするように。息をするように。心臓がどくどく脈を打つように。

教えてください。恋をするということは生きていることと何が違うのですか?

生きているから恋をするのですか? 恋をするから生きていられるのですか?

恋とは何ですか? 恋とは何なんですか?

わからない。

分からない。

解らない。

だから教えてください。

知りたくもないけれど、教えてください。もしあなたが知っているなら。

恋ってやつを、教えてやってくださいな。

 

 

 

 

 

 

ひそひそ

ひそひそ

 

今日もあちらからコイバナが聞こえる。

 

ひそひそ

ひそひそ

 

今日もこちらからコイバナが聞こえる。

 

 

 

恋っていうものは、いつだって人気の流行トレンド。

「誰々さんと誰々さんが~」

知ってる。その情報はもう古い。

「何々さんと何々さんが~」

いや、そこ知りたくなかった。

 

毎日特ダネが町を駆け抜ける。嘘かほんとかわからない恋の噂が風と一緒に吹き抜ける。

聞きまして? あのお噂。

聞きましてよ、あのお噂。

恋の噂はすぐに広がる。お幸せに、なんて言ってあげる人の本心は実は別の言葉なのかもしれない。どんなにお上品な言葉で言っても、心の内は真っ黒でどろどろしている。そういうものなのかもしれない。

 

恋の話が好きなのか。それは恋が叶って幸せになった人を祝福することとはきっと違う。

恋が叶わなくて悲しむ人を見るのが楽しい。恋を叶えたくて頑張る人を応援したい。

そして、自分とは関係ない現実を「外から」ただ見ていたいだけ。そういう人もいるのだろう。

恋をしたい、と恋の話が好き、は違うこと。彼らも自分も、恋をしているのだろうか。恋をしてみたいのだろうか。

 

 

 

恋をしている。

恋をしている。

恋をしている。

恋がしたい。

いつから恋なのだろうか。

どこから恋なのだろうか。

それはきっと、恋だと思った瞬間が恋の始まり。

出会った瞬間。目が合った瞬間。声をかけられた瞬間。笑いかけられた瞬間。手と手が触れ合った瞬間。

ああ、これは恋だ。

そう思ったその瞬間から恋は始まる。たとえそれが「好き」でも「嫌い」でもなくたって、「恋だ」と思ってしまえばそれはきっと恋。

恋という感情は開かれることを待つ宝箱のようだ。開かれることを、始まることを待ち続ける心のどこかに置き忘れた宝箱。箱の中には幸せと不幸が半分ずつ入っている。それは宝物なのかもしれないし、くだらないガラクタなのかもしれない。

その宝箱は誰かがあなたの中にぽつんと置いていく。それは鍵を持つ誰かだ。

それは恋の相手。あなたと誰かが恋をするために持ち込まれた宝箱は、ただ一人の恋人が設置したトラップなのかもしれない。

あなたの心には開かれなかったいくつの箱が眠っているのだろう。そして、あなたは一体いくつのトラップを仕掛けたことがあるだろうか。

それは時限爆弾つきの、誰も傷付かないびっくり箱だったらいいのにね。中身がこわいから開こうとしないで置いておく。それでもいつかは勝手に開く。そんな箱だったら、そんな、箱だったら、無理矢理その想いを暴かれずに済むのだろうか。

恋というものは本当に身勝手だ。

 

 

 

恋がしたい。

恋がしたい。

恋がしたい。

恋をしている。

塵も積もれば山となる。恋も乞い積もれば何となる?

叶いましては両思い。秘めたる想いは片思い。砕けましては失恋とはよく言ったものだろうか。

砕けてしまった想いは消えてしまった? 恋は砕けると消える、そういうものか。

消えてしまえばいい。叶わなかった想いなんて、消えてしまえばいい。いっそ、そんな恋始めからなかったことにできたらどれだけ楽になれるだろう。

積もるところ、そんな風にはできていないというものが恋なのでありまして。何日何週間何年経っても忘れられないという厄介なものこそ恋というもの。

叶わなかった想いは消えてしまうのだろう。時間と共に霞んで消えてしまえばいい。それでも、その想いが入っていた箱は心のどこかに居座り続ける。中身の消えた空っぽの宝箱は、置いた主がいなくなってもそこに在り続ける。中身は空っぽになったまま。

 

忘れることなんてできない。できるはず、ない。

あなたは確かに恋をしていたのだ。

なかったことになんて、知らなかったことになんてできやしない。

できるはず、ない。

それが恋というもの。

ああ、本当になんて厄介な感情。

 

 

 

 

叶った恋はどうなるの? 両思いの恋はどこへいく?

出た芽は育って伸びていく。蕾をつけて、花が咲く。きれいな綺麗な恋の花。キレイに咲いた恋の花。

 

花は咲き続けることができるのか。咲き続ける花に意味はあるのか。

 

いつかは無様に枯れて散るだろう。それが花というものだから。

もしも「恋の花」が「花」ではなくて「華」だったら、いつまでもきらびやかに咲き続けることができるだろう。でもそれはただの造花だ。

恋の咲く先に未来を望むなら、花が散ることを覚悟しないといけない。覚悟して、相手を信じなきゃいけない。恋の花が形を変えたとき。それは実って恋の果実ができるとき。

花のままで愛でたいか。果実にして味わいたいか。

どちらを選ぶかはあなた次第なんだろう。

 

 

 

 

 

 

ハラリ

ひらり

 

 

 

春は来る。

春はやって来る。

恋の季節が足音を忍んでやって来る。

だけど、春風を知らない時間だってある。

知っているでしょう?

 

 

 

はらり

ヒラリ

 

恋は舞う。

 

 

 

 

 

 

恋を教えてくれませんか。

 

 

 

人魚の姫は一目惚れ。初めて見た人間は王子様だった。初めて見た人に彼女は恋をした。初めて見た人魚に彼は恋をした。初めてが別の人でもあの恋は成立したのだろうか。

教えて、人魚姫。

あなたは何に恋をしていたの?

人魚の恋は泡となって海の底。

 

白雪の姫は運命。偶然が重なって姫と王子は出会った。それは誰かの嫉妬が作り上げた舞台の上に成り立っている。一つでも条件が違えば足を踏み外してしまう。姫はどんな可能性を胸に横たわっていたのだろうか。

教えて、白雪姫。

あなたは誰に恋をしたの?

白雪の恋は足跡すら残っていない白雪(はくせつ)の上。

 

茨の姫は試練。困難を乗り越えた先に待つ出逢いを求めて、彼の人はやって来る。長い時間を夢の中で待ち続ける姫は試練に打ち勝つことができたのだろうか。茨の中を進む人は望んだものに出会えたのだろうか。

教えて、茨姫。

あなたは誰と恋をしたの?

茨の恋は棘だらけの庭園に眠り続ける。

 

 

 

教えてください。

恋をしたことのない自分に、恋というものを教えてください。

たった一回でいい。自分だけの恋というものに出会ってみたい。だから、教えてくれませんか。

自分に、あなたの出会った恋を教えてくれませんか。

 

恋がしたい。

恋がしたい。

恋がしてみたい。

恋がしてみたい。

恋をしている。恋をしていた。

恋を、探している。恋を、見つけた?

恋と出会った。恋と別れた。

恋がしたい。

恋が、したい。

 

恋の話は尽きることがない。

ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ口は動き続ける。いつの時代だってそうだった。

恋を夢見る人たちは本当の恋を語ることができない。夢が現実にならない限り、自分だけの恋を語ることなんてできないのだ。

幾多のおとぎ話。ラブロマンス。いつだって人は夢を見続ける。

素敵な恋話。ロマンティックな恋夢話。自分が主人公になったかのように語られ続ける夢のような話たち。それらのほとんどは現実ではない。現実ではないからこそいくつもスパイスを追加してより刺激的に、より情熱的に、より繊細に語られ続ける。夢の中には素敵な恋がいつだって溢れ返っている。だが、現実はどうだろうか。

現実にある恋は綺麗で素敵なものばかりではない。いくら自分だけの特別な恋だと言っても、誰にも言えない恋だってある。誰にも言わない恋だっていくつもある。

まるで、どこか満足しきれていないかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命なんてあるのでしょうか。

一目惚れなんてあるのでしょうか。

 

 

 

ただただ無意味な疑問を頭の中で繰り返しては繰り返す。きっとあるはず。きっとあるはずない。何度も何度も繰り返す。

恋についてくだらないことを頭の中で語り続ける。くだらないことわかっているから、その「恋」たちは誰にも言えない恋の話となる。

 

此度もこのように長々と語ってしまった。

声になんて出せない恋の話。

本当につまらない、架空の恋話。

 

つまらない、恋のない現実の世界。

 

色も音もない、現実の恋話。

 

恋がどんなものかなんて知っている。だって、世の中には嫌というほど恋の話が漂っているのだから。

それでも誰もが恋人となる相手と出逢えないのは、ただ恋に夢を見すぎているから。

そう、自分は思う。

だから、自分も恋を知らないまま道を一人で歩き続けているんだ。

そう、自分は思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすぐ信号機の色が変わる。

 

変わった。

 

横断歩道の縞の上を自分は歩く。

 

信号機の色は変わらない。

 

 

 

運命なんてあるのでしょうか。

一目惚れなんてあるのでしょうか。

 

 

 

視界の隅に一台の車が入り込む。

スピードを出している。

危ないな。

 

車が急に曲がった。

こっちへ来る。

危ないな。

 

信号機の色はまだ変わらない。

自分はまだ横断歩道を渡りきれない。

 

車が自分の所へ突っ込んでくる。危ない。

 

車はスピードをゆるめない。

誰かの悲鳴が聞こえた気がした。

自分は避けられない。逃げられない。

危ない。ダメだ。もうダメだ。

 

自分は諦めた。

 

もう、いいや。

そう頭の中で呟いた。

 

 

 

運命なんてあるのでしょうか。

一目惚れなんてあるのでしょうか。

 

ほんとうに、あるのでしょうか。

 

 

 

誰かが自分を庇った。

自分と誰かは冷たい道路の上に倒れこんだ。

 

その瞬間、自分と誰かは確かに目が合った。

 

サイレンの音が響いていた。

泣き声が響いていた。

自分には、何一つ聞こえていなかった。

 

目の前には助けてくれた誰かの顔。開かれていない目。

ついさっき、自分はその目を見つめた。

 

 

 

運命だと、思った。

 

 

 

自分は、誰かの顔を見つめて、真っ赤に染まった口に自分の口を重ねた。

冷たかった。

初めてのキスは、真っ赤な血の味がした。

 

自分にはわかってしまった。

目の前の誰かにはもう逢えないのだと。誰かは、もう、遠くへ逝ってしまうのだと。

 

だから、自分はその言葉を声に出せなかった。

 

自分は、誰にも言えないその恋を、誰かの口に吹き込んだ。

 

目の前の誰かは、目を開くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

その恋は誰にも聞かれることはなかったと思う。誰にも聞かれなくてよかったんだと思う。

これが、自分だけの恋。

 

 

 

自分は、今、確かに恋をしている。

 

 

 

どうか許して欲しい。誰にも言えないこの恋を知ってしまった自分を。

 

誰かの口を、恋を乗せた自分の口でふさいだ。もう自分は、誰にも、この恋を言わなくてもいい。

この恋を知っているのは目の前の誰かだけでいい。

 

自分は、恋をしていた。

 

 

 

運命なんてあるのでしょうか。

これが運命だというのなら。

一目惚れなんてあるのでしょうか。

一目見ただけで恋と気づく。

 

 

 

 

 

 

あれは確かに恋だった。

 

 

 

 

 

 

こんな恋、どうでしょうか。

今度はあなたの恋を自分に教えてくださいな。

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